ソラ・ルデ・ビアスの書架

梢瓏

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第四章 ソルフゲイルの謀略

第46話 ソラ・ルデ・ビアスの書架に集結

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 長い長い時を経て、セレスとミカゲとその一味は、ソラ・ルデ・ビアスの書架に帰還した・・・

と言う感じで帰還出来ればなお恰好が付いたと思われるのだが、残念ながら約1日半での旅路が終結を迎えた。

それもこれもソフィアステイルの操る『慟哭の門』の機能のお陰だ。

時空を超えて時間軸も無視して場所を移動する事が出来ると言う、非常に便利な乗り物?のお陰で、セレス達は出かけて行ってからほんの1日半で書架へ帰還する事が出来たのだった。

しかもその前に、トトアトエ・テルニアの遺跡に置いて来たミカゲの拘束具の回収も済ませている手際の良さなので、ソルフゲイル軍も拘束具に封じられている魔法を得ると言う事も出来なくなっていた。

色々と、セレスの念願かなって世界樹の守護者を辞めてミカゲに委譲する事が出来た報告や、これから書架に入り浸る人が増える報告などをすると、あの二人はどう思うのか?などを想像しながらセレスは書架の近くで門を降りた。

「とりあえず、ココまでで。書架の中で門を降りたらまた面倒なことになりそうだし、それに今正に!ベルフォリスが書架のドアを開けようとしているし!ベストなタイミングだったと思うよ!」

言いながらセレスは小走りに近寄って、ベルフォリスの肩を叩いた。

「ぅわ!」

ベルフォリスにはかなりの不意打ちだったのとあと、かなり油断していたらしかったと言う事で、驚きの悲鳴を上げる。

「わ、わわ、あああ~・・・・セレスか・・・・って!ソフィアとレオルさんまで!ええ?ミカゲも?!」

更に驚愕の言葉が続く。

セレスは少しため息交じりに、

「あああー~、間に合った。間に合って良かったよ。突然あの二人に鉢合わせしない方が、お前のためになるからな~。」

そう言って、ベルフォリスの前に出て書架のドアを開けた。

ドアを開けると、入り口付近に置いてあるテーブル席にコレットとグレアラシルが座ってうなだれていた。

うなだれていたが、ドアを開けて入って来たのがセレスだと分かると、途端に明るい表情になってセレスを迎える。

迎えていると、セレスの後ろからエルフの青年とミカゲ、それとまたエルフの女性が2人現れたので、2人は喜び半分困惑半分と言った表情になっていた。

「お、お帰りなさい!セレスさん!ミカゲも!・・・ええと~そちらの方々は?」

コレットが声を駆けつつ後ろから付いて来たソフィアステイルとレオルステイルの2人とベルフォリスを気にした。

グレアラシルの方は?と言うと、結構な端正な顔立ちのイケメンなエルフの青年がセレスにぴったり寄り添って歩いて来たのを見て、内心ハラハラしながら席を立てないでいた。

そんなグレアラシルの事を誰も気にせず、書架の1階スペースの人口密度が高くなってしまったので、2階の読書スペースも兼ねたテーブル席に移動する事となった。

ミカゲが台所で、少しヒンヤリする氷の魔法のかかったお茶をササっと作って皆に配付した所で、ようやくセレスは一息付けた気がした。



「何か本当、長い時間が経っている様な感じもするのに実際はたったの1日~いや約2日しか経たずに帰ってきましたよ。」

セレスは頭をごしごしかきながら、グレアラシルとコレットに帰還報告をした。

報告された2人は?と言うと、特にコレットはセレスの身内だと名乗る3人に興味津々で、色々と話をしたり聞いたりするのを楽しみにしている様で、

「せ、セレスさんのお母様?そちらの方は叔母様?そちらの方は幼馴染?!何だか魔力的な所で見るともう、凄い巨匠が勢ぞろいって感じですよ!!」

と、かなり興奮気味に話して来るので、このコレットの状態が落ち着くまでにはかなりの時間を要しそうだな?とセレスは苦笑いをするしか無かった。

一方のグレアラシルは、ベルフォリスの存在をあまり良く思っていない様なのだが、しかしポっと出の婿宣言者にベルフォリスに対抗出来そうな材料を持ちわせている筈も無く、ただベルフォリスに羨望の眼差しを向けているだけとなっていた。

その、グレアラシルの熱き視線を浴びまくっているベルフォリスはと言うと、

「セレス~、何だかあちらのがっちり系の人が僕を睨みつけて来るんだけど・・・・」

と、セレスに耳打ちする。

セレスは、

「まぁ、ちょっと先走る考えをする人だけど、悪い奴じゃないんだ。とりあえず挨拶でもして来たらどうだ?」

と、軽く提案をした。

ベルフォリスは、「そうだね」と言ってセレスの傍から離れてグレアラシルの近くに行き、軽く会釈をしたのちに話しかけた。

「お初にお目にかかります。僕の名はベルフォリス。魔界出身のエルフで、セレスとは小さい頃からの付き合い、つまり幼馴染と言う事になるかな。君はグレアラシル~と言うんだね。この世界では珍しくライカンスロープらしいけど、一体どんな獣に変化するのかな?」

と、無難な感じの挨拶をしたベルフォリスだったが、何故かグレアラシルは視線だけで会釈をした後返答も無く、座っていた席を立って1階に降りてしまった。

「あれ?僕、何か変な事を言ったかな~?」

首をかしげてセレスの元に帰ってくるベルフォリスにセレスは、

「多分、ライカンスロープの部分に対して気分を害したんだと思うぞ。」

と、注意した。

ミカゲがお茶を作っている間に、ベルフォリスとレオルステイル、そしてソフィアステイルに軽く書架の仲間の予備知識を話しておいたのだが、詳細は3人と彼らが対話して理解して行けば良いと思ったのだ。

所が、やはり鬼門の情報に触れられるとその話題からは逃げたくなる心理に駆られて、グレアラシルはベルフォリスから逃げ出したのだろう。

「まぁベルフォリス、お前は全然悪くないから気に病むな。後でアタシが喝を入れて来るから、詳細を聞きたいならその後にした方がイイ。」

セレスはそう言って、ベルフォリスの肩を叩いた。

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