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第五章 ルキソミュフィア救援
第92話 赤の孤島の小屋
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と、思ったその時、禍々しい魔力が絡みついた書棚の陰からセレスが顔を出した。
「おやグレアラシル君、こんな所に来てどうしたんだね?」
普段は全くそんな口調でグレアラシルに話しかけないセレスが、何やらどこかの推理小説でも読み始めたのか?と言った感じの口調で話しかけてきた事に、グレアラシルは少々不気味さを感じた。
「ええっと、禁書の棚に迷い込んだら、禁書からヤバげな魔力が放出されて来ましてですね・・・・」
平静を装って返答しようとしたグレアラシルだったが、闇の魔力が徐々に身体に入り込んでいく感覚に恐怖を感じ、いつもの様な口調で答える事が出来ずにいた。
その様子をようやく確認したセレスは、
「アタシの部下に何する気だ・・・・・」
自身の魔力を放出しながら禁書魔導書に対して威嚇した。
セレスは他の書架メンに比べると魔力量はそれ程多く無かったが、多分魔力の質の観点から禁書魔導書達は恐れ慄いたのか、その後は一切禍々しい闇の魔力を放出して来る事は無くなった。
「思い知ったか!この低俗下劣魔導書野郎ども!」
もっとカッコイイ決め台詞を言えば良かったか・・・と逡巡しながら、既に言い放ってしまった言葉には割とセレスは満足していた。
「流石です!姐さん!!」
グレアラシルはセレスに称賛の言葉をかけながら、拍手した。
「いやいやいや~!それ程でもあるけどね!」
セレスは全く謙遜する事も無く称賛を浴びた。
「それにしても姐さん、他の皆はドコにいるんでしょうね?」
天井を仰ぎ見ながらグレアラシルは、ついぞ先程まで入り口のドアから一瞬にして散りぢりになって行った書架メンの事を思い出していた。
自分たちの目的は何であったのか・・・・禁書魔導書の魔力で記憶が欠落してしまったのか?グレアラシルはぼんやりとした表情で天井を見続けていた。
「行くぞ!グレ!アタシ達の目的は、銀狼族を救う事だ!」
賞賛の後、ぼんやりと立ち尽くすだけの男と化してしまっていたグレアラシルの腕をセレスは掴むと、大図書館の中心部方面に早歩きで進み始めた。
不意に腕を掴まれたグレアラシルは、若干セレスに引きずられるような形で共に書棚の間をすり抜ける様に歩いて行く。
すると徐々に、既に中心部に集まっていた皆の声が近づいて、ようやく書架メンが全員一つ所に集まった。
「セレス~遅いんだち!一体どこに行ってたんだち!?」
ミカゲが少し、プンスカしながらセレスに歩み寄って来た。
その後ろから、
「おやおや、遅かったねぇ~ふふふ、聞いておくれよセレス、さっきめちゃくちゃ面白い事があってね・・・」
一人、やたらと楽しそうな雰囲気のソフィアステイルが近づいた。
「2人とも・・・アタシが居なくて寂しかったのは分かるけど、そろそろ本題を大司書に話した方が良いとアタシは思うんだけど?」
ミカゲとソフィアステイルが何やら話しそうになっているのをセレスは制すると、他の書架メンのコレットやソラ・ルデ・ビアスの近くに佇む、背丈の小さい銀狼族の老人の姿に視線を落とした。
セレスにまだ腕を引かれていたグレアラシルも皆の姿を確認すると、ようやく正気を取り戻して目的を思い出したのか、意気揚々とした表情になっていた。
「ふぉっふぉっふぉっふぉ。どうやら全員集合した様じゃのぅ。」
セレス達が銀狼族の老人の前に姿を現すと、老人は穏やかな表情を見せた。
「初めまして。貴方が大図書館の大司書、クエル・ストラスファ様ですね?」
まだ誰からもその老人の素性を紹介されていないのに、セレスは一目でその老人の素性を言い当てた。
「如何にも。ワシがこの図書館の司書をしておるクエル・ストラスファじゃ。以後大司書とか図書館ジィさんとか、好きな様に呼んでくれて構わんよ。」
そう言って、目を細めた。
「では早速なんですが、アタシ達をこれから赤の孤島に連れて行ってもらえませんか?」
セレスは、この天空図書館に来た本来の目的を大司書に話した。
銀狼族が隠れ住んでいる国、ルキソミュフィアがソルフゲイルの侵攻を受けて現在危機的状況にあるかも知れない事や、ソルフゲイルがしてきた非道なる魔術の真実を、セレスは今まで知りえた情報のすべてを大司書に話した。
そして、
「ここに居るコレットが、赤の孤島にある小屋を開けられる可能性が高いのです。」
と、セレスは最後に締めくくった。
セレスの話を終始、ふむふむ・・・なるほどねぇ~と言って首を縦に何度も振りながら聞いていた大司書は、最後にコレットが小屋を開けられる可能性が高いと聞いて、少し首を傾げた。
「お前さんが、何故あの小屋を開けられると?その確たる証拠は、まさかただ神族だからとでも言うのかの?」
どうやら大司書も、赤の孤島に建つ小屋の内部に興味がかなりある様で、コレットの『小屋を開けられる』と言う情報に対しては、かなり慎重な姿勢を取っていた。
「だ、大丈夫ですよ!私、小さい頃は結構しばらくの間、あの小屋に住んでいたので!!」
コレットは、赤の孤島に関してだけは慎重な態度で振舞う大司書に、小屋に住んでいた時のことを説明する。
「アリ・ラナティアと一緒に住んでいたんです、私。でもラナティアは途中で戦に赴いてしまった・・・その後、二度とラナティアに会う事は叶わなかったけど、でも、私はその小屋に住んでいたんです!」
