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第64話 牧場へ
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バルバラ侯爵邸に到着。
今日はゆっくり休み、明朝から視察へ出かけることになった。
用意された部屋はシンプルでとても居心地がいい。
部屋の壁には草原を駆ける大きな黒い牛と小さな黒い牛の絵画。
つぶらな瞳に吸い寄せられる。
親子を描いたのかな……
なんだかほのぼのする。
客室に牛の絵はどうなんだろう……
あっ、でも牛を幸運のシンボルと考える地域もあるようだから、いいのか。
夕食前に湯浴みへと案内される。
おっ、お湯が乳白色。
これはミルク風呂かな……
贅沢だし、お肌によさそうだ。
ポカボカ温まった体をロナがマッサージしてくれる。
馬車で座りっぱなしの時間が長かったからね。
いくら王家の用意してくれた馬車でも長時間乗ると、あちこち痛い。
ブルーグリーンのドレスを身に纏い、夕食の席へ向かう。
夕飯のメインはどーんっと大きなステーキ。
なかなかの迫力だ。
私の前に置かれたものもすごいに、ヘンリー王子たち男性の前にあるステーキの大きさは半端ない。
ソースは後からかけてもらえるのかなぁとワクワクしていたら、みんなモリモリ食べ出した。
あれ?味がついてるの?
フォークとナイフで一口サイズに切り分け、口へ運ぶ。
塩コショウのシンプルな味付けで、肉の味がよくわかる。
これは、これで美味しいのだが、量が多いし、ソースで味を変えたくなる。
「あの、ステーキソースはありますか?」
失礼にならないか心配で恐る恐る確認すると、給仕が少し黄色がかった白いソースを持ってきてくれた。
少し肉にかけて食べてみる。
ん?チーズ、チーズソースだわ。
これも美味しいんだけど、舌に馴染みがないからか食が進まない。
食べ慣れたショユ(醤油)ベースのソースで食べたいなと思ってしまう。
和やかな雰囲気で食事は終わり、部屋へ戻ってきた。
あー、食べすぎた。
がっつりお肉は好きだけど、胃にくるぅ。
眠る前に、少しだけ体を動かしておこう。
化粧を落とし、髪をとかし、寝巻き姿になる。
部屋の隅でお尻を突きだし、スクワットしていたら、ドーラがお茶を持ってきてくれた。
安眠効果のあるハーブティ。
スクワットを中断し、ソファーでいただく。
「リナ様、いったい何をなさっていたのですか?」
「ん?さっきの運動のこと?スクワットよ。食べすぎたから体を動かしておこうと思って……ここではやらない?」
「はい、先ほどのように体を動かしたりはしないですね」
「そうなの?ロナもやらない?」
「はい、私も初めて見ました。突然、リナ様がお尻を突き出しながらしゃがみはじめたので何事かと不思議に思いつつ、見ておりました」
いや、ロナ、ちょっと待って。
それならドーラみたいにストレートに聞いて欲しかった。
変な動きをしてるなと観察されていたと知った私の気持ちは……恥ずかしすぎる。
「で、そのスクワットにはどのような効果が?」
やっぱりロナも気になるのね。
「さっきの運動で下半身の筋肉量が増えることで代謝があがるらしいのね。それにより体が冷えにくくなったり、痩せやすい体になるらしいよ。私も以前チラッと聞いただけど、詳しいことはわからないんだけどね」
「そうなんですね。私もやってみていいですか?」
「ロナさんがやるなら、私もやりたいです」
「ええ、もちろんよ」
私の右にロナ、左にドーラが並び、スクワットを始める。
「軽く動いただけで体が温まりますね」
ドーラ、よくぞ気がついた。
そう、血流がよくなるのか体がポカボカしてくるんだよね。
ひとりでスクワットするよりもロナ、ドーラと一緒にしたほうが楽しかった。
少しだけスクワットした後、ふたりは退室していった。
明日は朝早いのよね。
早く眠らなきゃ。
***
牧場の朝は早い。
バタバタと急いで身支度する。
牧場や街を視察するのなら、動きやすい格好でないとね。
ストンと膨らみの少ないドレスを着る。
色はモスグリーン。
地味だけど、派手な色だと牛に追いかけられそうじゃない?
目立たないから街歩きにもいいと思うのよね。
朝食の席に現れたヘンリー王子とダイアナ様も昨日より動きやすそうな格好だ。
朝食はチーズがたっぷり入ったバン、野菜とベーコンがたっぷり入ったオムレツに、サラダ、ミルクがたっぷり使われたミルクティー。
あー、美味しい。
慌てて食べた後、すぐ牧場へ移動。
牛舎での作業を少し離れた位置から見学させてもらう。
今いるのは茶色の牛がいる牛舎。
掃除、ブラッシング、乳搾り。
汗を流しながら、忙しそうに働いている。
みんなイキイキと働いていて、いい職場なんだなと感じた。
私も何かしたくなり、許可を得た後、ブラッシングをさせてもらう。
牛の真ん丸の瞳がキラキラしていて、癒される。
ツヤツヤの少しカールしたブロンドをポニーテイルにまとめたダイアナ様は慣れた手つきで乳搾りを手伝っている。
公爵令嬢なのに全然威張ったりしてないし、牧場の人たちと気軽に話している。
そのやりとりから領民に慕われているのがよくわかる。
ヘンリー王子は慣れないからかへっぴり腰でダイアナ様を手伝っている。
「ぐふっ、ぐふふっ」
「おいっ、俺を見て笑っただろ?」
「いえ、私はヘンリー殿下を見ておりません。かわいらしい牛を見ていましたよ?牛ってかわいいんですね」
「そうか?なら、いいんだ……」
彼はあっさり追求を諦めた。
どうだっ、牛を見ていたという私に、いやいや俺を見ていたはずだとは言えないだろう。
どれだけ自意識過剰なの?となっちゃうもんね。
うまくできなくても、ダイアナ様と一緒にやってみようとするヘンリー王子の姿勢はかなり好感が持てる。
「次は街へ行くぞ」
ヘンリー殿下の指示でみんな動き出す。
いよいよ街歩きができる。
どんなお店があるのかな。
出店とかあるのかな。
楽しみだ。
今日はゆっくり休み、明朝から視察へ出かけることになった。
用意された部屋はシンプルでとても居心地がいい。
部屋の壁には草原を駆ける大きな黒い牛と小さな黒い牛の絵画。
つぶらな瞳に吸い寄せられる。
親子を描いたのかな……
なんだかほのぼのする。
客室に牛の絵はどうなんだろう……
あっ、でも牛を幸運のシンボルと考える地域もあるようだから、いいのか。
夕食前に湯浴みへと案内される。
おっ、お湯が乳白色。
これはミルク風呂かな……
贅沢だし、お肌によさそうだ。
ポカボカ温まった体をロナがマッサージしてくれる。
馬車で座りっぱなしの時間が長かったからね。
いくら王家の用意してくれた馬車でも長時間乗ると、あちこち痛い。
ブルーグリーンのドレスを身に纏い、夕食の席へ向かう。
夕飯のメインはどーんっと大きなステーキ。
なかなかの迫力だ。
私の前に置かれたものもすごいに、ヘンリー王子たち男性の前にあるステーキの大きさは半端ない。
ソースは後からかけてもらえるのかなぁとワクワクしていたら、みんなモリモリ食べ出した。
あれ?味がついてるの?
フォークとナイフで一口サイズに切り分け、口へ運ぶ。
塩コショウのシンプルな味付けで、肉の味がよくわかる。
これは、これで美味しいのだが、量が多いし、ソースで味を変えたくなる。
「あの、ステーキソースはありますか?」
失礼にならないか心配で恐る恐る確認すると、給仕が少し黄色がかった白いソースを持ってきてくれた。
少し肉にかけて食べてみる。
ん?チーズ、チーズソースだわ。
これも美味しいんだけど、舌に馴染みがないからか食が進まない。
食べ慣れたショユ(醤油)ベースのソースで食べたいなと思ってしまう。
和やかな雰囲気で食事は終わり、部屋へ戻ってきた。
あー、食べすぎた。
がっつりお肉は好きだけど、胃にくるぅ。
眠る前に、少しだけ体を動かしておこう。
化粧を落とし、髪をとかし、寝巻き姿になる。
部屋の隅でお尻を突きだし、スクワットしていたら、ドーラがお茶を持ってきてくれた。
安眠効果のあるハーブティ。
スクワットを中断し、ソファーでいただく。
「リナ様、いったい何をなさっていたのですか?」
「ん?さっきの運動のこと?スクワットよ。食べすぎたから体を動かしておこうと思って……ここではやらない?」
「はい、先ほどのように体を動かしたりはしないですね」
「そうなの?ロナもやらない?」
「はい、私も初めて見ました。突然、リナ様がお尻を突き出しながらしゃがみはじめたので何事かと不思議に思いつつ、見ておりました」
いや、ロナ、ちょっと待って。
それならドーラみたいにストレートに聞いて欲しかった。
変な動きをしてるなと観察されていたと知った私の気持ちは……恥ずかしすぎる。
「で、そのスクワットにはどのような効果が?」
やっぱりロナも気になるのね。
「さっきの運動で下半身の筋肉量が増えることで代謝があがるらしいのね。それにより体が冷えにくくなったり、痩せやすい体になるらしいよ。私も以前チラッと聞いただけど、詳しいことはわからないんだけどね」
「そうなんですね。私もやってみていいですか?」
「ロナさんがやるなら、私もやりたいです」
「ええ、もちろんよ」
私の右にロナ、左にドーラが並び、スクワットを始める。
「軽く動いただけで体が温まりますね」
ドーラ、よくぞ気がついた。
そう、血流がよくなるのか体がポカボカしてくるんだよね。
ひとりでスクワットするよりもロナ、ドーラと一緒にしたほうが楽しかった。
少しだけスクワットした後、ふたりは退室していった。
明日は朝早いのよね。
早く眠らなきゃ。
***
牧場の朝は早い。
バタバタと急いで身支度する。
牧場や街を視察するのなら、動きやすい格好でないとね。
ストンと膨らみの少ないドレスを着る。
色はモスグリーン。
地味だけど、派手な色だと牛に追いかけられそうじゃない?
目立たないから街歩きにもいいと思うのよね。
朝食の席に現れたヘンリー王子とダイアナ様も昨日より動きやすそうな格好だ。
朝食はチーズがたっぷり入ったバン、野菜とベーコンがたっぷり入ったオムレツに、サラダ、ミルクがたっぷり使われたミルクティー。
あー、美味しい。
慌てて食べた後、すぐ牧場へ移動。
牛舎での作業を少し離れた位置から見学させてもらう。
今いるのは茶色の牛がいる牛舎。
掃除、ブラッシング、乳搾り。
汗を流しながら、忙しそうに働いている。
みんなイキイキと働いていて、いい職場なんだなと感じた。
私も何かしたくなり、許可を得た後、ブラッシングをさせてもらう。
牛の真ん丸の瞳がキラキラしていて、癒される。
ツヤツヤの少しカールしたブロンドをポニーテイルにまとめたダイアナ様は慣れた手つきで乳搾りを手伝っている。
公爵令嬢なのに全然威張ったりしてないし、牧場の人たちと気軽に話している。
そのやりとりから領民に慕われているのがよくわかる。
ヘンリー王子は慣れないからかへっぴり腰でダイアナ様を手伝っている。
「ぐふっ、ぐふふっ」
「おいっ、俺を見て笑っただろ?」
「いえ、私はヘンリー殿下を見ておりません。かわいらしい牛を見ていましたよ?牛ってかわいいんですね」
「そうか?なら、いいんだ……」
彼はあっさり追求を諦めた。
どうだっ、牛を見ていたという私に、いやいや俺を見ていたはずだとは言えないだろう。
どれだけ自意識過剰なの?となっちゃうもんね。
うまくできなくても、ダイアナ様と一緒にやってみようとするヘンリー王子の姿勢はかなり好感が持てる。
「次は街へ行くぞ」
ヘンリー殿下の指示でみんな動き出す。
いよいよ街歩きができる。
どんなお店があるのかな。
出店とかあるのかな。
楽しみだ。
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