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第3話 居候になります
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私がケント様の身だしなみを整えると申し出たわけだが、
「客人にそのようなことはさせられません」
とみなさんに遠慮されてしまい……
私の目の前で、ケント様の髪が切られ、髭が剃られ、みるみるうちに彼はさっぱりしていく。
顔は青白いし、頬は痩けているが、今までテレビの中でしか見ないようなキレイな顔立ちの青年だった。
どちらかというと女装も似合いそうな中性的な美青年。
ただ気になったのは、私と目を合わせないところ。
せっかくキレイな顔をしているのに、俯きがちで、もったいない。
もっと堂々と胸をはればいいのに……
私が彼の容姿なら、そうだなぁ、思う存分 いろんなタイプの美女との恋愛を楽しみたい。
あー、全くとんでもない願望を抱いてしまったわ。
ケント様をじーっと見ていたら、私の前にお仕着せの女性がやってきた。
キレイな栗色のみつあみを肩まで垂らし、愛らしい笑顔を浮かべている。
とても穏やかそうな顔立ちの女性だ。
「ロナと申します。これからリナ様を担当させていただきますので、よろしくお願いします」
「そんなお世話だなんて……いいですっ、いいですっ。私は自分のことは自分でできますよ?」
顔の前で手を振り、お世話はいらないと断った私に、
「いえ、あなたは僕の客人ですから。それにこの国のことは何も知らないんじゃないですか?」と言われてしまい……
「ロナさん、よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げた。
ロナさん、私と似た名前だわ。
しかも優しそうな感じで……仲良くなれると嬉しいな。
「リナ様はお客様ですので、頭など下げないでください。私のことはロナとお呼びください。敬語も結構ですよ」
そう、ここではそうあるべきなのね。
でも本当はもっと砕けた感じで仲良くなりたいんだけどなぁ。
でもとりあえずは従うべきかな。
「はい。でもこういうのに慣れてなくて……気を付けますが間違えてしまったらすみません」
「そうですね、リナ様は遠いところからいらしたばかりでしたね。あまり気にせずに、自由におくつろぎください。リナ様のお部屋の準備が整いましたので、ご案内いたします」
「はいっ、よろしくお願いします。ケント様、ありがとうございます。では、また」
軽く頭を下げた後、小さく手を振る。
彼は口許が緩んだ何とも気が抜けた顔で、私を見ていた。
ロナさんが歩きだしたので、後についてケント様の部屋から退室する。
廊下の窓からはキレイに手入れされた庭が見える。
見たことのない花たちが咲き誇る庭はとても見事で、外国の城を紹介するテレビ番組に出てきた庭のようだわ。
キョロキョロしながら歩く私は、ロナさんに遅れをとってしまい……ロナさんの姿が見当たらない。
あー、どうしようと思っていると、気づいた彼女が戻ってきてくれた。
「リナ様、申し訳ございません」
「こちらこそ、ごめんなさい。あまりにもお庭がキレイでついつい足が止まっていたみたい」
「そうでしたか……もう少しゆっくりご覧になりますか?」
「ううん、もういいわ。また別の機会にゆっくり見せていただこうかな」
「では、ご案内します」
「はい、よろしくお願いします」
それからロナさんは私の様子を確認しながら、ゆっくりと案内してくれた。
案内された部屋は、ケント様の部屋を一回り小さくしたサイズで、じゅうぶん大きな部屋。
グレーベースの落ち着いた絨毯にオフホワイトの壁、庭がよく見える大きな窓がある。
シンプルで居心地よさそうな空間が広がっていた。
「うわぁっ、こんな部屋を居候の私が使ってもいいんですか?」
「はい、ケント様の指示です。では、私はお湯の準備をいたしますので、ゆっくりとおくつろぎください」
ロナが出ていくと、私はすぐに部屋の中央に置かれた大きなベッドへダイブした。
部屋に入った途端、ベッドが目に入り、気になってたんだよね。
ふかふかして気持ちよさそうだと。
少しほわんとしているものの、まずまず私好みの硬さだ。
寝具は生活する上で、とても大切なもの。
この部屋も落ち着いていて、快適に過ごせそうだ。
居候なのに、こんなに素敵な部屋を用意していただいて……本当にありがたい。
ペッドに寝転びながら天井をじーっとみつめていると、トントン、
「リナ様、お湯の準備ができましたので、ご案内します」
「はい、今 行きます」
ベッドからおりて、ロナのもとへ向かう。
彼女に案内されたのは……
うわぁ~、旅館の大浴場ほどの大きさのお風呂だった。
自宅にこんな大きなお風呂があるなんて、ケント様ってお金持ちなんだ。
そうだよね、使用人が何人もいるんだもの。
お風呂前のスペースで、ロナが私の手伝いをしようと待機しているものの、初めて見るTシャツ、短パンに戸惑っているようだ。
脱がせ方がわからないといったところかな。
「ロナさん、私は自分のことは自分でやって暮らしていたの。ただここのことはわからないから、もし私が困った時には教えたり、手伝って欲しいの」
「はい、わかりました。では、私はここに待機していますので、何かあれば声をかけてください。体はこれで、髪はこれで洗ってくださいね。お湯はここから流れ出ているものを使ってください」
「ロナさん、ありがとう。ゆっくりお湯につかりたいから、座って待っていてね」
