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第五章第一部 王都での叙爵と拾い物の為の登城
120話
しおりを挟むどもー夕刻・・※レマイア領の我が家 そうそう、つい先ほど自領のこちらに帰宅しました。正確には事の報告へ中央領公館に赴いたら、先に冒険者ギルドへ行けと言われてそちらで所要を済ませてから、もう一度報告へと中央領公館に戻って報告を終わらせて自宅に帰った訳ですよ。
これを一息で語ってる俺って凄い?口にしてないから平気です。妄想に呼吸の必要性は無いからな。そんな俺を食い止めるのは、いつものフーリアしかいないけど。さっきまで一緒に歩いていたんだよ?家に着いたら待ちくたびれたと凄い演技を吹っ掛けて来た。オスカーも真っ青、メスだけど。以上
「・・それは古の儀式の様相で、娘は地平線から上がって来るかの」
「旦那様~そこに私を登場させないで下さい。それと、口よりも手を優先で動かして下さいね」
「動かしてるよー。手と口は連動する必要が無いからいいの。せっかく物語の主人公にフーリアを抜擢したのに、失恋を乗り越える英雄さんは受け入れられずなんだね」
「現実に起こりそうで嫌です~花壇を美しく手入れする憂いを纏った少女、この配信活動が今に必要ですから」
「そこから引く手数多を集めて一番を掴むのかな?」
「全てを振り捨てて一途な乙女を演じるのです。そうすればきっと良い事が」
「・・はい、こっちも出来たから終了だよ。みんなが待ってるから夕飯にしよう」
「はい~」
やべぇなこの女、どっから沸いてるのその妄想?俺の記憶を知ってる<エスセス>当たりから仕入れたのかな?俺も料理の細かい事は、<エスセス>から確認してるし。俺が覚えてない・・思い出せない記憶でも脳の中に残ってるらしいから、一度でも目を通した物なら<エスセス>が見つけて教えてくれる。
へぼい検索エンジンっぽい物になってるな。興味の合った物しか対応しないけど。書籍から何やらは見てる物だけども数万・・エロが少ない事を祈ります。今日も俺好みな格好をした<エスセス>は、勢い良く抱きついて俺の中に溶けて行った。誰かに見られたらヤバいやつだな。頭の中でも煩いからそれもヤバいが。
サナーとフーリアを一緒に連れ家に戻ったら、夕食の準備が殆ど終わっていた訳ですよ。これってあかんくない?ダメなんじゃない?今夜も体調が下がっちゃうよ。俺の元気汁を飲ませなきゃ。加護の話しだからね。
そして夕食 今更の我が家ではないか。
「・・帰宅したばかりだから疲れてないかと心配したのに、嬉しそうに厨房に向かうなんて・・あちらで遊んでたのかしら?」
「ばっちりと働いてました。料理を作ると疲れも癒されたりするんだよね、好きな趣味だからかな?メイサリスも体調は万全だって聞いたから、それでほっとしたのも有るんだよ。又3日後には王都に向かうから、今は精神的な安らぎを求めてるのさ」
「3日後・・キュルス兄様はその前日に王都に向かうと聞いているわ。一緒に行かなくて良いのかしら」
「もう、要人や随伴人の宿泊先に必要な先触れは出ているから、そこに割り込むのは良い結果に成らないだろうと判断したわけ。日をずらせは受け入れ側の負担が少ないからね」
「家を空けるのは最小の日数にした事が、祖父様達から距離が取れると旦那様が判断したのだと思います」
「サッ、ナー、の言ってる事もそんなに間違ってないけど、家以外に気を休められる事はないからね」
その指摘に口篭ったじゃないか。図星じゃないよ、目刺しは売って無いからな。うんうん、先触れを今日にも追加で出せば何とか成ったとか?知らん。ツノと離れる時間は短い方がいい。俺の為です。
帰ったらいきなりツノ突撃が合ったんだけど、その後もサナーが諭す様に俺から引き剥がしてメイサリスに預けられた。ツノも不満は無かったらしい・・でもでも30分はモフったから十分だ。もう少しモフってると嫌がられるから。実体験ありです。猫か!気まぐれフリーダムじゃん。野生もないし。
