67 / 74
第3章 お友達編
【幕間】朝
しおりを挟むさて突然ですが皆様に問題です。
寝ている兄様の破壊力を数字にするといくらでしょう。
答え、無量大数。
僕は北の邸宅から帰ってきても兄様と同じベッドで眠っている。
それによって睡眠の質が一気に上昇した僕は早く眠りについた事もあり、目が覚めるのも早かった。
なんかやけに布団が温かいな?と思ったら僕の体には兄様の美しい筋肉のついた腕が巻き付いており、見上げれば彫刻に見紛うほど美しいお顔が。
「.................。」
僕は絶句した。
あれ?ここって薔薇園だったっけ?だって兄様のバックに大輪の薔薇が咲き誇ってる。
いつもはキリッとかっこいい表情が多い兄様も、目を閉じて眠っていると幼子のようにあどけない。なのにその造形美のせいで圧倒的な破壊力を持っている。つまり少しエロスを感じる。
『...アステル、起きた?』
「あ、ユーリ。おはよう。」
『おはよ~。夢を見ないくらいぐっすりだったね。』
「うん。ユーリがふかふかで、にいさまもいるから。」
『ふふん。僕の毛並みで眠れるなんて、とっても貴重だよ?』
「ふふっ、そうだね。ありがとう。」
ふんふん、と鼻を鳴らして得意げなユーリの頭を撫でると嬉しかったのかブンブン尻尾を振るユーリ。その尻尾の動きで兄様も目を覚ましたようで掠れた声で「アステル?」と聞こえてくる。
「にいさま、おはようございます。」
「...あぁ、おはよう。」
寝起きで少し反応の鈍い兄様は緩慢な動きで僕の額にちゅ、とキスをした。腰に回っていた腕の締め付けも強まる。
掠れ声は艶やかで、薄く開いた瞳と口はとってもセクシーだから、ちょっとドキドキしてしまう。
「...早いな。眠れなかったか?」
「にいさまとユーリのおかげでぐっすりでした!」
「そうか、でもまだ早いから寝ていろ。俺が起こす。」
「はぁい。」
兄様にそう言われると、なんだか再び眠気が襲ってくる。近くなった距離のまま、兄様の胸元にぴっとりと張り付いて鼓動を聞いていると、僕はまた心地よい眠りに落ちていった。
ああ、僕はもうこれ無しじゃ眠れなくなってしまうかも。
▼
ふんわりと香る花の匂いに誘われて僕は再び目を覚ます。
背中に慣れ親しんだ温度を感じ擦り寄るが...あれ、僕はさっきまでベッドにいた筈なんだけどなぜか今は座っている。もう起きる時間なのかな...?と思って目を開けると、頭上に兄様の顔があった。どうやら僕は座った兄様の膝に抱き抱えられるようにして寝ていたらしい。
既にパッチリと目を開けている兄様は、いつものように愛しそうに僕を見下ろしている。
あと何故か手が揉まれている。
「んぅ...?」
「アステル、おはよう。」
「ぉはよ、ございます...?」
「ああ。もうすぐ朝食だからな。」
「ぁい...。」
じゃあ顔を洗ったりしなきゃな...と考えていると、目の前にユーリが居た。
「ユーリも、おはよぅ。」
寝起きで乾燥し、張り付く喉をなんとか動かしてユーリにも挨拶をする。
『おはようアステル。身支度はもう済んでるよ。』
「...んぇ...?」
『アステルが寝ている間にご主人様が全部やっちゃったんだ。今は、最近乾燥がひどいからって手にクリームを塗っている所だよ。ご主人様、アステルは喉が渇いてるみたい。』
「ほら、アステル。水だ。」
何が何だかわからないうちに、急に目の前に差し出されたストローに取り敢えず吸い付いて喉を潤す。常温より少し温かい水が喉を通っていくのと同時に目も頭も冴えてきた。
「...ほんとうだ、きがえもおわってる...。」
常日頃から僕の寝起きからずっとそばにいる兄様に着替えを手伝ってもらっていた(というか魔法で全部やってもらっていた)から、そう大きな変化ではないのだが、寝ている間に全てが終わっているのは初めてだ。
それに髪の毛も整っているし、ハンドクリームはいい匂いだし。
ユーリが僕の思考を読んで、目に見えない部分のお世話までされるし。
まさか、この先もずっとこんな至れり尽くせりなのか...?
「うぅ...このままじゃぼく、なにもできなくなっちゃいます...。」
「それでいいんだ。」
ひぃ。兄様は僕を廃人にする気なんだ。
兄様がいなきゃ生きていけなくなっちゃったらどうしよう。
『というかご主人様はそこを目指してるんだよ。』
淡々としたユーリの言葉に僕はさらに背筋を凍らせた。
...明日からは兄様より早く起きよう。
___________________________
抱っこ禁止令の反動が...
