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第41話 私付きの侍女
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ロナと2人、部屋でだらんと寛いでいると、
トントン
「ドーラです。お茶をお持ちしました」
ロナが慌てて立ち上がり、ササっと身だしなみを整えたのを確認した後、
「どうそ入って」と声をかける。
部屋へ入ってきた彼女は、
「先程はお茶もお出しせずに申し訳ございません」と詫びながら、紅茶を注いでくれた。
「いいのよ。急なことだったもの。この紅茶とっても美味しいわ」
私好みの香りが部屋にふんわりと広がる。
温かい紅茶は気持ちを落ち着けてくれるわね。
私がゆっくりと紅茶を楽しんでいる間に、
ロナがドーラと話している。
ドーラに給湯室やリネン室など必要な場所の案内を頼んだようだ。
王宮についてはドーラに教えてもらう立場だ。
彼女のプライドを傷つけないよううまく接している。
さすがロナだわ。
それから少しして……
「湯浴みの準備ができました。今からご案内していいでしょうか?」
「ドーラ、ありがとう。お願いするわ」
王宮に来てからの私は、意思を確認されることなく、勢いよく波に流されるようにあちこちへ連行されていた。
ドーラは部屋についたばかりの私に、ロナと2人で心落ち着ける時間をくれた。
そして湯浴みについても、このまま案内していいかと私の意思を確認してくれたのだ。
たまたまだったのかもしれないし、侍女としては当然なのかもしれない。
それでも、そんな気づかいが嬉しい。
王宮の浴室ってどんな感じだろう……
彫刻から湯が溢れてたりとかするのかしら?
ライオンの口から湯が出てたり、人が抱えた壺から湯が出てたりするのかなぁとワクワクしていたのだが、普通に筒状のものから湯が出ていて、デリーノ邸のものとそう変わりはなかった。
デリーノ邸が伯爵家にしては凄かったのかもしれない。
湯浴みについてもロナと話しながら、分担してうまくやっている。
私はあまり世話をやかれると恥ずかしいので、必要最低限にしてもらっている。
だって肌を見られるのは、まだまだ抵抗がある。
触られるのはもっとハードルが高いのだ。
湯上がりのマッサージは、ロナが担当してくれた。
マッサージはタオル越しだし、ロナが触れるにはもう慣れている。
マッサージが終わると、次は着替えだ。
夕食へ向かうドレスや化粧、髪型についても、ドーラはロナに確認を取りながら私の好みを取り入れてくれようとしている。
ドーラが私の髪をブラシでといていく。
「リナ様の髪はサラサラで本当にキレイです。こんなにサラサラの髪を扱うのは初めてで、まとめるのが難しそうです」
髪を誉められて嬉しく思っていると、私よりも嬉しそうな人を発見。
なぜだかロナがドヤ顔でドーラと話している。
「そうなんです。本当にリナ様の髪はサラサラで、触り心地最高なんです。まとめるのは確かに難しいですね。でもこのクリームを使うとちゃんとまとまります」
「クリームですか?」
「そう、リナ様が自ら作ったクリームです。私もいただいて愛用してるんですよ」
ロナがなぜか自慢げに話しているのが何だかこそばゆい。
日本にいた頃、肌が弱い友達が自然由来にこだわった美容品を自作してたんだよね。
彼女の家に泊まった時、使わせてもらい、作り方を教えてもらった。
それからは時間がある時に作ったりしてたんだよね。
レシピを何となく覚えていたから、この国でみつけた似たような材料で作ってみた。
私があれこれ混ぜていたら、女性たちが興味深々だったから、日頃のお礼にと配ったら、好評だったんだよね。
私の王宮行きの荷物にもしっかり入れてくれていた。
ロナからクリームを手のひらに乗せられたドーラは言われるままに手に広げ、私の髪につけていく。
「うわっ、いい香り」
思わずといった感じで飛び出した感想に、私もロナも笑みが溢れる。
そんな私たちを見て、彼女はスッと顔を引き締めた。
「ドーラ、私たちだけの時はもっと表情を崩していいのよ?私は違う国から来たから、自然に接してくれたほうが落ち着くの。ねっ、ロナもそうしてるでしょ?」
強ばった表情のまま、ロナをうかがうドーラ。
ロナが頷いたのを見て、ほんの少し表情を和らげた。
なになに?
