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第一章第二部 調子に乗って手を出す

30話

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※レマイア領中央領公館 踊る会議?

そうだ!クレープで良く無いか?

「我ら3番隊はシフトを変更し明日の夜間には7番隊へと合流します」

「了解だ。明日からの夜間任務は7部隊を導入する。直ちに従卒兵に要請をかけ臨時部隊として登用に扱える者を選定する」

何なのあのクレープって?ただ薄く伸ばしてもだよ、瓦煎餅みたいにくるんと巻きそうじゃん。大事なのは小麦粉と何かをちょろっと混ぜ混ぜしてだな、それに適当な甘味を突っ込んでそんな商品にしたいのよ。

いや~したいかしたく無いかと聞かれたらしたくはないが。って言うかですね、うちのカミさんがお店の定員から頼まれたのよ。新たな商品開発・・自分で忙しくしたいと思うとかよく解らんかも。そこで思い出しの思いつきなんだけど、パンから外れた薄皮のそれさ。ああ、煎餅ね・・じゃねえから。こう、ふわっとでブリッとな感じのクレープに成らんかね?バンバン焼けるのは瓦煎餅みたいな巻貝っぽい堅いやつ。

「現場と成る3つの通りに面した民家は少ないのですが、先に避難を呼びかけないのは不味くないでしょうか?」

「それで気取られたくはない。彼等はギリギリの当日の闇間に移動を考えている。その移動場所は既に確保されているから、対応の仕方だけ何度か練習をさせよう」

人が踊っております。あれからですね、移動をしたのですよ。仕方ないと思いません?昼食の場に居たのはむさい野郎ばかりじゃ無く女子や子供もおりましたから。

その為昼食を終えてから仕切り直しと成った訳ですが、俺の不要性は通じづちょっとだけの休憩を挟んだ後に、そこそこの人数が入れる会議室に移りましたよ。なので俺は逃避と言う名の妄想中な訳だな。

あの煎餅・・鉄板の上に大きく広げて伸ばしたの。これでどないや!ってどや顔決めたら、あっちこっちが破裂しつつクルンクルンと巻く物が沢山出来ちゃった。即撤去!そのまま放置だとコゲ煎餅の未来しか見えなかったからな。傍で見学していたサナーが他の人を呼びに行くと言って逃げて行った。誰が食べるねん?収容。



続、会議・・そこで必要な部隊で出勤していた隊長と副長、それに準ずるリーダーの代わりが出来る者達が集まっている。この地区で昼夜の警邏に関わる部隊数は15隊あってその者達が全て務めている。

だけども1部隊の編成は12人でなく9人しかいない。世知辛く人手不足なのは仕方ないが15隊はどうしても必要でローテの為の9人編成な訳だ。

だからといって男だけのむさ苦しい状況の今を、看過出来るのか?問われればノーと答えたい。まあこれはね、食べ物へと逃避した言い訳ではあるんだけど色々と合ったのよ。

最初の頃は罪人達に恩情は与えないで、どんな状況でも殲滅を訴えた訳さ。それには予想通りに反発する者が表れて、最初から抵抗もせずに慈悲に縋る者への対処としては酷いと言われたのだ。

そこからは恩情を与える者達が以前も野盗として生業を立てていて、今回も再犯に手を染めようとしているのが今回の実態だ。こいつらは又何かの拍子で似た様な事を繰り返す・・そんな所だけはしっかりとした実績があるからな。

率先して被害者に成りたいのなら、今回の討伐からは外れて欲しい。むしろ騎士としての就労はそぐわない、この仕事には向かないのでは?この辺からがらりと変貌する者達が、この討伐の先陣を切りたいと言い出した。

今度はそっち?上手く収拾をつけるのが難しくなった。だからだよ、そんな時なら甘味を妄想しても良くない?味覚が反応しないけど。因みに全ての騎士部隊の投入は出来ない、予定の夜半が終ればあとに昼間の警邏が始まるからな。そこまでを長時間勤務にはさせられない。

「失礼致します」

あ~はいはい。この部屋に声を掛けて来た者が女性らしい声だと思ったら、お母様周りの警護担当な女性騎士隊の人だった。こちらの女性部隊は3部隊編成で出来ている。やはり人手不足はこちらにも響いていて、こちらは総勢で27人の騎士隊だ。

その就労場所は夜半仕事もあり、その場所は寝所の付近なので屋内になる。進んで詮索出来ないそんな寝所なんだけどね。

彼女達女性騎士隊は今回の討伐作業に組み込まれていないが、お母様の言い付けで大まかな段取りみたいな計画の確認をしてきなさいと。

「・・セブレス様、お屋敷に戻る前には奥様の所へ足を運び下さい」

おっとう、その言付けの為に出向かされたとかじゃないよね?聞けないけどちょっと怪しい。それでもまあ、お母様の所に寄らない選択肢は俺には無いけど。それよりも、だ。この場が非常に居心地が悪くなったと思う。

まさにその彼女達が知らない仲じゃないし、むしろ知り過ぎてる的な感じ?こんな場所じゃ無かったら・・何、真面目な顔してんの?なになに?とか、言葉で弄られた挙句にぐりぐり抱き付かれる訳ですよ。

この場でも最年少な俺なので、すっごい不利!なんだが良く解らない理不尽を受けてる気がする。
って言うか、俺の知らないお澄まし顔を今しちゃってますよこの人達。これ絶対にやべーよ、それの事でも後で絶対に報復あるよね?

それに女性相手に反撃が出来ないし、変なとこ触ったとか言い触らされてもそれはそれで困るからな。これは最早逆セクハラではないだろうか?気持ちいいから放置だけど。

何となく彼女達とアイコンタクトを取ってたら、むさい男連中に睨まれた。これって意識し過ぎちゃうと目が寄り目に・・変顔をしてる場合か。この会議の後に俺は、その彼女達にお母様の所へと連行された・・ナンノコッチャ。


・・・・・


無性に首が痛い・・お母様の部屋に着くまで、ヘッドロックに似た首ロックが続いたからな。すれ違う人の目が痛かったし、適当に誤魔化す俺の心も荒んだのではないだろうか?この仕打ちの理由を彼女が言うには・・敢て聞く程のものかと思って問わなかったがペラペラと自白された。

そもそも事の発端は我がお母様で、少し前に行ったギルドの依頼の中に、そこそこの脅威な魔物の討伐・・大きさから判定すると魔獣扱いになるな。それはどうでも良いが一人のぼっち君は、単身で挑んでいたのだと。ぼっちだし。

俺を前々から知っている彼女・・一番隊隊長のネスラは、そこを納得する事が出来なかった。彼女曰く、俺は昔から慎重派で事前の対処をしっかりと熟し、十分な危機管理もしていた。そんな奴が一人大森林に入ったのが不思議しかなかったと。

その様な評価が俺には合ったのかと思い直すが、出来ないなら遣らない精神で訓練もサボるダメ人間認定に、ちょっと卑屈になってもおかしくないよね?それにだ、手甲の防具と防御力の高い鎧で、俺を挟んだのは反則ではないか。

首に付いていそうなキスマークじゃない何かを、メイサリスに説明しなきゃならない俺の身にも成ってくれ。それに・・お母様が居る部屋のソファーに、お母様と共に座ってお茶とお菓子を食べていたサナーはどうかと思うの。

あれ?サナーって使用人の枠から外れてね?側付きの使用人は給仕に励んどるのだが・・これはスルーだな。合って無い様な関係として解釈しておこう。因みにそのサナーはテーブルのお菓子入れを指さして「美味しいお菓子の差し入れを所望されました」そうの賜った。俺のライフがキレたのは解って貰えるだろうか。

だが瞬間的に俺は復活する、お母様の慈悲の籠った笑顔を受ければ当然の話しだからな。パっねぇなお母様!ん?とっても存在感が薄かったけど、そこにセオ君も居たんだね。動きが少ないからぬいぐるみと間違えたよ。

ここで時間を食い潰すのはどうだろう?明日の晩から徹夜仕事に成り1夜で済むかも不明だからな。その辺が相手次第な所がすっきりしない。

「セブレスが無理ない様な話に導けましたか?」

ああ、ネスラ達があの場所に来たのは、お母様の策略を実行する目的も合ったのか。その目的は不履行に終わったし、その大元を潰していたのは俺だけど。

「お気遣いに感謝致します。不要な雑務は他の者が担当して頂きましたので、今回の要件は滞りなく達成出来る筈です。もう日取りも迫っておりますから体調管理を怠りません」

などなどと余計な話しに飛ぶのを防ぐ、だがそうは行かずごけとかだが。それでもしらばっくれをぶっちぎりにして、キナ粉おはぎを[アイテム①]からこっそりと取り出す。俺の[アイテム①]を知らなかったネスラと副隊長のナーガルは、素っ頓狂な顔で大層に驚いている。

平静を保っていたお母様とサナーは、キナ粉おはぎではびっくり顔だがな。餡子がなー・・元の小豆を未だ見つけられずだからちょっと寂しい。

キナ粉とご飯のコラボに成ったのは、甜菜糖でカラメルを作ろうとしたきっかけからだ。それはかなーり地味な作業がありましてね、焦げ焦げのカラメルになる前に水あめ状の砂糖飴が出来たのよ。だから絡めたね~キナ粉に。それでご飯を覆うのは楽ちんになったのさ。

おはぎの話しにはちょっとした実体験があってだね、田舎者の友達の家に訪れた際に出されたのが、茶碗によそられたご飯に小豆餡子が掛けられた奴。おはぎやボタ餅は同じ様な物だけど、態々体裁よく作って食べないとか言ってた。確かに腹に入れば同じだけどな。農家あるあるかも?

ここで一つの後日談をしよう。クレープの話しは記憶に新しいと思うけど、柔らかふんわりの生地が幾ら頑張っても出来なかったよ。パリッとやカキンみたいな・・やはり食品添加物が怪しいと思う。それ以外はちゃんとした乳牛が無いからか?卵焼きも牛乳で伸ばすと上手く焼けてたから。

いや、今回はクレープを作りたい訳じゃない。餡を包み込む・・包みに拘っても仕方ないな、焼売や餃子を売り込みたい訳じゃないから適当にやろう。クレープどうこうの話しは、甘味菓子のバリエーションを増やしたかっただけだからな。

そこはサナー孝行とも言う、血の繋がりはないけど。あれ?ちょっと気になる姉ポジか?とっても子供っぽい気がしてならない。

<糖餡入りパン>これの中身の餡の拡充をすれば、手間は変わらずに出せるんだよね。ミンチ肉を使った肉まんをパクったら良く無い?<米粉パン>の原料を減らして薄皮なのを作れば・・似非肉まんだ!

似非ハンバーガーとか無理かな、マックーっぽいし怪しい肉は使わないよ。肉団子を作って突っ込むのはどうだろう?こっちなら何でもアリだから、生っぽい生き物が飛び出なかったら許される筈だ。イモイモちゃんは封印だな、蜂の子は食べた事無いし。

うんうん、昆虫系は未経験だからなるべく避ける事にしよう。生魚は食べないけど虫ならって怖いわ。鳥さんに怒られるよ。迫害は許されん!あといやなのは足だ。はみ出てしまった足・・飛び込み自殺した感じは、現実世界では沢山遭遇したからな。「すいませーん、料理の中に虫が入ってます」「すいません、直ぐに取り換えて来ます」「ああ、結構です。虫だけ取り除いて同じのを出すんですよね?」その時に一緒に食事を取っていた女の子が、ウエイトレスさんを相手にそんな会話をしたんだ。あとで聞いたらその接客を良く受けていたらしい。心臓が強いのか?虫に好まれる体質だったのか?こつちの世界なら強かに生き抜くと思う。
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