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第四章第一部 春は遅く竹の子は芽吹に恐れる
88話
しおりを挟む※レマイア領の我が家で妄想してみたら・・
「イテッ!」
「ご主人様は気を抜く事が多いです、身が入っていませんね」
入ってますフェイン!身が入ってるから当たって痛いんだよ。肉も血も凄く痛いって言ってるもの。やる気の身は俺の矜持には参加してない。引きニートが信条なんだし。
しかし何故、こうなったかを考察してた訳だよ。そこでつらつらと考えてはフェインに挑んでる状況なんだけど、これを打開できる良案が浮かばない。俺が動くたびに[空間範囲探知]に入って考察したが、その後にフェインをどうにかしたい訳じゃないから。攻撃も逃亡もこの場では却下だし、[空間転移]がばれないように同じ場所から動き出すのだよ。この能力の最大の弱点は、俺が外に出るまで時間が動いていない。だから過激なフェインの訓練指導に、辛抱やら忍耐やらで切り抜けるしかない。
そうなるとあれさ、少しでも中に入れば楽が出来ると堕落気分がどんどん大きく成る。だから頻繁に入って休憩がてら逃避し、それをすればするほど入る事が多く成る悪循環だな。今も入ってるし。それでも中でウダウダと動き続けると、同じ場所の同じ姿勢に合わせるの難しくなるからエアーストップモードで止める。何年でも止められそうなこの中なんだけど、外は止まっていても俺は動いているのだ。それならきっと消耗もするだろうから、食事だけは絶対に必要だろう。動かしたときに爺な俺がいたら、浦島ジジィよろしく咄嗟に処理されそうだよ。
それでも純然たる打開策はある、この訓練は模擬戦モードだからだ。俺がそこそこの腕を披露して、回避やら打ち合いで優位に立てばだ。しかしだよ、相手が槍上等なのだ。まさに剣道三倍段じゃねえか。普段から適当にあしらわれているのに、こっからの下剋上は夢の夢。ぐるぐるしてたら現実に戻るのさ。あれだ、帰宅した日だけツノが非常に懐いてきたけど今朝はつれなかった。それを追いかけるのに庭に出たら、いきなりフェインの毒牙に掛った。彼女は普段通りに鍛錬に励んでいただけだけど。
それでも俺の推察が正しいと思う、彼女は発散出来ていなかったのだと。生来の脳筋体質で回りを巻き込みながら、本人だけが発散する傍迷惑な奴なのだ。それならエロく生きて欲しい。俺は手伝えないけど。そのハーレム認定がされたら、俺を刺すのがフェインになっちゃう。そっちの性癖を開花させてどうする。そんな導きからの選択は、彼女の鍛錬指導の名のもとで俺が受け負っているのだ。あくまでも鍛錬で訓練ではない。俺のお肌は下降に向かっているからな。
こんな状況も、そう長くない未来で解消される予定だ。この領に戻った昨日にその足で旅程報告に向かい、そこで聞かされた内容から俺の環境が大きく変わる。
「・・そうだ。お前が留守の間に今回の旅程の騒動の件で、王都や例の両家から連絡が届いた。王都では騒動の転化の功績を称える方向で動き、確認が終わり次第に再度の連絡をよこすそうだ。そこもこちらへの確認が含まれるから、その辺で慌ただしく使者が訪れるだろう」
「・・踏み込みが甘く感じたけど、やはり使者の用命を優先したからかな?」
「はい、アトレア兄様。かのコノモブ領は、年数を掛けて衰退して来たと判断しました。領民達もそれに甘んじて慣れてしまいました。その場所に大きな改革案が提示出来ないのなら、王国の意向を示す方がじんわりと浸透させられるのではないかと。手掛け出来る人材を派遣するのも王国には叶いません。地盤が固まれば有能な人材が上に立たなくても、そこからゆっくりに上向きします」
「優秀な人材を派遣すれば、飛躍的な上向きも期待出来そうだけど?」
