19 / 28
第19話 罪滅ぼし
しおりを挟む
お茶の時間が終わり、叔母様とライリーが帰ることになり、馬車まで送る。
「ライリー、今日は迎えに来てくれてありがとう。」
「罪滅ぼししてもらう約束だけど……明日、一緒に出かけて欲しい。」
「えっ、そんなことでいいの?」
「オリィのたった1週間しかない休みのうち、貴重な1日を僕がもらうわけだからね?
それだけで充分な罪滅ぼしになるよ。
明日迎えに来るから、おめかしして待ってて。楽しみにしてる。じゃあ!」
ライリーは軽く手を降り、馬車で帰って行った。
本当にそんなことでいいのかなぁ。
私も実家へ帰ってきたとはいえ、特に予定も入ってないし、のんびりするかな~と思っていた。
ライリーとのお出かけなら気楽だし、絶対楽しいはず。
罪滅ぼしどころか、私にとってはご褒美じゃないかしら。
お出かけの前って楽しみで、なかなか眠れなかったりする。
私もなかなか眠れなかった。
まぁ昼寝したからかもしれないけれど……
***
翌日、侍女のアニスが準備を手伝ってくれる。
マリオン侯爵家では自分のことは自分でやっていたから、手伝われなくても一通りのことはできるんだけど……
使用人が少なくなったとはいえ、実家での私はお嬢様である。
アニスが出してきた淡いラベンダー色のドレスに着替える。
腰まである髪はブラシで丁寧に整えられて、サイドを編み込まれていく。
編み込まれた部分を後ろでまとめ、白いリボンが結ばれた。
軽く化粧が施されると、気分があがる。
準備が終わり、部屋の窓から外を眺めていると、馬車が我が家へ向かってくるのが見えた。
ライリーだわ。
私はゆっくりと階段を下り、玄関へと向かう。
執事によって扉が開かれ、ライリーが入ってきた。
「ライリー、おはよう!」
「オリィ、今日もキレイだね。僕の為におめかししてくれて嬉しいよ。」
整いすぎて、冷たく見られがちだというライリーの顔がフニャリと緩む。
「ありがとう。ライリーもカッコいいわよ。ふふふっ。」
なんだろう、社交辞令とわかっていても、キレイなんて言われるとたとえ従兄であっても照れる。
彼の顔のせいだと思う。
今のフニャリとしたあまーい顔。
カッコいいのにかわいくて、見ているこっちが照れる。
「じゃあ、行こうか。」
「うん。」
彼にエスコートされ、馬車に乗り込む。
まず着いたのは、祖父母の邸だった。
「オリィはお祖父様、お祖母様に会いたがってただろ?僕から連絡しておいた。」
お祖父様、お祖母様は昼食を準備して待っていてくれた。
4人で食事しながら、近況を報告する。
私はマリオン侯爵家で、とても恵まれていて、よくしていただいているとだけ話した。
アレク様の瞳のことなど、いろんなことがあったけれど、それは話せないから。
私の胸の内に留めておく。
お祖父様にマリオン侯爵家を紹介してもらったお礼を伝えることができてよかった。
昼食を終えると、また馬車に乗り込み、街へとやってきた。
どこへ行くのだろうと思っていると、赤いとんがり屋根のかわいらしいお店へ。
ふわっふわパンケーキで有名なお店。
扉を開けると、カランカランと軽やかな鐘の音が鳴り響く。
ふわ~と甘い香りが漂う店内は木製の円テーブルとイスが並んでいる。
まだお茶の時間には少し早いが、もうほとんどの席が埋まっている。
待たずに座れて運がよかった。
スカイブルーのワンビースに白いエプロン、髪にカチューシャをつけた店員さんたち。
忙しそうではあるが、ステキな笑顔で接客してくれる。
店内は女性客ばかり。
ちらほらと男性客の姿も見えるが、みな女性連れだ。
私は、クリームとフルーツがたんまりとのったパンケーキと紅茶を。
彼は、蜂蜜とナッツがのったパンケーキにコーヒーを注文。
どちらも本当に美味しそう。
ライリーがパンケーキを食べている姿を見ていると笑われた。
