【完結】賢者ではありませんが、私でいいのでしょうか?

青井 海

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第13話 仕事を探す

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朝、ヒューゴさんが買ってくれたパンと飲み物をありがたくいただく。
この施設にも食堂はあるが、食堂を利用する時はお金が必要らしい。

知らない女性が私を呼びにきてくれた。
ヒューゴさんが迎えに来てくれたらしい。
呼びに来てくれた女性にお礼を言い、洗濯物を急いで取りに行く。
しっかり乾いていたので、軽く畳んで、バッグに入れる。
そのままバタバタと出入口へ行くと、ヒューゴさんが壁にもたれかかって待っていた。

ヒューゴさんの立ち姿。
絵になるな。
年頃の女性たちが、彼の前を通り過ぎつつ、チラチラ見ている。
ヒューゴさん、あなたはその視線に気づかないの? それとも気づかないフリ?

「ヒューゴさん、おはようございます。お待たせしました。」
「おはよう。じゃあ行きましょう。」
スタスタ歩くヒューゴさんについて行く。

ヒューゴさんに連れて行かれたのは、最初に入った食堂だった。
「この食堂には警備兵がよく来るから、安全だ。店主の人柄も申し分がない。ちょうど店を手伝っていた娘さんが結婚して家を出たばかりで、人手が欲しかったそうだ。住み込みでいいそうだ。」

ヒューゴさんの横で、職人気質のご主人 ゴードンさんが無言で頷き、奥様 コレットさんが「そうなのよ。ツムギちゃん、よろしくね。」とニコニコ、

「本当ですか? 何でもします。よろしくお願いします。」
ゴードンさん、コレットさんが頷いてくれた。

ヒューゴさんへ話を通してくれていたお礼を伝えると、「ジルベール様にも伝えておきます。では、お元気で。」と帰って行った。

コレットさんが、これから生活する部屋へ案内して、あれこれ説明してくれる。

「ところで、ツムギちゃんとヒューゴ様はどんな関係なんだい?ちょうど人手が欲しかったのは確かだけど、それ以上にヒューゴ様に頼まれたからね。」コレットさんは嬉しそう。

もしかして恋話を期待されているんだろうか。違いますからね。

「うちは家族でやってるお店なんだ。抜けた娘の代わりに、ツムギちゃんにも何でもやってもらうことになる。これからよろしくね。あっ、それから朝昼晩、食堂で食べていいからね。朝は一緒に食べよう。昼と夜は忙しいから交代で食べることになる。」
「はい、よろしくお願いします。」

住む場所だけでなく、食事もついてる。
昼営業の片付けが済んだら、夜の営業準備が始まるまで少しだけ休憩がもらえるらしい。

仕事に慣れてきたら、街を散策してみたいな。
もっとこの街のことを知りたい。
お金が入ったら、必要なモノを少しずつ買い揃えていきたい。

食住が確保できて、ほっとした。
これで何とか暮らしていける。

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