【完結】賢者ではありませんが、私でいいのでしょうか?

青井 海

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第2話 ここはどこ?

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「大丈夫ですか?」つむぎは再度声をかける。
ビクッと彼の体が跳ねた。
彼は目を見開き、すごく驚いた顔をしている。

えっ? 私って人がそんなに驚く顔をしてるの? それとも格好が変?

「君は? あっ、君が助けてくれたのか。ありがとう。ところでここはどこだ?」
彼は馬に乗っていたから、意識がないまま遠くまで来てしまったのだろうか。

それにしても馬?
彼は白いシャツに黒いパンツといった普通の格好にマントらしき布を纏っている。
乗馬用の格好ではないよね?
それにマントって初めて見た。

年齢は、私よりも年下かな。
色白なので、赤い目が目立つ。
ルビーのようにキレイな瞳だ。
赤い目は珍しいんじゃないかな。
私は見聞きしたことがない。
私が知らないだけ?

「ごめんなさい。私も初めて来た場所で、しかも道に迷ってしまって、ここがどこなのかわからないんです。携帯も繋がらなくて。」
つむぎの言葉に、彼が首を傾げている。

「君もここがどこかわからないんだね。ところで携帯とは何だ?」
えっ、携帯を知らない人なんているの?

「これです。」と携帯を彼の目の前に差し出した。
彼は、携帯を初めて見たようだ。
どう扱うものかわからないのだろう。
じっと見つめたまま不思議そうな顔をしている。

本当に携帯を知らないの?
日本にそんな人がいる?
「あなたは日本人ですか?」とのつむぎの問いに、彼は少し考えた後で頭をゆっくり左右にふった。
違うということ?
もしかして日本もわからない?

「君は賢者なのか?賢者は瞳が黒いらしい。」
賢者って、まさか、まさか。
「私は一般人ですよ。瞳が黒い人はうようよいます。あなたのような赤い目のほうが珍しいですよね?」

なぜ彼はビックリしているの?
どういうこと?
「ここは賢者の住む世界なのか?」

だから、賢者って何なのよ。
私の怪訝な顔に気づいた彼が説明してくれる。
「賢者は我が国に希望をもたらす者。我々に新たな知識を授ける者だ。」

「私は賢者なんて大層なモノではありません。私はつむぎ。桐野 つむぎです。」
「ツムギとは、名前か?僕はジルベール。この馬はスノー。」

「ジルベールさんは、どこから来たんですか?」
「僕はキーフォレス王国出身だが、ここはキーフォレスではないのか?」
キーフォレス王国なんて国名聞いたことがない。遠くの小さな国?
でも彼は馬でここまで来たのよね。

「ここは日本だと思うのですが‥」
私にはここがどこであるか確かめるすべがなかった。
もしかして私がキーフォレス王国とやらに居るのだろうか。

「ジルベールさんとスノーは左の道から来ていました。もし戻るのなら私の行き先も同じ方向なので、一緒に行きませんか?一人より二人のほうが心強いですから。」
「確かにそうだな。一緒に行こう。」
「はい、よろしくお願いします。」

よかった。仲間ができた。
全然 旅館みつからないし、一人で知らない道を歩くの不安だったんだ。


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