「優秀な人材程有限で損失が大きいです。領地の狭い男爵領では、その様な者に遣り甲斐を維持させられないと思いました。政策を指示して遂行させるなら、上に代官を置く程度でも収支は合わせられるでしょう」
「・・アトレアが描いているのは、そこをお前が収めるつもりは無いか?そういう所だ」
「強いられれば程度の魅力しか感じません。収めるのでしたら先程の様に代官に任せ、生来に我が子の誰かを上に置くくらいですか。それまでの助けは配慮し、燐領を含めての連携を広げる骨組を強固にします。この領で築かれてる連携の仕組みは、領民の厚い信頼を受けています。あの領は農地も人手も余っていますが、それを手立てする人材が居りませんでした」
「それが出来る者・・人手に余裕があればだね?」
「そこは捻出出来ると思います。我が領でも商会に委ねていますから、その骨組を導入して商会の者達に競わせれば良いでしょう。彼等なら手の届く高見を目指すでしょうし、誰でも狙える事を直ぐに気づくでしょう。農耕生産者達の手綱を上手く操り、そこに出る収益をしっかり獲得する筈です。必要な情報を与え導くくらいは、上についた者に働かせます。勝手に領が潤う税金が回収出来るのですから、その地位を求める者は少なくありません」
ええ、ええそれですアトレア兄様。我々の大事な人材を無駄に使う必要はありません。こちらが示した骨組の回りを、しっかり肉付けするのは民間である商会に丸投げするのです。そこの上に立てると知れば、競争原理に強い物が頭角を現します。彼等は上を見ていても、下を牽制しなければ追い越される事も知っているのです。そんな上が役所の人間では、追い越せないやるせなさで何も成せませんから。預ける側は丸投げに成りますが、かじ取りは自然の摂理でしょうね。貴族領なんてそんなものです。
「ミグサ男爵領やマグサヤ子爵領の経緯は、かなり相違しているな」
「はい。ミグサ男爵領はここから巻き返す可能性が高いと思います」
「・・反逆者の経緯は解るが、王国法の違反は合ったのだか」
「はい。違反に関わった者達が反逆者に根付いていましたので、短い経過期間では重罪に問い切れません。多少の無知は看過しましたので、其れ也の人材の損失を不要と思いました」
「残せる形にミグサ男爵を誘導したか」
「はい。マグサヤ子爵家はどうあがいても取り潰しは免れませんが、ミグサ男爵はこれからの頑張りで奮起して貰えばと」
そこはちゃんと遣らせるつもりで言い含めてある。だから出来る出来ないまでは知らないし、その手前までの干渉で終らせるつもりでだ。その全ては本人の頑張りで、どこまで頑張ったかの結果を知るだけ。それに俺は何の得も成らないからな。
「どちらにしても、これからの王都の動き次第で進むと思います。問われる事に間違いありませんから、ある程度は干渉する必要があるでしょう。軍事要員の育成は一長一短には運びませんが、前例のある骨組の踏襲はさせられるでしょう」
ふっふっふー、キュルス兄様の我関せずの寡黙もちょっと弄ってみた。中々終わらない報告会の嫌味ではない。多分。
「コノモブ男爵領では商業地区の干渉を行ってしまいましたから、メンドセイ侯爵領が伝播させる米料理はコノモブ男爵領の場が早いかも知れません。その辺のレシピ登録の内容に、もう少し仔細を補填するつもりです。レシピを見た料理人が全く理解しないとは予想出来ませんでした。それの修正場所が宿泊宿だったので、今度はかなり早く動き出すと思います。宿屋の方にもメンドセイ侯爵領が動くと伝えてますから、その宣伝を担うのならと喜んでいました」
「・・メンドセイ侯爵領の方は、この数日前に商業ギルドが報告を寄こした。今は正否を問わずながら沸起こりつつある。料理レシピの補填は早急に」
「はい」
ん?こっちをツノが見てたあっイテッ!ちょっと気を取られて元に出ちゃったよ。って言うか、打ち込みの事前姿勢が無かったと思うよ、フェインてば恐ろしい子。ってか、ついつい報告日の回想したまま動いちゃったよ。俺の多重人格癖が病気の様にヤバい、現実との錯覚で身を滅ぼしそうだ。
