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第49話 幸せに
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今日はジルと私の婚姻式。
実の両親であるキリノ男爵夫妻も列席し、式が始まる前には「賢者様では…」とザワザワするシーンもあったようだ。
*
キリノ男爵である父の腕につかまり、ジルの元へ、ゆっくりと歩んでいく。
今の私はお義母様がデザインしたドレス。
サラリとした上質な生地に繊細なデザイン。
こんな素晴らしいドレスに身を包むことができる私は、本当に幸せ者だ。
父からジルへ。私が移動する時、
父と彼の間で、
『娘を頼んだぞ』
『はい、任せてください』
みたいなアイコンタクトがあった。
ふふっと嬉しくなる。
ジルと出逢ってから今までのことを思い出す。
ラウンド家の魔法に巻き込まれ、森で迷い、キーフォレス王国へやってきた私。
ここへたどり着くまでは本当に大変だったが、彼のいろんな面を知ることができた。
また賢者となった両親と再会できたし、ゴードン夫妻やスペイア伯爵家のみんなと出会えた。
エミリアのように恋の話もできる友人もできた。
キーフォレス王国 ラウンド辺境伯家。
ジルの隣が私の居場所。
私はもう独りじゃない。
私を温かく迎えてくれた領民の皆さんの為にも、次期領主夫人として、私にできることをやっていきたいと思う。
カランカラン
教会の鐘が鳴り響き、花びらがヒラヒラと舞う中を、彼と二人、歩いていく。
ふとジルを見上げると、彼はニヤリと笑い、私の頬にキスをした。
「キャー」
クリスティナ様の顔が真っ赤だ。
大人は『まぁ』『あらあら』と微笑む。
みんなの前でしなくても。
もちろん教会で誓いのキスはしたけれども。
それとこれは違うと思うのだ。
真っ赤な私を、ジルがグイッと持ち上げた。
えっ、えー。
『お姫様抱っこ』だ。
鍛えているジルの腕は力強く、安心できる。
ううっ。
嬉しいけど、恥ずかしい。
まさか自分がお姫様抱っこされるなんて…
「ツムギ、そんな顔、他の人に見せちゃダメだからね。僕だけの時にして。」
頭を優しく後ろから支え、私の顔が周りから見えないように自分の胸に押し付ける。
いやいやこの顔は、ジルのせいだから…
ほらほら、なにやってるんだ二人はみたいな雰囲気になってない?
大丈夫?
パーティー会場へ移動し、少し歓談した後、今度は母のドレスに着替える。
折り重なるレースが美しいドレス。
女性たちから、感嘆の言葉が寄せられる。
賢者と王族と縁が結ばれたラウンド領は、怖いものなしである。
『ラウンド家の魔法』
ラウンド領を安泰へと導いている。
ある意味すごいな。
***
幸せに包まれたジル、ツムギの元には、数年ごとに、赤ちゃんが産まれた。
みんな黒髪に赤い瞳の男の子。
そう、なぜかみんな男の子である。
もしやラウンド家には男の子しか生まれない?
そして、子供たちが16歳を迎えた時に、ラウンド家の魔法が発動するのだろう……
魔法に引きずられ、お嫁さんは大変な経験をするのだ。
それは、ラウンド家総出でお嫁さんを大切にしたくなるだろう。
今の私のように…
ひとりぼっちだった私は、今 家族に囲まれ、幸せな日々を送っている。
おわり
実の両親であるキリノ男爵夫妻も列席し、式が始まる前には「賢者様では…」とザワザワするシーンもあったようだ。
*
キリノ男爵である父の腕につかまり、ジルの元へ、ゆっくりと歩んでいく。
今の私はお義母様がデザインしたドレス。
サラリとした上質な生地に繊細なデザイン。
こんな素晴らしいドレスに身を包むことができる私は、本当に幸せ者だ。
父からジルへ。私が移動する時、
父と彼の間で、
『娘を頼んだぞ』
『はい、任せてください』
みたいなアイコンタクトがあった。
ふふっと嬉しくなる。
ジルと出逢ってから今までのことを思い出す。
ラウンド家の魔法に巻き込まれ、森で迷い、キーフォレス王国へやってきた私。
ここへたどり着くまでは本当に大変だったが、彼のいろんな面を知ることができた。
また賢者となった両親と再会できたし、ゴードン夫妻やスペイア伯爵家のみんなと出会えた。
エミリアのように恋の話もできる友人もできた。
キーフォレス王国 ラウンド辺境伯家。
ジルの隣が私の居場所。
私はもう独りじゃない。
私を温かく迎えてくれた領民の皆さんの為にも、次期領主夫人として、私にできることをやっていきたいと思う。
カランカラン
教会の鐘が鳴り響き、花びらがヒラヒラと舞う中を、彼と二人、歩いていく。
ふとジルを見上げると、彼はニヤリと笑い、私の頬にキスをした。
「キャー」
クリスティナ様の顔が真っ赤だ。
大人は『まぁ』『あらあら』と微笑む。
みんなの前でしなくても。
もちろん教会で誓いのキスはしたけれども。
それとこれは違うと思うのだ。
真っ赤な私を、ジルがグイッと持ち上げた。
えっ、えー。
『お姫様抱っこ』だ。
鍛えているジルの腕は力強く、安心できる。
ううっ。
嬉しいけど、恥ずかしい。
まさか自分がお姫様抱っこされるなんて…
「ツムギ、そんな顔、他の人に見せちゃダメだからね。僕だけの時にして。」
頭を優しく後ろから支え、私の顔が周りから見えないように自分の胸に押し付ける。
いやいやこの顔は、ジルのせいだから…
ほらほら、なにやってるんだ二人はみたいな雰囲気になってない?
大丈夫?
パーティー会場へ移動し、少し歓談した後、今度は母のドレスに着替える。
折り重なるレースが美しいドレス。
女性たちから、感嘆の言葉が寄せられる。
賢者と王族と縁が結ばれたラウンド領は、怖いものなしである。
『ラウンド家の魔法』
ラウンド領を安泰へと導いている。
ある意味すごいな。
***
幸せに包まれたジル、ツムギの元には、数年ごとに、赤ちゃんが産まれた。
みんな黒髪に赤い瞳の男の子。
そう、なぜかみんな男の子である。
もしやラウンド家には男の子しか生まれない?
そして、子供たちが16歳を迎えた時に、ラウンド家の魔法が発動するのだろう……
魔法に引きずられ、お嫁さんは大変な経験をするのだ。
それは、ラウンド家総出でお嫁さんを大切にしたくなるだろう。
今の私のように…
ひとりぼっちだった私は、今 家族に囲まれ、幸せな日々を送っている。
おわり
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