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第34話 新しい道
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賢者の家を訪ねてから一週間、しっかりと考えた。
そして結論が出たので、ジルに頼んで、両親のところへついてきてもらうことになった。
ジルがどうやって連絡したのかは教えてくれないのでわからない。
だが、彼は父と連絡を取り合っているようで、以前と同じ遣いの男性が馬車で迎えに来た。
ジルは賢者の家を知られるのはまずいからと、護衛のマルクスさんを連れずに、ついてきてくれた。
お母さんは、また緑茶を入れてくれ、そのままどこかへ行こうとする。
「お父さん、お母さん、話があるの。」
お父さんが引き留めてくれて、お母さんもイスに座る。
「お父さんたちはどうしてここに来たの?」
勇気を振り絞り、聞いてみる。
「自給自足の生活をする人がいるとの噂を聞き、母さんと会いに向かったら、道に迷ってここ、キーフォレス王国へ来てた。決してつむぎを置いて行こうとしたわけじゃない。おそらくここは違う世界で…連絡しようがなかった。」
「わかった。」
両親が私から離れてしまったのは、予期せぬことだったのだ。
「お父さん、お母さん、今までありがとう。私はここでは暮らせません。でも時々遊びに来させてください。」
泣いてしまった母を父が支える。
「つむぎ、わかった。お前はもう18歳だもんな。いや、もう19歳か。」
父の言葉に、ジルが反応した。
「ツムギ、そうなのか?」
「こっちの月日がわからないから、はっきりしないんだけど、おそらくは。」
「ジルベールくん、つむぎを頼んだよ。」
「はい、彼女は僕が守ります。」
なに? このやりとりは?
「つむぎ、お前は離れていたとしても、私たちの娘だ。困ったことがあれば、いつでも頼って欲しい。」
父の言葉に泣きそうだ。
ずっと一人ぼっちと思ってた私は、一人ぼっちなんかじゃなかった。
両親は私を置いていったのではなく、いつの間にか、キーフォレス国へ迷い込んでしまったらしい。
日本へ帰る方法をみつけるため、王宮を訪れたことで、その知識に目をつけた王族によって、賢者として囲われてしまった。
今は信用を得て、この国でしっかりした地位を築いている。
なんと両親は、キリノ男爵という爵位まで与えられていた。
王都にも邸宅を与えられているそうだ。
使用人はみな王都に居て、馬車が必要な時などは、王都から呼んでいる。
庶民生活が染み付いた私の両親は、賑やかな、華やかな場所は落ち着かないと、希望したこの森に小さな家を建ててもらい、問題が起きた時にだけ、呼び出される生活を送っているそうだ。
かなり自由だ。
私がここで暮らしたら、私まで囲われていたかも?
王族になんて、できれば会いたくない。
別の場所で暮らす選択をしててよかった。
お父さんもそんな重要なことを後出しするなんて…ずるいよ。
両親へ自分の気持ちを伝えた後、私はゴードン夫妻の食堂で働き続けている。
但し、私が働くのは、午後の営業のみになった。
私はキリノ男爵令嬢となるらしい。
私が貴族だなんて…
午前中は、ラウンド辺境伯家とスペイア伯爵家へ通い、貴族令嬢としての教育を受けることになったのだ。
そして結論が出たので、ジルに頼んで、両親のところへついてきてもらうことになった。
ジルがどうやって連絡したのかは教えてくれないのでわからない。
だが、彼は父と連絡を取り合っているようで、以前と同じ遣いの男性が馬車で迎えに来た。
ジルは賢者の家を知られるのはまずいからと、護衛のマルクスさんを連れずに、ついてきてくれた。
お母さんは、また緑茶を入れてくれ、そのままどこかへ行こうとする。
「お父さん、お母さん、話があるの。」
お父さんが引き留めてくれて、お母さんもイスに座る。
「お父さんたちはどうしてここに来たの?」
勇気を振り絞り、聞いてみる。
「自給自足の生活をする人がいるとの噂を聞き、母さんと会いに向かったら、道に迷ってここ、キーフォレス王国へ来てた。決してつむぎを置いて行こうとしたわけじゃない。おそらくここは違う世界で…連絡しようがなかった。」
「わかった。」
両親が私から離れてしまったのは、予期せぬことだったのだ。
「お父さん、お母さん、今までありがとう。私はここでは暮らせません。でも時々遊びに来させてください。」
泣いてしまった母を父が支える。
「つむぎ、わかった。お前はもう18歳だもんな。いや、もう19歳か。」
父の言葉に、ジルが反応した。
「ツムギ、そうなのか?」
「こっちの月日がわからないから、はっきりしないんだけど、おそらくは。」
「ジルベールくん、つむぎを頼んだよ。」
「はい、彼女は僕が守ります。」
なに? このやりとりは?
「つむぎ、お前は離れていたとしても、私たちの娘だ。困ったことがあれば、いつでも頼って欲しい。」
父の言葉に泣きそうだ。
ずっと一人ぼっちと思ってた私は、一人ぼっちなんかじゃなかった。
両親は私を置いていったのではなく、いつの間にか、キーフォレス国へ迷い込んでしまったらしい。
日本へ帰る方法をみつけるため、王宮を訪れたことで、その知識に目をつけた王族によって、賢者として囲われてしまった。
今は信用を得て、この国でしっかりした地位を築いている。
なんと両親は、キリノ男爵という爵位まで与えられていた。
王都にも邸宅を与えられているそうだ。
使用人はみな王都に居て、馬車が必要な時などは、王都から呼んでいる。
庶民生活が染み付いた私の両親は、賑やかな、華やかな場所は落ち着かないと、希望したこの森に小さな家を建ててもらい、問題が起きた時にだけ、呼び出される生活を送っているそうだ。
かなり自由だ。
私がここで暮らしたら、私まで囲われていたかも?
王族になんて、できれば会いたくない。
別の場所で暮らす選択をしててよかった。
お父さんもそんな重要なことを後出しするなんて…ずるいよ。
両親へ自分の気持ちを伝えた後、私はゴードン夫妻の食堂で働き続けている。
但し、私が働くのは、午後の営業のみになった。
私はキリノ男爵令嬢となるらしい。
私が貴族だなんて…
午前中は、ラウンド辺境伯家とスペイア伯爵家へ通い、貴族令嬢としての教育を受けることになったのだ。
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