22 / 70
第22話 こんな終わりは嫌だ
しおりを挟む
「ケント、大丈夫か?」
「ケント、モリーヌ嬢なんか気にするな」
ケント様のご友人たちがやってきて、ケント様を励ましている。
どうして?
モリーヌ様とケント様の間に何かあったの?
「みんなありがとう。もう僕は大丈夫だから……」
ぎごちない笑顔。
ケント様の目が細くなり、口角が少しあがる。無理やり笑顔を作ろうとしてる?
「リナ、そろそろ帰ろう」
肩を落としたケント様に提案された。
集まってきていた彼の友人たちはあきらかにほっとした顔をしたけれど、私は頷けない。
初めての舞踏会。
素敵なドレスを用意して着飾ってもらい、ケント様とダンスを楽しみ、キラキラとした時間で、すごくすっごく楽しかったのに……
モリーヌ様が現れて、ケント様から笑顔が消えた。
このまま帰るの?
私はこんな終わりは嫌だ。
せっかくの舞踏会の思い出が嫌なものになってしまう。
「ケント様、私はまだここで楽しみたいです。あなたと踊りたい。私と踊っていただけませんか?」
にっこり笑って、彼の手をひき、フロアの中央へ歩いていく。
貴族女性ではありえない行為かもしれないけれど、みんなダンスや会話を楽しんでいて、意外と見られていないと思うのよ。
彼はびっくりしたようだけれど、黙ってついてきてくれた。
すぐに体制を整えると、私をリードして踊り始めた。
ダンスが始まると、ケント様は堂々としてカッコいい。
しばらく踊っていると、また私たちの周りには自由に踊れるだけのスペースができ、多くの視線を感じる。
私も慣れてきて、周りを観察する余裕が出てきた。
ケント様をうっとりとした瞳でみつめるご令嬢方がいるじゃない。
彼、ダンスしていると何割増かで格好よいものね。
彼のカッコいいところをアピール、アピールチャンスだわ。
あっ、モリーヌ様がいる。
イコアス伯爵令息と踊りながらも、ケント様をみつめ、悔しそうに顔を歪めている。
やはりモリーヌ様とケント様には何かあったんだ……
彼女の様子からしてケント様が捨てられた?
もしくは振られた?
そんなとこかしら……
彼女、のびのびとダンスを楽しむケント様を見て、歯軋りでもしそうだ。
そうそう、彼、素敵でしょ?
先程のお返しとばかり、モリーヌ様と視線を合わせ、ゆったりと微笑んでみる。
『悔しい、悔し~い』と彼女の心の声が聞こえてきそうだ。
そうそう、逃した魚の価値を思い知ればいいのよ。
「リナ、ご機嫌だね」
ケント様がターンした直後に私の耳元へ顔を寄せ、囁いた。
「うん、今 私 すごく楽しいから。あのまま帰らなくてよかった」
「そう、そうか。それなら良かった」
ケント様と2人、踊りながら微笑み合う。
踊るケント様に見惚れているご令嬢たちがいるのも確認できたし、私の役目はここまでね。
曲が終わる間際になると、私たちの近くへ華やかなご令嬢たちがゆっくりゆっくりと距離を詰めてくる。
ケント様目当てで、次のダンスのお誘いを期待しているのだろう。
「ケント様、大人気ですね」
「えっ?」
「キレイな方々がダンスのお誘いを待ってますよ」
「はっ?」
ケント様は鈍いの?鈍すぎるの?
ご令嬢方の好意を、あの熱い視線を感じないなんて……
曲が終わると同時に、色とりどりのドレスを着た彼女たちのほうへとケント様の背中を軽く押した。
「ケント様、行ってらっしゃい」
「はっ、ほえっ、あっ、お嬢さん、僕と踊っていただけますか?」
「はいっ、よろしくお願いします」
かわいらしい女性が頬をそめながら、彼へと手を伸ばす。
咄嗟に好みの女性に声をかけたな。
2人の手が触れた瞬間、ズキンッと胸が痛んだ。
体調不良?
急に激しく動いたから、心臓に負担をかけてしまったのかな。
安静に、安静にしなきゃ。
彼らから目を反らし、ソファーで休んでいると……
「お嬢さん、私と踊っていただけますか?」
主催者であるドマリニ侯爵令息からダンスに誘われた。
明るい栗色の髪に透き通った緑の泉を思い起こさせる瞳。
キレイな顔立ちの男性だ。
この集まりに参加している男女はみな見目麗しい方ばかり。
その中でも飛び抜けてキレイだ。
ケント様よりも鍛えられているようなしっかりとした体つきで、顔も凛々しいキレイさだ。
あまりにもキレイな人に話しかけられると緊張してしまう。
「えっ、あっ、私はダンス初心者で……うまく踊れる自信がなくて……」
「先程のダンスはお見事でしたよ。彼との息もぴったりで、きっと相性がいいのでしょうね。デリーノ伯爵令息とは婚約を?」
「いっ、いえっ、私たちはそういう関係ではなくて……」
「おやっ、そうですか……では、俺にもあなたを口説く機会をいただけますか?この国ではなかなか見ない真っ直ぐで艶やかな黒髪を触ってみたい。意思を感じさせる強い瞳に俺をうつして欲しいと思ってしまったんだ」
「はっ、はい?」
うわっ、うわぁ~っ、こっ、こわっ。
鳥肌、鳥肌がザザザザッとたったよ。
いったい、いったいなんなの?
