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第1話 大丈夫ですか?
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私は、桐野 つむぎ(きりの つむぎ)18歳
先日 高校を卒業したばかり。
高校三年の春、突然 両親がいなくなった。
その後、全く交流のなかった父の妹だという叔母さん夫婦が私を引き取ってくれた。
叔父さんは、「高校卒業までだ。」と私を引き取ることを認めてくれた。
なぜ交流がなかったのか。
私が幼い時、父が親戚の反対を押しきり仕事を辞め、農家に転身したから。
実家から遠く離れた田舎での生活は、両親には合っていたようだ。
車好きの父はよく車をいじっていた。
農機具もよく改良していたな。
私は登校が大変。
高校生になってからは自宅の最寄り駅まで母に車で送迎してもらっていた。
田舎に一人残された私は、本当に困った。
叔母さんの家は便利な場所にあり、高校まで通える距離だったので、卒業までは、そのまま通うことになった。
あまり勉強が得意ではなかった私は、両親がいなくなった後、ますます勉強しなくなった。
学校の成績は下のほう。
不景気だったこともあり、就職は決まらなかった。
叔母さんは引き留めてくれたが、小さな子供たちがいて、まだまだ手がかかる。
これ以上、迷惑はかけられない。
叔父さんとの約束どおり、高校卒業と同時に家を出た。
両親がお金を残してくれていたので、高校を無事に卒業、一人暮らしを始めることができた。
田舎の家は、車がないと生活が難しい場所。今のところ戻るつもりはない。
昼、夜ともに賄いのあるバイトをみつけることができたが、シフトに入れないと、厳しい生活になる。
そろそろ限界だ。
早く就職先をみつけなければ…
私はフリー情報誌でみつけた住み込みで働く旅館へ行ってみることにした。
電話すると、明後日の11時に面接してもらえることになった。
決まれば、住む場所と食事が保証される。
*
旅館の場所はかなり遠く、しかも山奥だ。
田舎ではあるが、一応バスが通っている。
朝早く、電車とバスを乗り継ぎ、旅館へ向かう。
バスを降りて歩いているが、旅館らしき建物は見えてこない。
場所を確認しようと携帯を見ると、電波が届いていなかった。
車が通りかかることを祈りながら、山の中を一人で歩き続けている。
前から馬がトコトコ歩いてきた。
えっ? 馬?
馬の背には人が乗っているようだ。
上半身が前に傾き、フラフラと揺れている。
もしかして意識を失っている?
慌てて駆け寄り、「大丈夫ですか?」と声をかける。
馬はよく訓練されているのか、私の前でおとなしく止まってくれた。
「大丈夫ですか?」今度は軽く揺すってみるも、反応がない。
川岸まで馬をひき、馬上の人の重さを全身で受け止めながら、ゆっくりと地面へおろす。
草の上に横たえ、近くを流れる川の水を手にすくって飲んでみる。
うん、変な味はしない。
飲んでも大丈夫そうだと、彼の口元に垂らしてみる。
冷たくてビックリしたのが、ビクッと反応があり、ゆっくりと瞼が開いた。
えっ、赤い目?
その人は、黒髪に、見たことのない赤い目をしていた。
先日 高校を卒業したばかり。
高校三年の春、突然 両親がいなくなった。
その後、全く交流のなかった父の妹だという叔母さん夫婦が私を引き取ってくれた。
叔父さんは、「高校卒業までだ。」と私を引き取ることを認めてくれた。
なぜ交流がなかったのか。
私が幼い時、父が親戚の反対を押しきり仕事を辞め、農家に転身したから。
実家から遠く離れた田舎での生活は、両親には合っていたようだ。
車好きの父はよく車をいじっていた。
農機具もよく改良していたな。
私は登校が大変。
高校生になってからは自宅の最寄り駅まで母に車で送迎してもらっていた。
田舎に一人残された私は、本当に困った。
叔母さんの家は便利な場所にあり、高校まで通える距離だったので、卒業までは、そのまま通うことになった。
あまり勉強が得意ではなかった私は、両親がいなくなった後、ますます勉強しなくなった。
学校の成績は下のほう。
不景気だったこともあり、就職は決まらなかった。
叔母さんは引き留めてくれたが、小さな子供たちがいて、まだまだ手がかかる。
これ以上、迷惑はかけられない。
叔父さんとの約束どおり、高校卒業と同時に家を出た。
両親がお金を残してくれていたので、高校を無事に卒業、一人暮らしを始めることができた。
田舎の家は、車がないと生活が難しい場所。今のところ戻るつもりはない。
昼、夜ともに賄いのあるバイトをみつけることができたが、シフトに入れないと、厳しい生活になる。
そろそろ限界だ。
早く就職先をみつけなければ…
私はフリー情報誌でみつけた住み込みで働く旅館へ行ってみることにした。
電話すると、明後日の11時に面接してもらえることになった。
決まれば、住む場所と食事が保証される。
*
旅館の場所はかなり遠く、しかも山奥だ。
田舎ではあるが、一応バスが通っている。
朝早く、電車とバスを乗り継ぎ、旅館へ向かう。
バスを降りて歩いているが、旅館らしき建物は見えてこない。
場所を確認しようと携帯を見ると、電波が届いていなかった。
車が通りかかることを祈りながら、山の中を一人で歩き続けている。
前から馬がトコトコ歩いてきた。
えっ? 馬?
馬の背には人が乗っているようだ。
上半身が前に傾き、フラフラと揺れている。
もしかして意識を失っている?
慌てて駆け寄り、「大丈夫ですか?」と声をかける。
馬はよく訓練されているのか、私の前でおとなしく止まってくれた。
「大丈夫ですか?」今度は軽く揺すってみるも、反応がない。
川岸まで馬をひき、馬上の人の重さを全身で受け止めながら、ゆっくりと地面へおろす。
草の上に横たえ、近くを流れる川の水を手にすくって飲んでみる。
うん、変な味はしない。
飲んでも大丈夫そうだと、彼の口元に垂らしてみる。
冷たくてビックリしたのが、ビクッと反応があり、ゆっくりと瞼が開いた。
えっ、赤い目?
その人は、黒髪に、見たことのない赤い目をしていた。
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