8 / 70
第8話 最高です
しおりを挟む
ケント様にダンスのお礼を伝えて別れると、一気に力が抜けた。
久しぶりに汗をかくほど身体を動かしたのだ。
想像していた以上に楽しくて、つい無理してしまった。
あちこち痛くて、カクカクする。
自分の部屋へ戻ると、真っ白なソファーに直行、そのままくたりと座り込む。
お行儀悪いんだろうけれど、足を体操座りみたいに折りたたんででソファーの座面にあげてしまう。
うわぁ~、足の筋肉がガチガチ。
足首からふくらはぎまでを手でもみもみ、もみもみ。
「ダンス楽しかったようですね。足が痛いんですね?すぐ湯浴みの準備をしてまいります」と言い、ロナは離れていった。
ソファーで足をあげてもみもみしている行儀の悪い行いはスルーしてくれたようだ。
トントン
「リナ様、お湯の準備ができました。今からゆっくりお湯に入りましょう」
ありがたい、ありがたい。
ロナとともに浴室へ向かう。
湯気が立ち上る湯船につかると、あー、疲れた体に温かいお湯がしみわたる~。
最高、最高だ!!
この広い浴槽だと足が伸ばせるのよね。
ゆったりと手足を伸ばしてみたり、湯船の中で手や足をもみもみしてみる。
少しでも筋肉をほぐしておかないと、明日大変なことになりそう。
筋肉痛がひどいと、歩くのも大変って場合もあるからね。
お風呂からあがり、部屋へ戻ると、
「今からマッサージしますので、ベッドでうつ伏せになってください」
ロナが得意気に微笑み、指の関節をポキポキ鳴らした。
えっ、なに、なに?
マッサージしてもらえるの?
すっごい、嬉しい。
「足はもちろんですが、慣れない動きであちこち凝っていると思いますよ。湯浴みへ向かう足取りもおぼつかない感じでしたし……」
「そう、そうなのよ。久しぶりの運動したらこうなるわよね。早めに切り上げればよかったんだけど、楽しくて……
湯船の中で自分なりに筋肉をほぐしてはみたんだけど、まだまだ足りない感じ。
誰かにマッサージしてもらうのって、すごく気持ちいいのよね。では、よろしくお願いします!」
「はい、お任せくださいっ」
私の喜び方が、はしゃぎ方が、大袈裟だったかな。
ロナはふふっ、ふふふっと笑っている。
私がベッドへうつぶせで寝転ぶと、ロナによる少し体重をかけながらのマッサージが始まった。
リズミカルに手のひらで、指で、ぐいぐいと的確にツボを押していく。
ロナのマッサージ、力加減が絶妙でめちゃくちゃ気持ちいい!
「ううっ、いい、気持ちいい」
「うん、そこそこ」
「はぁー」と声を出していた私だったが、あまりの気持ち良さに、目がとろんとしてだんだん瞼を持ち上げることが難しくなってきた。
「リナ様、眠くなってきましたか?」
「う~ん、あまりの気持ちよさに意識が飛びそう。ロナ、マッサージ上手すぎっ。最高よ!」
「ふふっ、ふふっ、ありがとうございます。ベッドの上ですので、このまま眠ってしまって大丈夫ですからね」
私の耳へ届いたのは、ここまで……
んんっ?
目が覚めた時には、ベッドに寝そべる私の体には柔らかいふわふわな布がかけられていた。
ロナのマッサージが気持ちよすぎて眠っちゃったみたい。
ロナのマッサージは最高です!
あとでお礼を伝えなきゃね。
***
【ケント視点】
リナに運動したい、ダンスがしたいと言われた。
僕はダンスが好きだ。
好きなんだが、女性と接することが苦手で、今まで社交場ではほとんどダンスをしてこなかった。
ダンスレッスンで女性と踊るくらいで……
一応動き方はわかるし、体も動くと思うのだが、それをリナに教えるとなるとうまくできるかわからない。
男性パートと女性パートでは動きが異なるのだから……
「今日すぐに来てくれる女性パートのダンス講師を呼んでくれ」と執事のセスへ指示を出すと、
「リナ様が習うのですか?」と確認された。
「いや、リナはダンス経験が全くないんだ。初めは僕が教えようと思う」
「では、レッスンを受けるのはケント様ですか?」
「ああ、そうだ」
「えっ、ぼっ、坊っちゃんが女性パート、女性パートを?」
セスは表情を取り繕う余裕さえ持てないようだ。
激しく動揺し、取り乱している。
その泣いてるのか笑っているのかわからない顔。
僕の心を乱すから勘弁してくれ。
それに坊っちゃんって……
幼い頃の呼び方じゃないか。
絶対にみんなの前で呼ばないでくれよ。
「ああ、僕が教わるつもりだ」
「そうですか……そうですか……お任せください。すぐに手配いたします」
セスはすぐに動いたようだ。
講師はすぐにやってきた。
「えっ、男性に女性パートを指導するのですか?私には経験ありません……」と逃げ腰だった講師だが、セスが事情を説明すると、
「まぁまぁ、なんてロマンティックなのかしら!私にお任せくださいっ」と急にやる気になった。
女性パートの基礎の動きを確認。
実際に目の前で動いて教えてもらう。
セスに男性パートを担当してもらい、女性役として実際に踊ってみたりもした。
何度か動き方や注意点を確認して、なんとか及第点がもらえ、レッスンは終了。
これで基本的な動きくらいなら、僕からリナに教えることができるだろう。
彼女は初めてダンスらしいので、ダンスに興味を持ち、もっと上手くなりたいと願うようなら、きちんと講師を招いて習うのもいいかもしれない。
後日、ダンスホールに現れた彼女は、さぁやるぞっ!と気合い十分だった。
なんとも微笑ましい限りだ。
彼女はコツを掴むのが早い。
しかも根性がある。
一生懸命踊る彼女とのダンスは思いのほか楽しかった。
媚をうる女性とのダンスは適切な距離を保つのが大変で疲れる。
リナとのダンスは、僕にダンスの楽しさを思い出させてくれた。
久しぶりに汗をかくほど身体を動かしたのだ。
想像していた以上に楽しくて、つい無理してしまった。
あちこち痛くて、カクカクする。
自分の部屋へ戻ると、真っ白なソファーに直行、そのままくたりと座り込む。
お行儀悪いんだろうけれど、足を体操座りみたいに折りたたんででソファーの座面にあげてしまう。
うわぁ~、足の筋肉がガチガチ。
足首からふくらはぎまでを手でもみもみ、もみもみ。
「ダンス楽しかったようですね。足が痛いんですね?すぐ湯浴みの準備をしてまいります」と言い、ロナは離れていった。
ソファーで足をあげてもみもみしている行儀の悪い行いはスルーしてくれたようだ。
トントン
「リナ様、お湯の準備ができました。今からゆっくりお湯に入りましょう」
ありがたい、ありがたい。
ロナとともに浴室へ向かう。
湯気が立ち上る湯船につかると、あー、疲れた体に温かいお湯がしみわたる~。
最高、最高だ!!
この広い浴槽だと足が伸ばせるのよね。
ゆったりと手足を伸ばしてみたり、湯船の中で手や足をもみもみしてみる。
少しでも筋肉をほぐしておかないと、明日大変なことになりそう。
筋肉痛がひどいと、歩くのも大変って場合もあるからね。
お風呂からあがり、部屋へ戻ると、
「今からマッサージしますので、ベッドでうつ伏せになってください」
ロナが得意気に微笑み、指の関節をポキポキ鳴らした。
えっ、なに、なに?
マッサージしてもらえるの?
すっごい、嬉しい。
「足はもちろんですが、慣れない動きであちこち凝っていると思いますよ。湯浴みへ向かう足取りもおぼつかない感じでしたし……」
「そう、そうなのよ。久しぶりの運動したらこうなるわよね。早めに切り上げればよかったんだけど、楽しくて……
湯船の中で自分なりに筋肉をほぐしてはみたんだけど、まだまだ足りない感じ。
誰かにマッサージしてもらうのって、すごく気持ちいいのよね。では、よろしくお願いします!」
「はい、お任せくださいっ」
私の喜び方が、はしゃぎ方が、大袈裟だったかな。
ロナはふふっ、ふふふっと笑っている。
私がベッドへうつぶせで寝転ぶと、ロナによる少し体重をかけながらのマッサージが始まった。
リズミカルに手のひらで、指で、ぐいぐいと的確にツボを押していく。
ロナのマッサージ、力加減が絶妙でめちゃくちゃ気持ちいい!
「ううっ、いい、気持ちいい」
「うん、そこそこ」
「はぁー」と声を出していた私だったが、あまりの気持ち良さに、目がとろんとしてだんだん瞼を持ち上げることが難しくなってきた。
「リナ様、眠くなってきましたか?」
「う~ん、あまりの気持ちよさに意識が飛びそう。ロナ、マッサージ上手すぎっ。最高よ!」
「ふふっ、ふふっ、ありがとうございます。ベッドの上ですので、このまま眠ってしまって大丈夫ですからね」
私の耳へ届いたのは、ここまで……
んんっ?