「お嬢さん、俺と踊っていただけますか?」
目の前に大きな彼の手が差し出される。
これ、断りたい。
断りたいけど、断ったら失礼にあたるの?
どう対応すればいいのかわからないよ~。
彼のせいで、周りの女性たちからすごい目で睨まれてるじゃないの。
みんなドマリニ侯爵令息からの誘いを待っているのだろう。
モリーヌ様がつかつかつかとやってきた。
「ロニ―様、この女性 リナさんはは平民ですのよ?
周りをよくご覧になってくださいな。
身分ある蝶や花があなたの周りに集まっておりますわ。あなたにはもっと華やかな蝶のほうがお似合いだと思いますわ」
モリーヌ様はそう言うと、ほんわか柔らかい笑みを浮かべ、恥ずかしそうに俯いた。
これって、私を選んでってアピールだよぬ?
婚約者がいるのに?
ダンスだけなら問題ないのか……
「ケント、モリーヌ嬢なんか気にするな」
ケント様のご友人たちがやってきて、ケント様を励ましている。
どうして?
モリーヌ様とケント様の間に何かあったの?
「みんなありがとう。もう僕は大丈夫だから……」
ぎごちない笑顔。
ケント様の目が細くなり、口角が少しあがる。無理やり笑顔を作ろうとしてる?
「リナ、そろそろ帰ろう」
肩を落としたケント様に提案された。
集まってきていた彼の友人たちはあきらかにほっとした顔をしたけれど、私は頷けない。
初めての舞踏会。
素敵なドレスを用意して着飾ってもらい、ケント様とダンスを楽しみ、キラキラとした時間で、すごくすっごく楽しかったのに……
モリーヌ様が現れて、ケント様から笑顔が消えた。
このまま帰るの?
私はこんな終わりは嫌だ。
せっかくの舞踏会の思い出が嫌なものになってしまう。
「ケント様、私はまだここで楽しみたいです。あなたと踊りたい。私と踊っていただけませんか?」
にっこり笑って、彼の手をひき、フロアの中央へ歩いていく。
貴族女性ではありえない行為かもしれないけれど、みんなダンスや会話を楽しんでいて、意外と見られていないと思うのよ。
彼はびっくりしたようだけれど、黙ってついてきてくれた。
すぐに体制を整えると、私をリードして踊り始めた。
ダンスが始まると、ケント様は堂々としてカッコいい。
しばらく踊っていると、また私たちの周りには自由に踊れるだけのスペースができ、多くの視線を感じる。
私も慣れてきて、周りを観察する余裕が出てきた。
ケント様をうっとりとした瞳でみつめるご令嬢方がいるじゃない。
彼、ダンスしていると何割増かで格好よいものね。
彼のカッコいいところをアピール、アピールチャンスだわ。
あっ、モリーヌ様がいる。
イコアス伯爵令息と踊りながらも、ケント様をみつめ、悔しそうに顔を歪めている。
やはりモリーヌ様とケント様には何かあったんだ……
彼女の様子からしてケント様が捨てられた?
もしくは振られた?
そんなとこかしら……
彼女、のびのびとダンスを楽しむケント様を見て、歯軋りでもしそうだ。
そうそう、彼、素敵でしょ?
先程のお返しとばかり、モリーヌ様と視線を合わせ、ゆったりと微笑んでみる。
『悔しい、悔し~い』と彼女の心の声が聞こえてきそうだ。
そうそう、逃した魚の価値を思い知ればいいのよ。
「リナ、ご機嫌だね」
ケント様がターンした直後に私の耳元へ顔を寄せ、囁いた。
「うん、今 私 すごく楽しいから。あのまま帰らなくてよかった」
「そう、そうか。それなら良かった」
ケント様と2人、踊りながら微笑み合う。
踊るケント様に見惚れているご令嬢たちがいるのも確認できたし、私の役目はここまでね。
曲が終わる間際になると、私たちの近くへ華やかなご令嬢たちがゆっくりゆっくりと距離を詰めてくる。
ケント様目当てで、次のダンスのお誘いを期待しているのだろう。
「ケント様、大人気ですね」
「えっ?」
「キレイな方々がダンスのお誘いを待ってますよ」
「はっ?」
ケント様は鈍いの?鈍すぎるの?