「・・聞いてはいたけど、何となくざわざわするわね」
「そこは我慢するしかないよ。登城の時期に色々と重なっているけど、帰りが少し伸びてもメイサリスの予定に困らないのは良いからね。その事に関わる様な予定を言われてたら、叙爵だって辞退したよ。俺は大事な事を疎かにしないさ」
「・・ありがとう貴方。頑張って良い子を産むわ」
「旦那様に似ず、奥様に似た子が生まれるのが一番ですね」
「・・サナー・・」
似てもいいんじゃない?他人じゃないし・・報復再びだな。負け込んでるけど。男は損失が大きいから。
そんな翌朝
太陽が黄ばんで見える・・いつもと同じだったりするけど、気の持ちようかも知れない。って言うかぶっちゃけちゃうと、隣接の建物が邪魔するから見えないしな。
そのイメージですよ、サナーの訓練に付き合わされたフーリアがウロチョロするので気に成ったりだったが。以前からの朝鍛錬は変更され、俺が出掛けない日はこの後に護衛達が昼近くまで訓練する。雷鉄チームにフェインも混ざり、領公館から派遣中の従卒兵も参加する。
俺の強制参加をフェインが訴えていたが、程々修行に逃げたので不参加です。サナーにビシバシ叩かれたけど、守られ側なんだぜ?ファジィってるじゃん。えっ?フーリアが逃げ腰だからその分だとか・・八つ当たりじゃねえか。
そこは基礎鍛錬で扱けばいい、スクワットや腹筋でばしばしと。自棄食いされるから難しいと。意外と策士だな。その報復は自爆じゃなかろうか?甘味ばかり狙われるから問題が大きいと。策士だ。
それで朝食
「商業ギルドの人が午後に来るらしいわ。詮索は避けたけれどいつもの人達でしょうね」
「体の負担に成っても困るから、メイサリスは挨拶に出なくて良いよ。こっちで適当に相手をしておくから。それに返事待ちの件もあるから、その辺の回答かも知れない」
「そこら辺はお願いするわ。サナーやリーリェも今日は外に出ないから、面倒は避けておきたいの」
「あいあいさ~」
誰だよ俺!キャラが無いからキャラ崩壊じゃないけど、キンバリーは憧れちゃう。異世界は現実的で嬉しく無いが。宿題やろ。
・・・・・
・・・・
・・・
はい、野菜扱いだった新芽の葉は煎茶にしました。こんなの簡単に作れか!を克服してくれたのが<エスセス>先生です。俺の記憶の中にある美味しん〇さんからカンニングをして貰いました。
ふっふっふぅー蒸し器も作ってあったから問題なし。って言うか、紅茶がその先の派生品だなんてびっくり。その本を読んでた時は全く興味が無かったから素通りしとったわ。これで勝る!食品チートバンザイ!ハーブティの方が美味しいと思ったのはナイショだ。原価に格差が無かったら・・これからもハーブティで行こう。美味しいのが正義。ガレット・・されどガレット!
これは凄いよガレット!穀物税が掛からないから原価がかなり安くなる。えっ?味はねぇ安さに絡む感じかな。小麦はお高く次に米なんだぜ、ここに大量に取れるソバの実が来たら、混ぜてヨカヨカな事に成りそうじゃない?蕎麦は作れないけど。蕎麦つゆに使える醤油がないもの。豆の発酵とか俺が腐るわ。腐ったような足の臭い・・さよなら納豆。豆は新鮮な状態で食べます。腐らす程には余っていません。
だよねー、作り過ぎなのに捨てない根性から腐った納豆が出来たとか・・鯛より凄い!粕漬も真っ青。発酵食品が日本を救ったな。
良く食べれたな腐り物、食べた奴の勇気が凄い。腹の中も腐っただろうに。虫垂炎の初の発症者が出たのかも?特殊な病気が突発するのはそんな事からじゃない?ハクビシンとか食べる人がいるからな~。怪しげなキノコの食中毒もそんな話だったし。
見た目がヤバそうなのに良く食べたものだ。こっちじゃ自生物を養成するのが大変だから・・遠い目で先を見てたら試作品のガレットをガメる手を僅かの目端で捉えた。誰やん?
