30 / 49
第30話 無事でよかった
しおりを挟む
ツムギがみつかった。
食堂へ帰ってきた。
知らせを受けた僕 ジルベールは、スノーに飛び乗り、ゴードン夫妻の食堂へ急いで向かう。
食堂へ駆け込むと、彼女は夫妻とともに、のほほ~んと朝食を食べていた。
僕を見て、キョトンとする彼女。
彼女は大丈夫なのか?
あちこち触って確かめる。
見える場所に怪我はなさそうだ。
ふと彼女の顔を見ると、真っ赤になっている。
具合でも悪いのか…
心配になり、彼女の両腕をギュッと掴むと、ヒューゴとマルクスが入ってきた。
彼らは息を切らし、焦って追いかけてきたようだ。
「突然居なくならないでください。」とマルクスが怒り、
「また居なくなるのかと焦りました。」とヒューゴがほっとした顔をしている。
僕は彼らに心配ばかりかけてるな。
気を付けないと。
そんなことを思っていると、
何故だかみんなの視線を感じる。
しかも生温かい視線。
ん? んー。
僕はあちこち触りすぎたか?
ツムギの腕を掴んでいた手をゆっくりと外す。
マルクスがツムギに警備兵の詰所へ証言へ行くよう伝えている。
彼女が食堂へ戻るまで、心配で心配で、待たせてもらうことにした。
証言を終え、帰ってきた彼女は元気がなく、少し震えているように見えた。
怖かったことを思い出してしまったのかもしれない。
そっと近づき、よしよしと頭を撫でる。
2歳年上で、しっかり者の彼女。
そんな彼女が不安そうに震えている。
「大丈夫だから。」と言い聞かせ、彼女の震えが治まるまで、僕は頭を撫で続けた。
数日後、たまたま僕が様子を見に、食堂を訪れていたところ、賢者様の遣いと名乗る者が食堂へ現れた。
ツムギが賢者と間違えられ事件に巻き込まれたことが、賢者様の耳に入ったらしい。
賢者様は、事件を聞き、心を痛め、ツムギに会いたがっているそうだ。
本当に賢者様の遣いなのか、疑わしい。
また彼女が拐われるのではないかと不安になる。
ツムギは「賢者様に会いたい。会いに行く。」と言う。
ゴードン夫妻は、心配そうにしながらも、彼女の意見を尊重するようだ。
彼女には危機感がないのかと怒りたくなる。
だが、もしそれが本物の賢者様なら…
彼女は賢者様に会いたがっていた。
このチャンスを逃すと、もう会えないかもしれない。
「わかった。僕もついていく。」
「はぁー、あなたはまた危ないことに足を突っ込まなくても…」護衛のマルクスの呟きが聞こえた。
そのまま賢者様の遣いが用意した馬車へと乗せられるツムギに、待ったをかける。
「ツムギはこっちに。」
手を伸ばし、スノーに乗る僕の前に座らせようとしたが、今日の彼女はワンピース姿。
仕方なく諦め、スノーを詰所へ預け、彼女とともに馬車へ乗り込む。
馬車の後ろからマルクスが馬に乗ってついてきている。
彼が居れば、心強い。
食堂へ帰ってきた。
知らせを受けた僕 ジルベールは、スノーに飛び乗り、ゴードン夫妻の食堂へ急いで向かう。
食堂へ駆け込むと、彼女は夫妻とともに、のほほ~んと朝食を食べていた。
僕を見て、キョトンとする彼女。
彼女は大丈夫なのか?
あちこち触って確かめる。
見える場所に怪我はなさそうだ。
ふと彼女の顔を見ると、真っ赤になっている。
具合でも悪いのか…
心配になり、彼女の両腕をギュッと掴むと、ヒューゴとマルクスが入ってきた。
彼らは息を切らし、焦って追いかけてきたようだ。
「突然居なくならないでください。」とマルクスが怒り、
「また居なくなるのかと焦りました。」とヒューゴがほっとした顔をしている。
僕は彼らに心配ばかりかけてるな。
気を付けないと。
そんなことを思っていると、
何故だかみんなの視線を感じる。
しかも生温かい視線。
ん? んー。
僕はあちこち触りすぎたか?
ツムギの腕を掴んでいた手をゆっくりと外す。
マルクスがツムギに警備兵の詰所へ証言へ行くよう伝えている。
彼女が食堂へ戻るまで、心配で心配で、待たせてもらうことにした。
証言を終え、帰ってきた彼女は元気がなく、少し震えているように見えた。
怖かったことを思い出してしまったのかもしれない。
そっと近づき、よしよしと頭を撫でる。
2歳年上で、しっかり者の彼女。
そんな彼女が不安そうに震えている。
「大丈夫だから。」と言い聞かせ、彼女の震えが治まるまで、僕は頭を撫で続けた。
数日後、たまたま僕が様子を見に、食堂を訪れていたところ、賢者様の遣いと名乗る者が食堂へ現れた。
ツムギが賢者と間違えられ事件に巻き込まれたことが、賢者様の耳に入ったらしい。
賢者様は、事件を聞き、心を痛め、ツムギに会いたがっているそうだ。
本当に賢者様の遣いなのか、疑わしい。
また彼女が拐われるのではないかと不安になる。
ツムギは「賢者様に会いたい。会いに行く。」と言う。
ゴードン夫妻は、心配そうにしながらも、彼女の意見を尊重するようだ。
彼女には危機感がないのかと怒りたくなる。
だが、もしそれが本物の賢者様なら…
彼女は賢者様に会いたがっていた。
このチャンスを逃すと、もう会えないかもしれない。
「わかった。僕もついていく。」
「はぁー、あなたはまた危ないことに足を突っ込まなくても…」護衛のマルクスの呟きが聞こえた。
そのまま賢者様の遣いが用意した馬車へと乗せられるツムギに、待ったをかける。
「ツムギはこっちに。」
手を伸ばし、スノーに乗る僕の前に座らせようとしたが、今日の彼女はワンピース姿。
仕方なく諦め、スノーを詰所へ預け、彼女とともに馬車へ乗り込む。
馬車の後ろからマルクスが馬に乗ってついてきている。
彼が居れば、心強い。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説

嘘をありがとう
七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」
おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。
「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」
妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。
「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」

好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」
結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は……
短いお話です。
新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。
4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる