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第二章 ソラ・ルデ・ビアスの書架とは?
第19話 事の全容
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「さて、二人とも、質問だ。何故ソルフゲイルは大勢の銀狼族を連れて行ったと思う?」
不意にセレスが、話に聞き入っていたコレットとグレアラシルに質問した。
二人は不意打ちを喰らったウサギの様な顔をして、キョトンとする。
「え?ええ?何で連れて行ったか?ですか。そうですね~、膨大な魔力を持っていると言う事なので、その魔力を使って何か怪しい実験をするために連れて行ったのでしょう!」
コレットが自信満々に答える。
セレスは、
「あ、結構当たり!でも、その魔力を使って実験して、一体何をしていた?のかは分からないかな?」
と、目線でグレアラシルに次の答えを求める。
すると、
「俺、ハッキリした事は聞いて居ないんだけど、今のソルフゲイルって高位の軍人には必ず黒竜族って言う人間にも変幻出来る竜族が付き従ってるじゃないですか?でも、黒竜族って元々この蒼壁の大陸に居ない存在だったんですよ。確か。何かの本で読んだか話に聞いたのか忘れたんすけど、何かの実験で生まれた産物っていう説を耳にしたことがありますよ。」
と、グレアラシルは答えた。
セレスは、ちょっとノリノリな感じになって、
「惜しい!!3分の2くらい正解!でもって、コレットの話を合わせると・・・・それが真実だ。」
そう言って、ちょっと険しい表情になった。
「これが・・・・正解?」
急に正解と言われてもピンと来なかったコレットが呟く。
「ええと、つまり、ソルフゲイル軍が銀狼族を大勢連れ去って、その膨大なる魔力を使って黒竜族を生み出した?」
首をかしげながらセレスに問いかける。
険しい表情のセレスが、その表情のまま頷いた。
「そうだ。ソルフゲイルは、自分達に都合の良い様に使役しやすい種族を、銀狼族の魔力を使って創り出したんだ。」
それは、神の領域に踏み込む悪しき所業で、かつ一つの種族を滅びの道に追いやろうとした禁忌だった。
「ソルフゲイルが行った禁忌の術はね、魔界でも禁忌とされている術でね、この蒼壁の大陸のある、この世界の時間で1万年もの昔に、この世界の神と魔界の王が戦った時に堕ちた火の粉から創造されたと言われている魔法なんだ。」
セレスは厳しい顔をしたまま、2杯目のミカゲに注いでもらったお茶を全て飲み干した。
そして、
「その禁忌の魔法はね、世界中の魔導書を所蔵していると言われる天空世界樹の中にある移動図書館に、数千年前に天才魔導司書が本として書き記して保存してあったんだけどね、オヤジが無類の魔導書収集家と言う事もあって、今から300年くらい前にその当時の図書館の司書に頼み込んで、一時期この書架に封印しつつ保管していたのを、ある時ソルフゲイルの魔導士に見つかって。150年くらい前だったか~・・・にそれがまんまと奪われた所為で、あの戦争が起きたと言っても過言では無い・・・・」
と言って、眉間にしわを寄せながら深いため息をついた。
つまり、ソルフゲイルの侵攻は、セレスのお父さんの落ち度で禁忌中の禁忌の魔導書が奪われたことが発端で、ソルフゲイルの怪しい魔道実験魂のヤル気に火を点けてしまい、禁忌を実行するには銀狼族級の魔力がたくさん必要で、当時銀狼族がたくさん住んでいたトトアトエ・テルニアを襲撃した。
と言う事になるのだろう。
あれよあれよと言う間に色んな事実がてんこ盛りで紹介されて行って、コレットとグレアラシルは理解が追い付いていない様子だった。
そんな二人を置き去りにしたままセレスは更に、話を続ける。
「オヤジから禁忌の書を手に入れる事が出来たソルフゲイルの魔道研究所では、それ以降もオヤジの所蔵する本を狙って度々この書架に訪れた。当時この書架には名前も何も無くてね。古い建物を買い取って本の倉庫にしていただけの場所だったんだけど、その頃諸国漫遊から帰ってきたアタシを店長に据えて、このソル・ラデ・ビアスの書架と言う名前を付けた。と言うか、このソル・ラデ・ビアスってオヤジの名前なんだよな~。」
