【完結】落ちぶれてやるものか!伯爵令嬢、銭湯始めます。

青井 海

文字の大きさ
上 下
2 / 18

第2話 婚約破棄

しおりを挟む
突然、婚約破棄を告げられた私。
訳がわからない。
私の祖父が、事業で失敗して困っていた彼の祖父を助けたことで、繋がった縁。

10歳で婚約したラックス侯爵家 嫡男のアランとエッセン伯爵家 長女の私。
私たちの意志とは無関係。
3年前、我が家に跡継ぎとなる嫡男が産まれ、私が後を継ぐ必要がなくなった。
彼の祖父が、私の祖父への恩を返す為に結ばれた、完全なる政略であった。

初めての顔合わせ。
当時10歳だった私は、今よりもっと人見知りだった。
緊張して、恥ずかしくて…
うつむき、何も話せない私。

2歳上の彼は、優しく微笑み、話しかけてくれた。
柔らかそうな光輝く金色の髪。
透き通るような青い瞳に目を奪われる。

政略で結ばれた婚約ではあるが、定期的に互いの家を訪れ、良好な関係を育んできた。
少なくとも私は、そう思っていた。

「リーゼ、君はもっと理知的な人だと思っていた。どうも違ったようだ。
アリスをいじめたそうだな。かわいそうに、アリスは泣いていたぞ。
僕は君とは結婚できない。婚約は破棄させてもらう。」
アランが勢いよく告げる。

「これが書類だ。サインをして送り返してくれ。」と書類を差し出す彼。

アリスをいじめた?
男爵令嬢アリス・フォックス。
我が家を陥れたフォックス男爵の娘。
男爵には文句の一つでも言わないと気が済まないが、娘のアリスと私には接点がない。

もちろん会ったこともない。
とても愛らしい女性だと、噂で聞いたことがあるだけだ。

「何かの間違いです。私は会ったこともありません。」
震える声で、なんとか伝える。

借金を抱えた我が家。
いよいよ爵位を返上するのではとの噂が流れ始めている。
こんな時に、私の婚約が破棄されたら…侯爵家からの支援が見込めない。
不安でどうしようもない。

何とか書類を受け取ろうと、彼に近寄る。
「僕に近寄るな。」
何を勘違いしたのか、私が追いすがるとでも思ったのか、近づいた私をドンと押した彼。

ちょうどそこには、最後まで売るのを躊躇っていた大量の書物が積み上げられていた。
そこに私の肩が当たる。
ドサドサドサーと大きな音を立てながら、上から本が降ってくる。
「キャー。」
咄嗟に、頭を抱え、座り込む私。

侍女のマーサが、走ってくる。
「おじょうさまー。」
あと一歩のところで間に合わない。

私の叫び声を聞き付けた母が、慌ててやってきた。
「リーゼ、リーゼ。」
本に埋もれた私に気付き、かけ寄ってくる。

そんな中、大事になったと恐れをなしたアラン。
「僕は知らない。リーゼが悪いんだ。」と言葉を残し、彼は走り去ってしまった。

テーブルの上には、婚約破棄の書類だけが残っていた。








    
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】転生地味悪役令嬢は婚約者と男好きヒロイン諸共無視しまくる。

なーさ
恋愛
アイドルオタクの地味女子 水上羽月はある日推しが轢かれそうになるのを助けて死んでしまう。そのことを不憫に思った女神が「あなた、可哀想だから転生!」「え?」なんの因果か異世界に転生してしまう!転生したのは地味な公爵令嬢レフカ・エミリーだった。目が覚めると私の周りを大人が囲っていた。婚約者の第一王子も男好きヒロインも無視します!今世はうーん小説にでも生きようかな〜と思ったらあれ?あの人は前世の推しでは!?地味令嬢のエミリーが知らず知らずのうちに戦ったり溺愛されたりするお話。 本当に駄文です。そんなものでも読んでお気に入り登録していただけたら嬉しいです!