・・・・・
「鍛錬お疲れ様です、お兄様」
「うん、旅程の間は出来なかったからね。リーリェも体を動かしたかったら、サナーにでも相談してね」
「はい、その時はそうさせて頂きます」
はっはっはっー、ふぅ。いやー良く解んないけど、良く有る話だな。彼女を連れ帰った理由も報告した訳だが、その最初にリーリェが遣らかしたのだよ。「お母様ですか?こんなに・・お美しくお若く見えるのにお子様が・・」「・・お母様・・お姉さまとしか呼べま・・」「まあ!何て素直な良い子なのでしょう。セブレスが預かれると判断したのなら問題も無いでしょう。・・そうですね・・我が家、レマイア伯爵家の養女としましょう。セブレスの家に滞在するのは構いませんが、これからはリーリェ・レマイアと名乗るように・・後、こちらへは頻繁に顔を出す様に」何て流れが唐突で突発しちまった。その時のお父様の顔が非常に複雑だったよ。
そこは我が家の家庭環境が影響している、うちのお母様は1人くらいは娘が欲しかったらしい。そこの末っ子の俺が母親似の顔形なので、そんな傾向の育て方にも成っている。俺に同世代の知人や友達が存在しないのは、娘の存在だったら普通だからな。この領に付随の寄生貴族の子息子女には、同世代の者達が居るのだから。今更その者達と友好を深めるつもりもないし、嫁達のケアが足りてるとも思って無いからそのままだけどな。ツノも・・さっき確保したから今は抱えてます。逃げ出したら寂しいから・・ちょっとリーリェ、そんなにツノを見つめないで。狙う者達が増えたな。暇ならお母様の所へ行きなさい。
その他に連れて戻った2人の男の子もあの時に紹介済みだ、反応がそれ程といった感じだったのはその子達が男の子だったからだろう。うん、間に合う程に余ってる。今は色々なお勉強の準備に入っているのと、疲れない程度の息抜きに仕事っぽい何かをさせるらしい。俺はお任せする所存だ。努力が実を結ぶのも本人次第だし。従者教育もするらしい・・。
今の俺の環境はかなり不自由だからな。あの報告の時に商業ギルドの事も含めた訳だが、それで領公館も大いに多忙に陥っている。人手不足の補填・・現在に教育段階の者達を引き上げて、教育と仕事の両立以外の手立てはないから。後・・メンドセイ侯爵家の事の引き摺りもあったのだ。
「それで料理が特需に成ってくるのか」
「その様に成る傾向が見られますアトレア兄様。俺がコノモブ領の宿屋で米料理を仕込みましたので。その事でメンドセイ侯爵家に、現状の確認のお願いが出来ました。メンドセイ侯爵領から米料理が緩やかな反映を画策しましたが、メンドセイ侯爵家が米料理を手掛け普及の途にあるとコノモブ領に伝わったのです。大義や威光を大きく感じ取られ、そこからの波及の早さは予測出来ません。このままでは波及元がコノモブ領に成ってしまいますから、メンドセイ侯爵家の要望を先に叶えなければ成りません。至急すみやかに、我が領から米料理が出来る者をメンドセイ侯爵領へ使わせる用意があると。王都も動いているのは確かですから、俺が自ら動く事は憚れますがメンドセイ侯爵家に迷惑が掛からない配慮を願います」
「・・解った。直ぐに商業ギルドから確認させる。派遣する料理人は料理長に選別させよう。領公館の厨房の手助けはお前に頼む。その辺の費用は追加する」
「はい、有難う御座います」
この話はコノモブ領で起こった訳だが、あの時に商業ギルドからここへ連絡報告をしても時間に大差ないと思った。ならば明確な報告をと、ここで話す事にしたのだ。その結果は良い方向へ進められたが、ここで聞かされた内容が凶報に感じて仕方がない。
それは・・スーリェス公爵家やメンドセイ侯爵家が、俺を養成支援に置いて王国貴族へと推挙しているのだと。
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