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第三章 世界樹の守護者
第28話 『慟哭の門』
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苦悶しながらセレスは、ミカゲの拘束具を外すのに一番適しているであろう候補地を模索していた。
街から離れていて、人の気配が少ないか無くて、更に人目に付きにくくて~と考えると、なかなか思い当たらない。
焦っている所為もあるのかも知れないが、とにかくグルグルと思考を巡らせた。
すると、
「あちし思い出したんだち!結界で軽く封印されてる、昨日ライカンスロープ君と戦った神殿の所で外せば良いんだち。あそこなら、ソルフゲイル軍ももう怖くて来ないと思うんだち!」
と、ミカゲはかなり得意げにセレスに提案した。
セレスは何だか、目からウロコがボロボロ落ちている様な顔をして、
「流石だ!ミカゲ!!」
そう言ってミカゲの頭をわしゃわしゃとした。
ミカゲは「てへへー!」と言いながら喜んでいる。
これじゃあ傍から知らない人が見たら、お姉さん風の人が妹風の亜人の子を可愛がっている様にしか見えないが、実際は年齢的には蒼壁の大陸時間では1000年以上もミカゲの方が年上だったりするから、世の中不思議が満載だ。
「そうと決まれば、明日は早朝6時にあの場所で巨大竜化だ!ミカゲはご飯たくさん食べて早く寝よう!」
「まかしとくんだち!」
一気に問題が解決したセレスとミカゲは、先程までの世界が終わりそうなほどに苦悶していた状態から抜け出すと、テーブルの上の料理をガツガツと食べ始めた。
あんなに?数日分はありそうなほどに詰まれていたロールパンも、もう残す所あと2個?と言う状態になっていた。
そんな2人を見ていたグレアラシルは、ミカゲの完全体を見たい様なほのかな願望が湧いてきたが、それ以上にあの時の恐怖感の更に倍を行く恐怖がそこに顕現する事に、想像を絶して言葉を出すのも難しくなっていた。
「そーいやセレス、『アルメイレ』のエルフってもしかして『慟哭の門』を使うあのエルフの事だち?」
ミカゲが何かを思い出してセレスに問いかけた。
「そーだよ、あの人の使う『慟哭の門』が無いと母さん見つけられる訳が無いからね。」
と言って、セレスは自分の皿に取り分けておいた最初の、あのちょっと辛い料理を苦々しい顔をしながら食べていた。
テーブルの上の料理を全て食べつくそうとする2人を見ていたグレアラシルは、不意に出た『慟哭の門』と言う、何だか物騒な名前の「何か」が気になって、セレスに質問した。
「姐さん、その、『慟哭の門』って言うの初めて聞いたんすけど、一体どんなシロモノなんですかね?それが無いとお母さんが探せないって言う事は、何か乗り物とかそう言うのなんすかね?」
セレスは、イイ~所に目を付けたな?と言いたげな顔で、
「そうだ。『慟哭の門』は隣国アルメイレに今は滞在しているであろう、『深淵のエルフ』と呼ばれるエルフが使える特異な能力だ。この能力は、自分のイメージや相手からの情報だけで、一瞬にして目的地に着けると言う便利な能力なんだが・・・」
「凄いっすね!!それがあれば、世界旅行とか全然楽になりますね!!もっと色んな人が使えて便利な世の中になれば~夢が広がりますね!」
と、グレアラシルが少し興奮気味に夢を語る。
しかしセレスは、その夢を打ち砕いて更にミカゲに抱いた以上の恐怖をグレアラシルに叩きつける。
「何だグレ?お前は諸国漫遊の旅が理想なのか?だったらもう少し精神力を鍛えてミカゲに乗せてもらえばイイ。この、『慟哭の門』はそんなに軽々しくて生易しいモンじゃない。まず、『慟哭の門』で移動出来るのはエルフだけまたはエルフの血を引くものだけと相場が決まっていて更に、この『慟哭』が意味する通り、『門』に入っても必ずしも目的地まで無事に辿り着けるとは限らないのさ。」
夢見心地で期待を抱いていたグレアラシルが、更に恐怖感を増すのには十分過ぎる情報をセレスは突きつけた。
「『慟哭の門』には時間の概念が無い。例えば、今日今から入って今から1時間後に目的地に着きたいと思っても、着いたら数百年経っているかも知れないし、逆に数十年前に着く事もある。これは、『門』を操作している『深淵のエルフ』の気分次第とかナントカ~その辺の詳細は忘れたとけど、その時間のズレが今回の母さんの捜索にはかなり必要不可欠でね。」
セレスはため息をつきながらコップに入った青い色の水を飲んだ。
その水は、件のあの氷の魔法がかかった茶葉で淹れた冷茶だった。
「ただ移動したいだけならレイネリー・レイルブルクの竜タクを召喚すればイイんだ。アイツらの気さくな人柄~いや竜柄は気に入っているし結構快適だから乗りたい所だったけど、今回探しに行くのは世界樹の元守護者で、更に特異な能力を持っていると考えられる古のエルフだ。こんな厄介な相手を探しに行くのには、元守護者の姉で『深淵のエルフ』と呼ばれる彼女の持つ『慟哭の門』で探すのが一番手っ取り早くて確実なワケ。」
と言って苦笑いの様な笑みをセレスは浮かべた。
『深淵のエルフ』を尋ねるという事は、つまりセレスの叔母に会いに行くという事になるのだろう。
そしてそれが、何百年なのか?どれ位の月日以来の再開になるのか覚えていない程の、久しぶりの邂逅になるのだった。
街から離れていて、人の気配が少ないか無くて、更に人目に付きにくくて~と考えると、なかなか思い当たらない。
焦っている所為もあるのかも知れないが、とにかくグルグルと思考を巡らせた。
すると、
「あちし思い出したんだち!結界で軽く封印されてる、昨日ライカンスロープ君と戦った神殿の所で外せば良いんだち。あそこなら、ソルフゲイル軍ももう怖くて来ないと思うんだち!」
と、ミカゲはかなり得意げにセレスに提案した。
セレスは何だか、目からウロコがボロボロ落ちている様な顔をして、
「流石だ!ミカゲ!!」
そう言ってミカゲの頭をわしゃわしゃとした。
ミカゲは「てへへー!」と言いながら喜んでいる。
これじゃあ傍から知らない人が見たら、お姉さん風の人が妹風の亜人の子を可愛がっている様にしか見えないが、実際は年齢的には蒼壁の大陸時間では1000年以上もミカゲの方が年上だったりするから、世の中不思議が満載だ。
「そうと決まれば、明日は早朝6時にあの場所で巨大竜化だ!ミカゲはご飯たくさん食べて早く寝よう!」
「まかしとくんだち!」
一気に問題が解決したセレスとミカゲは、先程までの世界が終わりそうなほどに苦悶していた状態から抜け出すと、テーブルの上の料理をガツガツと食べ始めた。
あんなに?数日分はありそうなほどに詰まれていたロールパンも、もう残す所あと2個?と言う状態になっていた。
そんな2人を見ていたグレアラシルは、ミカゲの完全体を見たい様なほのかな願望が湧いてきたが、それ以上にあの時の恐怖感の更に倍を行く恐怖がそこに顕現する事に、想像を絶して言葉を出すのも難しくなっていた。
「そーいやセレス、『アルメイレ』のエルフってもしかして『慟哭の門』を使うあのエルフの事だち?」
ミカゲが何かを思い出してセレスに問いかけた。
「そーだよ、あの人の使う『慟哭の門』が無いと母さん見つけられる訳が無いからね。」
と言って、セレスは自分の皿に取り分けておいた最初の、あのちょっと辛い料理を苦々しい顔をしながら食べていた。
テーブルの上の料理を全て食べつくそうとする2人を見ていたグレアラシルは、不意に出た『慟哭の門』と言う、何だか物騒な名前の「何か」が気になって、セレスに質問した。
「姐さん、その、『慟哭の門』って言うの初めて聞いたんすけど、一体どんなシロモノなんですかね?それが無いとお母さんが探せないって言う事は、何か乗り物とかそう言うのなんすかね?」
セレスは、イイ~所に目を付けたな?と言いたげな顔で、
「そうだ。『慟哭の門』は隣国アルメイレに今は滞在しているであろう、『深淵のエルフ』と呼ばれるエルフが使える特異な能力だ。この能力は、自分のイメージや相手からの情報だけで、一瞬にして目的地に着けると言う便利な能力なんだが・・・」
「凄いっすね!!それがあれば、世界旅行とか全然楽になりますね!!もっと色んな人が使えて便利な世の中になれば~夢が広がりますね!」
と、グレアラシルが少し興奮気味に夢を語る。
しかしセレスは、その夢を打ち砕いて更にミカゲに抱いた以上の恐怖をグレアラシルに叩きつける。
「何だグレ?お前は諸国漫遊の旅が理想なのか?だったらもう少し精神力を鍛えてミカゲに乗せてもらえばイイ。この、『慟哭の門』はそんなに軽々しくて生易しいモンじゃない。まず、『慟哭の門』で移動出来るのはエルフだけまたはエルフの血を引くものだけと相場が決まっていて更に、この『慟哭』が意味する通り、『門』に入っても必ずしも目的地まで無事に辿り着けるとは限らないのさ。」
夢見心地で期待を抱いていたグレアラシルが、更に恐怖感を増すのには十分過ぎる情報をセレスは突きつけた。
「『慟哭の門』には時間の概念が無い。例えば、今日今から入って今から1時間後に目的地に着きたいと思っても、着いたら数百年経っているかも知れないし、逆に数十年前に着く事もある。これは、『門』を操作している『深淵のエルフ』の気分次第とかナントカ~その辺の詳細は忘れたとけど、その時間のズレが今回の母さんの捜索にはかなり必要不可欠でね。」
セレスはため息をつきながらコップに入った青い色の水を飲んだ。
その水は、件のあの氷の魔法がかかった茶葉で淹れた冷茶だった。
「ただ移動したいだけならレイネリー・レイルブルクの竜タクを召喚すればイイんだ。アイツらの気さくな人柄~いや竜柄は気に入っているし結構快適だから乗りたい所だったけど、今回探しに行くのは世界樹の元守護者で、更に特異な能力を持っていると考えられる古のエルフだ。こんな厄介な相手を探しに行くのには、元守護者の姉で『深淵のエルフ』と呼ばれる彼女の持つ『慟哭の門』で探すのが一番手っ取り早くて確実なワケ。」
と言って苦笑いの様な笑みをセレスは浮かべた。
『深淵のエルフ』を尋ねるという事は、つまりセレスの叔母に会いに行くという事になるのだろう。
そしてそれが、何百年なのか?どれ位の月日以来の再開になるのか覚えていない程の、久しぶりの邂逅になるのだった。
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