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解決
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僕は別の部屋についてすぐ、捻った足にスースーするものを貼ってもらって、その上に包帯が巻かれた。スースーが気になったが、お薬のようだから仕方ない。
ウェーゲルさんにおかしを用意して貰って、虎くんと食べる。甘いマフィンを両手で持ちながらもぐもぐと食べながら、何か別にしなきゃいけない事がある気がして宙を見つめる。そして記憶の奥底を探ろうと考え込んでいたら、いつの間にか口が止まっていたらしい。
「ルノ様?お口にあいませんでしたか?」
「あ!ううん!とってもおいしい!」
「では何か気になることでも?」
ウェーゲルさんがお茶を注ぎながらそう問いかけてくれる...が...。
「うぅん...、なんか、もやもやする...。んぅ...むね?あ、あたまかも...?」
「なんと...!すぐに医者をお呼びします!」
「でもいたくないよ...?」
「痛くなくとも何かのご病気かもしれません。熱はありませんか?それはいつ頃から感じていましたか?」
「んーー...びょうきじゃなくて、なんかこう...むずむずする...。...とらくん、なにかわかる?」
僕の隣に座っていた虎くんを抱き上げ、自分に向かい合わせにして顔を見ながら聞いてみる。そのツルツルの黒い目には僕の顔が映っていた。
「...うん、そうだね...そう、なにかわすれているきがするんだ。でもなにをわすれているんだろう...?」
虎くんに再び問いかけたと同時に、部屋の扉がノックされた。そして何かを感じた僕は急に昨日の記憶が鮮明に思い出された。
「あ!!」
____ガチャ
「ルノ?どうしたの大きな声を出して。」
「と、とらさん!!」
「ああ、さっき飛び込んできたから連れてきたよ。」
「わぁー!!とらさん!とらさん!」
虎さんの姿を見て急いで椅子から降りるが、足を痛めているのを忘れていてそのまま床に転がる。
「んに゛ゅ!!」
意識外からの痛みと、顔を床にぶつけないように反射で動いた拍子に変な声が出た。
「ルノ!足を痛めてるんだから、歩いちゃ駄目だよ。」
「はぁい...。」
ジル様に抱っこされながら返事をする。そこで、足元で僕を見上げる虎さんがいることに気がついた。
「あ、とらさん!あの、ごめんね!いっぱい、いろいろあって、やくそくわすれちゃってたの!ほんとうに、ごめんね!」
____ガゥ
「ほんと?ゆるしてくれるの...?せなか、のせてくれる...?」
____グルルッ
「やったぁ!じるさま!とらさんのせなかのっていいって!!」
「...白虎と話せるの?」
「うん?うん、いつもとらくんと、さんにんでおはなししてるよ!」
「そうか...。ルノは虎くんとも話せるんだもんね。白虎と話せない方がおかしいか。」
「はやくはやく!」
「はいはい。」
ジル様の腕から、そっと虎さんの背中に下ろされる。
「白虎、ルノは今怪我をしているからゆっくり動くんだ。絶対に落としてはいけないよ。」
ジル様の言葉に鼻息で返事をした虎さんはのそりのそりと部屋を歩き出す。いつもの目線より高いところで、体が動くと言うのが未知のワクワク感を生み出して、尻尾を振りながら喜ぶ。
「あ!とらくん!とらくんものせてあげるの!」
「はい、虎くんね。」
ジル様が虎くんを渡してくれたのでそれを両手で抱える。すると、今まで手でバランスを取っていたものが無くなってしまったため、僕の体は簡単に傾いてしまった。
「お、っと...。ルノ、私と手を繋いでおこうか。」
「...ごめんなさい...。」
「いいよ。ほら、白虎の背中は楽しい?」
「はい!ぼくもとらになったみたい!とらさんにのっていたら、びゅんびゅんはしれそう!」