コレットは、目の前の小さな銀狼族の老人に、必死に訴えかけた。
「おやグレアラシル君、こんな所に来てどうしたんだね?」
普段は全くそんな口調でグレアラシルに話しかけないセレスが、何やらどこかの推理小説でも読み始めたのか?と言った感じの口調で話しかけてきた事に、グレアラシルは少々不気味さを感じた。
「ええっと、禁書の棚に迷い込んだら、禁書からヤバげな魔力が放出されて来ましてですね・・・・」
平静を装って返答しようとしたグレアラシルだったが、闇の魔力が徐々に身体に入り込んでいく感覚に恐怖を感じ、いつもの様な口調で答える事が出来ずにいた。
その様子をようやく確認したセレスは、
「アタシの部下に何する気だ・・・・・」
自身の魔力を放出しながら禁書魔導書に対して威嚇した。
セレスは他の書架メンに比べると魔力量はそれ程多く無かったが、多分魔力の質の観点から禁書魔導書達は恐れ慄いたのか、その後は一切禍々しい闇の魔力を放出して来る事は無くなった。
「思い知ったか!この低俗下劣魔導書野郎ども!」
もっとカッコイイ決め台詞を言えば良かったか・・・と逡巡しながら、既に言い放ってしまった言葉には割とセレスは満足していた。
「流石です!姐さん!!」
グレアラシルはセレスに称賛の言葉をかけながら、拍手した。
「いやいやいや~!それ程でもあるけどね!」
セレスは全く謙遜する事も無く称賛を浴びた。
「それにしても姐さん、他の皆はドコにいるんでしょうね?」
天井を仰ぎ見ながらグレアラシルは、ついぞ先程まで入り口のドアから一瞬にして散りぢりになって行った書架メンの事を思い出していた。
自分たちの目的は何であったのか・・・・禁書魔導書の魔力で記憶が欠落してしまったのか?グレアラシルはぼんやりとした表情で天井を見続けていた。
「行くぞ!グレ!アタシ達の目的は、銀狼族を救う事だ!」
賞賛の後、ぼんやりと立ち尽くすだけの男と化してしまっていたグレアラシルの腕をセレスは掴むと、大図書館の中心部方面に早歩きで進み始めた。
不意に腕を掴まれたグレアラシルは、若干セレスに引きずられるような形で共に書棚の間をすり抜ける様に歩いて行く。
すると徐々に、既に中心部に集まっていた皆の声が近づいて、ようやく書架メンが全員一つ所に集まった。
「セレス~遅いんだち!一体どこに行ってたんだち!?」
ミカゲが少し、プンスカしながらセレスに歩み寄って来た。
その後ろから、
「おやおや、遅かったねぇ~ふふふ、聞いておくれよセレス、さっきめちゃくちゃ面白い事があってね・・・」
一人、やたらと楽しそうな雰囲気のソフィアステイルが近づいた。
「2人とも・・・アタシが居なくて寂しかったのは分かるけど、そろそろ本題を大司書に話した方が良いとアタシは思うんだけど?」
ミカゲとソフィアステイルが何やら話しそうになっているのをセレスは制すると、他の書架メンのコレットやソラ・ルデ・ビアスの近くに佇む、背丈の小さい銀狼族の老人の姿に視線を落とした。
セレスにまだ腕を引かれていたグレアラシルも皆の姿を確認すると、ようやく正気を取り戻して目的を思い出したのか、意気揚々とした表情になっていた。
「ふぉっふぉっふぉっふぉ。どうやら全員集合した様じゃのぅ。」
セレス達が銀狼族の老人の前に姿を現すと、老人は穏やかな表情を見せた。
「初めまして。貴方が大図書館の大司書、クエル・ストラスファ様ですね?」
まだ誰からもその老人の素性を紹介されていないのに、セレスは一目でその老人の素性を言い当てた。
「如何にも。ワシがこの図書館の司書をしておるクエル・ストラスファじゃ。以後大司書とか図書館ジィさんとか、好きな様に呼んでくれて構わんよ。」
そう言って、目を細めた。
「では早速なんですが、アタシ達をこれから赤の孤島に連れて行ってもらえませんか?」
セレスは、この天空図書館に来た本来の目的を大司書に話した。
銀狼族が隠れ住んでいる国、ルキソミュフィアがソルフゲイルの侵攻を受けて現在危機的状況にあるかも知れない事や、ソルフゲイルがしてきた非道なる魔術の真実を、セレスは今まで知りえた情報のすべてを大司書に話した。
そして、
「ここに居るコレットが、赤の孤島にある小屋を開けられる可能性が高いのです。」
と、セレスは最後に締めくくった。
セレスの話を終始、ふむふむ・・・なるほどねぇ~と言って首を縦に何度も振りながら聞いていた大司書は、最後にコレットが小屋を開けられる可能性が高いと聞いて、少し首を傾げた。
「お前さんが、何故あの小屋を開けられると?その確たる証拠は、まさかただ神族だからとでも言うのかの?」
どうやら大司書も、赤の孤島に建つ小屋の内部に興味がかなりある様で、コレットの『小屋を開けられる』と言う情報に対しては、かなり慎重な姿勢を取っていた。
「だ、大丈夫ですよ!私、小さい頃は結構しばらくの間、あの小屋に住んでいたので!!」
コレットは、赤の孤島に関してだけは慎重な態度で振舞う大司書に、小屋に住んでいた時のことを説明する。
「アリ・ラナティアと一緒に住んでいたんです、私。でもラナティアは途中で戦に赴いてしまった・・・その後、二度とラナティアに会う事は叶わなかったけど、でも、私はその小屋に住んでいたんです!」
コレットは、目の前の小さな銀狼族の老人に、必死に訴えかけた。
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