目が覚めた時には、ベッドに寝そべる私の体には柔らかいふわふわな布がかけられていた。
ロナのマッサージが気持ちよすぎて眠っちゃったみたい。
ロナのマッサージは最高です!
あとでお礼を伝えなきゃね。
***
【ケント視点】
リナに運動したい、ダンスがしたいと言われた。
僕はダンスが好きだ。
好きなんだが、女性と接することが苦手で、今まで社交場ではほとんどダンスをしてこなかった。
ダンスレッスンで女性と踊るくらいで……
一応動き方はわかるし、体も動くと思うのだが、それをリナに教えるとなるとうまくできるかわからない。
男性パートと女性パートでは動きが異なるのだから……
「今日すぐに来てくれる女性パートのダンス講師を呼んでくれ」と執事のセスへ指示を出すと、
「リナ様が習うのですか?」と確認された。
「いや、リナはダンス経験が全くないんだ。初めは僕が教えようと思う」
「では、レッスンを受けるのはケント様ですか?」
「ああ、そうだ」
「えっ、ぼっ、坊っちゃんが女性パート、女性パートを?」
セスは表情を取り繕う余裕さえ持てないようだ。
激しく動揺し、取り乱している。
その泣いてるのか笑っているのかわからない顔。
僕の心を乱すから勘弁してくれ。
それに坊っちゃんって……
幼い頃の呼び方じゃないか。
絶対にみんなの前で呼ばないでくれよ。
「ああ、僕が教わるつもりだ」
「そうですか……そうですか……お任せください。すぐに手配いたします」
セスはすぐに動いたようだ。
講師はすぐにやってきた。
「えっ、男性に女性パートを指導するのですか?私には経験ありません……」と逃げ腰だった講師だが、セスが事情を説明すると、
「まぁまぁ、なんてロマンティックなのかしら!私にお任せくださいっ」と急にやる気になった。
女性パートの基礎の動きを確認。
実際に目の前で動いて教えてもらう。
セスに男性パートを担当してもらい、女性役として実際に踊ってみたりもした。
何度か動き方や注意点を確認して、なんとか及第点がもらえ、レッスンは終了。
これで基本的な動きくらいなら、僕からリナに教えることができるだろう。
彼女は初めてダンスらしいので、ダンスに興味を持ち、もっと上手くなりたいと願うようなら、きちんと講師を招いて習うのもいいかもしれない。
後日、ダンスホールに現れた彼女は、さぁやるぞっ!と気合い十分だった。
なんとも微笑ましい限りだ。
彼女はコツを掴むのが早い。
しかも根性がある。
一生懸命踊る彼女とのダンスは思いのほか楽しかった。
媚をうる女性とのダンスは適切な距離を保つのが大変で疲れる。
リナとのダンスは、僕にダンスの楽しさを思い出させてくれた。
1
お気に入りに追加
400
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら
みおな
恋愛
子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。
公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。
クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。
クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。
「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」
「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」
「ファンティーヌが」
「ファンティーヌが」
だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。
「私のことはお気になさらず」
【完結】側妃は愛されるのをやめました
なか
恋愛
「君ではなく、彼女を正妃とする」
私は、貴方のためにこの国へと貢献してきた自負がある。
なのに……彼は。
「だが僕は、ラテシアを見捨てはしない。これから君には側妃になってもらうよ」
私のため。
そんな建前で……側妃へと下げる宣言をするのだ。
このような侮辱、恥を受けてなお……正妃を求めて抗議するか?
否。
そのような恥を晒す気は無い。
「承知いたしました。セリム陛下……私は側妃を受け入れます」
側妃を受けいれた私は、呼吸を挟まずに言葉を続ける。
今しがた決めた、たった一つの決意を込めて。
「ですが陛下。私はもう貴方を支える気はありません」
これから私は、『捨てられた妃』という汚名でなく、彼を『捨てた妃』となるために。
華々しく、私の人生を謳歌しよう。
全ては、廃妃となるために。
◇◇◇
設定はゆるめです。
読んでくださると嬉しいです!
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
【完結】お父様。私、悪役令嬢なんですって。何ですかそれって。
紅月
恋愛
小説家になろうで書いていたものを加筆、訂正したリメイク版です。
「何故、私の娘が処刑されなければならないんだ」
最愛の娘が冤罪で処刑された。
時を巻き戻し、復讐を誓う家族。
娘は前と違う人生を歩み、家族は元凶へ復讐の手を伸ばすが、巻き戻す前と違う展開のため様々な事が見えてきた。
愛など初めからありませんが。
ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。
お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。
「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」
「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」
「……何を言っている?」
仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに?
✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる