【完結】賢者ではありませんが、私でいいのでしょうか?

青井 海

文字の大きさ
上 下
48 / 49

第48話 結婚準備

しおりを挟む
私の花嫁衣装は、ラウンド辺境伯夫人であるジュリエッタお義母様とキリノ男爵夫人である母の二人で、デザインを書き上げてくれた。

二人とも『花嫁衣装は自分がデザインする。』と譲らなかった。
デザインを書き上げて持ちより、何度も話し合っていたようだ。

お義母様は、母のデザインに興味を持ち、「さすがは賢者様。斬新なデザイン。まだまだ他のデザインも見せて欲しいわ。今後とも仲良くしていただきたいわ。」

母もお義母様の書き上げた何枚ものデザインに、衣装への熱意を感じたそうだ。
「さすがは辺境伯夫人。その熱意、すばらしい。是非とも仲良くしていただけませんか?」と意気投合。

私に渡されたのは、お義母様のデザインをベースにしたものと、母のデザインをベースにしたものの2パターン。
どちらかを選ぶのだろう。

えー、選べない。
私が頭を悩ませていると、お義母様が「せっかくだもの。どちらのドレスも着て欲しいわ。2着作りましょう。」と言ってくれた。

2着も? 
申し訳ないと思ったが、正直ほっとした。
よかった、私には選べなかったよ。

最初にお義母様のドレスを着て挙式。
パーティーの途中で、母のドレスに着替えることになった。

ブーケは、クリスティナ様がスペイア伯爵家で遊んだ仲間とともに、用意してくれることが決まった。

庭師見習いのロランが花を摘む。
ティナ、ミリア、エメが花を組み合わせる。
料理人見習いのオープが包装する。

クリスティナ様にも婚約者が決まり、今までのようにみんなと遊ぶ時間が取れなくなったそうだ。
使用人のみんなもだんだん任せられる仕事が増え、忙しくなる。
大人になるとはそういうことだ。

クリスティナ様は、久しぶりにみんなで集まり、話し合いながらブーケを作るのがとても楽しみだと話してくれた。




ゴードン夫妻は、数日前に食堂で常連さんと一緒に美味しい料理でお祝いしてくれた。

食堂で催された会は、温かなもので、心がジーンとした。

食堂の常連さんたちは、私がキリノ男爵令嬢と聞いて驚き、ジルの名前 ジルベール・ラウンドと聞いて固まっていた。

状況を把握した彼らは、
「まさか、ツムギちゃんが貴族のお嬢さんとは…今でも信じられん。」
「次期領主夫人になるのか?嘘だろう?」
「まぁ、何はともあれ、おめでとう!」
「ツムギちゃんが結婚するとは…」

「おめでとう!」

お酒も振る舞われ、ザワザワ言いたい放題騒いでいた。

温かく、少し騒がしい食堂。
料理はどれも素朴で、家庭的。
私はこの食堂が大好き。

この食堂で過ごした大切な時間。
私はきっと忘れない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由
恋愛
【5月20日 90話完結】 5歳の時、母が亡くなった。 原因も治療法も不明の病と言われ、発症1年という早さで亡くなった。 そしてまだ5歳の私には母が必要ということで通例に習わず、1年の喪に服すことなく新しい母が連れて来られた。彼女の隣には不思議なことに父によく似た女の子が立っていた。私とあまり変わらないくらいの歳の彼女は私の2つ年上だという。 これからは姉と呼ぶようにと言われた。 そして、私が14歳の時、突然謎の病を発症した。 母と同じ原因も治療法も不明の病。母と同じ症状が出始めた時に、この病は遺伝だったのかもしれないと言われた。それは私が社交界デビューするはずの年だった。 私は社交界デビューすることは叶わず、そのまま治療することになった。 たまに調子がいい日もあるが、社交界に出席する予定の日には決まって体調を崩した。医者は緊張して体調を崩してしまうのだろうといった。 でも最近はグレン様が会いに来ると約束してくれた日にも必ず体調を崩すようになってしまった。それでも以前はグレン様が心配して、私の部屋で1時間ほど話をしてくれていたのに、最近はグレン様を姉が玄関で出迎え、2人で私の部屋に来て、挨拶だけして、2人でお茶をするからと消えていくようになった。 でもそれも私の体調のせい。私が体調さえ崩さなければ…… 今では月の半分はベットで過ごさなければいけないほどになってしまった。 でもある日婚約者の裏切りに気づいてしまう。 私は耐えられなかった。 もうすべてに……… 病が治る見込みだってないのに。 なんて滑稽なのだろう。 もういや…… 誰からも愛されないのも 誰からも必要とされないのも 治らない病の為にずっとベッドで寝ていなければいけないのも。 気付けば私は家の外に出ていた。 元々病で外に出る事がない私には専属侍女などついていない。 特に今日は症状が重たく、朝からずっと吐いていた為、父も義母も私が部屋を出るなど夢にも思っていないのだろう。 私は死ぬ場所を探していたのかもしれない。家よりも少しでも幸せを感じて死にたいと。 これから出会う人がこれまでの生活を変えてくれるとも知らずに。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

行き場を失った恋の終わらせ方

当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」  自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。  避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。    しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……  恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

いつか彼女を手に入れる日まで

月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

別に要りませんけど?

ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」 そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。 「……別に要りませんけど?」 ※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。 ※なろうでも掲載中

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...