【完結】賢者ではありませんが、私でいいのでしょうか?

青井 海

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第45話 王女との縁談

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父上の話によると、

テオドールが属するチームが、学院の授業で森へ行き、狩りの演習をしていた。
テオドールは夢中で鹿を追っていて、メンバーとはぐれた上に、崖から滑り落ちてしまった。
うまく滑り落ちたおかげで、怪我は打撲と擦り傷程度で、骨に異常はなかった。
だが、深追いしていたこともあり、自分がいる位置がわからない。
迷ってしまったのだ。

森の天候は変わりやすい。
ポツポツと降りだした雨は、すぐにザーザー激しくなり、周りが見えないほどに。
森で考えなしに動くのは危ない。
雨を避けられる岩の隙間で助けを待とうと思っていたところ、なんと城を抜け出して狩りをしていたアリーローズ様と合流。
二人して雨宿りをすることになった。

王女はお忍びだった為に、捜索は期待できない。
テオドールの学院の仲間が、はぐれたことに気がつき、捜索したがみつからず、学生たちを危険に晒せないと、一旦引き上げ、テオドールの捜索依頼を出したそうだ。

その頃、王宮では、夕食の時間になってもアリーローズ様が現れないことが問題となる。誰も彼女の居場所を把握していなかったのだから。
不名誉な噂が広がらぬよう、秘密裏に捜索が行われた。

二人は森の奥深くの岩の隙間で一晩を明かした。
じゃじゃ馬であろうと、アリーローズ様は森で野宿の経験などない。

テオドールは、森へ出かけるにあたり、しっかりと荷物を準備していたし、幼い頃から森で遊んで得た知識が役立ったそうだ。

慣れない森での野宿。
心細いところで、テオドールは頼りになり、本当に彼が傍にいてくれてよかったと、王女の気持ちに大きな変化があった。

鹿を深追いし、メンバーに迷惑をかけたのはいただけないが、結果としては王女を救ったわけだ。
テオドールが崖を滑り落ちていなければ、王女は一人きりで森に取り残されていたのだから…


王家としては、婚姻しないと宣言していた王女の心の変化を歓迎した。
もちろん、アリーローズ王女とテオドールの間には何事もなかった。
だが、一晩一緒にいたことは、捜索隊に知られている。

その為、突然だが縁談話が持ちあがったそうだ。


テオドールも、いつもは気丈な王女に頼られて、嬉しかったし、誇らしかったそう。
しかも王女は金髪、青い瞳の美女だったりする。
縁談が来て、喜んでいたそうだ。


王家からはテオドールが王女を助けたと感じたはずだ。
だが、父と僕の意見は違う。

アリーローズ王女は『ラウンド家の魔法』に巻き込まれてしまったのだ。
彼女はテオの運命の相手だったから…
大変な思いをさせてしまって申し訳ない。
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