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第二章第一部 気をつけろハーレムルート!

44話

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 始まるよ~!!パフパフ~

 このフレーズはちょっと懐かしい。確か具合を悪くして仕事を数日休んだ時にテレビで見た物だ。思わず余計に追加ズル休みをしてしまった。仕事に復帰した時にそこの冷蔵庫にキープしていたアイスが食べられていて、ビビった記憶がある。名前まで書いて置いたのに、知っていて食べる奴がいるとは・・恐ろしい。




 敵対者・・彼我までの距離は15・・メートル程か・・
「始めなさい!」「うっ!」「うおっ?」「・れっ?」

 審判の代表が出した合図で、俺は前えと大きい1歩を跳ねた。それに反応したリーダーが何か呻いたが俺が[アイテム②]から投げつけた大量の水に驚く。接近戦が主体の4名は目前の空中から飛来する水に対処・・彼等の反射神経がそれを避けさせたらしい。

 そんな反応が鈍い魔法職の男は、地面に落ちてから今一度ハネた泥水を膝下当たりに被っている。その彼が苦々しい顔つきに成ったのは、普段から彼の鈍さを揶揄されているのだろう。そんな関心事をする状況でもないが。この意表をつく作戦は上手くいった、俺が放った水が彼等の近くまで飛ぶのか?その心配があったからだが。

「ほいっ!」今度は散らばった水を上に持ち上げる、これは水属性魔法に切り替えそのまま壁を作るイメージでだ。

「?!」彼等は一斉に驚いている、その水壁の先に居る魔法職に俺がここで突撃をしかける。水壁への魔法効果は切ったので、この壁は低い滝の水を抜ける程度の体感だろうか。

 俺の行動に気ずいたリーダーは、魔法職を守りに同じ方向へ動き出す。俺は水壁をぶち抜ける、それで気づき驚愕している魔法職の男に、握り拳より二回り程小さい小石を投げつけた。
 
 その7メートルも無い距離から投げつけた小石・・それは奴の右肩付近に直撃したが、これはノーコンではないか?狙いと違うがドンマイ!概ね良い傾向と納得・・接近間近のリーダーの足元に、土属性魔法でハードルよりかなり低い土壁30センチ前後を生やす。

「うごっ?」嫌な呻き声を上げ、その壁に蹴つまずいて倒れてくるリーダー・・脳天ががら空きだったので、即座に膝蹴りをお見舞いした。「ゴオンっ」良い音が響いたので、その結果を知りたく無くなった。それでも互いが硬かったらしく反発したので、ズル剥けバケに成らずに済んでいる。

 そんな遣り取りに追従しようと一番手前の男がこっちへ・・[冷塊丸]俺の頭の中で、豪快なファンファーレが鳴り響いているが、これは妄想である。他意はない。

 この付近に散らばっていた水を掻き集めた様に、俺の右手から3トン前後の水の塊が剣の形を模倣して鎮座する。その剣を「うおおおおーー」と横薙ぎにし突撃中の男を薙ぎ払った。だが所詮は水・・3トンの質量は、そこそこの重さでその男も一緒に3メートル以上に浮かばせ・・そのまま地に落ちた。

 まったく受け身も出来ずに水と一緒に・・飛び込み台から素人が落ちると、気絶もあるらしいからヤバイよ。残り2人が今ので呆気に取られている。その右側の男へ突撃を噛ます・・そんな奴の左側に走り込み、俺の左手を勢いよくそいつに向ける。

 魔法?その一瞬の嘘臭い牽制に動きが止まった・・一気に奴の左手を両手でホールドしつつ、俺を中心にそいつ事のジャイアントスイングをかます。身長は標準より低めの俺だけどスイングはジャイアント?意味不でも無視して、残りの1人にこいつを叩き付けた。

 人が出してはいけない衝突音が響く・・たん瘤じゃ済まないなと思ったが、骨のある部分の衝突は避けられていないだろう。

 その後・・あれー?誰も続行してきませんがこれどうすんの?
「・・ここまでに致しましょう!この試合はセブレス様の勝利に違いありません」

 この審判をついでに引き受けたノークスの宣言が、俺の勝利を告げている。ここに転がっている【草原の禿鷹】の面々・・魔法職の男は寝転んではいないが、小石が当たった箇所を押えながらこちらを睨んでいる。

 それでも座ったまま立ち上がらないので、そのまま戦闘に復帰する意思は無いようだ。この後ここで友誼が結べる程の強かさは俺には無いので、ならばと早々に観客席の身内のいる所へ移動する。






「申し訳御座いません」
そこに到達した俺が見たモノは、ここに居る観客達に深々と頭を下げて謝罪するサナーだった。

「内の旦那様は空気が読めないものですから、この観戦を楽しみにしていた皆様を裏切って、あの者達を瞬殺してしまいました。誠に不甲斐ない者たち・・誠に申し訳ございません」

 ついでに辛辣なコメントを口にして、今一度頭を下げるサナーだった。ライフが見える設定が無くて良かったよ。
                                          
*待機所兼娯楽・仮眠室・・飲食可にて*

<ウブッッ!>

<汚いな>
目の前で食事を取っていた同僚が小さく無い程に咽た事に怪訝になる・・セブレス担当の神は同僚の失態に声が抑えられなかった。

<・・悪かった>

 同僚は直ぐに謝罪するが、咽た原因になったタブレットみたいな物を指さしていた。これこれジェスチャーがうざいと思いながら違う話しを振る。

<何故?2品も食している。少しメニューが増えても、飽きるのが早くなっては本末転倒ではないか>

 そう彼女は正論で相手を叱責したが、本来の彼女達は食事が不要なのだから不毛でもある。

<それは大丈夫だ、あれの口振りではまだまだ出すと言っていた。それにこの白米は腹の足しに成っても味に嫌味がないからな。他の物に合わせ易い>

<・・見過ぎではないか?>

 その指摘は先程から何度も覗きこんでいるタブレットらしき物だ。

<仕方ないだろ。あれの担当になったお前はこれが無くてもみれるが、関われないこっちはそれが出来ない。以前に干渉過多を起こした者のせいで不自由なものだ>

<あれの担当決めの時は嫌がっていなかったか?>

<・・中々面白く成って来たからな。特に食に関しては感謝しまくりだ>

<食に関して異論はないが面白い・・さっき咽たそれか?>

<ああ、さっきあれが作った水の剣な。あれただの水の塊だぞ。でかい桶が壊れた程度の圧しかないだろ?剣の形にした意味が合ったのか?>

<そもそも剣の形でないと不味かったらしい。でかい水の塊のイメージで形に出来ず今回は咄嗟に思い付いたのが、自分の持っている剣を模倣したらしい。手の先から投げつけられる・・剣だな>

<・・まあいい、料理に困らなければ何でも構わない。それでもだ、あのでかい剣を良く振り回せ・・手伝ったのか?>

<知らん。あれは奴の常識だ。術者が操っている魔法には、質量が及ばないらしいからな。だから奴には影響は出ないと・・そんな取り決めだそうだ>

<ふう~ん、それは中々興味深い話しだな。今までは曖昧な取り決め程、そこは不備になっていたと聞いているんだが>

<確固たる取り決めを躱したのだろう。ごり押しの渾名がついていたからな>

<・・しかしだ、あの年でかなりの料理を知っているな>

<あれはオタクなだけだ>

<料理オタクか・・>

<いいや、コミックのオタクだったと。あれの家のパソコンと言う機械に、5万冊以上の本のデーターがあるのだとか。他にも小説が数万冊にアニメの動画という物が万に近いと>

<・・そんなに料理の本が>

<いいや、その中に料理に拘った本が数冊あり、その料理の真意を確かめるサイトとがが日夜動めいていたらしい。典型的なオタクは虚偽までも愛すとかなんとか・・キモかったな>

<確かにキモいな。そこが料理に繁栄しているのか?料理に罪は無いから問題ないか>

 セブレスの預かり知らぬ所でオタクでキモい事が認定された、神の仕事場がこれでいいのだろうか?この2柱は今夜の夜半までが就労時間だ、8時間勤務の3交代制になっているが中々に世知辛い。この体制で6柱の者達がこの部署を回している。

 何処からか彷徨って届く魂の管理は、こことは別の神が受け入れをする、態々魂を勝手に徴発する事は許されていない。多分・・

<色々と性急な人生に成っていそうなのは気のせいか?>

<問題ない。あれにもここ暫くは性急な事が続くと話した。それに対処する手立ても導いた、その導きに対応するかは本人次第だが>

<そうか、こちらに被害が及ばなけれは問題ない。我が心の同志も近くに到着するからな>

<・・只のカレー信者を同志呼ばわりか?あれから聞いたカレーとは賄い料理だったぞ。頭数に揃わない材料を一気に処分する賄い・・大衆推しの賄いで家庭料理だとか>

<うっ!勇者だ!勇者の奴が至高の料理だとほざいのだ。>

 知ってる・・いや、その時にお前から聞かされ確認までした。勇者が口走った至高の料理に付加も付いていた。自分の魂を揺さぶるソウルフードだと。故郷を思い出しホームシックに・・成れなかったがな。カレーが再現出来なかったというオチで締まらない話しだ。

<・・どうした?>

<・・何故我らはコントロールルームの義務があるのだ?>

 それは自業自得を自ら体現していて今更じゃないか?不要な食事・・しかも2品も食べているのだ。そんなものを看過してしまえば、このシステムが崩壊しかねない。仕事もせずに食べ続ける奴が表れるだろう。身体に負担がないのだ、中々見つからない娯楽を探すのは辛いだけだからな。

<・・2品で1時間はあそこを使用する義務が発生した。だが気をつける事だ、もう一品増やすと3時間の拘束だ。その上に体力剥奪のペナルティが課せられる。受けた者の顔を見た事があるが、死神の様相だったな>

<うへぇー>

 この位の脅かしで足りただろうか?こいつが何か仕出かせば、制限の余波をこっちも受ける事に成る。謂われも無い事実で、我が身が縛られるのは我慢したくないのだ。
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