既にロナはドーラからかなりの信頼を得ているようだ。
まだ慣れない王宮ではあるものの、ドーラとの間では主導権を握りつつある。
「では、夕食へご案内いたします。本日は王族の方々とご一緒にとのことです」
ひぇー、勘弁して、勘弁して欲しい。
「それは恐れ多いわ。断ることは……」
ロナとドーラが2人揃って首を横に振る。
「ですよね……ロナ、私のマナーで失礼にならないかしら?」
「はい、リナ様はきちんとマナーをマスターされています。いつもどおりで大丈夫です」
「リナ様は遠い場所からいらっしゃったとお聞きしています。『マナーがわからずとも構わないので食事を共に』との言伝がありました」
やはり断れないかぁ~。
ドーラの案内で食堂へ向かう。
心臓がバクバクしてる。
王族と食事だなんて、なにそれ信じられないといった気持ちと、自分が何かしでかすんじゃないかという気持ちで。
足取りは重く、顔が強ばる。
あー、どうしよう……
トントン
「ドーラです。お茶をお持ちしました」
ロナが慌てて立ち上がり、ササっと身だしなみを整えたのを確認した後、
「どうそ入って」と声をかける。
部屋へ入ってきた彼女は、
「先程はお茶もお出しせずに申し訳ございません」と詫びながら、紅茶を注いでくれた。
「いいのよ。急なことだったもの。この紅茶とっても美味しいわ」
私好みの香りが部屋にふんわりと広がる。
温かい紅茶は気持ちを落ち着けてくれるわね。
私がゆっくりと紅茶を楽しんでいる間に、
ロナがドーラと話している。
ドーラに給湯室やリネン室など必要な場所の案内を頼んだようだ。
王宮についてはドーラに教えてもらう立場だ。
彼女のプライドを傷つけないよううまく接している。
さすがロナだわ。
それから少しして……
「湯浴みの準備ができました。今からご案内していいでしょうか?」
「ドーラ、ありがとう。お願いするわ」
王宮に来てからの私は、意思を確認されることなく、勢いよく波に流されるようにあちこちへ連行されていた。
ドーラは部屋についたばかりの私に、ロナと2人で心落ち着ける時間をくれた。
そして湯浴みについても、このまま案内していいかと私の意思を確認してくれたのだ。
たまたまだったのかもしれないし、侍女としては当然なのかもしれない。
それでも、そんな気づかいが嬉しい。
王宮の浴室ってどんな感じだろう……
彫刻から湯が溢れてたりとかするのかしら?
ライオンの口から湯が出てたり、人が抱えた壺から湯が出てたりするのかなぁとワクワクしていたのだが、普通に筒状のものから湯が出ていて、デリーノ邸のものとそう変わりはなかった。
デリーノ邸が伯爵家にしては凄かったのかもしれない。
湯浴みについてもロナと話しながら、分担してうまくやっている。
私はあまり世話をやかれると恥ずかしいので、必要最低限にしてもらっている。
だって肌を見られるのは、まだまだ抵抗がある。
触られるのはもっとハードルが高いのだ。
湯上がりのマッサージは、ロナが担当してくれた。
マッサージはタオル越しだし、ロナが触れるにはもう慣れている。
マッサージが終わると、次は着替えだ。
夕食へ向かうドレスや化粧、髪型についても、ドーラはロナに確認を取りながら私の好みを取り入れてくれようとしている。
ドーラが私の髪をブラシでといていく。
「リナ様の髪はサラサラで本当にキレイです。こんなにサラサラの髪を扱うのは初めてで、まとめるのが難しそうです」
髪を誉められて嬉しく思っていると、私よりも嬉しそうな人を発見。
なぜだかロナがドヤ顔でドーラと話している。
「そうなんです。本当にリナ様の髪はサラサラで、触り心地最高なんです。まとめるのは確かに難しいですね。でもこのクリームを使うとちゃんとまとまります」
「クリームですか?」
「そう、リナ様が自ら作ったクリームです。私もいただいて愛用してるんですよ」
ロナがなぜか自慢げに話しているのが何だかこそばゆい。
日本にいた頃、肌が弱い友達が自然由来にこだわった美容品を自作してたんだよね。
彼女の家に泊まった時、使わせてもらい、作り方を教えてもらった。
それからは時間がある時に作ったりしてたんだよね。
レシピを何となく覚えていたから、この国でみつけた似たような材料で作ってみた。
私があれこれ混ぜていたら、女性たちが興味深々だったから、日頃のお礼にと配ったら、好評だったんだよね。
私の王宮行きの荷物にもしっかり入れてくれていた。
ロナからクリームを手のひらに乗せられたドーラは言われるままに手に広げ、私の髪につけていく。
「うわっ、いい香り」
思わずといった感じで飛び出した感想に、私もロナも笑みが溢れる。
そんな私たちを見て、彼女はスッと顔を引き締めた。
「ドーラ、私たちだけの時はもっと表情を崩していいのよ?私は違う国から来たから、自然に接してくれたほうが落ち着くの。ねっ、ロナもそうしてるでしょ?」
強ばった表情のまま、ロナをうかがうドーラ。
ロナが頷いたのを見て、ほんの少し表情を和らげた。
なになに?
既にロナはドーラからかなりの信頼を得ているようだ。
まだ慣れない王宮ではあるものの、ドーラとの間では主導権を握りつつある。
「では、夕食へご案内いたします。本日は王族の方々とご一緒にとのことです」
ひぇー、勘弁して、勘弁して欲しい。
「それは恐れ多いわ。断ることは……」
ロナとドーラが2人揃って首を横に振る。
「ですよね……ロナ、私のマナーで失礼にならないかしら?」
「はい、リナ様はきちんとマナーをマスターされています。いつもどおりで大丈夫です」
「リナ様は遠い場所からいらっしゃったとお聞きしています。『マナーがわからずとも構わないので食事を共に』との言伝がありました」
やはり断れないかぁ~。
ドーラの案内で食堂へ向かう。
心臓がバクバクしてる。
王族と食事だなんて、なにそれ信じられないといった気持ちと、自分が何かしでかすんじゃないかという気持ちで。
足取りは重く、顔が強ばる。
あー、どうしよう……
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