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第16話 イーサン様って
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イーサンの言葉に甘え、寮の前まで送ってもらうことにした。
実験室がずらり並ぶ廊下を二人で歩く。
廊下の窓から見える外は薄暗い。
寮の夕飯時間に間に合うだろうか……
「ミルローズ、夕飯は大丈夫か?寮の食事時間に間に合わないようなら、今から食べに行くか?」
「いえ、夕飯時間に間に合うと思います。送ってくださり、ありがとうございます。おやすみなさい」
「ん? ああ、おやすみ」
暗いからおやすみなさいと挨拶したけれど、おかしかった?
なんだかあのイーサンが戸惑っていたような……
そのまま寮内の食堂へ向かうと、洗い物をしていたスペンサーさんが顔をあげた。
「お疲れさま。夕飯は簡単なものでいいかな?もう片付け始めてて」
「まだここで食べて大丈夫ですか?ご迷惑なら外へ行こうかと……」
「今から外へ?デートならいいのだが、女性だけなら危ないからやめときな。今からまかない作って食べようと思ってるから、同じものでいいか?」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあ、座って待ってな」
スペンサーさんが手早く調理していく。
目の前に置かれたのは、具だくさんのオムレツ。
プルンと揺れて、美味しそう。
オムレツの横には、木の実が入ったパン。
ふわふわのオムレツはとっても美味しい!
しっかり完食し、スペンサーさんへお礼を伝えた後、部屋へと戻る。
部屋に入った途端、ナタリア、スーザン、エマがカーテンを開け、ベッドから出てきた。
「「「おかえり!」」」
「ずいぶん遅かったね」とナタリア。
「夕飯は間に合った?」とスーザン。
「何してたの?」とエマ。
怒涛の質問責めで、あたふたしてしまう。
「はうっ、夕飯は寮で、さっき食べたよ。実験で遅くなったんだ」
「実験ってことは、イーサン様と一緒だったんだよね? こんな時間に一人で帰って危な……あー、もしかして送ってもらった?」
「うん、遅くなって危ないからって」
「へぇ~」と意味ありげな視線のナタリア。
「あのイーサン様が?」引き気味なスーザン。
「ふう~ん、なんかすごいね」とエマ。
三人とも驚いてるというか、若干ひかれているというか……反応がなんだか気になる。
「なんかすごいねって?彼が実験対象を送るのって珍しい?」
「はぁー、ミルローズってば、何も知らないんだね。ああ、実験室へ行ってることが多かったから、先輩たちの話を聞いてないのか~」
スーザンが一人納得してる。
ナタリアが仕方ないな~って感じで教えてくれる。
「イーサン様はね、第八王子。お母様の身分が低いこと本人の魔力が高いことから、王位継承権を放棄して、魔術師の塔で働いてるらしいよ。
キレイな顔立ちに実力もあるから、影ながら人気なのよ。でも目つきが鋭くて近寄りがたいでしょ?だからか今まで恋の噂もないんだって。そんな中、毎日 ミルローズを呼びに来るものだから、話題になってるわよ」
「呼びに来るって、実験の為で……」
「そうかもしれないけど、あんな優しげな瞳のイーサン様は、ミルローズの前だけよ。あなたに心を許してるのは確かだと思う」エマの言葉に、びっくりする。
「あとは……オーブン事件の犯人は、マウルさんだって。彼はそれで一ヶ月謹慎だったそうよ。彼、失恋の腹いせにちょっとしたイタズラのつもりがやり過ぎたらしいの」
ナタリアは頬染め、何かを思い出しながら話しているみたい。
「ナタリア、やけに詳しいんだね。もしかしてマウルさんに聞いた?」
「うん、実は休み時間にマウルさんが来てね、彼、事件のことをみんなに謝罪しに来たの。そして、当時のことを聞きたいと……ミルローズは不在だったから私が代わりに説明を求められたんだ」
「ナタリアったら、真っ赤になっちゃってかわいいー。マウルさんも今はフリーなんだよね?」スーザンが茶化した。
「いいなぁ、ミルローズもナタリアも素敵な魔術師様と仲良くなって、私も頑張らなきゃ」
エマったら、手を握りしめて気合い入れてる。
その夜は、魔術師様の話や恋の話でキャーキャー盛り上がった。
***
休日がやってきて、またナタリアと二人で、公園へ来ている。
モクモクとした力強い雲が広がり、暑さが厳しい季節だ。
今日もまたフィンに引っ張られるように、ドリューさんが現れた。
「今日は暑いね、うちの近所に美味しいアイスクリームの店があるんだ。今から行かない?」
アイスクリームは寮のデザートにもない。
食べたいな~とナタリアを見ると、彼女も頷き、ニッコリ笑った。
「「行きたいっ!」」
「よかった。じゃ、案内するよ」
ナタリアと二人、ドリューさんについていく。
フィンを連れては店に入れないので、私がフィンを預かり、ドリューさんとナタリアがアイスを買ってきてくれた。
クリーム色の滑らかなアイスがワッフルコーンに入ってる。
ドリューさんにリードを渡し、ついていく。
店の斜め向かいの邸宅が彼の家だった。
ドリューさん家の敷地の庭には、屋根がかかるテーブルとイスが置かれた場所があり、照りさかる陽を遮ってくれるだけでもかなり過ごしやすい。
日陰のイスに座ってアイスを食べる。
「このアイス、濃厚で美味しい!」
「コーンもサクサクでいいね!」
ナタリアとともにアイスの美味しさに感動する。
「美味しいでしょ? きっと気に入ると思ってたんだ」
ドリューさんは得意気だ。
「あれ? こんにちは。ドリュー、外は暑いし、うちにあがってもらったら?」
マウルさんが現れた。
あー、そっか。
ここはマウルさんの家でもあるのか。
実験室がずらり並ぶ廊下を二人で歩く。
廊下の窓から見える外は薄暗い。
寮の夕飯時間に間に合うだろうか……
「ミルローズ、夕飯は大丈夫か?寮の食事時間に間に合わないようなら、今から食べに行くか?」
「いえ、夕飯時間に間に合うと思います。送ってくださり、ありがとうございます。おやすみなさい」
「ん? ああ、おやすみ」
暗いからおやすみなさいと挨拶したけれど、おかしかった?
