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第6話 運動しましょう
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朝、ロナに支度をしてもらい、お嬢様仕様になった私は、ケント様と美味しくてボリュームたっぶりの朝食を楽しんでいた。
今朝はぽかぼかと暖かい日差しが食堂に差し込んでいる。
ケント様の後ろからまるで後光が差しているよう。
「本当にここの食事は美味しいです。それにこのボリューム。食べ続けていたらブクブクに太ってしまいそう」
ふわっふわの白パンにはほんのり甘いミルククリームがたっぷり添えられ、フリルのように華やかな葉もの野菜のサラダには柑橘系のドレッシングがかかっている。
大きめのソーセージはスパイスが効いていて食べ応えがある。
とても朝食とは思えないボリュームなのだ。
きっと痩せこけてしまったケント様を太らせるべく料理人が腕をはりきっているんだと思う。
それに付き合っていたら、私まで太ってしまうと不安になるのは仕方がないことだよね……
「そうかな?まぁ少しくらいなら太っても大丈夫じゃないかな。リナは健康的な感じで、まぁ痩せてはないけど、太ってもないだろ?」
「ケント様、そこは『リナは痩せているから心配いらないよ』と言うべきところですよ!痩せてるとは言えなかったとしても痩せてはないけど発言は余計です。それに、ケント様見てくださいよ。今の私を……ロナの手によってこんなにかわいくしてもらったんですよ。それに一言も触れないのは、男性してどうかと……
婚約者や彼女にもそんな態度じゃ愛想をつかされてしまいますよ?」
今日のリナはエメラルドグリーンのドレスだ。
ウエスト部分と裾周りに濃いグリーンのリボンがついていて、なかなかかわいらしいデザインなのだ。
こんな素敵なドレスをなぜ誉めない?
小説に出てきた貴族の男性は、女性と接する時には褒め言葉を連発していたんだけどな。
今いる世界は、貴族が出てくる小説の世界に似ている気がするんだけど……
それが普通じゃないの?
小説に書かれていたのは女性に慣れているモテる男性だったから?
ドレスで美しく着飾っている私。
小説のヒロインみたいに誉めてもらいたいと思ってしまった。
だってドレスだよ?ドレスなんて着る機会はなかった。
ピアノの発表会とか、あとは自分の結婚式や披露宴くらい?
私は音楽の習い事していなかったし、結婚の予定どころか、今は彼氏もいない。
ドレスを着る機会なんて今までなかった。
ケント様はもっと健康的になれば、ヒーローみたいになると思う。
素材はよさそう。
金髪だよ?スカイブルーの瞳だよ?
目を引く美男子だったと思うんだ。
健康的であったのなら……
『婚約者や彼女にもそんな態度じゃ愛想をつかされてしまいますよ』と言ってしまったのは言い過ぎだったかも。
「あー、そう?そうなのかな……」
明らかにシュンとしょげてしまう彼。
まるで大型犬が耳を倒して、尻尾をたらしているみたい。
顔に悲壮感が漂う。
なんてわかりやすいんだろう。
もしかして、何かトラウマあり?
「ごめんなさい。少し言いすぎました」
「いや、いいよ。思ったことを言ってくれるのは嬉しいから。ここでは本音を伝えてくれる人は貴重なんだ……リナはリナのままでいいからね」
「はい……じゃあ、食後は運動につきあってください」
「運動って何をするつもり?」
「散歩とかジョギングとか何でも体を動かせればいいんですが、私はダンスを踊ってみたいです。ケント様はダンスできるんですよね?以前 ロナに案内してもらった時に、ダンスホールの前を通ったんですよ。その時からダンスしてみたいなと思っていて……」
「ダンス、ダンスかー」
眉をさげて困り顔になったケント様。
ダンスは苦手なのかな……
「何かまずかったですか?」
私が確認すると、
なぜかロナが私の掩護射撃をしてくれた。
「いえ、何も問題ないですよね?ケント様はダンスもかなりの腕前ですし……」
ハッとつい言ってしまった感じで、ロナは口元を押さえた。
「じゃあ、何も問題ないですよね?ケント様、ケント様、お願い、お願いしまーす」
胸の前で手を合わせ、かわいくおねだりしてみる。
こんなこと今までしたことなかったなぁ。
こうやって男性に甘える女性を見ては、嫌だなと感じていた。
そう感じながらも、私にもこのくらいかわいげがあれば、もう少しモテたのかもとも思っていて……
実際に自分でやってみると、かなり恥ずかしい。
顔に熱がたまっていくのがわかる。
私の顔って、今 茹でダコみたいに真っ赤なんじゃないだろうか……
かなりのメンタルが必要だ。
恥ずかしくて、つい目をつぶっていたが、ケント様の反応が気になる。
私にダンスを教えてくれる気になってくれただろうか?
