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第一章 ライカンスロープとの決戦
第9話 力の解放
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グレアラシルが魔法陣に届きそう?に近づくと、先程セレスが仕掛けた魔法がグレアラシルに直撃した。
中空から多数の魔法の矢が標的の敵に当たる様な仕組みになっていて、どんなにグレアラシルが別の方向に逃れようとしても、一度標的設定をしてしまうと当たるまで永遠に追いかけていく?様な魔法の様だった。
「これは凄いですねー!この魔法があれば色んな戦闘で楽になりそうです!」
セレスの背後でこの光景を見て居たコレットは、自分の身にそろそろ危険が迫って来ていると言うのに全くその状況を把握する事無く、魔法の展開を楽しんでいる様だった。
多分こんな感じで普段から、無防備が定着してしまって居るからコレットは稚拙な策略に嵌められたのだろう~と、セレスは思った。
そして更に、グレアラシル自体も何らかの策略に嵌められ居ている可能性が高い事をセレスは読んでいた。
「セレス~だいじょぶ?」
魔法の矢に逃げ惑うグレアラシルの隙をついて、ミカゲがヤツの背後から蹴り倒す。
先程までの一糸乱れぬ攻防から一転して、一方的にミカゲの優勢状況が確立した。
「それ位にしておいてやれ、ソイツは結構ヤワな存在だ。」
とセレスが言うとミカゲは、
「そだな、あんまりあちしが遊ぶとコイツ、死んじゃうもんな!」
と言って、グレアラシルの両手を掴み、後ろに回そうとした。
その瞬間!ほんの一瞬のミカゲの隙をついて、今度はグレアラシルがミカゲに蹴りを喰らわす。
ミカゲの小さな身体は、まるで子供の遊ぶ毬の様に地面を何度も弾んで、かなり遠くまで飛ばされてしまった。
「ミカゲ!!」
コレットはミカゲの状態を心配して叫ぶ。
しかしまたセレスは、落ち着き払ってのほほん~としている。
「どうしてミカゲを心配しないんですか?!」
コレットはセレスに詰め寄るが、
「まぁまぁまぁまぁまぁ、落ち着いて。分かった分かった。どうしてアタシが落ち着き払っているのか?の証拠を、これから見せようじゃないか!」
と言ってセレスは、ようやく重たい腰を上げる。
そして立ち上がると、
「おーい!ミカゲ、もちろん大丈夫だと思うけど、この際だから1個角の拘束具解除してイイよ~~!」
と、ミカゲに言い放った。
するとミカゲは、何事も無かったかの様にヒョイっと立ち上がって、とどめを刺さんと近寄ってくるグレアラシルに向き合った。
そして、セレスの指示にあった通り、左側の角の根元にハマっている金属の、一見するとアクセサリーの様にも見える金属の輪っかの拘束具を外して地面に投げ捨てた。
地面に落ちた拘束具は、ズシン!と重い音をさせながら沈み込む。
その光景は、相当な重さのある金属がそこに投げ捨てられた?と言う印象を、その場にいた全員が認識する事となった。
先に口を開いたのは意外にもグレアラシルだった。
「おい・・・・この金属、一体何スウォン(kgの事)あるんだ?」
先にコレットの方が口を開くと思っていたセレスには、予想外の方向からの言葉に笑いを押さえるのが難しくなっていた。
「あっはっははははは!まさかお前から重さについて質問されるとはな!」
と言って笑いを抑えない。
グレアラシルの方は?と言うと、
「イイから教えろ!」
と言って地団駄を踏んでいる。
セレスが、やれやれ・・・・と言った風に答えを教えようとすると、グレアラシルの背後から答えが聞こえた。
「片方で300スオンだ。両方だと600スオン、でもって、全身を外すと3600スオンだお。」