_____ガウ
「絶対に振り落とされるから駄目。白虎もやる気をださないの。ルノも、すぐに沢山走れるようになるからね。」
「うん!いっぱいはしる!」
外を虎さんと一緒に走る事を想像して、僕は今すぐ走り出したくなってしまった。追われて逃げるわけじゃなくて、次の日のことなんて考えずにただ走りたいから走る。
それはとっても気持ちが良くてとっても楽しいだろう。
「そのときはね、じるさまもいっしょ!あとはとらくんもいっしょで、とらさんもいっしょ!あとはー、うぇーげるさんでしょ、さなさんでしょ、あ、さっきのひとたちのおなまえ、きいてないや。でも、みんなでいくの!」
「...うん、そうだね。みんなで行こうか。」
「はい!!あ!ぼくね!おやつもっていくやつ、やりたいなって、おもってて...。あの、ぴ...ぴく...。」
「ピクニック?」
「そう!おそらのしたで、たべるのね、たのしいよ!!」
「ああ、必ず行こう。ルノのしたいことはなんでもしよう。」
「...っ!!えへへ...。...たのしみ。」
高い場所でお月様を見たくなった時も、川がどこにつながっているのか冒険をした時も、両手一杯にどんぐり拾いをした時も、僕は一人だった。
人間様の子供は、お父さんに肩車してもらったり、お友達と遊びに行ったり、それを家で待ってくれる人がいたりしたけれど、全て僕にはなかったものだ。いつでも一人。
それが虎くんと出会って二人になったけど、今はもっともっと増えた。
片手では収まりいきらない人数になった。そして、皆僕を見ても怖い顔をしない人達という奇跡も起きている。
すごい、楽しみだ。
未来が楽しみだっていうことが、とても幸せだ。
▼
「君達の処罰は見送ることにした。」
夜、ルノが寝静まった頃に執務室に使用人を集めてそう伝える。すると案の定、全員が驚いた顔をした。
代表して、メイド長が一歩前へ出る。
「っ...ですが、我々はルノ様をお守りできませんでした。...いえ。私が、追い返すべきでした。」
使用人の中で唯一高位貴族の家出身であるメイド長の声は後悔に濡れていた。しかしそれを庇うように他のメイドや執事が声を上げる。
「私は、あの伯爵達の言葉を止められず、ルノ様のお心を傷つけました。」
「私はルノ様のお怪我を防げませんでした。」
全員が全員、メイド長と同じように後悔に顔を歪めていた。
その光景を見ながらふぅ、と息をついて話しをする。
「メイド長。君が家の事を出すのを嫌う事は知っている。それはここにいる使用人全員が分かっている事だ。だからそれを咎めるつもりはない。辺境伯の力が弱まっているとしても、使用人だからといって度を超えて高慢な態度を取った伯爵令嬢に非があるのは明らかだ。」
「...はい。」
「ただ、そうだね。ルノに実害が出たのはいただけない。ルノの前に姿を現さないように気を遣ったのかもしれないけれど、優先順位は“ルノを守る事”だ。」
はい、とメイド長にルノの護衛を任されていたメイドのレインと執事のケイトが声を揃えて返事をする。その顔は完全に処刑台に立たされた人間の表情だった。
まったく。処罰は見送ると言ったのに、と思いながら先程のルノの言葉を伝える。
「しかし、そのルノが、皆でピクニックに行きたいと言ったんだ。その願いを叶えるには君達は必要不可欠。分かったかい?」
「ピク、ニック...?」
メイド長が目を見開く。
「そう。ルノの足が治って、もう少し体力がついたら行こうと思っている。ルノも、今日あの場にいた全員を誘いたいと言っていた。だから、君達の処罰は見送る。」
「っ...なんて、ことでしょう...。」
「ルノ様は、天使なのでしょうか...?」
「そういえば羽が生えていた気がするわ。」
使用人達は感極まったように口を手で押さえながら涙を流した。
私が連れてきた子とはいえ、いったいいつの間にルノはこんなにも使用人の心を掴んだのだろうか。まだ表に出る事を許しては居ないのに。