「え!?お父さんのお名前だったんですか?!」
コレットがこの話に食いついて来た。
確かにこの書架の名前はメルヴィレッジではあまり聞かない名前なので、一度覚えたらしばらく忘れ無さそうな名前ではある事は確かだろう。
グレアラシルの方は?と言うと、書架の本棚の方を向いて何やら頭を下げている。
婿志願した事に対して謝っているのか、それとも婿志願を許してくださいと承認を迫っているのかは分からないが、少々悲痛な感じの表情をしていた様だった。
ミカゲは、
「あちしはこの名前反対したんだち!こんな敵にみすみす居場所を知られる様な手は良くない気がするお!って。でも、オヤジさんは全然気にしないでむしろ、この方が目立つしそれに、自分の名前が未来永劫残って良いだろう?って言ったんだち。」
と、昔のやりとりを懐かしむ様に言った。
「で、肝心の嵌めた嵌められたの話だけど、アタシら賞金稼ぎギルドに居る手前、困っている人を見過ごせないタチでね。だから多分コレットをグレアラシルに追わせれば、困っている一般市民の手助けをしようとアタシがしゃしゃり出て来るのを読んでたと踏んで間違いない。グレアラシルの方は、どうせ金払いが良かったんだろう?最近やっすいコソ泥程度の輩しか賞金首に上がってなかったからね~。金髪の人間の少女を追いかけて、この書架の方向に向かわせる算段だったんだろう。で、コレットの見た総務大臣と御三家の密会は、あれは本物だったと思うよ。何かしら総務大臣が御三家と取引したと読んで良いと思う。それとコレットに見せても、特に困らないと言うか、一介の下っ端の魔導士に見られた所で何も出来ないだろう?と踏んで、更に濡れ衣着せてグレアラシルに追わせた。と言うのが今回の騒動の全貌だとアタシは思っているよ。」
セレスは、今回の謎だった嵌めた嵌められたの全容を一気に話すと、また手を組んで伸びをした。
今度は反対側の肩がバキバキ鳴って痛みが発生したらしく、肩を押さえてテーブルに突っ伏した。
不意にセレスが、話に聞き入っていたコレットとグレアラシルに質問した。
二人は不意打ちを喰らったウサギの様な顔をして、キョトンとする。
「え?ええ?何で連れて行ったか?ですか。そうですね~、膨大な魔力を持っていると言う事なので、その魔力を使って何か怪しい実験をするために連れて行ったのでしょう!」
コレットが自信満々に答える。
セレスは、
「あ、結構当たり!でも、その魔力を使って実験して、一体何をしていた?のかは分からないかな?」
と、目線でグレアラシルに次の答えを求める。
すると、
「俺、ハッキリした事は聞いて居ないんだけど、今のソルフゲイルって高位の軍人には必ず黒竜族って言う人間にも変幻出来る竜族が付き従ってるじゃないですか?でも、黒竜族って元々この蒼壁の大陸に居ない存在だったんですよ。確か。何かの本で読んだか話に聞いたのか忘れたんすけど、何かの実験で生まれた産物っていう説を耳にしたことがありますよ。」
と、グレアラシルは答えた。
セレスは、ちょっとノリノリな感じになって、
「惜しい!!3分の2くらい正解!でもって、コレットの話を合わせると・・・・それが真実だ。」
そう言って、ちょっと険しい表情になった。
「これが・・・・正解?」
急に正解と言われてもピンと来なかったコレットが呟く。
「ええと、つまり、ソルフゲイル軍が銀狼族を大勢連れ去って、その膨大なる魔力を使って黒竜族を生み出した?」
首をかしげながらセレスに問いかける。
険しい表情のセレスが、その表情のまま頷いた。
「そうだ。ソルフゲイルは、自分達に都合の良い様に使役しやすい種族を、銀狼族の魔力を使って創り出したんだ。」
それは、神の領域に踏み込む悪しき所業で、かつ一つの種族を滅びの道に追いやろうとした禁忌だった。
「ソルフゲイルが行った禁忌の術はね、魔界でも禁忌とされている術でね、この蒼壁の大陸のある、この世界の時間で1万年もの昔に、この世界の神と魔界の王が戦った時に堕ちた火の粉から創造されたと言われている魔法なんだ。」
セレスは厳しい顔をしたまま、2杯目のミカゲに注いでもらったお茶を全て飲み干した。
そして、
「その禁忌の魔法はね、世界中の魔導書を所蔵していると言われる天空世界樹の中にある移動図書館に、数千年前に天才魔導司書が本として書き記して保存してあったんだけどね、オヤジが無類の魔導書収集家と言う事もあって、今から300年くらい前にその当時の図書館の司書に頼み込んで、一時期この書架に封印しつつ保管していたのを、ある時ソルフゲイルの魔導士に見つかって。150年くらい前だったか~・・・にそれがまんまと奪われた所為で、あの戦争が起きたと言っても過言では無い・・・・」
と言って、眉間にしわを寄せながら深いため息をついた。
つまり、ソルフゲイルの侵攻は、セレスのお父さんの落ち度で禁忌中の禁忌の魔導書が奪われたことが発端で、ソルフゲイルの怪しい魔道実験魂のヤル気に火を点けてしまい、禁忌を実行するには銀狼族級の魔力がたくさん必要で、当時銀狼族がたくさん住んでいたトトアトエ・テルニアを襲撃した。
と言う事になるのだろう。
あれよあれよと言う間に色んな事実がてんこ盛りで紹介されて行って、コレットとグレアラシルは理解が追い付いていない様子だった。
そんな二人を置き去りにしたままセレスは更に、話を続ける。
「オヤジから禁忌の書を手に入れる事が出来たソルフゲイルの魔道研究所では、それ以降もオヤジの所蔵する本を狙って度々この書架に訪れた。当時この書架には名前も何も無くてね。古い建物を買い取って本の倉庫にしていただけの場所だったんだけど、その頃諸国漫遊から帰ってきたアタシを店長に据えて、このソル・ラデ・ビアスの書架と言う名前を付けた。と言うか、このソル・ラデ・ビアスってオヤジの名前なんだよな~。」
「え!?お父さんのお名前だったんですか?!」
コレットがこの話に食いついて来た。
確かにこの書架の名前はメルヴィレッジではあまり聞かない名前なので、一度覚えたらしばらく忘れ無さそうな名前ではある事は確かだろう。
グレアラシルの方は?と言うと、書架の本棚の方を向いて何やら頭を下げている。
婿志願した事に対して謝っているのか、それとも婿志願を許してくださいと承認を迫っているのかは分からないが、少々悲痛な感じの表情をしていた様だった。
ミカゲは、
「あちしはこの名前反対したんだち!こんな敵にみすみす居場所を知られる様な手は良くない気がするお!って。でも、オヤジさんは全然気にしないでむしろ、この方が目立つしそれに、自分の名前が未来永劫残って良いだろう?って言ったんだち。」
と、昔のやりとりを懐かしむ様に言った。
「で、肝心の嵌めた嵌められたの話だけど、アタシら賞金稼ぎギルドに居る手前、困っている人を見過ごせないタチでね。だから多分コレットをグレアラシルに追わせれば、困っている一般市民の手助けをしようとアタシがしゃしゃり出て来るのを読んでたと踏んで間違いない。グレアラシルの方は、どうせ金払いが良かったんだろう?最近やっすいコソ泥程度の輩しか賞金首に上がってなかったからね~。金髪の人間の少女を追いかけて、この書架の方向に向かわせる算段だったんだろう。で、コレットの見た総務大臣と御三家の密会は、あれは本物だったと思うよ。何かしら総務大臣が御三家と取引したと読んで良いと思う。それとコレットに見せても、特に困らないと言うか、一介の下っ端の魔導士に見られた所で何も出来ないだろう?と踏んで、更に濡れ衣着せてグレアラシルに追わせた。と言うのが今回の騒動の全貌だとアタシは思っているよ。」
セレスは、今回の謎だった嵌めた嵌められたの全容を一気に話すと、また手を組んで伸びをした。
今度は反対側の肩がバキバキ鳴って痛みが発生したらしく、肩を押さえてテーブルに突っ伏した。
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