教えてもらったとおり、体と髪を洗い、お湯につかる。
ちょうどいい、少しぬるめの湯加減で、とても気持ちがいい。
「客人にそのようなことはさせられません」
とみなさんに遠慮されてしまい……
私の目の前で、ケント様の髪が切られ、髭が剃られ、みるみるうちに彼はさっぱりしていく。
顔は青白いし、頬は痩けているが、今までテレビの中でしか見ないようなキレイな顔立ちの青年だった。
どちらかというと女装も似合いそうな中性的な美青年。
ただ気になったのは、私と目を合わせないところ。
せっかくキレイな顔をしているのに、俯きがちで、もったいない。
もっと堂々と胸をはればいいのに……
私が彼の容姿なら、そうだなぁ、思う存分 いろんなタイプの美女との恋愛を楽しみたい。
あー、全くとんでもない願望を抱いてしまったわ。
ケント様をじーっと見ていたら、私の前にお仕着せの女性がやってきた。
キレイな栗色のみつあみを肩まで垂らし、愛らしい笑顔を浮かべている。
とても穏やかそうな顔立ちの女性だ。
「ロナと申します。これからリナ様を担当させていただきますので、よろしくお願いします」
「そんなお世話だなんて……いいですっ、いいですっ。私は自分のことは自分でできますよ?」
顔の前で手を振り、お世話はいらないと断った私に、
「いえ、あなたは僕の客人ですから。それにこの国のことは何も知らないんじゃないですか?」と言われてしまい……
「ロナさん、よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げた。
ロナさん、私と似た名前だわ。
しかも優しそうな感じで……仲良くなれると嬉しいな。
「リナ様はお客様ですので、頭など下げないでください。私のことはロナとお呼びください。敬語も結構ですよ」
そう、ここではそうあるべきなのね。
でも本当はもっと砕けた感じで仲良くなりたいんだけどなぁ。
でもとりあえずは従うべきかな。
「はい。でもこういうのに慣れてなくて……気を付けますが間違えてしまったらすみません」
「そうですね、リナ様は遠いところからいらしたばかりでしたね。あまり気にせずに、自由におくつろぎください。リナ様のお部屋の準備が整いましたので、ご案内いたします」
「はいっ、よろしくお願いします。ケント様、ありがとうございます。では、また」
軽く頭を下げた後、小さく手を振る。
彼は口許が緩んだ何とも気が抜けた顔で、私を見ていた。
ロナさんが歩きだしたので、後についてケント様の部屋から退室する。
廊下の窓からはキレイに手入れされた庭が見える。
見たことのない花たちが咲き誇る庭はとても見事で、外国の城を紹介するテレビ番組に出てきた庭のようだわ。
キョロキョロしながら歩く私は、ロナさんに遅れをとってしまい……ロナさんの姿が見当たらない。
あー、どうしようと思っていると、気づいた彼女が戻ってきてくれた。
「リナ様、申し訳ございません」
「こちらこそ、ごめんなさい。あまりにもお庭がキレイでついつい足が止まっていたみたい」
「そうでしたか……もう少しゆっくりご覧になりますか?」
「ううん、もういいわ。また別の機会にゆっくり見せていただこうかな」
「では、ご案内します」
「はい、よろしくお願いします」
それからロナさんは私の様子を確認しながら、ゆっくりと案内してくれた。
案内された部屋は、ケント様の部屋を一回り小さくしたサイズで、じゅうぶん大きな部屋。
グレーベースの落ち着いた絨毯にオフホワイトの壁、庭がよく見える大きな窓がある。
シンプルで居心地よさそうな空間が広がっていた。
「うわぁっ、こんな部屋を居候の私が使ってもいいんですか?」
「はい、ケント様の指示です。では、私はお湯の準備をいたしますので、ゆっくりとおくつろぎください」
ロナが出ていくと、私はすぐに部屋の中央に置かれた大きなベッドへダイブした。
部屋に入った途端、ベッドが目に入り、気になってたんだよね。
ふかふかして気持ちよさそうだと。
少しほわんとしているものの、まずまず私好みの硬さだ。
寝具は生活する上で、とても大切なもの。
この部屋も落ち着いていて、快適に過ごせそうだ。
居候なのに、こんなに素敵な部屋を用意していただいて……本当にありがたい。
ペッドに寝転びながら天井をじーっとみつめていると、トントン、
「リナ様、お湯の準備ができましたので、ご案内します」
「はい、今 行きます」
ベッドからおりて、ロナのもとへ向かう。
彼女に案内されたのは……
うわぁ~、旅館の大浴場ほどの大きさのお風呂だった。
自宅にこんな大きなお風呂があるなんて、ケント様ってお金持ちなんだ。
そうだよね、使用人が何人もいるんだもの。
お風呂前のスペースで、ロナが私の手伝いをしようと待機しているものの、初めて見るTシャツ、短パンに戸惑っているようだ。
脱がせ方がわからないといったところかな。
「ロナさん、私は自分のことは自分でやって暮らしていたの。ただここのことはわからないから、もし私が困った時には教えたり、手伝って欲しいの」
「はい、わかりました。では、私はここに待機していますので、何かあれば声をかけてください。体はこれで、髪はこれで洗ってくださいね。お湯はここから流れ出ているものを使ってください」
「ロナさん、ありがとう。ゆっくりお湯につかりたいから、座って待っていてね」
教えてもらったとおり、体と髪を洗い、お湯につかる。
ちょうどいい、少しぬるめの湯加減で、とても気持ちがいい。
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