【完結】賢者ではありませんが、私でいいのでしょうか?

青井 海

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第12話 迷惑かけられない

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ジルには、さっき食事をご馳走になった。
魚を取ってきてくれたり、マントを貸してくれたり、助けてもらった。

これ以上迷惑はかけられない。
「ヒューゴさん、すみませんが、仕事が決まるまで滞在できる場所を教えていただけませんか?」

「ツムギ!!」
ジル、怒ってる?
「ジル、今までありがとう。少しだけヒューゴさんを貸して欲しい。彼にここで生活するすべを教えてもらいたいの。」

彼はしばらく考えた後、私の意志が固いとわかったのか…
「わかった。ヒューゴ、すまないが、ツムギの仕事が決まるまで彼女についててくれないか?」

「ジル、私はヒューゴさんに滞在場所を案内してもらいながら、話を聞くだけでいいの。仕事が決まるまでなんて、そこまで頼れないよ。」

「いや、せめてそのくらいはさせてくれ。じゃあ、ツムギ、無理はするなよ。ヒューゴ、ツムギを頼む。」

そう言って、ジルはスノーに乗り、マルクスさんとともに去って行った。
もちろん、ティナさんも馬車で後に続く。

「ツムギさん、じゃあ、行きましょうか。」
「はい、ヒューゴさん、よろしくお願いします。」
ヒューゴさんは無料で滞在できる場所へ案内してくれた。
ここでは、男女に分かれた大部屋で、みな雑魚寝するようだ。

「ところで、ツムギさんはなぜマルクスでなく、私を指名したんですか?」
「だって、マルクスさんはジルの護衛でしょ?」
「なるほど、あなたは賢い人だ。では、また明日迎えに来ます。」
「はい、よろしくお願いします。」

ヒューゴさんは、帰って行った。
ここへ着くまでに、お店に立ち寄り、彼はパンと飲み物を買って渡してくれた。
その時にお金の価値や買い物の仕方なども教えてくれたのだ。

ヒューゴさんに頼んで正解だった。
おそらく彼は、ジルの先生的な立場なのではないかと思う。
人に教えることに慣れていて、瞬時に私が何がわからず困ってるのかを感じとれるようだ。

あー、お風呂に入りたい。
大部屋にいた女性に聞くと、ここにはなんと温泉が沸いていて、いつでも入れるそうだ。
お風呂も男女に分かれている。
脱衣場で服を脱ぎ、服や下着を持って洗い場へ向かう。
みな洗濯も洗い場で行うようだ。
洗ったモノを干すためのスペースもある。
本当に助かる。

お風呂だー。
ゆっくりと湯船につかる。
快適、快適。
お風呂から上がり、黒いバッグから替えの下着と洋服を出す。
替えの洋服はTシャツにだっぽりした太めのパンツ。

山奥の旅館へ向かうにあたり、何かあったら帰れないかもと一着ずつ替えを入れていた。
バスや電車の乗り継ぎが上手く行かず、どこかへ泊まる可能性もある。

実際、私は迷子になったわけで。
何事にも備える私。
過去の私を誉めてあげたい。

はあ~、さっぱりした。
    
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