「・・ん?それ程美味しくは成っていませんね」
「そこは仕方ない所なんだよ。小麦や米の代替えとして使えるかの試作だから、成型しやすく突飛な味わいの無い物じゃないとね。それよりもこれが養成に向くのか?そこも試されるから数年は先の話かな?」
「そうなのですか・・少し硬い食感が気に成ります」
「そこを目指した食べ物なんだよね。カリって感じやサクッとする食感が菓子の趣に成るから。ジャムに成る果実を練り込んで、一緒に楽しむ甘味にするつもりだからさ」
「菓子ですか?大きく出来ていますから食事用と思っていました」
「その辺がこの材料の良い所だよ。一度に大きく作れるから手間が減らせるから。粉にして置けば日保ちも果実より良いからね」
「それは良いですね」
ほんとに良いのか解らん?だって・・さっきからサナーの手が止まらない。昼食前なのにそれでいいのか?こんな時の試食とオヤツ時間に食べ込むのはおかしいからな。止まる時も次の料理に進む時だけだから。
昼ベスタスターン?
「フーリアが珍しく厨房から離れていたわね」
「そうそう。黒魔術の材料を入れてるよって言ったら逃げてった」
「黒魔術?」
「うん。無駄なお肉が減らせる奴」
「・・それで?」
「それを聞いたら胸を抑えながら、無駄肉ではありませーん!なんて叫びつつだった」
「・・そこにお肉があると訴えた訳ね」
「邪な人間性を暴く黒魔術だな、俺が魔女っぽく成ってるけど」
「・・そう・・サナーも食欲が無さそうなんだけどそのせい?」
「材料費が安くて気楽に食べれる甘味の試作をしてたら、それを結構食べてた。ついさっき」
「それはそれはね」
「それ程の甘味には成ってないけど、メイサリスならヴッ!するかもだからお薦めしない」
「・・そうね、止めておくわ」
はいはい密告してやったわ。サナーが何かを訴える目をしてるが、それこそ自業自得じゃないか。小食ですからとは言わないで、そこそこがっつり行くのもみんなは知っている。オヤツを目にしたら獰猛で近くに寄り難いし。ツノより野性的かも?
そしてやはりな感じで商業ギルドの奴等が来よった。賭けに負けた・・俺もヒイキシーとサグッツーモリが本命だと予測したが、賭け相手のフーリアが可哀そうだから譲ったのさ。
だがそれ以外の予想でもヒイキシーは外せなかったから、もう一人は知らない奴ならアリかとそっちに懸けたのよ。ここはパターンの2人は鉄壁だけど、サグッツーモリはギルドの部署が開発だから意味不明じゃん。だが今回も同じメンバーだった。奴等が一緒なのにどんな意味が?途中の帰り掛けにしけ込んでるかも?厭らしい。
「・・の様なお時間を頂きありがたき幸せに御座います。ですがセブレス様の大切な時間を無駄には出来ません。早速に急ぎの経過報告からさせて頂きます。ノースゥエイトでありました・・」
はいはい、どんどこドンんだな。経過報告を気にしたのはソバの実くらいだから、それだけが重要案件じゃないかな。
「・・養成が難しいとされる山椒畑の中の一畝がソバの木でありました。その何本かにソバの実が付いておりましたので間違いありません。荷を偽装しての搬出を追及しました所、現物の差し押さえに不服の申し出はありませんでした。それが減罰に繋がると勘違いしたかも知れませんが、必要な損害賠償も飲み込ませてあります。同行者にもミグサ男爵領の管理官もおりましたから、言い逃れは出来ないと諦めたのでしょう。徴収した樹木は領主の荘園へと移設も終わらせました。その諸々の費用はミグサ男爵領が請け負っております」
「・・一畝《いっせ》ですと多くは無いですね。ならば株分け出来る職人を充てましょう」
