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第10話 キーフォレス王国
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びっくりした。
彼らも私を一目見て、『賢者様』と言った。
黒い瞳が賢者の特徴らしい。
私と同じ日本人かもしれない。
私の他にも日本人がいて、何か素晴らしい、賢者らしい働きをしているのだろうか。
「ジル、賢者様と呼ばれる人がいるのなら、会ってみたいんだけど。」
「ツムギ、すまない。賢者には簡単には会えないんだ。僕も会ったことはない。黒い瞳としか知らされてなくて、男性なのか、女性なのか、年齢も全くわからないんだ。」
そっか、賢者様には会えないか。
ここは日本ではない。
ここでの私は無一文だ。
会話はできるようだが、文字は読めない。
どうすればいいんだろう。
考えにふけっていると、ジルの人差し指が近づいて、眉間をグリグリされた。
なに? 地味に痛いな。
「眉間にシワができてる。何か心配?」
いやいや心配事しかないよ。
「ジル、私はどうしたらいいんだろう。元の道を戻ったら、日本に帰りつくのかな?戻れる自信ないんだけど。この国で仕事がみつかるかな?」
「ツムギは何も心配いらないよ。しばらくは我が家に客人として滞在すればいい。先のことはゆっくり考えればいいよ。」
「でもジルベール様、それば難しいかと。」ヒューゴが渋い顔をしている。
「何かまずいことでも?」ジルがヒューゴへ尋ねたところに、すごい勢いで馬車が近づいてきた。
「ジルベールさま~。」
馬車からミントグリーンのドレスを着たかわいらしい女性が降りてきた。
「よかった、よかったです。私のことがイヤで居なくなったのではと心配してたんです。戻ってくださってよかった。」
彼女は大粒の涙を流しながら、ジルに抱きついた。
えっ、抱きついた。
人前で抱きついた。びっくりだ。
恋人?
小さくて柔らかそう、庇護欲をそそる女性だ。
「ティナ、心配をかけてすまない。どうしてこんなことになったのか、自分でもわからないんだ。」ジルは、ゆっくりと彼女から距離をとる。
「何も覚えてないのですか?」ティナさんが震えるような小さな声で確認する。
「ああ、なぜかスノーに揺られ、知らない場所にいた。ここに戻れたのは彼女のお陰だ。」
そこでティナさんは私の存在に初めて気がついたようで、頭の先からつま先までじーっと見つめる。
「彼女? 女性なの?」と小声でつぶやいたのが、私の耳にはしっかりと聞こえた。
まるで品定めされてる気分だ。
ティナさんは、胡散臭そうな様子で、「もしかして賢者様ですか?」と聞いてきた。
いやいや違いますけど、あなたも私を賢者とは思ってませんよね?
そんな聞き方でしたよ。
しかも女性であることも疑ってます?
私は半袖の白いブラウスに黒いパンツ姿。
黒いスニーカーを履き、黒いバッグを肩からかけている。
面接の予定だったから、落ち着いた格好にしたのだ。
旅館が山奥だから、念のため靴はスニーカーにした。
うっ、女性に見えない?
髪が短いから?
一応 化粧してたんだけど、旅の途中で洗い流してしまった。
今はスッピンだから?
彼らも私を一目見て、『賢者様』と言った。
黒い瞳が賢者の特徴らしい。
私と同じ日本人かもしれない。
私の他にも日本人がいて、何か素晴らしい、賢者らしい働きをしているのだろうか。
「ジル、賢者様と呼ばれる人がいるのなら、会ってみたいんだけど。」
「ツムギ、すまない。賢者には簡単には会えないんだ。僕も会ったことはない。黒い瞳としか知らされてなくて、男性なのか、女性なのか、年齢も全くわからないんだ。」
そっか、賢者様には会えないか。
ここは日本ではない。
ここでの私は無一文だ。
会話はできるようだが、文字は読めない。
どうすればいいんだろう。
考えにふけっていると、ジルの人差し指が近づいて、眉間をグリグリされた。
なに? 地味に痛いな。
「眉間にシワができてる。何か心配?」
いやいや心配事しかないよ。
「ジル、私はどうしたらいいんだろう。元の道を戻ったら、日本に帰りつくのかな?戻れる自信ないんだけど。この国で仕事がみつかるかな?」
「ツムギは何も心配いらないよ。しばらくは我が家に客人として滞在すればいい。先のことはゆっくり考えればいいよ。」
「でもジルベール様、それば難しいかと。」ヒューゴが渋い顔をしている。
「何かまずいことでも?」ジルがヒューゴへ尋ねたところに、すごい勢いで馬車が近づいてきた。
「ジルベールさま~。」
馬車からミントグリーンのドレスを着たかわいらしい女性が降りてきた。
「よかった、よかったです。私のことがイヤで居なくなったのではと心配してたんです。戻ってくださってよかった。」
彼女は大粒の涙を流しながら、ジルに抱きついた。
えっ、抱きついた。
人前で抱きついた。びっくりだ。
恋人?
小さくて柔らかそう、庇護欲をそそる女性だ。
「ティナ、心配をかけてすまない。どうしてこんなことになったのか、自分でもわからないんだ。」ジルは、ゆっくりと彼女から距離をとる。
「何も覚えてないのですか?」ティナさんが震えるような小さな声で確認する。
「ああ、なぜかスノーに揺られ、知らない場所にいた。ここに戻れたのは彼女のお陰だ。」
そこでティナさんは私の存在に初めて気がついたようで、頭の先からつま先までじーっと見つめる。
「彼女? 女性なの?」と小声でつぶやいたのが、私の耳にはしっかりと聞こえた。
まるで品定めされてる気分だ。
ティナさんは、胡散臭そうな様子で、「もしかして賢者様ですか?」と聞いてきた。
いやいや違いますけど、あなたも私を賢者とは思ってませんよね?
そんな聞き方でしたよ。
しかも女性であることも疑ってます?
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面接の予定だったから、落ち着いた格好にしたのだ。
旅館が山奥だから、念のため靴はスニーカーにした。
うっ、女性に見えない?
髪が短いから?
一応 化粧してたんだけど、旅の途中で洗い流してしまった。
今はスッピンだから?
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