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第五章 ルキソミュフィア救援
第84話 冬の街の酒場
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青い扉をくぐってから目的の白壁の大陸の街までは、少し長い距離を歩いている様に皆は感じていた。
やはり赤い月と青い星との距離は結構あるのだろうか?とか、扉の接続がイマイチなのではないだろうか?などと、各々色々な考えを巡らせているうちに、目的の街『スウィスルフェト・ラルム』に着いた。
扉の出口は目的地である居酒屋からは少し離れた路地裏に設定されており、そこからは謎の旅人?風に歩いて行く。
何と言うか失敗した点は、年中冬の様な土地柄の地域であるにも関わらず、南国育ちの様な格好で歩いていた事に尽きる。
白壁の大陸は、壁の名の付く大陸の中でも魔道の心得のある者が少ないと言われているので、待ち行く人達はこのご一行を見て「目的地を間違えた旅行者?」とか思っている可能性が高かった。
ちょっと珍しい生き物を見るような目を彼らに向けていたが、奇妙な一行が何者にも目を合わせずに立ち去って行くので、それ以上の興味を投げかける事は無かった。
目的の、第3の扉のある居酒屋~いや結構な大きさの酒場には、周囲の視線を気にしなければ出て来た場所からは徒歩で10分程度の場所にあった。
酒場の扉をソラ・ルデ・ビアスが開けると、ちょうど馴染の仲間が目の前に現れた。
「おっと!ソラじゃないか!大体予定通りだな?」
そう言って、酒場の店員らしき男が気さくに声をかける。
「おう!アルファス!1日ぶりだな!」
アルファスと呼んだ男にソラ・ルデ・ビアスは、いかにも仲間内的な挨拶をする。
酒場の開かれた扉からは、後続のセレス以下面々が続々と入って来た。
「おいオヤジ!とりあえず店の中に案内してもらってくれよ?」
出入り口付近で、ちょっとした人数が溜まっているとなると、酒場の客の出入りも滞ってしまう事をセレスは懸念した。
「お!噂の娘さん?気が利くね~。じゃ、とりあえず奥の2階に上がる階段上がってってよ。上がった先にちょっとしたテーブル席があるからさ、そこに皆座ってて!」
当のオヤジが口を開く前に、アルファスの方が先にセレスの希望を叶えてくれる事となった。
「あ、ありがとうございます。ではお先に失礼いたします。」
セレスは、トトアトエ・テルニア王時代の様な口調で、先を示してくれたアルファスの前を通り過ぎて階段の方に向かった。
その後ろから、軽く会釈をしながらミカゲやソフィアステイルやコレットとグレアラシルも続く。
一人残されたソラ・ルデ・ビアスは、
「何か予定していたよりも同行者が多いけど、色々事情が重なってな~。」
アルファスに、予定していた人数よりも多い事を伝えていた。
「な~に、人数は問題じゃないさ。問題は、例の場所に行った時の後の事さ。」
と、ちょっと不安になりそうな事をアルファスは呟いた。
アルファスに案内された通り、2階に上がるとそこは、いつもの書架の2階のテーブル席と似た席が用意されていた。
1階からの吹き抜けのテラス席と言った感じのテーブル席になっているので、下の客の雰囲気も感じられる場所だった。
「おお、なかなかイイね。ウチの所と似てる。」
セレスはすぐにこのテーブル席が気に入った様で、すぐさま好みの位置の椅子を引いた。
「本当、何だかあの古臭い書架を思い起こさせる。」
ソフィアステイルも、酒場の1階の客の賑わいを見ながら近くの椅子に座った。
下で、予定していたよりも多い人数と書架の主がアルファスに言っていたが、用意されていたテーブル席には同行していたメンバーとその引率の者の全員分の椅子があったので、ミカゲはその点に関してザワザワとした胸騒ぎを感じながらも、予想外の展開にも対応出来る予測行動に感心もしていた。
多分コレットは、酒場と言う場所に来たのは初めての経験だった様で、店に入ってからテーブル席に着くまで殆どポカンとした表情で周囲を見ている。
その顔を見ていたグレアラシルは、
「ああ~やっぱり、初めて来た人にはちょっと印象が強い場所ですよね~酒場。俺は仕事柄情報を集めるためと仕事の斡旋を受けるため、酒場はある意味第二の家の様な感覚ですよ。ああ懐かしい。」
