ソラ・ルデ・ビアスの書架

梢瓏

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第三章 世界樹の守護者

第38話 仲間

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「凄いね、流石だね!やっぱりそのカード占いの腕前だけは、この世界でも随一と言っても良いね~。」

セレスは何度も頷きながら、ベルフォリスのカード占いの腕前を褒める。

それは本当に、何度もこの占いのお世話になってきた経験者だからこそ言える誉め言葉だった。

「何だよ~セレス、そんなに褒めても何も出ないよ。ソフィアステイルなら多分、あと半刻(30分)もすれば来るんじゃない?この辺に。」

言いながらベルフォリスは、この辺に来るのは勘弁して欲しいんだよな~と言って溜息をついた。

 この、ベルフォリスが営む情報屋の提供する情報は、さっきのカード占いによって選出されたカードから、これから起こるであろう出来事を読み取る方式の情報提供をするもので、そこらのギルドに何かを探しに行ってもらうのを依頼してみたりして情報を得る類では無かったりする。

なので近隣のギルドでは、仕事が減るから占いをするのを止めろ!と言う圧力もあった様だが、何せ店主がこのエルフで、のらりくらりと圧力をかわしていたので、そのうちギルドの方が圧をかけるのが馬鹿らしく感じたらしく、最近はトンとギルドからの訪問者は途絶えていた様だった。

「それはそうとベルフォリス、何でアンタは占いでアタシの動向を探らなかったんだ?100年もあれば結構探りも入れられたんじゃないか?」

セレスは、得意の情報探しの占いの力があれば、自分の100年間の行動をいつでも監視できるのでは?と言う考えに至り、ベルフォリスに質問する。

すると、

「何度もやってみたんだよ、でも謎の圧力って言うか多分この占いカード程度の魔力では突破できない結界の様な、そんな感じのが時空間に張り巡らされていてね。これがセレスに関する事だけ調べられなかったんだよ。だから、セレスに相当の恨みを持っている者かまたは、どうしてもセレスの動向を知られたくないと言う親心とか、そう言うのがあるんじゃないかな~って僕は思っているんだよ、」

と、ベルフォリスは頭を悩ませながら答えた。

まさかの!自分の行動を誰かに隠匿される様な状態になっていた事をセレスは知り、驚くと同時に誰がこんな事をやったのかの見当が付いた。

「多分オヤジがやったんだな・・・・」

頭を抱えながらセレスはうなだれた。

ベルフォリスは、

「え?オヤジさんってセレスのお父さんの?あの、背がでっかくてセレスと同じ赤い髪の、めちゃくちゃ強そうな感じの!?」

と、何かやたら興奮気味に言うのでセレスは、「そうそう」と言いながらうなだれを続ける。

「オヤジさん、めちゃくちゃ魔道に詳しくて、僕は初めて会った時に凄い本を3冊も貰ったんだよ。その本のお陰で、このカード占いが出来る様になったと言っても過言では無いよね!だから今度会った時にちゃんとお礼が言いたいんだよねー!」

と、カード占いが出来る様になった経緯を話した。

「へぇ~、そうだったんだね~。てっきり元からベルフォリスの持ちネタなんだと思っていたよ、あの時も、アタシの力がまだ健在で『未来予知』がバリバリ出来ていた頃なら、確かにその力と合わせれば世界を征服できたかも知れないね。でもアタシは、この100年間の間にその力を殆ど失ってしまってね。今や予知って言っても最大3日以内の事しか視えやしないのよ。」

そう言ったセレスの顔はどこか寂しげな様で、でもスッキリとした表情をしていた。

「多分オヤジは、『未来予知』以外にも色々失ってしまったアタシを不憫に思って、それで追跡とか探索の魔法がかからない様な結界かまたは護符の様なものを施したんだろうさ。まぁ世界樹の守護者になるって事は、そう言う風に色んな力を代償にしなければならないんだろうとは思っていたけどね、まさかココまでだとは思っていなかったんだよね。」

セレスは、今の自分の状態の原因が世界樹の守護者になっている事だと言う事をベルフォリスに明かした。

ベルフォリスは、

「そ、そんなの辞めちゃえばイイのに!辞めてスッキリしたら力が戻って来るかも知れないよ!?そしたらまた、一緒に世界を征服する策を練ろうよ?」

と、悲しそうな顔をしながらセレスに詰め寄った。

「そうだよ、今こうやってミカゲを代理の代理に立ててこの国に来たのは、その世界樹の守護者を辞めるためなんだ!その為にはアタシの母さんを探さなければならなくて、探すためにはソフィアステイルの力が必要なんだ。つまりそう言う事なんだ。」

セレスは、詰め寄ってきたベルフォリスの肩を掴んで、これから自分が成そうとしている事を話した。

 空白の100年間を取り戻す為じゃないけど、これから起こる大変な事態を避けるため、セレスは世界樹のある土地から離れられる様にならなければならない。

「今、ルキソミュフィアとソルフゲイルが戦争をしている。ソルフゲイルの目的はルキソミュフィアにある世界樹の守護者をしている竜だ。今何故竜が必要なのか分からないが、アタシはヤツらの目論見を阻止したいんだよ!」

セレスはいつになく冷静さを欠いた状態でベルフォリスに向かって叫んだ。

 ベルフォリスは困惑しながらでも、真剣なセレスに対して自分に出来る事があれば何でも力になろうと誓った。

「セレス、僕に出来る事があったら何でも言ってよ。僕はいつもセレスの力になりたくて仕方が無いんだから!」

満面の笑みで答えるベルフォリスに、セレスは自分の周りにはいつも信じられる仲間が集まる事に心底感謝した。

「今はまだ、重要な助けを必要としていないけど、絶対後にベルフォリスの力を借りなければならない時が来ると思っている。だからその時は頼む!」

 セレスがベルフォリスに救援の要請をしていると、背後から冷ややかな空気が漂って来た。

あまりにも寒々しいので振り返ると、そこには青い長い髪をみつあみにして、度の強そうな眼鏡をかけたエルフの女性が立っていた。

女性は、二人のやりとりをほほえましそうに見ながら、にっこりと笑った。

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