ゆっくりと目を開けて、おずおずとケント様をうかがってみる。
すると、ケント様は顔を真っ赤にしていた。
なんと耳まで真っ赤だ。
うそーっ、もしかして私も耳まで真っ赤なんだろうか。
耳を触ってみると、あったかい、あったかい気がする。
「わっ、わ……、わかった。明日からダンスを、ダンスをしようじゃないか」
「ケント様、明日からですね?ありがとうございます。絶対、絶対ですよ!」
嬉しくなった私は、目の前にいるケント様の手を握りしめ、ブンブン、ブンブン、振ったのでした。
今朝はぽかぼかと暖かい日差しが食堂に差し込んでいる。
ケント様の後ろからまるで後光が差しているよう。
「本当にここの食事は美味しいです。それにこのボリューム。食べ続けていたらブクブクに太ってしまいそう」
ふわっふわの白パンにはほんのり甘いミルククリームがたっぷり添えられ、フリルのように華やかな葉もの野菜のサラダには柑橘系のドレッシングがかかっている。
大きめのソーセージはスパイスが効いていて食べ応えがある。
とても朝食とは思えないボリュームなのだ。
きっと痩せこけてしまったケント様を太らせるべく料理人が腕をはりきっているんだと思う。
それに付き合っていたら、私まで太ってしまうと不安になるのは仕方がないことだよね……
「そうかな?まぁ少しくらいなら太っても大丈夫じゃないかな。リナは健康的な感じで、まぁ痩せてはないけど、太ってもないだろ?」
「ケント様、そこは『リナは痩せているから心配いらないよ』と言うべきところですよ!痩せてるとは言えなかったとしても痩せてはないけど発言は余計です。それに、ケント様見てくださいよ。今の私を……ロナの手によってこんなにかわいくしてもらったんですよ。それに一言も触れないのは、男性してどうかと……
婚約者や彼女にもそんな態度じゃ愛想をつかされてしまいますよ?」
今日のリナはエメラルドグリーンのドレスだ。
ウエスト部分と裾周りに濃いグリーンのリボンがついていて、なかなかかわいらしいデザインなのだ。
こんな素敵なドレスをなぜ誉めない?
小説に出てきた貴族の男性は、女性と接する時には褒め言葉を連発していたんだけどな。
今いる世界は、貴族が出てくる小説の世界に似ている気がするんだけど……
それが普通じゃないの?
小説に書かれていたのは女性に慣れているモテる男性だったから?
ドレスで美しく着飾っている私。
小説のヒロインみたいに誉めてもらいたいと思ってしまった。
だってドレスだよ?ドレスなんて着る機会はなかった。
ピアノの発表会とか、あとは自分の結婚式や披露宴くらい?
私は音楽の習い事していなかったし、結婚の予定どころか、今は彼氏もいない。
ドレスを着る機会なんて今までなかった。
ケント様はもっと健康的になれば、ヒーローみたいになると思う。
素材はよさそう。
金髪だよ?スカイブルーの瞳だよ?
目を引く美男子だったと思うんだ。
健康的であったのなら……
『婚約者や彼女にもそんな態度じゃ愛想をつかされてしまいますよ』と言ってしまったのは言い過ぎだったかも。
「あー、そう?そうなのかな……」
明らかにシュンとしょげてしまう彼。
まるで大型犬が耳を倒して、尻尾をたらしているみたい。
顔に悲壮感が漂う。
なんてわかりやすいんだろう。
もしかして、何かトラウマあり?
「ごめんなさい。少し言いすぎました」
「いや、いいよ。思ったことを言ってくれるのは嬉しいから。ここでは本音を伝えてくれる人は貴重なんだ……リナはリナのままでいいからね」
「はい……じゃあ、食後は運動につきあってください」
「運動って何をするつもり?」
「散歩とかジョギングとか何でも体を動かせればいいんですが、私はダンスを踊ってみたいです。ケント様はダンスできるんですよね?以前 ロナに案内してもらった時に、ダンスホールの前を通ったんですよ。その時からダンスしてみたいなと思っていて……」
「ダンス、ダンスかー」
眉をさげて困り顔になったケント様。
ダンスは苦手なのかな……
「何かまずかったですか?」
私が確認すると、
なぜかロナが私の掩護射撃をしてくれた。
「いえ、何も問題ないですよね?ケント様はダンスもかなりの腕前ですし……」
ハッとつい言ってしまった感じで、ロナは口元を押さえた。
「じゃあ、何も問題ないですよね?ケント様、ケント様、お願い、お願いしまーす」
胸の前で手を合わせ、かわいくおねだりしてみる。
こんなこと今までしたことなかったなぁ。
こうやって男性に甘える女性を見ては、嫌だなと感じていた。
そう感じながらも、私にもこのくらいかわいげがあれば、もう少しモテたのかもとも思っていて……
実際に自分でやってみると、かなり恥ずかしい。
顔に熱がたまっていくのがわかる。
私の顔って、今 茹でダコみたいに真っ赤なんじゃないだろうか……
かなりのメンタルが必要だ。
恥ずかしくて、つい目をつぶっていたが、ケント様の反応が気になる。
私にダンスを教えてくれる気になってくれただろうか?
ゆっくりと目を開けて、おずおずとケント様をうかがってみる。
すると、ケント様は顔を真っ赤にしていた。
なんと耳まで真っ赤だ。
うそーっ、もしかして私も耳まで真っ赤なんだろうか。
耳を触ってみると、あったかい、あったかい気がする。
「わっ、わ……、わかった。明日からダンスを、ダンスをしようじゃないか」
「ケント様、明日からですね?ありがとうございます。絶対、絶対ですよ!」
嬉しくなった私は、目の前にいるケント様の手を握りしめ、ブンブン、ブンブン、振ったのでした。
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