と、コレットの反応とは真逆の感覚を楽しんでいた。
この、絶え間なく交わされる多くの人の会話のザワザワとした雑音の合間に、酒を酌み交わし飲み干す音。
つまみや料理を食べる時の食器のカチャカチャとした音を、グレアラシルは何かの曲を聴く様に耳を傾けていた。
「やっぱり賞金稼ぎは酒場で情報収集したり食事していないと、しっくり来ないよな~。」
セレスも、酒場独特の雰囲気を久しぶりに感じて、かつて賞金稼ぎの仕事をしていた時代に思いを馳せていた。
「だね~、あちしとセレスはトトアトエ・テルニア滅亡後、書架の収入だけでは生活出来なくて、ちょっとだけ賞金稼ぎをやっていた時代があったんだち。懐かしいんだち。」
そう言ってミカゲは、テーブル席に着いてから注文した酒を一気に飲み干した。
ミカゲは、見た目は13~5歳の少女に見えるので、知らない人が見たら小さい子供が酒なんか飲んで!?と思うのかも知れないが、実際はこの大陸界隈では既に800歳以上の年齢にもなっているので、酒の一つや二つ以上を飲んでいても何らオカシくは無い・・・のだが、それを知らない人には本当に少女が大酒を飲んでいる様にしか見えないのだろう。
ミカゲの年齢を失念していたグレアラシルが、正に通りすがりの酒飲み?みたいな反応をしていたので、
「何だ~?グレ!ミカゲの方が圧倒的にお前よりお姉さんだと言う事を忘れてたな?」
と、セレスがからかった。
図星を突かれたグレアラシルは、
「そう言ってる姐さんも、ミカゲさんにオムツを替えてもらったって、この間ミカゲさんに聞きましたよ!」
前に聞いた話から反論する。
そんな感じで雑談をしていると、書架の主と酒場の店員のアルファスの2人が1階から上がって来ていた。
「おお!何かお楽しみですな!良き良き。」
にこやかな笑みを浮かべながら、書架メンの座るテーブル席に壁際に置いてあった椅子を持ってきて座った。
「改めまして、この白壁の大陸の第二の都市であるスウィスルフェト・ラルムにようこそ!そしてその中でも第三の酒場と呼ばれているこの『グレイスルフ・ド・ラルムストル』へお越し頂き、ありがとうございます!」
軽くお辞儀をしながらアルファスは、この酒場の名を告げた。
やはり赤い月と青い星との距離は結構あるのだろうか?とか、扉の接続がイマイチなのではないだろうか?などと、各々色々な考えを巡らせているうちに、目的の街『スウィスルフェト・ラルム』に着いた。
扉の出口は目的地である居酒屋からは少し離れた路地裏に設定されており、そこからは謎の旅人?風に歩いて行く。
何と言うか失敗した点は、年中冬の様な土地柄の地域であるにも関わらず、南国育ちの様な格好で歩いていた事に尽きる。
白壁の大陸は、壁の名の付く大陸の中でも魔道の心得のある者が少ないと言われているので、待ち行く人達はこのご一行を見て「目的地を間違えた旅行者?」とか思っている可能性が高かった。
ちょっと珍しい生き物を見るような目を彼らに向けていたが、奇妙な一行が何者にも目を合わせずに立ち去って行くので、それ以上の興味を投げかける事は無かった。
目的の、第3の扉のある居酒屋~いや結構な大きさの酒場には、周囲の視線を気にしなければ出て来た場所からは徒歩で10分程度の場所にあった。
酒場の扉をソラ・ルデ・ビアスが開けると、ちょうど馴染の仲間が目の前に現れた。
「おっと!ソラじゃないか!大体予定通りだな?」
そう言って、酒場の店員らしき男が気さくに声をかける。
「おう!アルファス!1日ぶりだな!」
アルファスと呼んだ男にソラ・ルデ・ビアスは、いかにも仲間内的な挨拶をする。
酒場の開かれた扉からは、後続のセレス以下面々が続々と入って来た。
「おいオヤジ!とりあえず店の中に案内してもらってくれよ?」
出入り口付近で、ちょっとした人数が溜まっているとなると、酒場の客の出入りも滞ってしまう事をセレスは懸念した。
「お!噂の娘さん?気が利くね~。じゃ、とりあえず奥の2階に上がる階段上がってってよ。上がった先にちょっとしたテーブル席があるからさ、そこに皆座ってて!」
当のオヤジが口を開く前に、アルファスの方が先にセレスの希望を叶えてくれる事となった。
「あ、ありがとうございます。ではお先に失礼いたします。」
セレスは、トトアトエ・テルニア王時代の様な口調で、先を示してくれたアルファスの前を通り過ぎて階段の方に向かった。
その後ろから、軽く会釈をしながらミカゲやソフィアステイルやコレットとグレアラシルも続く。
一人残されたソラ・ルデ・ビアスは、
「何か予定していたよりも同行者が多いけど、色々事情が重なってな~。」
アルファスに、予定していた人数よりも多い事を伝えていた。
「な~に、人数は問題じゃないさ。問題は、例の場所に行った時の後の事さ。」
と、ちょっと不安になりそうな事をアルファスは呟いた。
アルファスに案内された通り、2階に上がるとそこは、いつもの書架の2階のテーブル席と似た席が用意されていた。
1階からの吹き抜けのテラス席と言った感じのテーブル席になっているので、下の客の雰囲気も感じられる場所だった。
「おお、なかなかイイね。ウチの所と似てる。」
セレスはすぐにこのテーブル席が気に入った様で、すぐさま好みの位置の椅子を引いた。
「本当、何だかあの古臭い書架を思い起こさせる。」
ソフィアステイルも、酒場の1階の客の賑わいを見ながら近くの椅子に座った。
下で、予定していたよりも多い人数と書架の主がアルファスに言っていたが、用意されていたテーブル席には同行していたメンバーとその引率の者の全員分の椅子があったので、ミカゲはその点に関してザワザワとした胸騒ぎを感じながらも、予想外の展開にも対応出来る予測行動に感心もしていた。
多分コレットは、酒場と言う場所に来たのは初めての経験だった様で、店に入ってからテーブル席に着くまで殆どポカンとした表情で周囲を見ている。
その顔を見ていたグレアラシルは、
「ああ~やっぱり、初めて来た人にはちょっと印象が強い場所ですよね~酒場。俺は仕事柄情報を集めるためと仕事の斡旋を受けるため、酒場はある意味第二の家の様な感覚ですよ。ああ懐かしい。」
と、コレットの反応とは真逆の感覚を楽しんでいた。
この、絶え間なく交わされる多くの人の会話のザワザワとした雑音の合間に、酒を酌み交わし飲み干す音。
つまみや料理を食べる時の食器のカチャカチャとした音を、グレアラシルは何かの曲を聴く様に耳を傾けていた。
「やっぱり賞金稼ぎは酒場で情報収集したり食事していないと、しっくり来ないよな~。」
セレスも、酒場独特の雰囲気を久しぶりに感じて、かつて賞金稼ぎの仕事をしていた時代に思いを馳せていた。
「だね~、あちしとセレスはトトアトエ・テルニア滅亡後、書架の収入だけでは生活出来なくて、ちょっとだけ賞金稼ぎをやっていた時代があったんだち。懐かしいんだち。」
そう言ってミカゲは、テーブル席に着いてから注文した酒を一気に飲み干した。
ミカゲは、見た目は13~5歳の少女に見えるので、知らない人が見たら小さい子供が酒なんか飲んで!?と思うのかも知れないが、実際はこの大陸界隈では既に800歳以上の年齢にもなっているので、酒の一つや二つ以上を飲んでいても何らオカシくは無い・・・のだが、それを知らない人には本当に少女が大酒を飲んでいる様にしか見えないのだろう。
ミカゲの年齢を失念していたグレアラシルが、正に通りすがりの酒飲み?みたいな反応をしていたので、
「何だ~?グレ!ミカゲの方が圧倒的にお前よりお姉さんだと言う事を忘れてたな?」
と、セレスがからかった。
図星を突かれたグレアラシルは、
「そう言ってる姐さんも、ミカゲさんにオムツを替えてもらったって、この間ミカゲさんに聞きましたよ!」
前に聞いた話から反論する。
そんな感じで雑談をしていると、書架の主と酒場の店員のアルファスの2人が1階から上がって来ていた。
「おお!何かお楽しみですな!良き良き。」
にこやかな笑みを浮かべながら、書架メンの座るテーブル席に壁際に置いてあった椅子を持ってきて座った。
「改めまして、この白壁の大陸の第二の都市であるスウィスルフェト・ラルムにようこそ!そしてその中でも第三の酒場と呼ばれているこの『グレイスルフ・ド・ラルムストル』へお越し頂き、ありがとうございます!」
軽くお辞儀をしながらアルファスは、この酒場の名を告げた。
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