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第11話 彼の名は
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後からルーカスとテオが走ってきた。
シャロン様の護衛は、森でルーカスとテオに剣を教えてくれていたらしい。
助かった。
大声で叫んでよかった。
人さらいも、まさか貴族令嬢が辺りに響き渡る金切り声で叫ぶとは、想像もしなかっただろう。
安心した私は、その場にフラフラと座りこんでしまった。
こ、こわかった~。
涙がじんわりと滲んでくる。
魔法が使えるとはいえ、大柄の男性三人に囲まれ連れ去られそうになったのだ。
体が震える。
ルーカスが傍に来て、私を立たせてくれようとする。
ダメだ、足に力が入らない。
私を助けてくれた護衛の彼が、私を抱えあげ、運んでくれる。
少しすると、ようやく落ち着いてきた。
「ありがとうございました。あなたのお陰で助かりました。お名前を教えていたたけませんか?」と、初めて名前を聞く。
無口な、シャロン様の護衛。
今まで挨拶くらいしか交わしたことがなかった。
少しの間があった後、
「レオンだ。」と名乗ってくれた。
抱えられたまま、彼の顔を見上げる。
あまりの距離の近さにドキドキ。
彼をじっと観察していると、顔を反らされた。
栗色の柔らかそうな髪。
意志の強そうなそれでいて端正な顔。
しっかりと鍛えられた体つき。
そういえば、今まで意識したことがなかったな。
かなり私の好みである。
リーゼは10歳でアランと婚約していた。
ずっと婚約者がいた為、回りの男性をそういった目では見ていなかった。
いや、見ないように心がけていた。
リーゼはレオンのことをそういった目で見てしまった。
笑わない彼、彼の笑顔が見てみたい。
リーゼはそう思ってしまった。
後日聞いたことだが、ランスも大きな怪我はなく、無事だった。
私が運ばれた後、テオが応援を呼びに走り、レオンが倒していた人さらいたちは、無事に捕まったそうだ。
これで嫌がらせの犯人が明らかになる。
予想していたフォックス男爵ではなく、黒幕は、ラックス侯爵だった。
まさに恩を仇で返された形だ。
ラックス侯爵は、エッセン伯爵家が没落するだろうからと見限り、支援することなく縁を切った。
そして今勢いのあるフォックス男爵家との縁を結んだのである。
もちろんそれは、子息子女であるアランとアリスの望むところでもあった。
そこにクリード辺境伯家がエッセン伯爵家の支援に現れた。
フォックス男爵が悪事を働いたのではとの噂が、ご婦人方から広がりつつある。
立場を失ったラックス侯爵。
あちこち歩き回るリーゼに目をつけたのだろう。
危なかった。
シャロン様の護衛は、森でルーカスとテオに剣を教えてくれていたらしい。
助かった。
大声で叫んでよかった。
人さらいも、まさか貴族令嬢が辺りに響き渡る金切り声で叫ぶとは、想像もしなかっただろう。
安心した私は、その場にフラフラと座りこんでしまった。
こ、こわかった~。
涙がじんわりと滲んでくる。
魔法が使えるとはいえ、大柄の男性三人に囲まれ連れ去られそうになったのだ。
体が震える。
ルーカスが傍に来て、私を立たせてくれようとする。
ダメだ、足に力が入らない。
私を助けてくれた護衛の彼が、私を抱えあげ、運んでくれる。
少しすると、ようやく落ち着いてきた。
「ありがとうございました。あなたのお陰で助かりました。お名前を教えていたたけませんか?」と、初めて名前を聞く。
無口な、シャロン様の護衛。
今まで挨拶くらいしか交わしたことがなかった。
少しの間があった後、
「レオンだ。」と名乗ってくれた。
抱えられたまま、彼の顔を見上げる。
あまりの距離の近さにドキドキ。
彼をじっと観察していると、顔を反らされた。
栗色の柔らかそうな髪。
意志の強そうなそれでいて端正な顔。
しっかりと鍛えられた体つき。
そういえば、今まで意識したことがなかったな。
かなり私の好みである。
リーゼは10歳でアランと婚約していた。
ずっと婚約者がいた為、回りの男性をそういった目では見ていなかった。
いや、見ないように心がけていた。
リーゼはレオンのことをそういった目で見てしまった。
笑わない彼、彼の笑顔が見てみたい。
リーゼはそう思ってしまった。
後日聞いたことだが、ランスも大きな怪我はなく、無事だった。
私が運ばれた後、テオが応援を呼びに走り、レオンが倒していた人さらいたちは、無事に捕まったそうだ。
これで嫌がらせの犯人が明らかになる。
予想していたフォックス男爵ではなく、黒幕は、ラックス侯爵だった。
まさに恩を仇で返された形だ。
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そして今勢いのあるフォックス男爵家との縁を結んだのである。
もちろんそれは、子息子女であるアランとアリスの望むところでもあった。
そこにクリード辺境伯家がエッセン伯爵家の支援に現れた。
フォックス男爵が悪事を働いたのではとの噂が、ご婦人方から広がりつつある。
立場を失ったラックス侯爵。
あちこち歩き回るリーゼに目をつけたのだろう。
危なかった。
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