1,602
お気に入りに追加
4,631
あなたにおすすめの小説
BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている
青緑三月
BL
主人公は、BLが好きな腐男子
ただ自分は、関わらずに見ているのが好きなだけ
そんな主人公が、BLゲームの世界で
モブになり主人公とキャラのイベントが起こるのを
楽しみにしていた。
だが攻略キャラはいるのに、かんじんの主人公があらわれない……
そんな中、主人公があらわれるのを、まちながら日々を送っているはなし
BL要素は、軽めです。
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
聖女の兄で、すみません!
たっぷりチョコ
BL
聖女として呼ばれた妹の代わりに異世界に召喚されてしまった、古河大矢(こがだいや)。
三ヶ月経たないと元の場所に還れないと言われ、素直に待つことに。
そんな暇してる大矢に興味を持った次期国王となる第一王子が話しかけてきて・・・。
BL。ラブコメ異世界ファンタジー。
氷の華を溶かしたら
こむぎダック
BL
ラリス王国。
男女問わず、子供を産む事ができる世界。
前世の記憶を残したまま、転生を繰り返して来たキャニス。何度生まれ変わっても、誰からも愛されず、裏切られることに疲れ切ってしまったキャニスは、今世では、誰も愛さず何も期待しないと心に決め、笑わない氷華の貴公子と言われる様になった。
ラリス王国の第一王子ナリウスの婚約者として、王子妃教育を受けて居たが、手癖の悪い第一王子から、冷たい態度を取られ続け、とうとう婚約破棄に。
そして、密かにキャニスに、想いを寄せて居た第二王子カリストが、キャニスへの贖罪と初恋を実らせる為に奔走し始める。
その頃、母国の騒ぎから逃れ、隣国に滞在していたキャニスは、隣国の王子シェルビーからの熱烈な求愛を受けることに。
初恋を拗らせたカリストとシェルビー。
キャニスの氷った心を溶かす事ができるのは、どちらか?
悪役に好かれていますがどうやって逃げれますか!?
菟圃(うさぎはたけ)
BL
「ネヴィ、どうして私から逃げるのですか?」
冷ややかながらも、熱がこもった瞳で僕を見つめる物語最大の悪役。
それに詰められる子悪党令息の僕。
なんでこんなことになったの!?
ーーーーーーーーーーー
前世で読んでいた恋愛小説【貴女の手を取るのは?】に登場していた子悪党令息ネヴィレント・ツェーリアに転生した僕。
子悪党令息なのに断罪は家での軟禁程度から死刑まで幅広い罰を受けるキャラに転生してしまった。
平凡な人生を生きるために奮闘した結果、あり得ない展開になっていき…
巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
悪役王子の取り巻きに転生したようですが、破滅は嫌なので全力で足掻いていたら、王子は思いのほか優秀だったようです
魚谷
BL
ジェレミーは自分が転生者であることを思い出す。
ここは、BLマンガ『誓いは星の如くきらめく』の中。
そしてジェレミーは物語の主人公カップルに手を出そうとして破滅する、悪役王子の取り巻き。
このままいけば、王子ともども断罪の未来が待っている。
前世の知識を活かし、破滅確定の未来を回避するため、奮闘する。
※微BL(手を握ったりするくらいで、キス描写はありません)
スキルも魔力もないけど異世界転移しました
書鈴 夏(ショベルカー)
BL
なんとかなれ!!!!!!!!!
入社四日目の新卒である菅原悠斗は通勤途中、車に轢かれそうになる。
死を覚悟したその次の瞬間、目の前には草原が広がっていた。これが俗に言う異世界転移なのだ——そう悟った悠斗は絶望を感じながらも、これから待ち受けるチートやハーレムを期待に掲げ、近くの村へと辿り着く。
そこで知らされたのは、彼には魔力はおろかスキルも全く無い──物語の主人公には程遠い存在ということだった。
「異世界転生……いや、転移って言うんですっけ。よくあるチーレムってやつにはならなかったけど、良い友だちが沢山できたからほんっと恵まれてるんですよ、俺!」
「友人のわりに全員お前に向けてる目おかしくないか?」
チートは無いけどなんやかんや人柄とかで、知り合った異世界人からいい感じに重めの友情とか愛を向けられる主人公の話が書けたらと思っています。冒険よりは、心を繋いでいく話が書きたいです。
「何って……友だちになりたいだけだが?」な受けが好きです。
6/30 一度完結しました。続きが書け次第、番外編として更新していけたらと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる