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第三章第一部 マグサヤ領への用命は王命なのか?

67話

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※レマイア領中央領公館前

 翌日の午前中、俺は領公館に来ていた。俺は帰ってきイテ!

「入ります」

 あか~ん!ってかあったよね?俺はどこどこに帰ってきたー的な奴。た、確かに日をそんなに開けずに訪れているけども、それはそれこれはこれ。それとサナーの俺の扱いがぞんざいに成ってないか?埃っぽいとこは一緒に来ないし。

 いやあれだよ、入口で立ち止まった俺もどうかと思う・・悪いのは俺か。そこから俺達は・・サナーが俺を料理長の方にペイッとした。さよならサナー・・、この流れはあれです。今日の俺のお手伝いに新作は無い!そんな判断からだな。勿論ないよ、今は遣る事も沢山あるから。

 それでも石臼の設置は忘れない、ここには小麦や米の在庫が沢山あるからな。その在庫も騎士寮の厨房やら従卒の独身者寮にも使われている。その辺の費用は、給与から天引きされる世知辛さはあるけど。この粉にする工程は今までも手作業だったから、そこからの効率の底上げになるだろう。時間が増えれば味も向上・・するかも知れない?期待は100パーだよ。



 そして昼食が始まったそこからの後半・・食事のマナーは気にしない面々だから、小腹を満たす程度の物を腹に収めてから会話が始まっていく。そんな会話に参加しない者達は使用人達だけだ。それでもたまにサナーが、説明NOWの目で説く時は俺が説明を補足する。目だから会話じゃ無かったな。

「サグッツーモリに会ったか。あいつはレマイア領商業ギルド中央支部に赴任の形で着ている。現状は・・だが」
「私の目には野心家に見えました」

 あいつは早々の挨拶の為にここへ赴いていた、その本人の行動は一般民とは違うと言う事になる。ただのの民職が領主に挨拶回りをするなど考えられないからだ。お母様の判断である慧眼の比率は経験則からかも知れないが、この話しには関係ないが近くにいるキュルス兄様の顔の傷は把握済みなのかな?

 キュルス兄様の噂の相手は、女性騎士隊のネスラ女隊長と聞いている。その傷が痴話げんかの後だったら面白いかも?勿論聞いたりしないけど。危険に飛び込む愚はおかしたりしない。サナーさん、その辺を目で合図を送るのは止めなさい。

「彼は最優秀な自分が為すべき事を貫くと言っていました」
「誉れ無き言い分だな。王都高校大学を主席や次席等々で卒業した者達は、その誉れを口上して名乗る事が許される。それでも10席までと制限されるが。その大学に入っているのだから優秀の集団に違いないが、彼が言ったように集団の枠から外れていない。彼のすべき事は、誰もが成せる事じゃないのか?」

「凡庸の範囲でした。確かに勇者が望んでいても未だに成し得ていませんが、手を尽くす程の価値とは思えません。その真価も凡庸だったりします。本人が其れを成すつもりは無さそうです」

 あれは全く使えんと否定して置く。そこで[アイテム①]に入れて置いた、ガラス製のシャンパングラス2脚を出す。

「・・それは」普段は鷹揚の態度を表しているアトレア兄様も、目の前の物に流石に感激の様相を示した。この器の傘は浅いが脚は3倍と中々良い形に出来ている。油載せで使われる、灯り取りがモチーフだとは言い難いが。何を作るのでも型枠は必要なのだよ。

「その彼が求めているガラスを、これの素材として作ってみました。石臼を作るさいに買い込んだ、掘立の物置程の石グスから取れた透明の石英を使いました。たったこれだけの大きさに、どれ程の石英を抽出するかを考えれば、使用の用途が凡庸です」

