【完結】賢者ではありませんが、私でいいのでしょうか?

青井 海

文字の大きさ
上 下
39 / 49

第39話 帰宅

しおりを挟む
舞踏会も無事終わり、ジルに馬車で送ってもらい、ゴードン夫妻の食堂に戻ってきた。

帰りは結構遅くなってしまったが、営業を終えたおじさん、おばさんは後片付けと明日の仕込みをしていた。

「おじさん、おばさん、ただいま帰りました。今日はお休みをありがとうございます。無事に社交界デビューを果たしました。」

「そうかい、良かったね。婚約の話もジルベール様から聞いたよ。素敵な方だね。
庶民の私たちにのところまで挨拶に来てくれたんだよ。
ツムギちゃんの決めた日まで、ここに居てくれていいからね。ツムギちゃんが居てくれて、私たちは助かってるんだから。でも…寂しくなるね。ジルベール様と幸せになるんだよ。」

「そうだ。ツムギちゃんはうちの娘のようなもんなんだから、絶対に幸せにしてもらわんと。」

「おばさん、おじさん… ありがとう。」

おばさんは私をギュッと抱きしめてくれた。
「お嫁に行っても、いつでも遊びにおいで。」

「はい。一週間後にラウンド辺境伯家へ引っ越そうと思います。それまでよろしくお願いします。」



部屋に戻り、寝る準備を済ませる。
ベッドにゴロリと寝転がると、舞踏会でのことが甦ってくる。

ジルと私が婚約。
まるで夢のよう。
こういう時、物語なら頬を引っ張って、夢か現実か確かめるんだよね。

自分の頬を親指と人差し指で軽くつまみ、横に引っ張ってみる。
うん、ちゃんと痛みを感じる。
現実で間違いない。


ジルとのダンス、楽しかった。
もっと踊れるよう体力つけなきゃ。

強引なウィリアム王子に困っている私を、颯爽と迎えに現れたジル。
かっこよかったな~。

周りから見たら、かっこいい対決は、見た目も王子様らしいウィリアム王子に軍配があがるんだろうけど、私にとっては、ジルが一番。

ジルからプロポーズされ、初めての…
その後、何度も…
思い出すと、恥ずかしくなってくる。

顔がカーっと熱くなった。
私は今、きっと真っ赤になってると思う。

両親もラウンド家から婚約話があったこと、了承したことをなぜ知らせてくれなかったのよ。

舞踏会で挨拶した時、ニヤニヤしてたのはそういうこと?
ドッキリをしかけたような?
ジルの背中を叩いたのは、プロポーズ頑張れみたいなやつ?

私だけ何も知らされてなかったんだ。
まぁ、幸せなドッキリだったから…いいのかな。


明日から一週間、しっかり頑張ろう。
ゴードン夫妻との時間を大切に楽しもう。
そう思い、目を閉じる。

あー、ジルの顔が近づいてくる。
ジルの姿が浮かんできて…
眠れない。





    
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】 今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。 「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」 そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。 そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。 けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。 その真意を知った時、私は―。 ※暫く鬱展開が続きます ※他サイトでも投稿中

お飾りの侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
今宵もあの方は帰ってきてくださらない… フリーアイコン あままつ様のを使用させて頂いています。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

愛のゆくえ【完結】

春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした ですが、告白した私にあなたは言いました 「妹にしか思えない」 私は幼馴染みと婚約しました それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか? ☆12時30分より1時間更新 (6月1日0時30分 完結) こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね? ……違う? とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。 他社でも公開

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

処理中です...