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第25話 本物なのに
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ドマリニ侯爵家での舞踏会に出てからというものケント様と私宛に招待状がわんさか届くようになった。
そうまさにわんさかと。
招待状だけでなく、婚約の申し込みや贈物、嫌がらせの手紙なんかも届いているらしく、執事のセスさんが急がしそうに振り分けてくれている。
ある程度振り分けられた招待状の中からデリーノ伯爵夫妻やケント様が出席するものを決定しているそうだ。
次回はケント様のご友人であり、デリーノ伯爵家とは家族ぐるみで親しくしているマーマリン伯爵家リチャード様主催の舞踏会へ参加することになった。
主催者が私たちと同年代の独身貴族男性なのを不思議に思い、聞いてみたところ、この国の伯爵家以上の男性は独身の間に1度は若者向けの舞踏会を開催する風習があるそうだ。
若いうちに社交性を身に付ける為でもあり、この若者だけの舞踏会ではある程度の失敗は許されるらしい。
***
次に参加する舞踏会が決まったからと、私はまたジョセフィーヌ様に呼ばれ、仕立て屋の皆様に囲まれている。
「リナ様は前回よりも体が引き締まりましたね。背筋がスーッと伸びて姿勢がよくなっています。サイズが若干変わっていますね」
そうですか?私にはよくわからないのですが……誉めてもらえたので、
「ありがとうございます」とお礼を伝え、あとは無になる。
衝立が置かれた部屋で下着姿で囲まれる。
私にとっては恥ずかしい時間だ。
今回はダンスを始めて、体型が変わっただろうからと改めて計測することになったが、今後しばらくは余程体型が変わらない限りは計る必要はないそうだ。
計測が終わると、ジョセフィーヌ様たちとドレスのデザインを話し合う。
ジョセフィーヌ様は本当にイキイキとして楽しそう。
前回はケント様の瞳に似たスカイブルーのドレスだった。
今回はレモンイエロー、ミントグリーン、ライラック、アザーブルー、セレストブルーなど5着ドレスを仕立ててくださるそうだ。
青系が多いな……
「そんなに作っていただくなんてとんでもない」と一旦は断ったのだが、
「息子のパートナーが毎回同じドレスでは我が家の評判にかかわるの。だから遠慮なく受け取ってね」と言われてしまい、作っていただくことになった。
アクセサリーもまた貸してくださるそうだ。
***
マーマリン伯爵家で舞踏会が催される日になった。
ケント様と馬車に揺られ、会場へ向かう。 今日はレモンイエローのドレス。
上半身はレース生地でスカート部分はチュールを重ねたふんわりスカートになっている。
アクセサリーはチョーカーに1粒パールがついているもの。
マーマリン伯爵子息リチャード様へ挨拶すると、
「君がリナさんか……ケントのことありがとう。これからも頼むよ。舞踏会を楽しんでね」と爽やかな笑顔で言われてしまった。
リチャード様はケント様の幼馴染みで引きこもっていたケント様に何度も会いに行っていたそう。
ケント様は多くの人たちに心配をかけていたようだ。
今日もケント様とダンスを楽しむ。
既にケント様は人気で、踊る私たちの近くに令嬢方が集まってきている。
「ねぇ、彼女のチョーカーは白い石がついているのね。宝石を用意できなかったのかしら……」
チョーカーに白い石って私のことよね?
ケント様のパートナーとして参加している私がよくない評価を受けるとデリーノ伯爵家の評判に関わるとジョセフィーヌ様が言われていた。
どうしよう、どうしよう……
白い石って、真珠のことだよね?
これはきちんと説明しないと。
誰の発言なのか確認しようと、振り返る。
ああっ、また彼女か……
余程私が気にくわないのね、モリーヌ様は。
「モリーヌ様、私のチョーカーについているのはパールという宝石です。ご存じないのですか?」
私に反論されるとは思ってもみなかったのだろう。
彼女は顔を真っ赤にして、プルプルと体を振るわせた。
「なんですってぇー、パールなら知ってるわ。パールは海の宝石でかなり貴重なものなの。あなたのような平民が身に付けられるものではないわ。それにあなたのは変な形じゃない。それはパールじゃないわ!」
「いいえ、これはパールよ」
私は自信を持って主張する。
だってジョセフィーヌ様がパールだと言って貸してくださったものだから。
私の主張は疑われているようだ。
どうしたらいいの?
私のせいでケント様に、デリーノ伯爵家に迷惑をかけてしまう……
必死に打開策を考えていると、
「それはパールで間違いないわ。ドロップパールという珍しいものなの。あまり知られてないのも無理ないわね。私、ユリナーテ・ザブンが保証します」
私の主張を後押ししてくれる女性が現れた。
「まぁ、ユリナーテ様が認めるのなら、きっと本物ね」
「ドロップパール、素敵だわ」
「私、初めて見ました」
「私もよ」
次々とキレイなご令嬢方から声をかけられる。
モリーヌ様は悔しそうだが、言い返さないようだ。
イコアス伯爵令息がモリーヌ様を優しく嗜め連れていった。
ちゃんと叱ってくれる優しい婚約者じゃない。
彼女はどうしてそう私に突っかかるのだろう。
「助けてくださってありがとうございます」
「いいえ、私は真実を述べただけ。私もパールをつけているのよ」
ユリナーテ様は大きさ、形の揃ったパールが並ぶネックレスを見せてくれた。
「大きさの揃ったパールがこれだけ使われたネックレスなんて貴重なものですよね?とっても素敵です!」
思わず声が大きくなってしまった。
「あら?あなた、よく知ってるわね。これは毎年私の誕生日に1粒ずつ両親がプレゼントしてくれたものをネックレスにしたのよ」
ユリナーテ様は嬉しそうに微笑んだ。
私に続き、次々とご令嬢方から声があがる。
「うわぁー、素敵、素敵だわ」
「私にもどなたかパールをプレゼントしてくださらないかしら……」
ユリナーテ様のネックレスに注目が集まり、ケント様に促され、私たちはその場を離れた。
そうまさにわんさかと。
招待状だけでなく、婚約の申し込みや贈物、嫌がらせの手紙なんかも届いているらしく、執事のセスさんが急がしそうに振り分けてくれている。
ある程度振り分けられた招待状の中からデリーノ伯爵夫妻やケント様が出席するものを決定しているそうだ。
次回はケント様のご友人であり、デリーノ伯爵家とは家族ぐるみで親しくしているマーマリン伯爵家リチャード様主催の舞踏会へ参加することになった。
主催者が私たちと同年代の独身貴族男性なのを不思議に思い、聞いてみたところ、この国の伯爵家以上の男性は独身の間に1度は若者向けの舞踏会を開催する風習があるそうだ。
若いうちに社交性を身に付ける為でもあり、この若者だけの舞踏会ではある程度の失敗は許されるらしい。
***
次に参加する舞踏会が決まったからと、私はまたジョセフィーヌ様に呼ばれ、仕立て屋の皆様に囲まれている。
「リナ様は前回よりも体が引き締まりましたね。背筋がスーッと伸びて姿勢がよくなっています。サイズが若干変わっていますね」
そうですか?私にはよくわからないのですが……誉めてもらえたので、
「ありがとうございます」とお礼を伝え、あとは無になる。
衝立が置かれた部屋で下着姿で囲まれる。
私にとっては恥ずかしい時間だ。
今回はダンスを始めて、体型が変わっただろうからと改めて計測することになったが、今後しばらくは余程体型が変わらない限りは計る必要はないそうだ。
計測が終わると、ジョセフィーヌ様たちとドレスのデザインを話し合う。
ジョセフィーヌ様は本当にイキイキとして楽しそう。
前回はケント様の瞳に似たスカイブルーのドレスだった。
今回はレモンイエロー、ミントグリーン、ライラック、アザーブルー、セレストブルーなど5着ドレスを仕立ててくださるそうだ。
青系が多いな……
「そんなに作っていただくなんてとんでもない」と一旦は断ったのだが、
「息子のパートナーが毎回同じドレスでは我が家の評判にかかわるの。だから遠慮なく受け取ってね」と言われてしまい、作っていただくことになった。
アクセサリーもまた貸してくださるそうだ。
***
マーマリン伯爵家で舞踏会が催される日になった。
ケント様と馬車に揺られ、会場へ向かう。 今日はレモンイエローのドレス。
上半身はレース生地でスカート部分はチュールを重ねたふんわりスカートになっている。
アクセサリーはチョーカーに1粒パールがついているもの。
マーマリン伯爵子息リチャード様へ挨拶すると、
「君がリナさんか……ケントのことありがとう。これからも頼むよ。舞踏会を楽しんでね」と爽やかな笑顔で言われてしまった。
リチャード様はケント様の幼馴染みで引きこもっていたケント様に何度も会いに行っていたそう。
ケント様は多くの人たちに心配をかけていたようだ。
今日もケント様とダンスを楽しむ。
既にケント様は人気で、踊る私たちの近くに令嬢方が集まってきている。
「ねぇ、彼女のチョーカーは白い石がついているのね。宝石を用意できなかったのかしら……」
チョーカーに白い石って私のことよね?
ケント様のパートナーとして参加している私がよくない評価を受けるとデリーノ伯爵家の評判に関わるとジョセフィーヌ様が言われていた。
どうしよう、どうしよう……
白い石って、真珠のことだよね?
これはきちんと説明しないと。
誰の発言なのか確認しようと、振り返る。
ああっ、また彼女か……
余程私が気にくわないのね、モリーヌ様は。
「モリーヌ様、私のチョーカーについているのはパールという宝石です。ご存じないのですか?」
私に反論されるとは思ってもみなかったのだろう。
彼女は顔を真っ赤にして、プルプルと体を振るわせた。
「なんですってぇー、パールなら知ってるわ。パールは海の宝石でかなり貴重なものなの。あなたのような平民が身に付けられるものではないわ。それにあなたのは変な形じゃない。それはパールじゃないわ!」
「いいえ、これはパールよ」
私は自信を持って主張する。
だってジョセフィーヌ様がパールだと言って貸してくださったものだから。
私の主張は疑われているようだ。
どうしたらいいの?
私のせいでケント様に、デリーノ伯爵家に迷惑をかけてしまう……
必死に打開策を考えていると、
「それはパールで間違いないわ。ドロップパールという珍しいものなの。あまり知られてないのも無理ないわね。私、ユリナーテ・ザブンが保証します」
私の主張を後押ししてくれる女性が現れた。
「まぁ、ユリナーテ様が認めるのなら、きっと本物ね」
「ドロップパール、素敵だわ」
「私、初めて見ました」
「私もよ」
次々とキレイなご令嬢方から声をかけられる。
モリーヌ様は悔しそうだが、言い返さないようだ。
イコアス伯爵令息がモリーヌ様を優しく嗜め連れていった。
ちゃんと叱ってくれる優しい婚約者じゃない。
彼女はどうしてそう私に突っかかるのだろう。
「助けてくださってありがとうございます」
「いいえ、私は真実を述べただけ。私もパールをつけているのよ」
ユリナーテ様は大きさ、形の揃ったパールが並ぶネックレスを見せてくれた。
「大きさの揃ったパールがこれだけ使われたネックレスなんて貴重なものですよね?とっても素敵です!」
思わず声が大きくなってしまった。
「あら?あなた、よく知ってるわね。これは毎年私の誕生日に1粒ずつ両親がプレゼントしてくれたものをネックレスにしたのよ」
ユリナーテ様は嬉しそうに微笑んだ。
私に続き、次々とご令嬢方から声があがる。
「うわぁー、素敵、素敵だわ」
「私にもどなたかパールをプレゼントしてくださらないかしら……」
ユリナーテ様のネックレスに注目が集まり、ケント様に促され、私たちはその場を離れた。
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