まあ確かにあの、人間には珍しいほどの純真無垢さは、うわべだけの会話で騙し合い、プライドの戦いような貴族の世界を知る人間にとって、オアシスのようなものなのだろう。
ここに居るのは、そういった世界では常に爪弾き者、そして家の駒としてしか価値が認められない者たちだから。
「ルノは君たちを“気配”で知っているようだし、一人ずつならルノに挨拶をする事を許そう。決して怯えさせないように。」
「い、良いんですか?ありがとうございます!この感謝は必ずルノ様に伝えさせていただきます。本日の報告書は明日に提出いたしますので。」
「ああ、頼んだよ。では各自仕事に戻るように。」
「はい。」
使用人が出て行った部屋でやっと今日が一区切りつたなと、ぐっと伸びをする。
そういえば今日の王室への用事は途中で抜け出してしまったから、また埋め合わせをしなければいけない。
「ウェーゲル、便箋を。」
「はい、こちらに。」
王室への手紙を書きながら、ピクニックはいつにしようか、場所はどこにしようか、とこの先に待つ幸せな予定を思い浮かべた。
長い年月を、騒音で狂いそうな地獄で過ごしてきた。
そう生まれてきたくは無かった。生まれ直したかった。全部諦めたかった。
そんな自分がこうして“普通”の幸せを享受しているという事が、まだ少し信じられなくて、でもルノの与えてくれる全てが本物で、その狭間で揺れているのが今は心地よかった。
“...ん...じるさま...ぴくにっく...たのしぃ、ねぇ...おはな、き...れぃ.........“
静かな夜の屋敷の中で、ルノの寝言が聞こえる。
「ふふっ。ルノはひと足先にピクニックに行ってしまったのかな。そうかぁ、場所は花畑だね。綺麗な場所を探そう。」
花畑を駆け回るルノを想像して、私は自然に口角を上げていた。
私も今日は、花畑でルノと遊ぶ夢を見たいなと思いながら。
▼▼▼▼
本当はここで終わるつもりだったのですが、意外にも読んでくれる人が多く感想もいただけたので、あと3話分更新されます...!ぜひ最後までお楽しみください!
ウェーゲルさんにおかしを用意して貰って、虎くんと食べる。甘いマフィンを両手で持ちながらもぐもぐと食べながら、何か別にしなきゃいけない事がある気がして宙を見つめる。そして記憶の奥底を探ろうと考え込んでいたら、いつの間にか口が止まっていたらしい。
「ルノ様?お口にあいませんでしたか?」
「あ!ううん!とってもおいしい!」
「では何か気になることでも?」
ウェーゲルさんがお茶を注ぎながらそう問いかけてくれる...が...。
「うぅん...、なんか、もやもやする...。んぅ...むね?あ、あたまかも...?」
「なんと...!すぐに医者をお呼びします!」
「でもいたくないよ...?」
「痛くなくとも何かのご病気かもしれません。熱はありませんか?それはいつ頃から感じていましたか?」
「んーー...びょうきじゃなくて、なんかこう...むずむずする...。...とらくん、なにかわかる?」
僕の隣に座っていた虎くんを抱き上げ、自分に向かい合わせにして顔を見ながら聞いてみる。そのツルツルの黒い目には僕の顔が映っていた。
「...うん、そうだね...そう、なにかわすれているきがするんだ。でもなにをわすれているんだろう...?」
虎くんに再び問いかけたと同時に、部屋の扉がノックされた。そして何かを感じた僕は急に昨日の記憶が鮮明に思い出された。
「あ!!」
____ガチャ
「ルノ?どうしたの大きな声を出して。」
「と、とらさん!!」
「ああ、さっき飛び込んできたから連れてきたよ。」
「わぁー!!とらさん!とらさん!」
虎さんの姿を見て急いで椅子から降りるが、足を痛めているのを忘れていてそのまま床に転がる。
「んに゛ゅ!!」
意識外からの痛みと、顔を床にぶつけないように反射で動いた拍子に変な声が出た。
「ルノ!足を痛めてるんだから、歩いちゃ駄目だよ。」
「はぁい...。」
ジル様に抱っこされながら返事をする。そこで、足元で僕を見上げる虎さんがいることに気がついた。
「あ、とらさん!あの、ごめんね!いっぱい、いろいろあって、やくそくわすれちゃってたの!ほんとうに、ごめんね!」
____ガゥ
「ほんと?ゆるしてくれるの...?せなか、のせてくれる...?」
____グルルッ
「やったぁ!じるさま!とらさんのせなかのっていいって!!」
「...白虎と話せるの?」
「うん?うん、いつもとらくんと、さんにんでおはなししてるよ!」
「そうか...。ルノは虎くんとも話せるんだもんね。白虎と話せない方がおかしいか。」
「はやくはやく!」
「はいはい。」
ジル様の腕から、そっと虎さんの背中に下ろされる。
「白虎、ルノは今怪我をしているからゆっくり動くんだ。絶対に落としてはいけないよ。」
ジル様の言葉に鼻息で返事をした虎さんはのそりのそりと部屋を歩き出す。いつもの目線より高いところで、体が動くと言うのが未知のワクワク感を生み出して、尻尾を振りながら喜ぶ。
「あ!とらくん!とらくんものせてあげるの!」
「はい、虎くんね。」
ジル様が虎くんを渡してくれたのでそれを両手で抱える。すると、今まで手でバランスを取っていたものが無くなってしまったため、僕の体は簡単に傾いてしまった。
「お、っと...。ルノ、私と手を繋いでおこうか。」
「...ごめんなさい...。」
「いいよ。ほら、白虎の背中は楽しい?」
「はい!ぼくもとらになったみたい!とらさんにのっていたら、びゅんびゅんはしれそう!」
_____ガウ
「絶対に振り落とされるから駄目。白虎もやる気をださないの。ルノも、すぐに沢山走れるようになるからね。」
「うん!いっぱいはしる!」
外を虎さんと一緒に走る事を想像して、僕は今すぐ走り出したくなってしまった。追われて逃げるわけじゃなくて、次の日のことなんて考えずにただ走りたいから走る。
それはとっても気持ちが良くてとっても楽しいだろう。
「そのときはね、じるさまもいっしょ!あとはとらくんもいっしょで、とらさんもいっしょ!あとはー、うぇーげるさんでしょ、さなさんでしょ、あ、さっきのひとたちのおなまえ、きいてないや。でも、みんなでいくの!」
「...うん、そうだね。みんなで行こうか。」
「はい!!あ!ぼくね!おやつもっていくやつ、やりたいなって、おもってて...。あの、ぴ...ぴく...。」
「ピクニック?」
「そう!おそらのしたで、たべるのね、たのしいよ!!」
「ああ、必ず行こう。ルノのしたいことはなんでもしよう。」
「...っ!!えへへ...。...たのしみ。」
高い場所でお月様を見たくなった時も、川がどこにつながっているのか冒険をした時も、両手一杯にどんぐり拾いをした時も、僕は一人だった。
人間様の子供は、お父さんに肩車してもらったり、お友達と遊びに行ったり、それを家で待ってくれる人がいたりしたけれど、全て僕にはなかったものだ。いつでも一人。
それが虎くんと出会って二人になったけど、今はもっともっと増えた。
片手では収まりいきらない人数になった。そして、皆僕を見ても怖い顔をしない人達という奇跡も起きている。
すごい、楽しみだ。
未来が楽しみだっていうことが、とても幸せだ。
▼
「君達の処罰は見送ることにした。」
夜、ルノが寝静まった頃に執務室に使用人を集めてそう伝える。すると案の定、全員が驚いた顔をした。
代表して、メイド長が一歩前へ出る。
「っ...ですが、我々はルノ様をお守りできませんでした。...いえ。私が、追い返すべきでした。」
使用人の中で唯一高位貴族の家出身であるメイド長の声は後悔に濡れていた。しかしそれを庇うように他のメイドや執事が声を上げる。
「私は、あの伯爵達の言葉を止められず、ルノ様のお心を傷つけました。」
「私はルノ様のお怪我を防げませんでした。」
全員が全員、メイド長と同じように後悔に顔を歪めていた。
その光景を見ながらふぅ、と息をついて話しをする。
「メイド長。君が家の事を出すのを嫌う事は知っている。それはここにいる使用人全員が分かっている事だ。だからそれを咎めるつもりはない。辺境伯の力が弱まっているとしても、使用人だからといって度を超えて高慢な態度を取った伯爵令嬢に非があるのは明らかだ。」
「...はい。」
「ただ、そうだね。ルノに実害が出たのはいただけない。ルノの前に姿を現さないように気を遣ったのかもしれないけれど、優先順位は“ルノを守る事”だ。」
はい、とメイド長にルノの護衛を任されていたメイドのレインと執事のケイトが声を揃えて返事をする。その顔は完全に処刑台に立たされた人間の表情だった。
まったく。処罰は見送ると言ったのに、と思いながら先程のルノの言葉を伝える。
「しかし、そのルノが、皆でピクニックに行きたいと言ったんだ。その願いを叶えるには君達は必要不可欠。分かったかい?」
「ピク、ニック...?」
メイド長が目を見開く。
「そう。ルノの足が治って、もう少し体力がついたら行こうと思っている。ルノも、今日あの場にいた全員を誘いたいと言っていた。だから、君達の処罰は見送る。」
「っ...なんて、ことでしょう...。」
「ルノ様は、天使なのでしょうか...?」
「そういえば羽が生えていた気がするわ。」
使用人達は感極まったように口を手で押さえながら涙を流した。
私が連れてきた子とはいえ、いったいいつの間にルノはこんなにも使用人の心を掴んだのだろうか。まだ表に出る事を許しては居ないのに。
まあ確かにあの、人間には珍しいほどの純真無垢さは、うわべだけの会話で騙し合い、プライドの戦いような貴族の世界を知る人間にとって、オアシスのようなものなのだろう。
ここに居るのは、そういった世界では常に爪弾き者、そして家の駒としてしか価値が認められない者たちだから。
「ルノは君たちを“気配”で知っているようだし、一人ずつならルノに挨拶をする事を許そう。決して怯えさせないように。」
「い、良いんですか?ありがとうございます!この感謝は必ずルノ様に伝えさせていただきます。本日の報告書は明日に提出いたしますので。」
「ああ、頼んだよ。では各自仕事に戻るように。」
「はい。」
使用人が出て行った部屋でやっと今日が一区切りつたなと、ぐっと伸びをする。
そういえば今日の王室への用事は途中で抜け出してしまったから、また埋め合わせをしなければいけない。
「ウェーゲル、便箋を。」
「はい、こちらに。」
王室への手紙を書きながら、ピクニックはいつにしようか、場所はどこにしようか、とこの先に待つ幸せな予定を思い浮かべた。
長い年月を、騒音で狂いそうな地獄で過ごしてきた。
そう生まれてきたくは無かった。生まれ直したかった。全部諦めたかった。
そんな自分がこうして“普通”の幸せを享受しているという事が、まだ少し信じられなくて、でもルノの与えてくれる全てが本物で、その狭間で揺れているのが今は心地よかった。
“...ん...じるさま...ぴくにっく...たのしぃ、ねぇ...おはな、き...れぃ.........“
静かな夜の屋敷の中で、ルノの寝言が聞こえる。
「ふふっ。ルノはひと足先にピクニックに行ってしまったのかな。そうかぁ、場所は花畑だね。綺麗な場所を探そう。」
花畑を駆け回るルノを想像して、私は自然に口角を上げていた。
私も今日は、花畑でルノと遊ぶ夢を見たいなと思いながら。
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本当はここで終わるつもりだったのですが、意外にも読んでくれる人が多く感想もいただけたので、あと3話分更新されます...!ぜひ最後までお楽しみください!
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