リリィ=ブランシュはスローライフを満喫したい!~追放された悪役令嬢ですが、なぜか皇太子の胃袋をつかんでしまったようです~

汐埼ゆたか
恋愛
伯爵令嬢に転生したリリィ=ブランシュは第四王子の許嫁だったが、悪女の汚名を着せられて辺境へ追放された。 ――というのは表向きの話。 婚約破棄大成功! 追放万歳!!  辺境の地で、前世からの夢だったスローライフに胸躍らせるリリィに、新たな出会いが待っていた。 ▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃ リリィ=ブランシュ・ル・ベルナール(19) 第四王子の元許嫁で転生者。 悪女のうわさを流されて、王都から去る   × アル(24) 街でリリィを助けてくれたなぞの剣士 三食おやつ付きで臨時護衛を引き受ける ▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃┄▸◂┄▹◃ 「さすが稀代の悪女様だな」 「手玉に取ってもらおうか」 「お手並み拝見だな」 「あのうわさが本物だとしたら、アルはどうしますか?」 ********** ※他サイトからの転載。 ※表紙はイラストAC様からお借りした画像を加工しております。

婚約破棄で命拾いした令嬢のお話 ~本当に助かりましたわ~

華音 楓
恋愛
シャルロット・フォン・ヴァーチュレストは婚約披露宴当日、謂れのない咎により結婚破棄を通達された。 突如襲い来る隣国からの8万の侵略軍。 襲撃を受ける元婚約者の領地。 ヴァーチュレスト家もまた存亡の危機に!! そんな数奇な運命をたどる女性の物語。 いざ開幕!!

【完結】婚約破棄されたので田舎に引きこもったら、冷酷宰相に執着されました

21時完結
恋愛
王太子の婚約者だった侯爵令嬢エリシアは、突然婚約破棄を言い渡された。 理由は「平凡すぎて、未来の王妃には相応しくない」から。 (……ええ、そうでしょうね。私もそう思います) 王太子は社交的な女性が好みで、私はひたすら目立たないように生きてきた。 当然、愛されるはずもなく――むしろ、やっと自由になれたとホッとするくらい。 「王都なんてもう嫌。田舎に引きこもります!」 貴族社会とも縁を切り、静かに暮らそうと田舎の領地へ向かった。 だけど―― 「こんなところに隠れるとは、随分と手こずらせてくれたな」 突然、冷酷無慈悲と噂される宰相レオンハルト公爵が目の前に現れた!? 彼は王国の実質的な支配者とも言われる、権力者中の権力者。 そんな人が、なぜか私に執着し、どこまでも追いかけてくる。 「……あの、何かご用でしょうか?」 「決まっている。お前を迎えに来た」 ――え? どういうこと? 「王太子は無能だな。手放すべきではないものを、手放した」 「……?」 「だから、その代わりに 私がもらう ことにした」 (いや、意味がわかりません!!) 婚約破棄されて平穏に暮らすはずが、 なぜか 冷酷宰相に執着されて逃げられません!?

踏み台令嬢はへこたれない

IchikoMiyagi
恋愛
「婚約破棄してくれ!」  公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。  春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。  そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?  これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。 「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」  ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。  なろうでも投稿しています。

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

悪役令嬢は婚約破棄され、転生ヒロインは逆ハーを狙って断罪されました。

まなま
恋愛
悪役令嬢は婚約破棄され、転生ヒロインは逆ハーを狙って断罪されました。 様々な思惑に巻き込まれた可哀想な皇太子に胸を痛めるモブの公爵令嬢。 少しでも心が休まれば、とそっと彼に話し掛ける。 果たして彼は本当に落ち込んでいたのか? それとも、銀のうさぎが罠にかかるのを待っていたのか……?

婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。

国樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。 声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。 愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。 古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。 よくある感じのざまぁ物語です。 ふんわり設定。ゆるーくお読みください。

処理中です...