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第40話 お引っ越し
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ゴードン夫妻の食堂での仕事。
キーフォレス王国で暮らすようになってから、初めて就いた仕事だった。
そういえば探していた住み込みの仕事をこの国でみつけ、ゴードン夫妻のような第二の両親?に出逢えた私は運がよかった。
感慨深い想いで、ラスト一週間の仕事を楽しんだ。
馴染みのお客さんには、きちんと挨拶することができた。
『婚約者ができました。花嫁修業の為に仕事を辞めて引っ越します。』
みんな冷やかしながらも、お祝いの言葉を贈ってくれた。
ラウンド辺境伯家に嫁ぎますなんてことは言わない。
みんなは私を平民だと思ってる。
だって食堂で住み込みで働く貴族なんて…珍しいでしょ。
実際 キリノ男爵夫妻となった両親と再会するまでは、平民だったしね。
この国で、本当の両親にも再会できた。
そして、今はジルベール・ラウンドという素敵な婚約者までいる。
まるで幸せへと導かれたかのようだ。
一週間後、私はゴードン夫妻の家を出て、ラウンド辺境伯の邸宅へと引っ越した。
今日からは、ここで暮らしながら花嫁修業である。
まずは、ラウンド辺境伯 マクシミリアン様と夫人のジュリエッタ様へご挨拶。
マクシミリアン様は、「もうすぐ嫁いでくるのだから、自分の家だと思って寛ぎなさい。」
と言ってくださった。
ジュリエッタ様は「やっと来てくれたのね。我が家に娘が…」とご機嫌だ。
今日の夜から、食事は辺境伯家の家族と一緒にと誘われている。
ジルの弟たちは学院へ通っており、今は出かけている為、食事の席で紹介してくれるそうだ。
「マノン、こちらへ」
ジュリエッタ様が一人の侍女を呼んだ。
「ツムギさん、あなたの侍女にマノンをつけるわ。彼女は昔からラウンド家に仕えていて頼りになるわ。何かあったら、彼女に聞いてね。」
マノンさんは母親世代の女性だ。
「ジュリエッタ様、ありがとうございます。マノンさん、これからよろしくお願いします。」
「ツムギさん、そろそろ『お義母様』と呼んで欲しいわ。マノンには、さんを付けないようにね。これも辺境伯夫人となる練習よ。」
あっ、そうだった。
年配の人を呼び捨てするのは、抵抗あって、つい、さん付けしてしまった。
「はい、お義母様。」
「まぁまぁ、なんていい響き。やっぱりかわいらしい女の子の声で言われると全然違うわね。」
私ももう20歳。
女の子という歳でもないのに、なんだかフワフワする。
マノンの案内で用意された客室へと向かう。
客室は広くてシンプルな部屋だった。
ただ置かれた花瓶には華やかでかわいらしい花が生けられている。
ジュリエッタ様ならもっとかわいらしい部屋を用意しそうである。
私の疑問に気づいたマノンが、私の疑問に答えてくれる。
「ツムギ様の部屋はジルベール様の指示で整えております。ジュリエッタ様とジルベール様が部屋の準備でもめて大変だったんですよ。花はジュリエッタ様の指示です。つむぎ様は大切にされてますね。」
マノンがニッコリ微笑んだ。
キーフォレス王国で暮らすようになってから、初めて就いた仕事だった。
そういえば探していた住み込みの仕事をこの国でみつけ、ゴードン夫妻のような第二の両親?に出逢えた私は運がよかった。
感慨深い想いで、ラスト一週間の仕事を楽しんだ。
馴染みのお客さんには、きちんと挨拶することができた。
『婚約者ができました。花嫁修業の為に仕事を辞めて引っ越します。』
みんな冷やかしながらも、お祝いの言葉を贈ってくれた。
ラウンド辺境伯家に嫁ぎますなんてことは言わない。
みんなは私を平民だと思ってる。
だって食堂で住み込みで働く貴族なんて…珍しいでしょ。
実際 キリノ男爵夫妻となった両親と再会するまでは、平民だったしね。
この国で、本当の両親にも再会できた。
そして、今はジルベール・ラウンドという素敵な婚約者までいる。
まるで幸せへと導かれたかのようだ。
一週間後、私はゴードン夫妻の家を出て、ラウンド辺境伯の邸宅へと引っ越した。
今日からは、ここで暮らしながら花嫁修業である。
まずは、ラウンド辺境伯 マクシミリアン様と夫人のジュリエッタ様へご挨拶。
マクシミリアン様は、「もうすぐ嫁いでくるのだから、自分の家だと思って寛ぎなさい。」
と言ってくださった。
ジュリエッタ様は「やっと来てくれたのね。我が家に娘が…」とご機嫌だ。
今日の夜から、食事は辺境伯家の家族と一緒にと誘われている。
ジルの弟たちは学院へ通っており、今は出かけている為、食事の席で紹介してくれるそうだ。
「マノン、こちらへ」
ジュリエッタ様が一人の侍女を呼んだ。
「ツムギさん、あなたの侍女にマノンをつけるわ。彼女は昔からラウンド家に仕えていて頼りになるわ。何かあったら、彼女に聞いてね。」
マノンさんは母親世代の女性だ。
「ジュリエッタ様、ありがとうございます。マノンさん、これからよろしくお願いします。」
「ツムギさん、そろそろ『お義母様』と呼んで欲しいわ。マノンには、さんを付けないようにね。これも辺境伯夫人となる練習よ。」
あっ、そうだった。
年配の人を呼び捨てするのは、抵抗あって、つい、さん付けしてしまった。
「はい、お義母様。」
「まぁまぁ、なんていい響き。やっぱりかわいらしい女の子の声で言われると全然違うわね。」
私ももう20歳。
女の子という歳でもないのに、なんだかフワフワする。
マノンの案内で用意された客室へと向かう。
客室は広くてシンプルな部屋だった。
ただ置かれた花瓶には華やかでかわいらしい花が生けられている。
ジュリエッタ様ならもっとかわいらしい部屋を用意しそうである。
私の疑問に気づいたマノンが、私の疑問に答えてくれる。
「ツムギ様の部屋はジルベール様の指示で整えております。ジュリエッタ様とジルベール様が部屋の準備でもめて大変だったんですよ。花はジュリエッタ様の指示です。つむぎ様は大切にされてますね。」
マノンがニッコリ微笑んだ。
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