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第2章 魔塔編

【その後①】宝物

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「にいさまー!はい!おてがみです!」

「ああ、ありがとう。大切に読む。」

いつものように黒い封筒に赤い封蝋がされた手紙をアステルから受け取る。

魔塔から帰って、同じ家で過ごすようになっても母上が、アステルの字の練習に良いからと言って文通を続ける事を提案してくれた。
おかげで日々宝物が増えていく。

「今日は何を書いたんだ?」

抱き上げたアステルを膝に乗せながら一緒に手紙を広げる。
最近はアステルが1人で手紙を書く事も増えたから、この時に間違っている文字などがあったら教えているのだ。「専属の家庭教師を雇っても良いけれど、アステルはイーゼルに教わった方がよく覚えると思うわ。」という母上の言葉通り、アステルの文章力や字のうまさはメキメキと上達していた。

「きょうは、すきなおかしのことをかきました!」

「そうか。読んでくれるか?」

「はい!...えーと、ぼくがすきなおかしは、いっぱいあります。ひとつは、にいさまのつくるくっきーです。さくさくで、あまくて、ふわーっていいにおいがするので、だいすきです。いーぜるにいさまは、もっとすきです。いつも、おかしをつくってくれて、ありがとうございます!」

「...よく書けてる。クッキーの味や風味が伝わってくるな。」

アステルの手紙には必ず“イーゼル兄様”“好き”という文言が入っている。その字だけは繰り返し書いているからか他の字と比べても、とても上手い。

「やったぁ!...あ、でもほんとうは、にいさまのけーきも、だいすきです。なかにいちごのそーすがはいってる、ちょこもすきです。にいさまのつくってくれるおかしは、ぜんぶぜんぶだいすきです!」

「そうか。これからも沢山作ろう。アステルのためだけに。」

「はい!!」









部屋に帰って、今日アステルに貰った手紙を丁寧に仕舞う。

初めは俺の誕生日に貰ったアステルの似顔絵たちだけだった戸棚も、今ではアステルがくれた花の押し花や、アステルが初めて立った時に履いていた靴などが入っている。
そこに定期的に直筆の手紙が追加されるのだから、俺の宝物は日々充実している。

アステルに貰った手紙は一言一句間違えずに覚えているが、もう二度と誰かに手出しはさせない。
燃やされるなんて事はもってのほかだ。

「...そうだ。」

思いついた俺は、公爵家の書斎からとある本を持ってきた。
『防御魔法の基礎と応用』と書かれたその本を開いて、基礎をペラペラと読み、応用のページを熟読する。
すぐに読み終えて本を閉じ、戸棚へと向かう。
そこに手を翳し、今し方頭で構築した魔法を発動する。

防御魔法は、基本的に術者を守るものだ。攻撃を察知してから展開が基本で、それを物に付与するのは難しい。だとすると、保存魔法に防御魔法を掛け合わせれば、やりたい事ができるのではないかと思ったのだ。おそらく別の本を探せばその方法は既にあるだろうが、探す時間が惜しい。
こう言う時にユノ先生がいれば詳しい話が聞けるのだが、まあ自分でやれば良いだろう。

魔法をかけ終わり、試しに戸棚を鞘に入れたままの剣で思いっきり叩いてみる。

_____ガキンッ!!

魔法はうまくいったようで、戸棚の手前で剣は止まり手に痺れが走る。その後数回全力で叩くと、敗れてしまったため、強度は少し弱いだろう。改良の余地がある。

あとは、アステルの体を保護するような魔法も使えるようにならなければいけない。防御魔法もそうだが、万が一のための探知魔法も必要だ。

ああ、そうだ。お菓子作りにもどうやら魔法が使えるようだったから、そちらも試してみよう。
俺は最後にもう一度戸棚に魔法をかけながら、そんな事を思った。























_______________
イーゼルは“アステルのための魔法”ばかりうまくなっていくんでしょうね...。











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