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第27話 彼女こそが
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【ロニー視点】
ようやく、ようやく見つけたっ!!
リナさん、彼女は、彼女こそは、〈神贈り人〉だ。
学生の頃、図書館にある本で、その存在を知ってからというものずっと会いたかった〈神贈り人〉だ。
この国では見ない黒髪に黒い瞳。
〈神贈り人〉に共通する特徴だ。
何より引きこもっていると噂だったデリーノ伯爵令息が舞踏会に幸せそうな姿で現れた。
〈神贈り人〉は、神がどこかからこの世界に遣わした人で、周りにいる人を幸せにするという。
俺は現状に不満を持っていた。
ドマリニ侯爵家の三男として生まれた俺。
長兄、次兄ともに優秀で、幼い頃から兄たちを目標に勉強、剣の修行、魔法の訓練など真剣に取り組んできた。
外見も中身もしっかり磨いてきたつもりだ。
学園に入ると、女性たちが寄ってきて煩かったが、それだけモテるんだ俺はとの自信に繋がった。
だが、大きくなると現実が見えてくる。
長兄は火魔法が才があり、家の跡継ぎ。
次兄は風魔法の才があり、別の爵位を継ぎ、後を継いだ兄のサポートをするらしい。
三男である俺は魔法の才能に恵まれなかったようだ。
主な魔法を試してみたが、どれも適応がないようだ。
だからなのだろうか……婿に出される。
顔あわせに現れた婚約者ユリナーテ・ザブン伯爵令嬢は中肉中背のごくごく普通の女性。
ゆるゆると波打つミルクティ色の髪に水色の瞳で、見た目はおっとりとして見えるのだが、海沿いの領地で育った元気のよい女性だった。
彼女は水の魔法が使えるそうだ。
兄たちと同じ火や風の才があったとしたら、俺は彼女に嫉妬して反発していたかもしれない。
俺は元気な女性が嫌いじゃない。
だからユリナーテが相手でよかったとほっとしたのを覚えている。
だが、その後 何度か会って食事をするとある問題に直面した。
食の好みが全く合わないのだ。
彼女の暮らすザブン領は魚料理が基本で、ごくごくたまに肉を食べるそうだ。
俺の育ったドマリニ領は海から遠く、滅多に魚を食べない。
いつもメインは肉料理だ。
たまに魚なら我慢できるが、毎日魚は……
婿の分際で俺の為に肉を仕入れ、別メニューを作ってくれというのはなかなかハードルが高く、提案できそうにない。
彼女に対して不満はないのだが……
婿に行くのではなく、俺も領地に残って兄をサポートしたいと父にお願いしてみたが、既に婚約は整っているのだからと却下された。
やさくれた俺は授業をサボって、フラフラと図書館を彷徨っていた。
そして図書館の一番奥、滅多に誰も寄り付かないような場所に行き着き、目についた一冊の本を手に取った。
それが〈神贈り人〉について書かれた本だった。
どうすれば〈神贈り人〉に会えるのか……
本のどこにも書かれていなかった。
いつの間にか〈神贈り人〉のことはすっかり忘れ、今この時を楽しもうと社交にせいを出していた。
我が家で開いた若者向けの舞踏会に、黒髪、黒い瞳の女性がいた。
まさか〈神贈り人〉に会えるとは……
これは運命だ。
リナさんの横にはデリーノ伯爵令息がいた。
いるにはいたが、もう彼は充分幸せそうだったじゃないか。
次は俺を幸せにして欲しい。
どうしたら彼女をそばに置けるのか、何の計画もないまま舞踏会の翌日、バラの花束を贈った。
今の時期 バラの花はとても珍しい。
俺が作り、管理している温室で心をこめて育てたバラ。
そのバラの花をリナさんへ贈った。
彼女を手に入れる為には彼女の心を掴むしかない。
そう思ったから……
遠く離れた地で暮らす婚約者ユリナーテが王都での社交に滅多に顔を出さないのをいいことに、これからはデリーノ伯爵令息が出席する集まりには出るようにしようと心に決めた。
別にユリナーテに不満があるわけじゃないんだ。
だが……
俺は、俺はもっと幸せになりたい。
これはその為に必要なことなんだ。
***
リナさんが出席する舞踏会に、俺はできる限り出るようにしていた。
彼女をみつけ近寄るが、いつもぴったりとデリーノ伯爵令息がくっついている。
彼には婚約者がいない。
もしや、リナさんと……
彼女に近づけない日々が続いていた。
そんな時、珍しくユリナーテが王都を訪れ、2人揃って舞踏会へ参加することになった。
すると、ユリナーテとリナさんは気があったようで意気投合。
いつの間にか仲良くなっていた。
どうして……いつの間に?
とにかくリナさんが側に居て仲良くなれればいいのだ。
そう、何も問題ないはず。
「ユリナーテと仲良くなったのなら、ユリナーテと2人でしばらく我が家へ滞在してはどうだろうか?」
ユリナーテをダシにリナさんを釣り上げようとしたのだが……
「まずは確認させてください。そこに魚はありますか?魚料理を食べることはできますか?」
よりによって魚料理?
ドマリニ領は海から遠く、魚はなかなか手に入らない。
ユリナーテに会う為にザブンを訪れた時に食べたことがあるくらいだ。
「すまない。魚料理は滅多に出ないと思う」
リナさんの頚がガクンと落ちた。
「じゃあ、この話はなかったことに」
ちょっと乗り気になりかけていたはずなのに、魚料理がないとダメなのか?
