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第8話 あり得ない

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リアム・クレバー 十七歳
僕は、クレバー王国の第二王子として、生を受けた。
第一王子である兄は優秀だ。
僕は後々、臣下として兄を支えていきたいと思っている。

最近、父の体調が悪そうなのだ。
それを周りへ悟られないように、王である父は無理しているように見える。

兄は十九歳、僕が十七歳。
僕らはまだまだ若すぎる。
父に何かあれば、国が荒れる。
僕は周りに知らせることなく、何とかしたいと考えた。

跡継ぎである兄に何かあってはならない為、兄は巻き込めない。
一人でどうにかするしかないのだ。

病気であるなら、治癒魔法か薬師へ頼むべきだ。
だが、それだと知られてしまう。

僕は、時間をみつけては、王立図書館へ通った。 
そしてみつけた。
妖精について書かれた本を。

どこへ行けば、妖精に会えるのか。
大人たちが話す『妖精の森』ここが一番、妖精と出会える可能性があるように思われた。

ある日、こっそりと一人で王宮を抜け出した僕は、『妖精の森』へ来ていた。
妖精を探して歩いていると、話し声が聞こえたんだ。
この森に誰かいる。
誰かが、誰かに話しかけている。
もしかしたら、妖精なのかもしれない。

僕は、声の聞こえたほうへと急いだ。
急ぎすぎて、ガサガサと音を立ててしまった。
立ち去ろうとする男女の姿が見えた。
僕と同じくらいだろうか。
子供のようだが、どちらもキレイな顔をしている。
もしや妖精?妖精だといいのに。
僕は祈る気持ちで声をかけた。

残念ながら、僕と同じ人間の子供たちだった。
子供だけで森に?無謀すぎないか?
いや僕も同じか。
女の子のほうが、ギャーギャーとうるさい。
まるで山猿のようだ。
心の中で思っていたら、口に出ていた。
さすがに女の子に山猿と言ったのは、悪かったと反省した。

しかし、あの気の短さ、あの口の悪さは酷かった。
貴族としては、あり得ないと思ったのだ。
心の声を上手くコントロールできなければ、貴族としてやっていくのは難しい。

彼女の名前を聞き、更に驚いた。
僕の婚約者候補にあがっている令嬢だったのだ。

その後、彼女は森で騒ぎ、狼を呼び寄せてしまった。
普通にしていれば、狼は眠っていたのではないかと思う。
それをわざわざ呼んでしまうなんて。

彼女と婚約?
いやいやあり得ない。

婚約者候補から外して欲しいと、王妃である母に頼んだ。
だが、今の段階で候補から外すわけにはいかないと却下されたのだ。

父の信頼が厚く、宰相であるアルンテ侯爵より直々に婚約話がきていること、またいろいろなバランスを維持する為にも、彼女は最終候補が二人に絞られるまでは残すと告げられた。

僕の婚約者候補、側近候補を決める茶会にも、彼女を招くしかなかった。
だが、話す必要はない。
彼女の人となりは、あの森でよくわかった。

最後の二人に絞った後、彼女を選ばなければいいのだ。






    
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