ご令嬢方の好意を、あの熱い視線を感じないなんて……
曲が終わると同時に、色とりどりのドレスを着た彼女たちのほうへとケント様の背中を軽く押した。
「ケント様、行ってらっしゃい」
「はっ、ほえっ、あっ、お嬢さん、僕と踊っていただけますか?」
「はいっ、よろしくお願いします」
かわいらしい女性が頬をそめながら、彼へと手を伸ばす。
咄嗟に好みの女性に声をかけたな。
2人の手が触れた瞬間、ズキンッと胸が痛んだ。
体調不良?
急に激しく動いたから、心臓に負担をかけてしまったのかな。
安静に、安静にしなきゃ。
彼らから目を反らし、ソファーで休んでいると……
「お嬢さん、私と踊っていただけますか?」
主催者であるドマリニ侯爵令息からダンスに誘われた。
明るい栗色の髪に透き通った緑の泉を思い起こさせる瞳。
キレイな顔立ちの男性だ。
この集まりに参加している男女はみな見目麗しい方ばかり。
その中でも飛び抜けてキレイだ。
ケント様よりも鍛えられているようなしっかりとした体つきで、顔も凛々しいキレイさだ。
あまりにもキレイな人に話しかけられると緊張してしまう。
「えっ、あっ、私はダンス初心者で……うまく踊れる自信がなくて……」
「先程のダンスはお見事でしたよ。彼との息もぴったりで、きっと相性がいいのでしょうね。デリーノ伯爵令息とは婚約を?」
「いっ、いえっ、私たちはそういう関係ではなくて……」
「おやっ、そうですか……では、俺にもあなたを口説く機会をいただけますか?この国ではなかなか見ない真っ直ぐで艶やかな黒髪を触ってみたい。意思を感じさせる強い瞳に俺をうつして欲しいと思ってしまったんだ」
「はっ、はい?」
うわっ、うわぁ~っ、こっ、こわっ。
鳥肌、鳥肌がザザザザッとたったよ。
いったい、いったいなんなの?
「お嬢さん、俺と踊っていただけますか?」
目の前に大きな彼の手が差し出される。
これ、断りたい。
断りたいけど、断ったら失礼にあたるの?
どう対応すればいいのかわからないよ~。
彼のせいで、周りの女性たちからすごい目で睨まれてるじゃないの。
みんなドマリニ侯爵令息からの誘いを待っているのだろう。
モリーヌ様がつかつかつかとやってきた。
「ロニ―様、この女性 リナさんはは平民ですのよ?
周りをよくご覧になってくださいな。
身分ある蝶や花があなたの周りに集まっておりますわ。あなたにはもっと華やかな蝶のほうがお似合いだと思いますわ」
モリーヌ様はそう言うと、ほんわか柔らかい笑みを浮かべ、恥ずかしそうに俯いた。
これって、私を選んでってアピールだよぬ?
婚約者がいるのに?
ダンスだけなら問題ないのか……
1
お気に入りに追加
402
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
王子の婚約破棄に対抗する令嬢はお好きですか?~妹ってうるさいですね。そこまでおっしゃるのでしたら別れましょう~
岡暁舟
恋愛
妹のほうが好きな理由は……説明するだけ無駄なようなので、私は残された人生を好きに生きようと思います。でもね、それだけ簡単な話ではないみたいですよ。王子様、妹の人生まで台無しにするだなんて……そこまでされたら、黙ってはいられませんね。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました
青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。
それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。
タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒―
私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。
「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」
その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。
※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています
俺の天使は盲目でひきこもり
ことりとりとん
恋愛
あらすじ
いきなり婚約破棄された俺に、代わりに与えられた婚約者は盲目の少女。
人形のような彼女に、普通の楽しみを知ってほしいな。
男主人公と、盲目の女の子のふわっとした恋愛小説です。ただひたすらあまーい雰囲気が続きます。婚約破棄スタートですが、ざまぁはたぶんありません。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
小説家になろうからの転載です。
全62話、完結まで投稿済で、序盤以外は1日1話ずつ公開していきます。
よろしくお願いします!
捨てた騎士と拾った魔術師
吉野屋
恋愛
貴族の庶子であるミリアムは、前世持ちである。冷遇されていたが政略でおっさん貴族の後妻落ちになる事を懸念して逃げ出した。実家では隠していたが、魔力にギフトと生活能力はあるので、王都に行き暮らす。優しくて美しい夫も出来て幸せな生活をしていたが、夫の兄の死で伯爵家を継いだ夫に捨てられてしまう。その後、王都に来る前に出会った男(その時は鳥だった)に再会して国を左右する陰謀に巻き込まれていく。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
体質系?異世界召喚者、また召喚され、怒る
吉野屋
恋愛
主人公は元気な女子高生。二度目の召喚でまた同じ国に召喚される。
一度目は高校二年生の春に召喚され、異世界で7年働かされ自力で?元の世界に戻る。
戻ったら七年前のその時、その場所で女子高生時の若さのままでホッとしたのも暫く・・・
一年後にまた同じ異世界に飛ばされる。
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉。祝、サレ妻コミカライズ化
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる