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第二章第一部 気をつけろハーレムルート!
43話
しおりを挟む「あっ・・」
失敗した。海鮮商の代表に芋栗キントンのレシピを教えてしまったが、あれって栗をケチった量増しだったよ。キントンの中に栗の原型は残しているけど、回りを囲んでいる黄金色のゼリーみたいな奴は、サツマイモで量増しだからな。現世的なインチキを教えてしまったな・・
「・・これから屋敷に戻って作りますか?そのキントン」
「すいませーん!こちらにお願いしまーす!」
サナーの甘味欲が大事な用事を放棄しているが、用事先は巻きでケツカッチンに成っているらしい。ならドタキャンも良いのではないか?ダブルブッキングの手違いなんて、こっちの世界じゃ普通にありそうだし。今日かもしれないが明日らしいよとか・・そもそもタイムスケジュールは無理なんだからこっちでは。
「こちらの場所が訓練なども使える広場になっておりまして、多少の場荒れか起こっても問題になりません。それでも一応は持ち主の許可が必要になりますが、御領主様が持ち主でいらっしゃいますから届けも済ませております」
「・・ああ、そうですか」
その持ち主に依頼されて来ているから、聞いてませんは無いよ・・こっちに拒否権はなかったけどドンマイだ。あれそうなの?みたいな話しをされても、この場所での訓練は何用なのだろう。いやいや普通ならだよ、雨の日の屋根装備とかじゃね?他に訓練の日が勝ちあうともあるし。・・無いな。他から訓練に来る者達はいない。
「私共の護衛を依頼している冒険者の方々は【草原の禿鷹】と申す者達で、全員が男の5人組のパーティになります。その仔細も領主様にお伝えしたのですが、人数の加減も問題ないとのお話しでしたが、御当人様にも確認が必要かと思いまして。如何で御座いましょうか?」
ここは全てがなしで通るのならそれが一番だけど、減らすのは面倒だし増えても困るからそのままか。女の人がいないのはラッキーだったよ。
「ええ、問題ありません」
ほんとねー相手のパーティの中に女性とかいたら、殴り飛ばしたリ蹴りをくれたりは流石に難しい。特に俺の世間体が、多いに崩落するのは目に見えている。絶対に。
差別をする訳じゃないがこれはただの模擬戦だから、必要に駆られたくないのだよ。
俺の現世の記憶が納得しないもの、そこは無難な対策を考えて来たからな。その辺が不要に成ったので、これならと安心出来る。その分お気楽にワンパンでもツーパンでもくれて遣るとしよう。アンパンは無いよ。
「それではその様に進めさせて頂きます。彼等の紹介は・・」
「その辺もざっとで良いでしょう。こちらの身も存じての提案でしょうから・・そのまま進めて下さい」
「・・有難う御座います。この先の縁も・・私共もが関わる事でしょうから、その窓口の役割はしっかり勤めさせて頂きます」
そうそう、その冒険者達との伝手を掴む必要はないし、何かの損得をこの商人は放す事はないらしい。いや積極的に関わりたいと思っているらしいが。
「こちらの使用のお届けの際にも確認されましたが、ここで行う模擬戦に被る各々の者達の被害は自己責任で宜しいと言われましたが、その旨に間違いは御座いませんか?」
「ええ、こちらに相違はありませんが、今一度その旨は徹底をお願いします」
「双方の理解を得たと・・了承ありがとう御座います。それと冒険者側の使う剣は刃を潰した武器を持たせておりますが、セブレス様は剣ではなく手甲をお使いになるとか」
「剣は使いません。打撃を主にしてますが打つか潰すみたいな感じですかね」
「圧迫死には成りませんよね?」
「成りませんね。羽交い締め位で死なれても困りますけど」
「いえいえ、その程度では死なないと思いますし、運悪く死んでも私が地獄に送ります。そんな者達を雇っていたら、私が罪に問われる覚悟が御座いますから」
「おおぅ」
海鮮商ノークスよ、お前は鬼か?毒を撒くのはそちら側だけにしてくれ。さてと・・遣りますかって訳には行かないのだ。これからあちらの冒険者達と顔合わせが有る。その辺の事も滞りなく進むのだが・・
こんな面倒な事はさっと終わらせたいと思っていても、回りのしがらみやら俺の身分やらもある訳で・・こちらか先に名乗りを上げないといけない領主の息子とか?どこの何某のガー・・どこの何某のギー・・どこの何某のグー・・どこの何某のゲー・・どこの何某のゴー等々をそこで聞かされた訳さ。
知らんがな。自慢じゃないが名前なんて特に憶えが悪いんだよ、こちとら。覚える気もないし、お前はあの時のフラグなんか欲しくない。それが立っても知らを切り続けるからな。万が一に敵対関係になったとしても、その時は完全に葬ってしまえば必要にならない筈だ。
「それでは紹介も済みましたので、取り決めの確認を致しましょう」
「あっ、でしたらそれを聞きながら身体を解してもいいですか?先程まで商談をしてましたから、身体が解れていませんので」
「これは失礼を致しました。こちらの【草原の禿鷹】の者達が準備を済ませて置くと申していたので、すっかりその気に成っておりました。しかし・・その片手間に解す程度で宜しいのですか?必要であると申して頂ければちゃんと時間を取りますが?」
「はい。依頼で大森林に入っている時には、待ってくれる相手はいませんからこれで十分です」
そう言って相手の様子を伺うと、嫌悪感を抱いた顔・・それを見ても何の得もないので、観客席に成りつつある建物の裏側に目を遣る。
この場所は大きめの荷馬車が荷下ろしに使う場所らしく、それに隣接したバースが広く取られている。舞台程は高くないが今は落下防止柵で仕切りを作り、そこに野次馬未満の関係者が集まっていた。父や母は当然だが長男のアトレアや、妻のミシアと息子のセリオウス君と家族総出だな。執事のサグシェスに使用人が数名と、本日の当番らしき女性騎士隊もかなりの人数が居た。
それに加わっている騎士に、従卒達も負けていないが嬉しくない。その他に・・ん?んん?この手のイベントには必ず参加するサナーが・・居たよ隣に。何シレッとこっちに参加してるわけ。てか、シュッシュッとシャドウボクシングは止めれ。
「ふぅ」取り敢えず観客席へ運んどいたよ。例の抱っこで!こういう時は結構往生際が悪いからな。頑固な訳じゃないけど心配性ではあるか。俺の首筋に吸い付いていたから吸血鬼かも知れない。
少なくても羞恥心という、俺の生命力がかなり減ったのは確かだ。相手方の密偵だったりして・・嫁だけど。あれは吸ってたんじゃなくて充電してくれた?チュー電・・逃避は止めよう。
それと・・サナーを送り届けてこちらに戻る時、そこそこの数の拍手があった。それを伺うと藪蛇になりそうだから無視して来たけど、何だったのだろう?拍手が起こる要素は何も無かった筈だが・・
「すいませーん、嫁の醜態でお見苦しい所を見せまして」
「・・ええっと、使用人ではなくお嫁さんでしたか」
「はい、嫁修行の一環として若くから使用人のイロハを学んでいたのですが、一緒に居る時は素に戻ってしまうものですから、これ以上は無駄だと思い娶とりました。剣の技術は彼女の方が上なものですから、それが悩みの種でもあったりしますけど、俺の護衛だけは止めるつもりは無いらしく、普段から使用人の格好を崩さないのです」
ここでシラっと嘘をぶっ込む、余計な詮索は放置でイライラを募らせるのは得策で。これこれで良い流れかも知れないな・・羞恥ゲージは底辺まで下がったけど。相手の事は解らないけど、女運の無い奴が中に混じって居たら、そこそこのダメージを与えただろう。羞恥を被った俺だけがダメージを受けたとは思いたくない。そんな気がしても。
「さようでございますか、しかしながら出来た嫁ではありませんか。女としての弱者な体裁を語り、身を擁護させる者が多いですから。ご主人を身を挺して守る信念は妻としてだけでなく、使用人としての忠義を表している思いますぞ・・素手で相対しようとしていましたが」
あはは・・格闘職的な鉄拳は無いな。これまでの茶番は適当に流してこの模擬戦に必要な制限・・ルールの再確認を進めなければならない。彼等もそろそろ業を煮なしそうだし、魔法職らしき者は何かを呟いては舌を動かしていた。
「彼は大丈夫なのですか?軽装の上に頭部の保護も有りませんが?」
「・・シーイラレルなら問題ない。魔法が通りやすい法衣と魔法防御も使える」
そんな感じらしい。その事の説明がリーダーらしき者から返事が来た。それで幾つかの疑問も明確になった、彼は魔法使いで在り来たりな詠唱を使う者だと。
以前に魔法のスクロールで覚えた時に頭の中へ流れ込んだ詠唱・・ぶっちゃけ覚えられるか!魔法も使ってたら要らなくなったし。
以前から使っていた魔法に詠唱は無かったよね?神様もそこは省いてたもの。要か不要かは使えなかった時に考えればいいじゃない。
コミュ障・・じゃないと思うよ?愛を囁くのは得意だからな。相手が上の空だったりするけど気にしない。俺もロボだし。
あーだからですかって感じで、呂律を何度も良く出来る様に呟いていたのか。傍から見たらとっても怪しい奴にしか見えなかったが、それを日頃の練習にしていたらとってもキモいよ。変態認定は絶対にされる。なんちゃら云々の精霊に願うーとか囁いていた、衛兵に突き出されるまであるな。その場で何も起きないから。
もう・・何度目かのそろそろに飽きていたが、お互いの武器の確認が必要らしい。この模擬戦用の武器・・相手の刃を潰した剣を確認させられたが、それ以外を検査する事は無かった。その辺に転がってる石や目潰しに微妙なツバなど、限りがないし戦闘の切っ掛けにはなるかな?程度なモノにごちゃごちゃとゴネたりは無いそうだ。
死闘未満の喧嘩以上になるのだろうか?ただ解った事も合った。俺が使う手甲に負荷されてる<強化>の魔法を使う者と戦った事があるらしい。そいつは冒険者崩れの盗賊だったらしいが、魔法の効果時間を考慮しながら・・面倒な奴だったと。面倒なだけだったらしいが・・
こんな奴等に、気軽に遣られる訳には行か無くなった俺としては、軽く聞かされたそれがとても嫌な話しだった。
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