「・・でしたらそちらの手配はノースゥエイトの商業ギルドに遣らせましょう。荷の偽装などを数年もの間放置したのは大きな落ち度です。そのままなら黙認と同義でしかありません」
「お任せします」
って感じだな。まあ言いたい事は解るよ。生産者にどの程度の介入が可能なのかは知らないけど、今回の事ならそこそこの介入が出来た・・これからは適宜以上の干渉を目零せと。損の無い取引だろ!みたいな状況を促してる訳か。
元から生産者は生産量の届けを、商業ギルドに提出して所定の納税をしているから、それの物証確認はしていないとおかしいんだが・・追及はすまい。そんな遣り取りは徒労を生むだけだ。
「・・養成の検分も濃い物にする必要があるでしょうね」
「重要な農産品と目しておられるのですかな?」
ええ、ええ食べてみいーや。それ程は美味しくないとサナーは評価したけど、米とも同位互換じゃないかな?でもでも・・サグッツーモリは毎回付き合いだから的な感じでよく食べるよな。遠慮は美徳を装着出来るって知らないのかな?歩留りじゃないか。
「小麦の代替えが可能と思われる部分があります。それでも養成だけでなく加工してからの保存の期間や年の収穫回数など多くの課題はあります。今回もたまたま見出すに至りましたから、一時の臨時食に留まると思います。穀物ですから目処にも数年は掛かるでしょう」
「・・領の政策に加えるのは難しいとお考えですか?」
「今で言えば時期尚早と捉えます。燐領のミグサ男爵領・ヌケタケナ男爵領・マグサヤ子爵領は急いた政策の為必要な成果を得られません」
「穀物税の物資は順調に買い付けが進んでおりますが」
「それでは蓄財を使って買い付けしたと明白に成るだけです。こちらも比較される領には違いありませんが、納税物資の目標額とは別に経済の底上げを実施するつもりです」
「交易での領税を獲得すれば、其れ也の評価は得られるでしょうが」
「はい、明確に評価を得る手段を使います。今がどんな事を行っているかを明確にする為、その事業に必要な財貨を王国から借り入れします。そして返済に対応する問題は、絶対に必要な鑑査として頻繁に行われます。これらの評価を下す時期には、穀物税の他に交易や返済金も確証の形にするのです」
「燐領ではそれに上回る穀物税を納める事が可能と思いますが」
「資本を残さずに献上しても未来は見えません。蓄財を消費して誤魔化す政策など、信頼も信用も得られません。失う物はそのまま摂取され、次の為政者に白羽の矢が立つでしょう。それでもそれに何時気付くのか?農産を増やしそれ以外の交易も必要だと。評価に値すると言われるまで、蓄財を持たせられるかでしょうね」
「蓄財の使い方の間違いに・・ですか」
「領への取り組み方とも思います」
うん、こっちの世界は情報伝達が遅いから仕方ないけど、蹴落された貴族領の大頭を考えたならもっと慎重にすべきじゃないか?失敗して失う物は少なくない。
ヌケタケナ男爵領を投げ売りしてマグサヤ子爵領を手入れたいヌケタケナ男爵は、子爵領税の数年分で買い取りするしかないのだ。それで手に入るのなら致し方ない投資と思わなくも無いが、その金額を使っても領主の資質があるかの審査がある。それを見る鑑査を数年に渡り受けてからやっと決まるのだよ。
勿論それの合否・・回りには同じ境遇の領が今回はある。それだと乗り越える壁は高く成る一方だ。合否に関係なく壁を高くする俺は、毎夜の鍛錬で俺の腰はランページを超えたが。
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