「あっ、さてはこっちも食べたいんだろう?少し食べるか?」
ナイフとフォークで切り分けたものを私の皿にのせてくれる。
私もお返しに、少し切り分けたものを渡す。
2種類ものパンケーキを味わうことができて大満足。
お腹いっぱいでふうっと息をはき、イスから立ち上がる。
「食べすきたか?」
彼に笑われた。
何もかもお見通しである。
次は、若い女性たちの間で噂になっているジュエリーショップの前で止まった。
「オリィ、確か大きくなったら行ってみたいと言ってただろ?」
ライリーは私が何気なくポロリとこぼした言葉を拾い、覚えていてくれたようだ。
お店は白を基調としていて洗練された落ち着いた雰囲気。
光を抑えた黒いテーブルには色とりどりなアクセサリーが並んでいる。
宝石は小ぶりで普段身につけるのによさそうなものばかり。
どれも素敵、素敵なんだけれど……
我が家の現状を思うと、新しくアクセサリーを購入するなんて考えられない。
それでも一度行ってみたかったお店に連れて来てもらえて、とても嬉しい。
「これなんかどう? オリィによく似合う。」
ライリーから髪飾りを手渡された。
黒地にシルバーの花びらがついている。
その花びらの中央には小さなアメジスト。
手のひらに乗った髪飾りをじーっと見ているとヒョイっと取り上げられた。
彼は私の髪に結ばれたリボンをスルスルと取り去り、パチンと髪飾りをつけた。
「ほら、見てごらん?」
大きな鏡の前にエスコートされたが、後ろについた髪飾りは見えない。
店員さんが手鏡を渡してくれ、鏡に映る後ろ姿を手鏡で確認した。
私の髪色に髪飾りの黒がよく似合う。
店員さんに手鏡を返すと、
「よくお似合いです。ステキな旦那様ですね。」
ニコリと微笑む店員さん。
だっ、だんなさま~?
「ライリー、今日は迎えに来てくれてありがとう。」
「罪滅ぼししてもらう約束だけど……明日、一緒に出かけて欲しい。」
「えっ、そんなことでいいの?」
「オリィのたった1週間しかない休みのうち、貴重な1日を僕がもらうわけだからね?
それだけで充分な罪滅ぼしになるよ。
明日迎えに来るから、おめかしして待ってて。楽しみにしてる。じゃあ!」
ライリーは軽く手を降り、馬車で帰って行った。
本当にそんなことでいいのかなぁ。
私も実家へ帰ってきたとはいえ、特に予定も入ってないし、のんびりするかな~と思っていた。
ライリーとのお出かけなら気楽だし、絶対楽しいはず。
罪滅ぼしどころか、私にとってはご褒美じゃないかしら。
お出かけの前って楽しみで、なかなか眠れなかったりする。
私もなかなか眠れなかった。
まぁ昼寝したからかもしれないけれど……
***
翌日、侍女のアニスが準備を手伝ってくれる。
マリオン侯爵家では自分のことは自分でやっていたから、手伝われなくても一通りのことはできるんだけど……
使用人が少なくなったとはいえ、実家での私はお嬢様である。
アニスが出してきた淡いラベンダー色のドレスに着替える。
腰まである髪はブラシで丁寧に整えられて、サイドを編み込まれていく。
編み込まれた部分を後ろでまとめ、白いリボンが結ばれた。
軽く化粧が施されると、気分があがる。
準備が終わり、部屋の窓から外を眺めていると、馬車が我が家へ向かってくるのが見えた。
ライリーだわ。
私はゆっくりと階段を下り、玄関へと向かう。
執事によって扉が開かれ、ライリーが入ってきた。
「ライリー、おはよう!」
「オリィ、今日もキレイだね。僕の為におめかししてくれて嬉しいよ。」
整いすぎて、冷たく見られがちだというライリーの顔がフニャリと緩む。
「ありがとう。ライリーもカッコいいわよ。ふふふっ。」
なんだろう、社交辞令とわかっていても、キレイなんて言われるとたとえ従兄であっても照れる。
彼の顔のせいだと思う。
今のフニャリとしたあまーい顔。
カッコいいのにかわいくて、見ているこっちが照れる。
「じゃあ、行こうか。」
「うん。」
彼にエスコートされ、馬車に乗り込む。
まず着いたのは、祖父母の邸だった。
「オリィはお祖父様、お祖母様に会いたがってただろ?僕から連絡しておいた。」
お祖父様、お祖母様は昼食を準備して待っていてくれた。
4人で食事しながら、近況を報告する。
私はマリオン侯爵家で、とても恵まれていて、よくしていただいているとだけ話した。
アレク様の瞳のことなど、いろんなことがあったけれど、それは話せないから。
私の胸の内に留めておく。
お祖父様にマリオン侯爵家を紹介してもらったお礼を伝えることができてよかった。
昼食を終えると、また馬車に乗り込み、街へとやってきた。
どこへ行くのだろうと思っていると、赤いとんがり屋根のかわいらしいお店へ。
ふわっふわパンケーキで有名なお店。
扉を開けると、カランカランと軽やかな鐘の音が鳴り響く。
ふわ~と甘い香りが漂う店内は木製の円テーブルとイスが並んでいる。
まだお茶の時間には少し早いが、もうほとんどの席が埋まっている。
待たずに座れて運がよかった。
スカイブルーのワンビースに白いエプロン、髪にカチューシャをつけた店員さんたち。
忙しそうではあるが、ステキな笑顔で接客してくれる。
店内は女性客ばかり。
ちらほらと男性客の姿も見えるが、みな女性連れだ。
私は、クリームとフルーツがたんまりとのったパンケーキと紅茶を。
彼は、蜂蜜とナッツがのったパンケーキにコーヒーを注文。
どちらも本当に美味しそう。
ライリーがパンケーキを食べている姿を見ていると笑われた。
「あっ、さてはこっちも食べたいんだろう?少し食べるか?」
ナイフとフォークで切り分けたものを私の皿にのせてくれる。
私もお返しに、少し切り分けたものを渡す。
2種類ものパンケーキを味わうことができて大満足。
お腹いっぱいでふうっと息をはき、イスから立ち上がる。
「食べすきたか?」
彼に笑われた。
何もかもお見通しである。
次は、若い女性たちの間で噂になっているジュエリーショップの前で止まった。
「オリィ、確か大きくなったら行ってみたいと言ってただろ?」
ライリーは私が何気なくポロリとこぼした言葉を拾い、覚えていてくれたようだ。
お店は白を基調としていて洗練された落ち着いた雰囲気。
光を抑えた黒いテーブルには色とりどりなアクセサリーが並んでいる。
宝石は小ぶりで普段身につけるのによさそうなものばかり。
どれも素敵、素敵なんだけれど……
我が家の現状を思うと、新しくアクセサリーを購入するなんて考えられない。
それでも一度行ってみたかったお店に連れて来てもらえて、とても嬉しい。
「これなんかどう? オリィによく似合う。」
ライリーから髪飾りを手渡された。
黒地にシルバーの花びらがついている。
その花びらの中央には小さなアメジスト。
手のひらに乗った髪飾りをじーっと見ているとヒョイっと取り上げられた。
彼は私の髪に結ばれたリボンをスルスルと取り去り、パチンと髪飾りをつけた。
「ほら、見てごらん?」
大きな鏡の前にエスコートされたが、後ろについた髪飾りは見えない。
店員さんが手鏡を渡してくれ、鏡に映る後ろ姿を手鏡で確認した。
私の髪色に髪飾りの黒がよく似合う。
店員さんに手鏡を返すと、
「よくお似合いです。ステキな旦那様ですね。」
ニコリと微笑む店員さん。
だっ、だんなさま~?
0
お気に入りに追加
50
あなたにおすすめの小説
目が覚めたら醜女の悪役令嬢だったので、とりあえず自己改造から始めますね
下菊みこと
恋愛
ミレイは平凡な孤児の少女。ある日馬車に轢かれそうになった猫を助ける代わりに自らの命を落としてしまう。…が、目を覚ますと何故かその馬車で運ばれていた公爵令嬢、ミレイユ・モニク・マルセルに憑依していて…。本当のミレイユ様は?これからどうすればいいの?とりあえずまずは自己改造から始めますね!