にこやかに笑いながら自らに装着されている拘束具の総重量を答えるミカゲからは、先程までの無邪気さは無く、笑っているにもかかわらず目は全く笑っていなくて、グレアラシルの心の奥底をのぞき込んでいる様な視線を向けている。
そして、その小さな身体からは、この世で最も最強の種族にしか纏えない空気が滲み出ていた。
「はいはいはいはい!グレ!そこまで!!コレットを追いかけるのもココまで!」
パンパンと手を叩きながらセレスが魔法陣から1歩出る。
不意にグレ!と呼ばれてカチンと来ていたグレアラシルが今度はセレスに掴みかかろうとすると、ほんのさっきまでグレアラシルの後方に飛ばされた位置で佇んでいたミカゲがもう、いつの間にかセレスの前に立っていた。
「セレスに近づくな。」
王者の風格すら漂うミカゲの気配に慄いたグレアラシルは、1歩2歩と後ろに下がった。
「ヒィィィイ!おいセレス!そのガキ一体何者なんだ?!」
もはやあの、コレットを恐れさせたライカンスロープの男に戦意は残っていなかった。
「まぁまぁまぁまぁ、とりあえず皆、礼拝堂の中に入るんだ。」
セレスの言葉に、その場にいた全員が疑問を抱いた視線を投げかける。
そのうち一人だけ、ミカゲだけは疑問を解いて耳を傾ける。
耳の奥には、これからこの地にやってくる軍勢の足音がした。
「セレスぅ、ソルフゲイル軍が100人位ココに、あと10分もしたらやってくるよ~。」
と、気の抜けた声でミカゲが言った。
「ソルフゲイル軍だって?!オレの雇い主だぜ!!」
意気揚々とグレアラシルが言う。
「馬鹿だね!この男は、お前がコレットを追う様に指示されたのは、お前を嵌めて更にアタシをあぶりだす為なんだよ!!」
とセレスは言いながら、男の腹を殴った。
グレアラシルは咄嗟の事で受け身を取れなかったのか、ゲフっ!っと咳きこんだ。
「セレスさんをあぶり出すため?それってどう言う事ですか?」
コレットがセレスに問いかけると、上空から月の光が降り注ぐ・・・・
気が付くと、先程までの曇り空が晴れ、二つの月の満月の姿が露わになっていた。
「ああああ!!見ないでくれーーー!!!」
そんな中一人、グレアラシルだけが月の光から逃れようと遺跡の礼拝堂に走って行った。
中空から多数の魔法の矢が標的の敵に当たる様な仕組みになっていて、どんなにグレアラシルが別の方向に逃れようとしても、一度標的設定をしてしまうと当たるまで永遠に追いかけていく?様な魔法の様だった。
「これは凄いですねー!この魔法があれば色んな戦闘で楽になりそうです!」
セレスの背後でこの光景を見て居たコレットは、自分の身にそろそろ危険が迫って来ていると言うのに全くその状況を把握する事無く、魔法の展開を楽しんでいる様だった。
多分こんな感じで普段から、無防備が定着してしまって居るからコレットは稚拙な策略に嵌められたのだろう~と、セレスは思った。
そして更に、グレアラシル自体も何らかの策略に嵌められ居ている可能性が高い事をセレスは読んでいた。
「セレス~だいじょぶ?」
魔法の矢に逃げ惑うグレアラシルの隙をついて、ミカゲがヤツの背後から蹴り倒す。
先程までの一糸乱れぬ攻防から一転して、一方的にミカゲの優勢状況が確立した。
「それ位にしておいてやれ、ソイツは結構ヤワな存在だ。」
とセレスが言うとミカゲは、
「そだな、あんまりあちしが遊ぶとコイツ、死んじゃうもんな!」
と言って、グレアラシルの両手を掴み、後ろに回そうとした。
その瞬間!ほんの一瞬のミカゲの隙をついて、今度はグレアラシルがミカゲに蹴りを喰らわす。
ミカゲの小さな身体は、まるで子供の遊ぶ毬の様に地面を何度も弾んで、かなり遠くまで飛ばされてしまった。
「ミカゲ!!」
コレットはミカゲの状態を心配して叫ぶ。
しかしまたセレスは、落ち着き払ってのほほん~としている。
「どうしてミカゲを心配しないんですか?!」
コレットはセレスに詰め寄るが、
「まぁまぁまぁまぁまぁ、落ち着いて。分かった分かった。どうしてアタシが落ち着き払っているのか?の証拠を、これから見せようじゃないか!」
と言ってセレスは、ようやく重たい腰を上げる。
そして立ち上がると、
「おーい!ミカゲ、もちろん大丈夫だと思うけど、この際だから1個角の拘束具解除してイイよ~~!」
と、ミカゲに言い放った。
するとミカゲは、何事も無かったかの様にヒョイっと立ち上がって、とどめを刺さんと近寄ってくるグレアラシルに向き合った。
そして、セレスの指示にあった通り、左側の角の根元にハマっている金属の、一見するとアクセサリーの様にも見える金属の輪っかの拘束具を外して地面に投げ捨てた。
地面に落ちた拘束具は、ズシン!と重い音をさせながら沈み込む。
その光景は、相当な重さのある金属がそこに投げ捨てられた?と言う印象を、その場にいた全員が認識する事となった。
先に口を開いたのは意外にもグレアラシルだった。
「おい・・・・この金属、一体何スウォン(kgの事)あるんだ?」
先にコレットの方が口を開くと思っていたセレスには、予想外の方向からの言葉に笑いを押さえるのが難しくなっていた。
「あっはっははははは!まさかお前から重さについて質問されるとはな!」
と言って笑いを抑えない。
グレアラシルの方は?と言うと、
「イイから教えろ!」
と言って地団駄を踏んでいる。
セレスが、やれやれ・・・・と言った風に答えを教えようとすると、グレアラシルの背後から答えが聞こえた。
「片方で300スオンだ。両方だと600スオン、でもって、全身を外すと3600スオンだお。」
にこやかに笑いながら自らに装着されている拘束具の総重量を答えるミカゲからは、先程までの無邪気さは無く、笑っているにもかかわらず目は全く笑っていなくて、グレアラシルの心の奥底をのぞき込んでいる様な視線を向けている。
そして、その小さな身体からは、この世で最も最強の種族にしか纏えない空気が滲み出ていた。
「はいはいはいはい!グレ!そこまで!!コレットを追いかけるのもココまで!」
パンパンと手を叩きながらセレスが魔法陣から1歩出る。
不意にグレ!と呼ばれてカチンと来ていたグレアラシルが今度はセレスに掴みかかろうとすると、ほんのさっきまでグレアラシルの後方に飛ばされた位置で佇んでいたミカゲがもう、いつの間にかセレスの前に立っていた。
「セレスに近づくな。」
王者の風格すら漂うミカゲの気配に慄いたグレアラシルは、1歩2歩と後ろに下がった。
「ヒィィィイ!おいセレス!そのガキ一体何者なんだ?!」
もはやあの、コレットを恐れさせたライカンスロープの男に戦意は残っていなかった。
「まぁまぁまぁまぁ、とりあえず皆、礼拝堂の中に入るんだ。」
セレスの言葉に、その場にいた全員が疑問を抱いた視線を投げかける。
そのうち一人だけ、ミカゲだけは疑問を解いて耳を傾ける。
耳の奥には、これからこの地にやってくる軍勢の足音がした。
「セレスぅ、ソルフゲイル軍が100人位ココに、あと10分もしたらやってくるよ~。」
と、気の抜けた声でミカゲが言った。
「ソルフゲイル軍だって?!オレの雇い主だぜ!!」
意気揚々とグレアラシルが言う。
「馬鹿だね!この男は、お前がコレットを追う様に指示されたのは、お前を嵌めて更にアタシをあぶりだす為なんだよ!!」
とセレスは言いながら、男の腹を殴った。
グレアラシルは咄嗟の事で受け身を取れなかったのか、ゲフっ!っと咳きこんだ。
「セレスさんをあぶり出すため?それってどう言う事ですか?」
コレットがセレスに問いかけると、上空から月の光が降り注ぐ・・・・
気が付くと、先程までの曇り空が晴れ、二つの月の満月の姿が露わになっていた。
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