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第9話 ようやく街へ
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朝の光で目を覚ますと、ジルは既に起きていた。
「ジル、おはよう。」
「ツムギ、おはよう。」
準備を手早く済ませ、すぐに出発する。
しばらく進むと、森が開け、ポツポツと小さな家が見えてきた。
「街だ!街だよ。」私がはしゃぐ。
「うん、やっと着いた。」ジルもほっとしたようだ。
街の入り口には、警備兵?らしき人たちが居て、ジルのマントの留め具を見て騒いでいる。
ジルが何か話すと、警備兵の一人が馬で出ていった。
警備兵がいる場所にスノーを預け、ジルは向かいの食堂と思わしきお店に入ろうとしている。
えっ、お金がないのに入っちゃうの?
彼の袖を引っ張り引き留める。
「お金がないと入れないよ。」とビクビクする私に、「大丈夫だから。つむぎは何でも好きなものを注文して。」彼はニッコリ笑顔だ。
メニュー表には記号? 文字?
何と書かれているかわからない。
はっ、ここは日本じゃないんだ。
そういえば、旅館みつからなかった。
面接に行けなかったお詫びの連絡しなきゃ。
慌てて携帯を出すも、電波が届いていない。
両手で頭を抱える私を見て、彼は私の分まで注文してくれたようだ。
トントン、トン
人の気配と音が聞こえて顔をあげると、薄いパンケーキ、サラダ、シチューみたいなとろみのあるスープが私の目の前に置かれていた。
湯気がたちのぼっている。
なんとも美味しそう。
「食べても大丈夫なの?」とジルに確認する。
「うん、本当に心配いらないから、冷めないうちに食べよう。いただきます。」彼がスープから食べ始めた。
私も彼に倣って食べ始める。
温かいスープはいいね。
体を芯から温めてくれる。
だんだん気持ちが落ち着いてきた。
文字は読めないけれど、言葉は理解できた。会話できるのなら、なんとかなる?
外が騒がしくなり、がっちりした大きな男性と背が高くスラリとした男性の二人が入ってきた。
「ジルベール様、ご無事で何よりです。」
「いったいどこへ行ってたんですか?突然居なくなって、みな心配していますよ。」
「心配かけてすまない。このとおり僕は無事だ。彼女が助けてくれたんだ。」
彼の言葉を受け、二人が私をジロリと見て、はっと息を飲んだ。
「賢者様」
スラリとしな男性がポツリと小声でつぶやいた。
「賢者様ですか?」
がっちりした男性が野太い声で聞いてきた。
私は無言で、彼らの姿をじーっと観察する。
日本人には見えない。
カラフルな人たちだ。
ジルとはまた違った色合い。
「賢者様ですか?」
スラリとした男性もはっきりした声で聞いてきた。
「いいえ、違います。」
なに? 賢者様って。
物語の世界? ゲームの世界?
「ジル、ここ、もしかしてキーフォレス王国?」私は取り乱してしまった。
「ツムギ、落ち着いて。僕がいるから安心して。そう、ここはキーフォレス王国で間違いない。」
スラリとした男性を示し、「彼はヒューゴ」
がっちりした男性を示し、「彼はマルクス」
二人とも僕を支えてくれる。
僕たちの味方だ。
「ジル、おはよう。」
「ツムギ、おはよう。」
準備を手早く済ませ、すぐに出発する。
しばらく進むと、森が開け、ポツポツと小さな家が見えてきた。
「街だ!街だよ。」私がはしゃぐ。
「うん、やっと着いた。」ジルもほっとしたようだ。
街の入り口には、警備兵?らしき人たちが居て、ジルのマントの留め具を見て騒いでいる。
ジルが何か話すと、警備兵の一人が馬で出ていった。
警備兵がいる場所にスノーを預け、ジルは向かいの食堂と思わしきお店に入ろうとしている。
えっ、お金がないのに入っちゃうの?
彼の袖を引っ張り引き留める。
「お金がないと入れないよ。」とビクビクする私に、「大丈夫だから。つむぎは何でも好きなものを注文して。」彼はニッコリ笑顔だ。
メニュー表には記号? 文字?
何と書かれているかわからない。
はっ、ここは日本じゃないんだ。
そういえば、旅館みつからなかった。
面接に行けなかったお詫びの連絡しなきゃ。
慌てて携帯を出すも、電波が届いていない。
両手で頭を抱える私を見て、彼は私の分まで注文してくれたようだ。
トントン、トン
人の気配と音が聞こえて顔をあげると、薄いパンケーキ、サラダ、シチューみたいなとろみのあるスープが私の目の前に置かれていた。
湯気がたちのぼっている。
なんとも美味しそう。
「食べても大丈夫なの?」とジルに確認する。
「うん、本当に心配いらないから、冷めないうちに食べよう。いただきます。」彼がスープから食べ始めた。
私も彼に倣って食べ始める。
温かいスープはいいね。
体を芯から温めてくれる。
だんだん気持ちが落ち着いてきた。
文字は読めないけれど、言葉は理解できた。会話できるのなら、なんとかなる?
外が騒がしくなり、がっちりした大きな男性と背が高くスラリとした男性の二人が入ってきた。
「ジルベール様、ご無事で何よりです。」
「いったいどこへ行ってたんですか?突然居なくなって、みな心配していますよ。」
「心配かけてすまない。このとおり僕は無事だ。彼女が助けてくれたんだ。」
彼の言葉を受け、二人が私をジロリと見て、はっと息を飲んだ。
「賢者様」
スラリとしな男性がポツリと小声でつぶやいた。
「賢者様ですか?」
がっちりした男性が野太い声で聞いてきた。
私は無言で、彼らの姿をじーっと観察する。
日本人には見えない。
カラフルな人たちだ。
ジルとはまた違った色合い。
「賢者様ですか?」
スラリとした男性もはっきりした声で聞いてきた。
「いいえ、違います。」
なに? 賢者様って。
物語の世界? ゲームの世界?
「ジル、ここ、もしかしてキーフォレス王国?」私は取り乱してしまった。
「ツムギ、落ち着いて。僕がいるから安心して。そう、ここはキーフォレス王国で間違いない。」
スラリとした男性を示し、「彼はヒューゴ」
がっちりした男性を示し、「彼はマルクス」
二人とも僕を支えてくれる。
僕たちの味方だ。
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