どうすればいい?どうすれば……考えるんだ。
ようやく、ようやく見つけたっ!!
リナさん、彼女は、彼女こそは、〈神贈り人〉だ。
学生の頃、図書館にある本で、その存在を知ってからというものずっと会いたかった〈神贈り人〉だ。
この国では見ない黒髪に黒い瞳。
〈神贈り人〉に共通する特徴だ。
何より引きこもっていると噂だったデリーノ伯爵令息が舞踏会に幸せそうな姿で現れた。
〈神贈り人〉は、神がどこかからこの世界に遣わした人で、周りにいる人を幸せにするという。
俺は現状に不満を持っていた。
ドマリニ侯爵家の三男として生まれた俺。
長兄、次兄ともに優秀で、幼い頃から兄たちを目標に勉強、剣の修行、魔法の訓練など真剣に取り組んできた。
外見も中身もしっかり磨いてきたつもりだ。
学園に入ると、女性たちが寄ってきて煩かったが、それだけモテるんだ俺はとの自信に繋がった。
だが、大きくなると現実が見えてくる。
長兄は火魔法が才があり、家の跡継ぎ。
次兄は風魔法の才があり、別の爵位を継ぎ、後を継いだ兄のサポートをするらしい。
三男である俺は魔法の才能に恵まれなかったようだ。
主な魔法を試してみたが、どれも適応がないようだ。
だからなのだろうか……婿に出される。
顔あわせに現れた婚約者ユリナーテ・ザブン伯爵令嬢は中肉中背のごくごく普通の女性。
ゆるゆると波打つミルクティ色の髪に水色の瞳で、見た目はおっとりとして見えるのだが、海沿いの領地で育った元気のよい女性だった。
彼女は水の魔法が使えるそうだ。
兄たちと同じ火や風の才があったとしたら、俺は彼女に嫉妬して反発していたかもしれない。
俺は元気な女性が嫌いじゃない。
だからユリナーテが相手でよかったとほっとしたのを覚えている。
だが、その後 何度か会って食事をするとある問題に直面した。
食の好みが全く合わないのだ。
彼女の暮らすザブン領は魚料理が基本で、ごくごくたまに肉を食べるそうだ。
俺の育ったドマリニ領は海から遠く、滅多に魚を食べない。
いつもメインは肉料理だ。
たまに魚なら我慢できるが、毎日魚は……
婿の分際で俺の為に肉を仕入れ、別メニューを作ってくれというのはなかなかハードルが高く、提案できそうにない。
彼女に対して不満はないのだが……
婿に行くのではなく、俺も領地に残って兄をサポートしたいと父にお願いしてみたが、既に婚約は整っているのだからと却下された。
やさくれた俺は授業をサボって、フラフラと図書館を彷徨っていた。
そして図書館の一番奥、滅多に誰も寄り付かないような場所に行き着き、目についた一冊の本を手に取った。
それが〈神贈り人〉について書かれた本だった。
どうすれば〈神贈り人〉に会えるのか……
本のどこにも書かれていなかった。
いつの間にか〈神贈り人〉のことはすっかり忘れ、今この時を楽しもうと社交にせいを出していた。
我が家で開いた若者向けの舞踏会に、黒髪、黒い瞳の女性がいた。
まさか〈神贈り人〉に会えるとは……
これは運命だ。
リナさんの横にはデリーノ伯爵令息がいた。
いるにはいたが、もう彼は充分幸せそうだったじゃないか。
次は俺を幸せにして欲しい。
どうしたら彼女をそばに置けるのか、何の計画もないまま舞踏会の翌日、バラの花束を贈った。
今の時期 バラの花はとても珍しい。
俺が作り、管理している温室で心をこめて育てたバラ。
そのバラの花をリナさんへ贈った。
彼女を手に入れる為には彼女の心を掴むしかない。
そう思ったから……
遠く離れた地で暮らす婚約者ユリナーテが王都での社交に滅多に顔を出さないのをいいことに、これからはデリーノ伯爵令息が出席する集まりには出るようにしようと心に決めた。
別にユリナーテに不満があるわけじゃないんだ。
だが……
俺は、俺はもっと幸せになりたい。
これはその為に必要なことなんだ。
***
リナさんが出席する舞踏会に、俺はできる限り出るようにしていた。
彼女をみつけ近寄るが、いつもぴったりとデリーノ伯爵令息がくっついている。
彼には婚約者がいない。
もしや、リナさんと……
彼女に近づけない日々が続いていた。
そんな時、珍しくユリナーテが王都を訪れ、2人揃って舞踏会へ参加することになった。
すると、ユリナーテとリナさんは気があったようで意気投合。
いつの間にか仲良くなっていた。
どうして……いつの間に?
とにかくリナさんが側に居て仲良くなれればいいのだ。
そう、何も問題ないはず。
「ユリナーテと仲良くなったのなら、ユリナーテと2人でしばらく我が家へ滞在してはどうだろうか?」
ユリナーテをダシにリナさんを釣り上げようとしたのだが……
「まずは確認させてください。そこに魚はありますか?魚料理を食べることはできますか?」
よりによって魚料理?
ドマリニ領は海から遠く、魚はなかなか手に入らない。
ユリナーテに会う為にザブンを訪れた時に食べたことがあるくらいだ。
「すまない。魚料理は滅多に出ないと思う」
リナさんの頚がガクンと落ちた。
「じゃあ、この話はなかったことに」
ちょっと乗り気になりかけていたはずなのに、魚料理がないとダメなのか?
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