49 / 49
第49話 幸せに
しおりを挟む
今日はジルと私の婚姻式。
実の両親であるキリノ男爵夫妻も列席し、式が始まる前には「賢者様では…」とザワザワするシーンもあったようだ。
*
キリノ男爵である父の腕につかまり、ジルの元へ、ゆっくりと歩んでいく。
今の私はお義母様がデザインしたドレス。
サラリとした上質な生地に繊細なデザイン。
こんな素晴らしいドレスに身を包むことができる私は、本当に幸せ者だ。
父からジルへ。私が移動する時、
父と彼の間で、
『娘を頼んだぞ』
『はい、任せてください』
みたいなアイコンタクトがあった。
ふふっと嬉しくなる。
ジルと出逢ってから今までのことを思い出す。
ラウンド家の魔法に巻き込まれ、森で迷い、キーフォレス王国へやってきた私。
ここへたどり着くまでは本当に大変だったが、彼のいろんな面を知ることができた。
また賢者となった両親と再会できたし、ゴードン夫妻やスペイア伯爵家のみんなと出会えた。
エミリアのように恋の話もできる友人もできた。
キーフォレス王国 ラウンド辺境伯家。
ジルの隣が私の居場所。
私はもう独りじゃない。
私を温かく迎えてくれた領民の皆さんの為にも、次期領主夫人として、私にできることをやっていきたいと思う。
カランカラン
教会の鐘が鳴り響き、花びらがヒラヒラと舞う中を、彼と二人、歩いていく。
ふとジルを見上げると、彼はニヤリと笑い、私の頬にキスをした。
「キャー」
クリスティナ様の顔が真っ赤だ。
大人は『まぁ』『あらあら』と微笑む。
みんなの前でしなくても。
もちろん教会で誓いのキスはしたけれども。
それとこれは違うと思うのだ。
真っ赤な私を、ジルがグイッと持ち上げた。
えっ、えー。
『お姫様抱っこ』だ。
鍛えているジルの腕は力強く、安心できる。
ううっ。
嬉しいけど、恥ずかしい。
まさか自分がお姫様抱っこされるなんて…
「ツムギ、そんな顔、他の人に見せちゃダメだからね。僕だけの時にして。」
頭を優しく後ろから支え、私の顔が周りから見えないように自分の胸に押し付ける。
いやいやこの顔は、ジルのせいだから…
ほらほら、なにやってるんだ二人はみたいな雰囲気になってない?
大丈夫?
パーティー会場へ移動し、少し歓談した後、今度は母のドレスに着替える。
折り重なるレースが美しいドレス。
女性たちから、感嘆の言葉が寄せられる。
賢者と王族と縁が結ばれたラウンド領は、怖いものなしである。
『ラウンド家の魔法』
ラウンド領を安泰へと導いている。
ある意味すごいな。
***
幸せに包まれたジル、ツムギの元には、数年ごとに、赤ちゃんが産まれた。
みんな黒髪に赤い瞳の男の子。
そう、なぜかみんな男の子である。
もしやラウンド家には男の子しか生まれない?
そして、子供たちが16歳を迎えた時に、ラウンド家の魔法が発動するのだろう……
魔法に引きずられ、お嫁さんは大変な経験をするのだ。
それは、ラウンド家総出でお嫁さんを大切にしたくなるだろう。
今の私のように…
ひとりぼっちだった私は、今 家族に囲まれ、幸せな日々を送っている。
おわり
実の両親であるキリノ男爵夫妻も列席し、式が始まる前には「賢者様では…」とザワザワするシーンもあったようだ。
*
キリノ男爵である父の腕につかまり、ジルの元へ、ゆっくりと歩んでいく。
今の私はお義母様がデザインしたドレス。
サラリとした上質な生地に繊細なデザイン。
こんな素晴らしいドレスに身を包むことができる私は、本当に幸せ者だ。
父からジルへ。私が移動する時、
父と彼の間で、
『娘を頼んだぞ』
『はい、任せてください』
みたいなアイコンタクトがあった。
ふふっと嬉しくなる。
ジルと出逢ってから今までのことを思い出す。
ラウンド家の魔法に巻き込まれ、森で迷い、キーフォレス王国へやってきた私。
ここへたどり着くまでは本当に大変だったが、彼のいろんな面を知ることができた。
また賢者となった両親と再会できたし、ゴードン夫妻やスペイア伯爵家のみんなと出会えた。
エミリアのように恋の話もできる友人もできた。
キーフォレス王国 ラウンド辺境伯家。
ジルの隣が私の居場所。
私はもう独りじゃない。
私を温かく迎えてくれた領民の皆さんの為にも、次期領主夫人として、私にできることをやっていきたいと思う。
カランカラン
教会の鐘が鳴り響き、花びらがヒラヒラと舞う中を、彼と二人、歩いていく。
ふとジルを見上げると、彼はニヤリと笑い、私の頬にキスをした。
「キャー」
クリスティナ様の顔が真っ赤だ。
大人は『まぁ』『あらあら』と微笑む。
みんなの前でしなくても。
もちろん教会で誓いのキスはしたけれども。
それとこれは違うと思うのだ。
真っ赤な私を、ジルがグイッと持ち上げた。
えっ、えー。
『お姫様抱っこ』だ。
鍛えているジルの腕は力強く、安心できる。
ううっ。
嬉しいけど、恥ずかしい。
まさか自分がお姫様抱っこされるなんて…
「ツムギ、そんな顔、他の人に見せちゃダメだからね。僕だけの時にして。」
頭を優しく後ろから支え、私の顔が周りから見えないように自分の胸に押し付ける。
いやいやこの顔は、ジルのせいだから…
ほらほら、なにやってるんだ二人はみたいな雰囲気になってない?
大丈夫?
パーティー会場へ移動し、少し歓談した後、今度は母のドレスに着替える。
折り重なるレースが美しいドレス。
女性たちから、感嘆の言葉が寄せられる。
賢者と王族と縁が結ばれたラウンド領は、怖いものなしである。
『ラウンド家の魔法』
ラウンド領を安泰へと導いている。
ある意味すごいな。
***
幸せに包まれたジル、ツムギの元には、数年ごとに、赤ちゃんが産まれた。
みんな黒髪に赤い瞳の男の子。
そう、なぜかみんな男の子である。
もしやラウンド家には男の子しか生まれない?
そして、子供たちが16歳を迎えた時に、ラウンド家の魔法が発動するのだろう……
魔法に引きずられ、お嫁さんは大変な経験をするのだ。
それは、ラウンド家総出でお嫁さんを大切にしたくなるだろう。
今の私のように…
ひとりぼっちだった私は、今 家族に囲まれ、幸せな日々を送っている。
おわり
0
お気に入りに追加
28
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説

お飾り公爵夫人の憂鬱
初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。
私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。
やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。
そう自由……自由になるはずだったのに……
※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です
※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません
※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

いつか彼女を手に入れる日まで
月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

別に要りませんけど?
ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」
そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。
「……別に要りませんけど?」
※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。
※なろうでも掲載中
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる