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第29話 事件のあらまし
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私の証言を聞いてくれた警備の男性が、食堂に来た。
犯人が捕まったと知らせに来てくれたそうだ。
おじさんが、「ツムギちゃん、休憩に入っていいから。」と言ってくれ、詰所へ移動する。
彼の説明によると、目撃者不在で捜査が頓挫していたが、私の証言があり、一気に捜査が進んだそうだ。
私が拐われる時に嗅がされ薬。
あの薬独特の臭いが決め手になった。
あれは隣国では簡単に手に入るが、キーフォレス国では認可されていない睡眠薬らしい。
隣国では不眠治療に使われていて、短期間に大量摂取したのでなければ、体に害はないそうだ。
害のないものと聞き、ほっとした。
変なものだと、後で何か症状が出たりしないか心配だもんね。
私は、いっぱいいっぱいだったから、薬の後遺症なんてことも思い浮かばなかった。
今になって、ゾッとする。
私を拐ったのは、隣国の貴族に雇われたゴロツキたち。
私はその貴族へと引き渡され、賢者であると確認が取れた後、出国する予定だったそうだ。
私は寝たふりをしていて正解だった。
結果的にそれが時間稼ぎとなり、偶然にもオーバンさんがみつけてくれた。
賢者様はあちこちから狙われているんだな。
スベイア伯爵領にある今の時期には使われていない山小屋にいるところを、伯爵に仕えるオーバンが保護してくれたらしい。
その時、オーバンは一人であった為、私の保護を優先、残念ながら犯人たちには逃げられてしまったそうだ。
スペイア伯爵がなぜすぐにゴードン夫妻へ連絡しなかったのか…
私が連れ去られたのは、ラウンド辺境伯領だが、保護された場所はスペイア伯爵領、自分が保護したのだから、できるだけ長く賢者様に滞在してもらい、あわよくば何かしらの利益をとの思惑があったのだろうと言われた。
あのいい人たちが犯人じゃなくて、本当に良かった。
彼らは私を保護しただけ。
私が訴えない限り、罪には問われないそうだ。
スベイア伯爵様、オーバンさん、疑って申し訳ありません。
こころの中で謝る。
彼らは本当に私を保護してくれた恩人だったのだ。
伯爵が、すぐにゴードン夫妻へ連絡してくれたなら、疑いも晴れたのに。
二人を早く安心させられたのに。
たまたま私を保護する立場となり欲が出たのだろうが、私は賢者ではなく、平凡な一般人。
私では、何も返せない。
衣装や食事など、ただお世話になっただけ。
「どうしますか? スペイア伯爵を訴えますか?」
「いいえ、訴えたりしません。スペイア伯爵様は私を保護し、親切に面倒をみてくださいました。」
「わかりました。では、これで失礼します。」
警備兵の男性は帰って行った。
もう済んだことだ。
スペイア伯爵家で過ごした時間も楽しかったし、本当によくしていただいた。
落ち着いたら、ちゃんとお礼を伝えに行こう。
犯人が捕まったと知らせに来てくれたそうだ。
おじさんが、「ツムギちゃん、休憩に入っていいから。」と言ってくれ、詰所へ移動する。
彼の説明によると、目撃者不在で捜査が頓挫していたが、私の証言があり、一気に捜査が進んだそうだ。
私が拐われる時に嗅がされ薬。
あの薬独特の臭いが決め手になった。
あれは隣国では簡単に手に入るが、キーフォレス国では認可されていない睡眠薬らしい。
隣国では不眠治療に使われていて、短期間に大量摂取したのでなければ、体に害はないそうだ。
害のないものと聞き、ほっとした。
変なものだと、後で何か症状が出たりしないか心配だもんね。
私は、いっぱいいっぱいだったから、薬の後遺症なんてことも思い浮かばなかった。
今になって、ゾッとする。
私を拐ったのは、隣国の貴族に雇われたゴロツキたち。
私はその貴族へと引き渡され、賢者であると確認が取れた後、出国する予定だったそうだ。
私は寝たふりをしていて正解だった。
結果的にそれが時間稼ぎとなり、偶然にもオーバンさんがみつけてくれた。
賢者様はあちこちから狙われているんだな。
スベイア伯爵領にある今の時期には使われていない山小屋にいるところを、伯爵に仕えるオーバンが保護してくれたらしい。
その時、オーバンは一人であった為、私の保護を優先、残念ながら犯人たちには逃げられてしまったそうだ。
スペイア伯爵がなぜすぐにゴードン夫妻へ連絡しなかったのか…
私が連れ去られたのは、ラウンド辺境伯領だが、保護された場所はスペイア伯爵領、自分が保護したのだから、できるだけ長く賢者様に滞在してもらい、あわよくば何かしらの利益をとの思惑があったのだろうと言われた。
あのいい人たちが犯人じゃなくて、本当に良かった。
彼らは私を保護しただけ。
私が訴えない限り、罪には問われないそうだ。
スベイア伯爵様、オーバンさん、疑って申し訳ありません。
こころの中で謝る。
彼らは本当に私を保護してくれた恩人だったのだ。
伯爵が、すぐにゴードン夫妻へ連絡してくれたなら、疑いも晴れたのに。
二人を早く安心させられたのに。
たまたま私を保護する立場となり欲が出たのだろうが、私は賢者ではなく、平凡な一般人。
私では、何も返せない。
衣装や食事など、ただお世話になっただけ。
「どうしますか? スペイア伯爵を訴えますか?」
「いいえ、訴えたりしません。スペイア伯爵様は私を保護し、親切に面倒をみてくださいました。」
「わかりました。では、これで失礼します。」
警備兵の男性は帰って行った。
もう済んだことだ。
スペイア伯爵家で過ごした時間も楽しかったし、本当によくしていただいた。
落ち着いたら、ちゃんとお礼を伝えに行こう。
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