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第22話 こんな終わりは嫌だ
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「ケント、大丈夫か?」
「ケント、モリーヌ嬢なんか気にするな」
ケント様のご友人たちがやってきて、ケント様を励ましている。
どうして?
モリーヌ様とケント様の間に何かあったの?
「みんなありがとう。もう僕は大丈夫だから……」
ぎごちない笑顔。
ケント様の目が細くなり、口角が少しあがる。無理やり笑顔を作ろうとしてる?
「リナ、そろそろ帰ろう」
肩を落としたケント様に提案された。
集まってきていた彼の友人たちはあきらかにほっとした顔をしたけれど、私は頷けない。
初めての舞踏会。
素敵なドレスを用意して着飾ってもらい、ケント様とダンスを楽しみ、キラキラとした時間で、すごくすっごく楽しかったのに……
モリーヌ様が現れて、ケント様から笑顔が消えた。
このまま帰るの?
私はこんな終わりは嫌だ。
せっかくの舞踏会の思い出が嫌なものになってしまう。
「ケント様、私はまだここで楽しみたいです。あなたと踊りたい。私と踊っていただけませんか?」
にっこり笑って、彼の手をひき、フロアの中央へ歩いていく。
貴族女性ではありえない行為かもしれないけれど、みんなダンスや会話を楽しんでいて、意外と見られていないと思うのよ。
彼はびっくりしたようだけれど、黙ってついてきてくれた。
すぐに体制を整えると、私をリードして踊り始めた。
ダンスが始まると、ケント様は堂々としてカッコいい。
しばらく踊っていると、また私たちの周りには自由に踊れるだけのスペースができ、多くの視線を感じる。
私も慣れてきて、周りを観察する余裕が出てきた。
ケント様をうっとりとした瞳でみつめるご令嬢方がいるじゃない。
彼、ダンスしていると何割増かで格好よいものね。
彼のカッコいいところをアピール、アピールチャンスだわ。
あっ、モリーヌ様がいる。
イコアス伯爵令息と踊りながらも、ケント様をみつめ、悔しそうに顔を歪めている。
やはりモリーヌ様とケント様には何かあったんだ……
彼女の様子からしてケント様が捨てられた?
もしくは振られた?
そんなとこかしら……
彼女、のびのびとダンスを楽しむケント様を見て、歯軋りでもしそうだ。
そうそう、彼、素敵でしょ?
先程のお返しとばかり、モリーヌ様と視線を合わせ、ゆったりと微笑んでみる。
『悔しい、悔し~い』と彼女の心の声が聞こえてきそうだ。
そうそう、逃した魚の価値を思い知ればいいのよ。
「リナ、ご機嫌だね」
ケント様がターンした直後に私の耳元へ顔を寄せ、囁いた。
「うん、今 私 すごく楽しいから。あのまま帰らなくてよかった」
「そう、そうか。それなら良かった」
ケント様と2人、踊りながら微笑み合う。
踊るケント様に見惚れているご令嬢たちがいるのも確認できたし、私の役目はここまでね。
曲が終わる間際になると、私たちの近くへ華やかなご令嬢たちがゆっくりゆっくりと距離を詰めてくる。
ケント様目当てで、次のダンスのお誘いを期待しているのだろう。
「ケント様、大人気ですね」
「えっ?」
「キレイな方々がダンスのお誘いを待ってますよ」
「はっ?」
ケント様は鈍いの?鈍すぎるの?
ご令嬢方の好意を、あの熱い視線を感じないなんて……
曲が終わると同時に、色とりどりのドレスを着た彼女たちのほうへとケント様の背中を軽く押した。
「ケント様、行ってらっしゃい」
「はっ、ほえっ、あっ、お嬢さん、僕と踊っていただけますか?」
「はいっ、よろしくお願いします」
かわいらしい女性が頬をそめながら、彼へと手を伸ばす。
咄嗟に好みの女性に声をかけたな。
2人の手が触れた瞬間、ズキンッと胸が痛んだ。
体調不良?
急に激しく動いたから、心臓に負担をかけてしまったのかな。
安静に、安静にしなきゃ。
彼らから目を反らし、ソファーで休んでいると……
「お嬢さん、私と踊っていただけますか?」
主催者であるドマリニ侯爵令息からダンスに誘われた。
明るい栗色の髪に透き通った緑の泉を思い起こさせる瞳。
キレイな顔立ちの男性だ。
この集まりに参加している男女はみな見目麗しい方ばかり。
その中でも飛び抜けてキレイだ。
ケント様よりも鍛えられているようなしっかりとした体つきで、顔も凛々しいキレイさだ。
あまりにもキレイな人に話しかけられると緊張してしまう。
「えっ、あっ、私はダンス初心者で……うまく踊れる自信がなくて……」
「先程のダンスはお見事でしたよ。彼との息もぴったりで、きっと相性がいいのでしょうね。デリーノ伯爵令息とは婚約を?」
「いっ、いえっ、私たちはそういう関係ではなくて……」
「おやっ、そうですか……では、俺にもあなたを口説く機会をいただけますか?この国ではなかなか見ない真っ直ぐで艶やかな黒髪を触ってみたい。意思を感じさせる強い瞳に俺をうつして欲しいと思ってしまったんだ」
「はっ、はい?」
うわっ、うわぁ~っ、こっ、こわっ。
鳥肌、鳥肌がザザザザッとたったよ。
いったい、いったいなんなの?
「お嬢さん、俺と踊っていただけますか?」
目の前に大きな彼の手が差し出される。
これ、断りたい。
断りたいけど、断ったら失礼にあたるの?
どう対応すればいいのかわからないよ~。
彼のせいで、周りの女性たちからすごい目で睨まれてるじゃないの。
みんなドマリニ侯爵令息からの誘いを待っているのだろう。
モリーヌ様がつかつかつかとやってきた。
「ロニ―様、この女性 リナさんはは平民ですのよ?
周りをよくご覧になってくださいな。
身分ある蝶や花があなたの周りに集まっておりますわ。あなたにはもっと華やかな蝶のほうがお似合いだと思いますわ」
モリーヌ様はそう言うと、ほんわか柔らかい笑みを浮かべ、恥ずかしそうに俯いた。
これって、私を選んでってアピールだよぬ?
婚約者がいるのに?
ダンスだけなら問題ないのか……
「ケント、モリーヌ嬢なんか気にするな」
ケント様のご友人たちがやってきて、ケント様を励ましている。
どうして?
モリーヌ様とケント様の間に何かあったの?
「みんなありがとう。もう僕は大丈夫だから……」
ぎごちない笑顔。
ケント様の目が細くなり、口角が少しあがる。無理やり笑顔を作ろうとしてる?
「リナ、そろそろ帰ろう」
肩を落としたケント様に提案された。
集まってきていた彼の友人たちはあきらかにほっとした顔をしたけれど、私は頷けない。
初めての舞踏会。
素敵なドレスを用意して着飾ってもらい、ケント様とダンスを楽しみ、キラキラとした時間で、すごくすっごく楽しかったのに……
モリーヌ様が現れて、ケント様から笑顔が消えた。
このまま帰るの?
私はこんな終わりは嫌だ。
せっかくの舞踏会の思い出が嫌なものになってしまう。
「ケント様、私はまだここで楽しみたいです。あなたと踊りたい。私と踊っていただけませんか?」
にっこり笑って、彼の手をひき、フロアの中央へ歩いていく。
貴族女性ではありえない行為かもしれないけれど、みんなダンスや会話を楽しんでいて、意外と見られていないと思うのよ。
彼はびっくりしたようだけれど、黙ってついてきてくれた。
すぐに体制を整えると、私をリードして踊り始めた。
ダンスが始まると、ケント様は堂々としてカッコいい。
しばらく踊っていると、また私たちの周りには自由に踊れるだけのスペースができ、多くの視線を感じる。
私も慣れてきて、周りを観察する余裕が出てきた。
ケント様をうっとりとした瞳でみつめるご令嬢方がいるじゃない。
彼、ダンスしていると何割増かで格好よいものね。
彼のカッコいいところをアピール、アピールチャンスだわ。
あっ、モリーヌ様がいる。
イコアス伯爵令息と踊りながらも、ケント様をみつめ、悔しそうに顔を歪めている。
やはりモリーヌ様とケント様には何かあったんだ……
彼女の様子からしてケント様が捨てられた?
もしくは振られた?
そんなとこかしら……
彼女、のびのびとダンスを楽しむケント様を見て、歯軋りでもしそうだ。
そうそう、彼、素敵でしょ?
先程のお返しとばかり、モリーヌ様と視線を合わせ、ゆったりと微笑んでみる。
『悔しい、悔し~い』と彼女の心の声が聞こえてきそうだ。
そうそう、逃した魚の価値を思い知ればいいのよ。
「リナ、ご機嫌だね」
ケント様がターンした直後に私の耳元へ顔を寄せ、囁いた。
「うん、今 私 すごく楽しいから。あのまま帰らなくてよかった」
「そう、そうか。それなら良かった」
ケント様と2人、踊りながら微笑み合う。
踊るケント様に見惚れているご令嬢たちがいるのも確認できたし、私の役目はここまでね。
曲が終わる間際になると、私たちの近くへ華やかなご令嬢たちがゆっくりゆっくりと距離を詰めてくる。
ケント様目当てで、次のダンスのお誘いを期待しているのだろう。
「ケント様、大人気ですね」
「えっ?」
「キレイな方々がダンスのお誘いを待ってますよ」
「はっ?」
ケント様は鈍いの?鈍すぎるの?
ご令嬢方の好意を、あの熱い視線を感じないなんて……
曲が終わると同時に、色とりどりのドレスを着た彼女たちのほうへとケント様の背中を軽く押した。
「ケント様、行ってらっしゃい」
「はっ、ほえっ、あっ、お嬢さん、僕と踊っていただけますか?」
「はいっ、よろしくお願いします」
かわいらしい女性が頬をそめながら、彼へと手を伸ばす。
咄嗟に好みの女性に声をかけたな。
2人の手が触れた瞬間、ズキンッと胸が痛んだ。
体調不良?
急に激しく動いたから、心臓に負担をかけてしまったのかな。
安静に、安静にしなきゃ。
彼らから目を反らし、ソファーで休んでいると……
「お嬢さん、私と踊っていただけますか?」
主催者であるドマリニ侯爵令息からダンスに誘われた。
明るい栗色の髪に透き通った緑の泉を思い起こさせる瞳。
キレイな顔立ちの男性だ。
この集まりに参加している男女はみな見目麗しい方ばかり。
その中でも飛び抜けてキレイだ。
ケント様よりも鍛えられているようなしっかりとした体つきで、顔も凛々しいキレイさだ。
あまりにもキレイな人に話しかけられると緊張してしまう。
「えっ、あっ、私はダンス初心者で……うまく踊れる自信がなくて……」
「先程のダンスはお見事でしたよ。彼との息もぴったりで、きっと相性がいいのでしょうね。デリーノ伯爵令息とは婚約を?」
「いっ、いえっ、私たちはそういう関係ではなくて……」
「おやっ、そうですか……では、俺にもあなたを口説く機会をいただけますか?この国ではなかなか見ない真っ直ぐで艶やかな黒髪を触ってみたい。意思を感じさせる強い瞳に俺をうつして欲しいと思ってしまったんだ」
「はっ、はい?」
うわっ、うわぁ~っ、こっ、こわっ。
鳥肌、鳥肌がザザザザッとたったよ。
いったい、いったいなんなの?
「お嬢さん、俺と踊っていただけますか?」
目の前に大きな彼の手が差し出される。
これ、断りたい。
断りたいけど、断ったら失礼にあたるの?
どう対応すればいいのかわからないよ~。
彼のせいで、周りの女性たちからすごい目で睨まれてるじゃないの。
みんなドマリニ侯爵令息からの誘いを待っているのだろう。
モリーヌ様がつかつかつかとやってきた。
「ロニ―様、この女性 リナさんはは平民ですのよ?
周りをよくご覧になってくださいな。
身分ある蝶や花があなたの周りに集まっておりますわ。あなたにはもっと華やかな蝶のほうがお似合いだと思いますわ」
モリーヌ様はそう言うと、ほんわか柔らかい笑みを浮かべ、恥ずかしそうに俯いた。
これって、私を選んでってアピールだよぬ?
婚約者がいるのに?
ダンスだけなら問題ないのか……
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