ざまぁの本番は27話と28話辺りです。結構キツいお仕置きになります。
小説家になろう様でも投稿しています。
一度死んだら美形の魔法使いに異世界転生させられて、その後溺愛してくる彼と悪役令嬢を婚約破棄までさせてしまいました
蓮恭
恋愛
「お前は元いた世界で死んだ。だが俺がこの世界、つまり元いた世界ではない別世界へと転生させたので今生きている。」
「……へ?」
恐ろしく美形だけど図らずとも主人公を観察していた魔法使いが、女子高校生の主人公を異世界転生させる話。
悪役令嬢と魔法使いの理不尽な婚約を、主人公が婚約破棄したり、悪いオジサンを断罪したり……。
*作者が好きなザマア発動します。
魔法や悪役令嬢要素も含みます。
『小説家になろう』様にも掲載中です。
【完結】婚約破棄寸前の悪役令嬢は7年前の姿をしている
五色ひわ
恋愛
ドラード王国の第二王女、クラウディア・ドラードは正体不明の相手に襲撃されて子供の姿に変えられてしまった。何とか逃げのびたクラウディアは、年齢を偽って孤児院に隠れて暮らしている。
初めて経験する貧しい暮らしに疲れ果てた頃、目の前に現れたのは婚約破棄寸前の婚約者アルフレートだった。
王子好きすぎ拗らせ転生悪役令嬢は、王子の溺愛に気づかない
エヌ
恋愛
私の前世の記憶によると、どうやら私は悪役令嬢ポジションにいるらしい
最後はもしかしたら全財産を失ってどこかに飛ばされるかもしれない。
でも大好きな王子には、幸せになってほしいと思う。
身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~
湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。
「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」
夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。
公爵である夫とから啖呵を切られたが。
翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。
地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。
「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。
一度、言った言葉を撤回するのは難しい。
そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。
徐々に距離を詰めていきましょう。
全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。
第二章から口説きまくり。
第四章で完結です。
第五章に番外編を追加しました。
私も一応、後宮妃なのですが。
秦朱音@アルファポリス文庫より書籍発売中
恋愛
女心の分からないポンコツ皇帝 × 幼馴染の後宮妃による中華後宮ラブコメ?
十二歳で後宮入りした翠蘭(すいらん)は、初恋の相手である皇帝・令賢(れいけん)の妃 兼 幼馴染。毎晩のように色んな妃の元を訪れる皇帝だったが、なぜだか翠蘭のことは愛してくれない。それどころか皇帝は、翠蘭に他の妃との恋愛相談をしてくる始末。
惨めになった翠蘭は、後宮を出て皇帝から離れようと考える。しかしそれを知らない皇帝は……!
※初々しい二人のすれ違い初恋のお話です
※10,000字程度の短編
※他サイトにも掲載予定です
※HOTランキング入りありがとうございます!(37位 2022.11.3)
「君を愛す気はない」と宣言した伯爵が妻への片思いを拗らせるまで ~妻は黄金のお菓子が大好きな商人で、夫は清貧貴族です
朱音ゆうひ
恋愛
アルキメデス商会の会長の娘レジィナは、恩ある青年貴族ウィスベルが婚約破棄される現場に居合わせた。
ウィスベルは、親が借金をつくり自殺して、後を継いだばかり。薄幸の貴公子だ。
「私がお助けしましょう!」
レジィナは颯爽と助けに入り、結果、彼と契約結婚することになった。
別サイトにも投稿してます(https://ncode.syosetu.com/n0596ip/)
死んで巻き戻りましたが、婚約者の王太子が追いかけて来ます。
拓海のり
恋愛
侯爵令嬢のアリゼは夜会の時に血を吐いて死んだ。しかし、朝起きると時間が巻き戻っていた。二度目は自分に冷たかった婚約者の王太子フランソワや、王太子にべったりだった侯爵令嬢ジャニーヌのいない隣国に留学したが──。
一万字ちょいの短編です。他サイトにも投稿しています。
残酷表現がありますのでR15にいたしました。タイトル変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる