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第32話 私の場所よ
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【モリーヌ視点】
悔しい、悔しい、悔しい。
キレイに整えられていた爪が少し欠け、歪な形になる。
あまりの悔しさに、やめていた爪を噛むクセが復活してしまった。
せっかくキレイにしていたのに……
もうポロボロだ。
ケント様に目をつけたのは私が先なのよ?
ケント様と私はデートにだって出かけてたんだから……
彼の地位や容姿を気に入り、仲良くなった。
でも彼は他の男性のように私を誉めたり、楽しませてはくれない。
彼と居ても退屈で、だんだん距離をとるようになった。
そんな時、お茶会で、伯爵令息以上の未婚男性が催す舞踏会のことを知った。
社交の練習の場でもあり、恋愛に繋がる出逢いも期待できるらしい。
なによそれ、絶対に参加しなきゃ。
出席する為には招待状を持つ令息のパートナーとなる必要があるそうだ。
親戚には私を連れていってくれそうな独身男性はいない。
私の両親は、昔からとにかく私に甘かった。
それはもう、欲しいものは何でも買い与えてくれた。
高価なものはかなり待たされることもあったが……なんとか手に入れてくれた。
何かツテがあるのだろう。
「舞踏会に出たい」と私が願った時も、父は即答せず、「少し時間をくれ」と言った。
そしてイコアス伯爵令息リアン様というパートナーを用意してくれた。
彼はヒールの靴を履いた私と同じくらいの背丈、筋肉質で太ももや腕回りなど部分的に太いようで太って見えた。
私の好きなスラリとした細身の男性でないことにガッカリしたが、舞踏会へ行く為に我慢することにした。
しばらく経つと、父に「イコアス伯爵令息リアン様との婚約が決まった。この話は断れない」と告げられた。
彼、全然私のタイプじゃないんだけど……
でも彼がいないと舞踏会に出席できない。
それに断れないんじゃ仕方がないわね。
彼のパートナーとして舞踏会に出席し、もっと高貴で好みの男性を捕まえればいいのよ。
私が渋々頷いたら、父はほっとしたようだ。
舞踏会に出るといろいろな噂が耳に入る。
『デリーノ伯爵令息ケント様、引きこもっているらしいわ』
そういえば、最近 ケント様からお誘いや贈物がない。
まさか引きこもっているなんて……
ケント様は口下手で大人しく、一緒に居てもつまらないと思っていたけれど、彼もリアン様と同じく伯爵令息だ。
彼のほうがよかったかも。
***
婚約者となったリアン様に連れられ出席したドマリニ侯爵家の舞踏会に、ケント様が来ていた。
久しぶりに見る彼は、美しく整った顔、スラリとした体型で、優雅にダンスを踊っている。
以前よりも格好よくなっている気がする。
隣の女性は誰?
見たことない女性。
聞いてみたところ、平民だって。
どうしてあなたが彼の隣にいるの?
我慢できずに、彼女 リナさんを貶めようとしたのだがうまくいかなかった。
それどころかリナさんは……
ドマリニ侯爵令息ロニー様に、黒髪、黒い瞳を誉められ、ダンスに誘われていた。
黒髪、黒い瞳がそんなにいい?
まぁ見ない色だし、神秘的に見えなくもないけれど、私のほうがいいと思うの。
彼女じゃなく私を誘ってと必死にアピールしていたら、女性たちが集まってきちゃって
結局 逃げられてしまった。
***
次に参加したマーマリン伯爵家の舞踏会にもリナさんは来ていて、ケント様との息の合ったダンスで注目を集めていた。
なぜ?
どうして?
そこは私の場所よ?
注意深く観察していたら、彼女のチョーカーが目が止まった。
雫のような変わった形の白い石がついている。
白い宝石はいくつかあるけれど、あんな形にカッティングする宝石は見たことがない。
宝石を用意できず、キレイな形の石がついたチョーカー、いったいどこで買ったのかしら?
ふふふっ、とんだ恥さらしね。
私は再度、彼女を貶めることにした。
「ねぇ、彼女のチョーカーは白い石がついているのね。宝石を用意できなかったのかしら……」
リナさんに聞こえるように言ってみた。
「モリーヌ様、私のチョーカーについているのはパールという宝石です。ご存じないのですか?」
まさか言い返されるとは思ってなかったわ。
私が間違えていると言うの?
恥ずかしさと悔しさで体を震える。
「なんですってぇー、パールなら知ってるわ。パールは海の宝石でかなり貴重なものなの。あなたのような平民が身に付けられるものではないわ。それにあなたのは変な形じゃない。それはパールじゃないわ!」
「いいえ、これはパールよ」
彼女が強く主張したけれど、周りは彼女へ疑いの目を向けた。
当然よね。
私は貴族で彼女は平民らしいもの。
よしよしいい感じ。
「それはパールで間違いないわ。ドロップパールという珍しいものなの。あまり知られてないのも無理ないわね。私、ユリナーテ・ザブンが保証します」
リナさんの主張を後押しする女性が現れた。
どうして……どうしてなの?
私の邪魔をしないでよ。
***
舞踏会から帰る馬車の中、リアン様に怒られた。前回も怒られたのよ。
彼って、私を怒ってばかり。
私、両親にも怒られたことなどないのに。
舞踏会に出る為に、彼と仕方なく婚約しただけなのよ?
それが怒られるなんてっ!
悔しくて、父に舞踏会で黒髪に黒い瞳の平民女性と揉めて悔しかったこと、揉めたことをリアン様に怒られたことなどを報告、リアン様との婚約解消をお願いした。
今回も父は即答せずに、「確認させてくれ」と……
そして後日、父に告げられた。
「婚約はなくなった。お前はこれから公爵令嬢になるんだよ。幸せになりなさい」と。
私が公爵令嬢に?
いったいどういうこと?
悔しい、悔しい、悔しい。
キレイに整えられていた爪が少し欠け、歪な形になる。
あまりの悔しさに、やめていた爪を噛むクセが復活してしまった。
せっかくキレイにしていたのに……
もうポロボロだ。
ケント様に目をつけたのは私が先なのよ?
ケント様と私はデートにだって出かけてたんだから……
彼の地位や容姿を気に入り、仲良くなった。
でも彼は他の男性のように私を誉めたり、楽しませてはくれない。
彼と居ても退屈で、だんだん距離をとるようになった。
そんな時、お茶会で、伯爵令息以上の未婚男性が催す舞踏会のことを知った。
社交の練習の場でもあり、恋愛に繋がる出逢いも期待できるらしい。
なによそれ、絶対に参加しなきゃ。
出席する為には招待状を持つ令息のパートナーとなる必要があるそうだ。
親戚には私を連れていってくれそうな独身男性はいない。
私の両親は、昔からとにかく私に甘かった。
それはもう、欲しいものは何でも買い与えてくれた。
高価なものはかなり待たされることもあったが……なんとか手に入れてくれた。
何かツテがあるのだろう。
「舞踏会に出たい」と私が願った時も、父は即答せず、「少し時間をくれ」と言った。
そしてイコアス伯爵令息リアン様というパートナーを用意してくれた。
彼はヒールの靴を履いた私と同じくらいの背丈、筋肉質で太ももや腕回りなど部分的に太いようで太って見えた。
私の好きなスラリとした細身の男性でないことにガッカリしたが、舞踏会へ行く為に我慢することにした。
しばらく経つと、父に「イコアス伯爵令息リアン様との婚約が決まった。この話は断れない」と告げられた。
彼、全然私のタイプじゃないんだけど……
でも彼がいないと舞踏会に出席できない。
それに断れないんじゃ仕方がないわね。
彼のパートナーとして舞踏会に出席し、もっと高貴で好みの男性を捕まえればいいのよ。
私が渋々頷いたら、父はほっとしたようだ。
舞踏会に出るといろいろな噂が耳に入る。
『デリーノ伯爵令息ケント様、引きこもっているらしいわ』
そういえば、最近 ケント様からお誘いや贈物がない。
まさか引きこもっているなんて……
ケント様は口下手で大人しく、一緒に居てもつまらないと思っていたけれど、彼もリアン様と同じく伯爵令息だ。
彼のほうがよかったかも。
***
婚約者となったリアン様に連れられ出席したドマリニ侯爵家の舞踏会に、ケント様が来ていた。
久しぶりに見る彼は、美しく整った顔、スラリとした体型で、優雅にダンスを踊っている。
以前よりも格好よくなっている気がする。
隣の女性は誰?
見たことない女性。
聞いてみたところ、平民だって。
どうしてあなたが彼の隣にいるの?
我慢できずに、彼女 リナさんを貶めようとしたのだがうまくいかなかった。
それどころかリナさんは……
ドマリニ侯爵令息ロニー様に、黒髪、黒い瞳を誉められ、ダンスに誘われていた。
黒髪、黒い瞳がそんなにいい?
まぁ見ない色だし、神秘的に見えなくもないけれど、私のほうがいいと思うの。
彼女じゃなく私を誘ってと必死にアピールしていたら、女性たちが集まってきちゃって
結局 逃げられてしまった。
***
次に参加したマーマリン伯爵家の舞踏会にもリナさんは来ていて、ケント様との息の合ったダンスで注目を集めていた。
なぜ?
どうして?
そこは私の場所よ?
注意深く観察していたら、彼女のチョーカーが目が止まった。
雫のような変わった形の白い石がついている。
白い宝石はいくつかあるけれど、あんな形にカッティングする宝石は見たことがない。
宝石を用意できず、キレイな形の石がついたチョーカー、いったいどこで買ったのかしら?
ふふふっ、とんだ恥さらしね。
私は再度、彼女を貶めることにした。
「ねぇ、彼女のチョーカーは白い石がついているのね。宝石を用意できなかったのかしら……」
リナさんに聞こえるように言ってみた。
「モリーヌ様、私のチョーカーについているのはパールという宝石です。ご存じないのですか?」
まさか言い返されるとは思ってなかったわ。
私が間違えていると言うの?
恥ずかしさと悔しさで体を震える。
「なんですってぇー、パールなら知ってるわ。パールは海の宝石でかなり貴重なものなの。あなたのような平民が身に付けられるものではないわ。それにあなたのは変な形じゃない。それはパールじゃないわ!」
「いいえ、これはパールよ」
彼女が強く主張したけれど、周りは彼女へ疑いの目を向けた。
当然よね。
私は貴族で彼女は平民らしいもの。
よしよしいい感じ。
「それはパールで間違いないわ。ドロップパールという珍しいものなの。あまり知られてないのも無理ないわね。私、ユリナーテ・ザブンが保証します」
リナさんの主張を後押しする女性が現れた。
どうして……どうしてなの?
私の邪魔をしないでよ。
***
舞踏会から帰る馬車の中、リアン様に怒られた。前回も怒られたのよ。
彼って、私を怒ってばかり。
私、両親にも怒られたことなどないのに。
舞踏会に出る為に、彼と仕方なく婚約しただけなのよ?
それが怒られるなんてっ!
悔しくて、父に舞踏会で黒髪に黒い瞳の平民女性と揉めて悔しかったこと、揉めたことをリアン様に怒られたことなどを報告、リアン様との婚約解消をお願いした。
今回も父は即答せずに、「確認させてくれ」と……
そして後日、父に告げられた。
「婚約はなくなった。お前はこれから公爵令嬢になるんだよ。幸せになりなさい」と。
私が公爵令嬢に?
いったいどういうこと?
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