なんだかあのイーサンが戸惑っていたような……
そのまま寮内の食堂へ向かうと、洗い物をしていたスペンサーさんが顔をあげた。
「お疲れさま。夕飯は簡単なものでいいかな?もう片付け始めてて」
「まだここで食べて大丈夫ですか?ご迷惑なら外へ行こうかと……」
「今から外へ?デートならいいのだが、女性だけなら危ないからやめときな。今からまかない作って食べようと思ってるから、同じものでいいか?」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあ、座って待ってな」
スペンサーさんが手早く調理していく。
目の前に置かれたのは、具だくさんのオムレツ。
プルンと揺れて、美味しそう。
オムレツの横には、木の実が入ったパン。
ふわふわのオムレツはとっても美味しい!
しっかり完食し、スペンサーさんへお礼を伝えた後、部屋へと戻る。
部屋に入った途端、ナタリア、スーザン、エマがカーテンを開け、ベッドから出てきた。
「「「おかえり!」」」
「ずいぶん遅かったね」とナタリア。
「夕飯は間に合った?」とスーザン。
「何してたの?」とエマ。
怒涛の質問責めで、あたふたしてしまう。
「はうっ、夕飯は寮で、さっき食べたよ。実験で遅くなったんだ」
「実験ってことは、イーサン様と一緒だったんだよね? こんな時間に一人で帰って危な……あー、もしかして送ってもらった?」
「うん、遅くなって危ないからって」
「へぇ~」と意味ありげな視線のナタリア。
「あのイーサン様が?」引き気味なスーザン。
「ふう~ん、なんかすごいね」とエマ。
三人とも驚いてるというか、若干ひかれているというか……反応がなんだか気になる。
「なんかすごいねって?彼が実験対象を送るのって珍しい?」
「はぁー、ミルローズってば、何も知らないんだね。ああ、実験室へ行ってることが多かったから、先輩たちの話を聞いてないのか~」
スーザンが一人納得してる。
ナタリアが仕方ないな~って感じで教えてくれる。
「イーサン様はね、第八王子。お母様の身分が低いこと本人の魔力が高いことから、王位継承権を放棄して、魔術師の塔で働いてるらしいよ。
キレイな顔立ちに実力もあるから、影ながら人気なのよ。でも目つきが鋭くて近寄りがたいでしょ?だからか今まで恋の噂もないんだって。そんな中、毎日 ミルローズを呼びに来るものだから、話題になってるわよ」
「呼びに来るって、実験の為で……」
「そうかもしれないけど、あんな優しげな瞳のイーサン様は、ミルローズの前だけよ。あなたに心を許してるのは確かだと思う」エマの言葉に、びっくりする。
「あとは……オーブン事件の犯人は、マウルさんだって。彼はそれで一ヶ月謹慎だったそうよ。彼、失恋の腹いせにちょっとしたイタズラのつもりがやり過ぎたらしいの」
ナタリアは頬染め、何かを思い出しながら話しているみたい。
「ナタリア、やけに詳しいんだね。もしかしてマウルさんに聞いた?」
「うん、実は休み時間にマウルさんが来てね、彼、事件のことをみんなに謝罪しに来たの。そして、当時のことを聞きたいと……ミルローズは不在だったから私が代わりに説明を求められたんだ」
「ナタリアったら、真っ赤になっちゃってかわいいー。マウルさんも今はフリーなんだよね?」スーザンが茶化した。
「いいなぁ、ミルローズもナタリアも素敵な魔術師様と仲良くなって、私も頑張らなきゃ」
エマったら、手を握りしめて気合い入れてる。
その夜は、魔術師様の話や恋の話でキャーキャー盛り上がった。
***
休日がやってきて、またナタリアと二人で、公園へ来ている。
モクモクとした力強い雲が広がり、暑さが厳しい季節だ。
今日もまたフィンに引っ張られるように、ドリューさんが現れた。
「今日は暑いね、うちの近所に美味しいアイスクリームの店があるんだ。今から行かない?」
アイスクリームは寮のデザートにもない。
食べたいな~とナタリアを見ると、彼女も頷き、ニッコリ笑った。
「「行きたいっ!」」
「よかった。じゃ、案内するよ」
ナタリアと二人、ドリューさんについていく。
フィンを連れては店に入れないので、私がフィンを預かり、ドリューさんとナタリアがアイスを買ってきてくれた。
クリーム色の滑らかなアイスがワッフルコーンに入ってる。
ドリューさんにリードを渡し、ついていく。
店の斜め向かいの邸宅が彼の家だった。
ドリューさん家の敷地の庭には、屋根がかかるテーブルとイスが置かれた場所があり、照りさかる陽を遮ってくれるだけでもかなり過ごしやすい。
日陰のイスに座ってアイスを食べる。
「このアイス、濃厚で美味しい!」
「コーンもサクサクでいいね!」
ナタリアとともにアイスの美味しさに感動する。
「美味しいでしょ? きっと気に入ると思ってたんだ」
ドリューさんは得意気だ。
「あれ? こんにちは。ドリュー、外は暑いし、うちにあがってもらったら?」
マウルさんが現れた。
あー、そっか。
ここはマウルさんの家でもあるのか。
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