 取り敢えずで見て貰う為、上位者から回して貰う事にする。取り扱いの注意?作り直すのは簡単だから問題無い。家に帰らないと枠がないけど。

「その強度を高めるには透明度を諦める事に成ります。魔力を含んだ魔石とも違いますから、器や入れ物に装飾品として使える程度です。割れ易い所を注意して使って下さい」

「貰って良いのか?」
「構いません。もう少し大きい物が作れたなら、生花用の瓶壺を作りたかったです。見た目はちょっと悪く成りそうですが」

「悪くなると思うのは?」
お父様は花瓶に興味は無いらしく、手元に戻ったグラスを色々な角度で見まわしている。アトレア兄様は出来が悪くなるその辺が気に成ったらしい。

「違う素材と融合して作る事が出来ません。花茎の部分が見えたままになるので、花を鑑賞する様には遠く成ります。全体が丸見えになるので標本に見えます」
解剖した被検体の標本としてなら、そんなコレクションには向いていそうだ。生からの腐り物は無理だけど。

「王都高校大学は有償機関だからな。特待生でもなければ学費の免除は無い。その支払いは長期貸し付けで遅らせる事は出来る。学費を先延ばしする者もかなりの人数に居る」

 その手の話しに関わったのなら、その支払い期間はかなりの長期に成るだろう。彼が就労している商業ギルドはかなりの大手だが、そこは国が関わる公共機関ではない。公務員に有り勝ちな年金などは無いから、民間に組した相応の給与が渡される。それも下積みから始まるのだ。

 そこで得たお金で生活を支えながら、約束に添った借金の返済を続けて行く。だから場当たり的な夢見がちなのか?そんな千金は何処にも無さそうだが。その手で掴める物には限度があるから、それを追いつつ疲弊を遅らせるしかない。



 それに害にしか成らなそうな奴の事はどうでもいい、先程料理長に話した石臼のプレゼンをここでもする。
「小麦を扱っている商会にはそれを収めました。細かな粉にした物が出回るのに少し時間が掛りますので、今の処理は料理長には託してあります」

 うんうん、備蓄にある小麦や米も、そいつでしっかり挽き直してくれるだろう。当面はスパイスもそれでお願いしたい。石臼なら大量に出来るのがメリットだけど、スパイスだと香りが飛んで・・面倒でもマメにお願いします。後で米の商会にもいくよ、お父様の平等にしなさい的な圧迫から逃げないと。だがね、時間が有限な事実があるのだ。彼等も夕時なんて早々に仕事を終えて帰ってしまうからな。夜道が半端なく暗いから。街灯・・ん?

「ガラスと言えばこっちと勘違いしているのかも知れません」
はい!取り出しましたのは手鏡です。ガラスと鏡!あっちじゃ普通で当たり前だ。勇者は馬鹿だけど悪くない、きっと?

「その鏡面をガラスと勘違いになるのか?」
「お母様こちらを。この鏡面は」
「なんて綺麗に写っているのでしょう。これ程の鏡面を見た事がありません!」

 そこを驚き過ぎじゃね?思わずビクッとして声も止まったわ。それに・・その鏡面がそのまま売っていた訳じゃないから。サナーが嫁いで来た時の嫁入り道具なのだよ。それを見たメイサリスが羨ましそうな目をしていたので、俺の財布がむせび泣きしてしまった。手鏡で金貨数枚が勢いよく飛んで逃げた、こんな理不尽な異世界は何時か滅ぼす。

 頑張って稼げって言われそうだから、滅ぼすのは保留にしよう。女達が鏡に覗き込む姿で癒されたから、今回は不問にするか。

「確かに、こんなに綺麗に写る鏡面は知らないな」
「それは売られている鏡面の、表面を磨き込んだだけです。売られている物が部分的に歪んで見えるのは、磨きが甘く平らに整っていませんでしたから」

「磨けば傷だらけに成らないか?」
ふふん、研磨業界を舐めてはいけませんよ。パフは無いけど切削水式研磨は出来るのだよ。機械が丸々俺だけど。フハハハハ

「ちょっとした素材と魔法を駆使しましたが、結果はそれです」
「まあ!手持ちの物を!」
あっ!お母様が椅子から腰を浮かしたら、その合図とばかりに執事と使用人が急いで部屋から出て行った。俺の危険探知スキルが、非常信号を大音量で鳴らしてるよ。俺しか危険じゃないけど。

 うん、<ゼッソウ>を部屋の中で使うのはやばいよ。研磨粉もあっちこっちに飛ぶからな。磨く物を動かすのは俺の方だから。台車か?そこに磨く物を置いて上下や斜めに移動させればいい。<ゼッソウ>は空中で回転しているだけだから放置で。周りからの絵面はシュールだけど、気にしてる場合じゃないから。


・・・・・


 あっはっはぁ~。まあ、成る様になって目の前には手鏡が3つ置かれている。大に中と小が2つ・・数が合わないじゃないかって?大は手鏡じゃなく姿見な奴さ。数に入ってない・・膝上から顔までの高さくらいかな。これで金貨300枚の価格だったとか。

 その価格をお父様から聞かされた時には、あいつ・・サグッツーモリは鏡を作ってひと財産を築く積りだ。強欲人と勝手に認定して置いた。うん、濡れ衣で冤罪の大盛りだけど、その話でみんなが納得したよ。奴は守銭奴に見えたし、レジスターな感じがヒシヒシとした。出るのはゲームコインだろうけど。

 いや、違うんですよ。今は全力逃避する程、追い込まれていませんから。鏡類が意外と少ないのは、そんな物にお金を掛け過ぎる家訓が我が家に無いので。

 磨けば光る的ところに反応した、お母様の意を組んだ者達の恐ろしい程の行動力だったが。これしか有りません的に、彼等がその数を把握していたのも凄い。あっちでの俺なんて、何個買ったか気にしない数を持っていたからな。スマホカバーにも当然として、エチケットミラーは合ったから。それを買うときに選んだナルシスト男と呼ばないでくれ。図星だし。

 男は大抵ナルシストだよ?だから異性の目は当然気にする。あー見られてるから、惚れられちゃったかなフフンまで真っしぐらだ。注意事項です!そんなの無いないと無視してると、突然にその人から告られるからな。そこで上手く返せなかったりすると、その事でずっと悪友に笑われるから。さらに気軽にオッケーはダメです。性格が悪いのが多い、行動力が有り過ぎてバッタの様だ。

 バッタ・・必要な物全てを奪って次に行く。稀に居るバッタ女・・稀であってくれ。

 不幸に成らない今?を頑張ろう、最初に磨くのは被害を抑える為に手鏡の中から磨く。金貨300枚に何か合ったら破産しかねない。少なく見積もった謝罪でも、俺の自由は奪われそうだ。それと聞かずに逃げて来た購入逸話だが、絶対に聞いては不味い奴だろう。これが嫁入り道具や記念の送り物でも重罪は確定だしな。そこは持ち寄った使用人も同罪だけど。

 お母様が信じきっていたからなあ~何事にも失敗は付き物じゃない?魔法の話しをしたから、何か合っても治せるとか思ったりしたのかな?壊れる時は簡単なんだけど。

 そんな事よりも、台車に鏡を置く台所・・しっかりした硬さの物で揺られない物が必要だな。うん、そうね。石グズで作れちゃうな。粉を固めるだけなので超便利。その都度粉砕で形も変えられるから、名人技を発揮しちゃうかも?フラットにするのが大変なんだけど。

 水魔法の方は固定で回転させてるから、これは幅広の布パフ見たくしたのですよ。そこに細かい鉄粉を混ぜて、キュィィィィと回転させながら超少しずつの研磨させる。我が家で練習した時・・行き成り削る物に触れたらそれがガツンと音と共に飛んだ・・磨こうとしたのが鍋で良かったよ。ボコッと凹んでたけど。

 ともあれ手鏡の研磨は繊細な作業です、それに縦横斜めを何度も繰り返して傷を付けては消す。歪みムラを取るわけだ。あの年齢を感じさせないお母様を、しっかりと写せる様にしなければ。これ全部を今日中に仕上げる・・厳しくない?今もキュィィィィは続いてるけど。

 だいたいこの手の物はしっかりと化粧枠に嵌っているから、それを削らないように先に外す事から始まる。そんな事が出来る人の応援が欲しい所だが、サナーはお喋りのお相手中・・フーリヤを呼んでもトラブルを大きくしかねない。適任者が思い浮かばん。適任者来い!太い筋がついたあああ・・地味に頑張ろう。
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