15 / 49
第15話 人違いです
しおりを挟む
ツムギはおじさん、おばさんにかわいがられ、しっかりと自分の居場所と呼べる関係を築いていた。
食堂の休憩時間、彼女は久しぶりに街をブラブラしていた。
前からガラガラと馬車がやってきて、ツムギの少し手前でゆっくりと停まった。
ツムギが馬車と壁の隙間を通り過ぎようとしたところで、突然 馬車の扉が開き、二つの腕が伸びてきて彼女を馬車の中へ引っ張り込んだ。
彼女が馬車へと引っ張り込まれた姿を見たものは誰もいなかった。
馬車の中には見知らぬ男性が三人。
つむぎは声をあげようとしたが、すぐ布で鼻と口を押さえられた。
布からは変な匂いがする。薬?
ツムギが抵抗しようと伸ばした手は空を切り、彼女はそのまま意識を失った。
馬車は何事もなかったかのように、ガラガラ走り去る。
それは、ほんの一瞬の出来事だった。
食堂が夜の営業が始まる時間になっても、彼女は戻らない。
真面目な彼女が営業時間までに戻らないなんて初めてのことだ。
コレットが警備兵がの詰所へ駆け込む。
「ツムギちゃんが、ツムギちゃんがまだ戻らないの。お願い、誰かつむぎちゃんを。」
いつもどんと構えたコレットの取り乱した姿に、警備兵たちも只事ではないと、動き出す。
みんな目の前にある食堂にはお世話になっている。
ゴードンとコレットは、若い兵士にとっては
第二のお父さん、お母さんのような存在。
そして食堂で働くつむぎは、妹のようだったり、友人、淡い恋の相手だったりするのだ。
うっう~ん
ツムギが目を覚ますと、そこは知らない場所だった。
以前 ジルと過ごした山小屋のように、天井も壁も床も木がむき出しだ。
部屋を見回したが、私が横たえられていたベッドのみ。
他に家具がないのは、不自然だ。
誰かが日常的に生活している場所ではないのだろう。
幸いなことに、拘束はされていない。
外から男性の話し声が聞こえた。
「はい、約束どおり賢者を手に入れました。」
「うむ。では、これを。」
ジャラジャラとお金がすりあったような音が聞こえ、何人かの足音が遠ざかって行った。
賢者?
私は賢者と間違えられて連れ去られたの?
私の瞳が黒いから、間違えられたんだ。
これから私はどうなるのかな。
急に怖くなり、サーっと血の気が引いていく。
ギギー、パタン、カツカツカツ
扉が開いて、人が入ってきたようだ。
相手は一人?
慌てて私は眠った振りをする。
「賢者様、起きてください。もう大丈夫です。私はあなたを助けに来ました。」
男性の声がした。
えっ、本当に?
さっき、誰かとやりとりしてた人じゃないの? 信用していいのだろうか。
そのまま眠った振りを続けていると、
「まだ薬が効いてるのか。後でまた来るとするか。」と独り言を言い残し、立ち去った。
今の独り言。
確実に私を連れ去らった仲間のようだ。
仲間? いや連れ去りを依頼した人?
どうしよう。
食堂の休憩時間、彼女は久しぶりに街をブラブラしていた。
前からガラガラと馬車がやってきて、ツムギの少し手前でゆっくりと停まった。
ツムギが馬車と壁の隙間を通り過ぎようとしたところで、突然 馬車の扉が開き、二つの腕が伸びてきて彼女を馬車の中へ引っ張り込んだ。
彼女が馬車へと引っ張り込まれた姿を見たものは誰もいなかった。
馬車の中には見知らぬ男性が三人。
つむぎは声をあげようとしたが、すぐ布で鼻と口を押さえられた。
布からは変な匂いがする。薬?
ツムギが抵抗しようと伸ばした手は空を切り、彼女はそのまま意識を失った。
馬車は何事もなかったかのように、ガラガラ走り去る。
それは、ほんの一瞬の出来事だった。
食堂が夜の営業が始まる時間になっても、彼女は戻らない。
真面目な彼女が営業時間までに戻らないなんて初めてのことだ。
コレットが警備兵がの詰所へ駆け込む。
「ツムギちゃんが、ツムギちゃんがまだ戻らないの。お願い、誰かつむぎちゃんを。」
いつもどんと構えたコレットの取り乱した姿に、警備兵たちも只事ではないと、動き出す。
みんな目の前にある食堂にはお世話になっている。
ゴードンとコレットは、若い兵士にとっては
第二のお父さん、お母さんのような存在。
そして食堂で働くつむぎは、妹のようだったり、友人、淡い恋の相手だったりするのだ。
うっう~ん
ツムギが目を覚ますと、そこは知らない場所だった。
以前 ジルと過ごした山小屋のように、天井も壁も床も木がむき出しだ。
部屋を見回したが、私が横たえられていたベッドのみ。
他に家具がないのは、不自然だ。
誰かが日常的に生活している場所ではないのだろう。
幸いなことに、拘束はされていない。
外から男性の話し声が聞こえた。
「はい、約束どおり賢者を手に入れました。」
「うむ。では、これを。」
ジャラジャラとお金がすりあったような音が聞こえ、何人かの足音が遠ざかって行った。
賢者?
私は賢者と間違えられて連れ去られたの?
私の瞳が黒いから、間違えられたんだ。
これから私はどうなるのかな。
急に怖くなり、サーっと血の気が引いていく。
ギギー、パタン、カツカツカツ
扉が開いて、人が入ってきたようだ。
相手は一人?
慌てて私は眠った振りをする。
「賢者様、起きてください。もう大丈夫です。私はあなたを助けに来ました。」
男性の声がした。
えっ、本当に?
さっき、誰かとやりとりしてた人じゃないの? 信用していいのだろうか。
そのまま眠った振りを続けていると、
「まだ薬が効いてるのか。後でまた来るとするか。」と独り言を言い残し、立ち去った。
今の独り言。
確実に私を連れ去らった仲間のようだ。
仲間? いや連れ去りを依頼した人?
どうしよう。
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説

お飾り公爵夫人の憂鬱
初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。
私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。
やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。
そう自由……自由になるはずだったのに……
※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です
※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません
※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります
婚約破棄してくださって結構です
二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。
※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】
雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。
誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。
ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。
彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。
※読んでくださりありがとうございます。
ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。
いつか彼女を手に入れる日まで
月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる