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第一章第二部 調子に乗って手を出す
27話
しおりを挟む※レマイア領 我が家
領地の筆頭公務者は家族が務めているが他のおもだった役職を集めた会議は、3日後の昼過ぎから始める事に成った。現段階で徴集しても今の説明だけで時間の浪費しか起こらないと。
それならばと会議の意向をその者達に通達し、しっかりと熟考した案を持ち込んでもらい、それを煮詰める方がよほど建設的な会議になるからだ。問題視されるものも過去の事案の例が参考に出来る、その背景を乗り越える歴史は決して褒められたものでは無かったが。
「・・領地の革新と責任も含めて考えるのはかなり重い事になるわ。こちらの領地を目安にお出でになるのでしょ?」
「名目はそう聞いているよ」
などと俺はメイサリスに返事をしながら豆の皮剥きを進めている。そう、この豆はそら豆に違いない。先程までは領公館に居た訳で、食料倉庫をちらっと覗いたら数不足の寄せ場にこれが合ったのだ。
この寄せ場に集められた食物の材料は、特殊なケースでも無い限り家畜への飼料係へと渡される。数不足から寄せ場に主に集まる物は、農家の試作品や特殊な場所で採取された数が不足な物なのだ。
だから価値云々も定まってなく、付け届けや贈答宜しくで買い求めた物では無い。それは食べれるのかどうかも解りずらいから、鑑定もお願いされちゃう感じな物だったりする。
そんな理由はどうあれこの豆以外にもちょっと希少な食材が、ただの飼料に成り下がってしまっているかも知れない。
「坊ちゃま、その豆でスープをお作りになるのですか?大実に育ち過ぎていますから食べ心地で口がお疲れになるかと」
いやいや、この豆の剥いた触り心地からしても十分に柔らかいけど。とはいえ、こいつはフライ擬きに調理して酒の摘まみにしよう。
下味を付けた焦がし溶かしたパン粉の熱油、塩ゆで済みのそら豆にかけるだけだから簡単だよね。フライじゃないし。市場できぬサヤっぽい豆は見たけど枝豆は無かったな・・ゴロっとしているグリンピースは昔からあるけど。
結論から言うと、市場で見かけたきぬサヤらしき豆はインゲンだった。あの時はチラッと見ただけだからさ、その身がしっかり太いとか気ずかなかったけど。まあ、それを見せてきたサナーがこれですか?って聞くんだよね。ほんと太いインゲンだわ。
きぬの様な繊細な感じは全く無かった、遠目に見えた色だけ・・そりゃあねぇ、食べごたえの有る物に価値があるからそう成るんだろうけど、もうちょっと繊細な・・はい、お金も掛るから仕方ないか。売れる物を作ってナンボやもん。
てっ言うか、枝豆も合ったよ。それを枝豆として食べて無かったから気づかなかったけど、しっかり大豆油として成りたってたわ。そこはあれだね、まだまだ青々しい時期に買い叩きそれを塩ゆでして食べたい。やっぱ枝豆で食べたいでしょ。
そんな食で頑張る俺は夕食作りも手伝う訳だが、今日は飲み物のエールを試します。常温より幾らか冷たいワインを飲む者・・それを好む人達が多いけど、エールを冷やし・・グラスも冷せれば中々に美味しい物なのだ。
超透明なグラスなんて誰も作れてないけど、其れ也のグラスは陶磁器製で存在してるからね。それに貴族云々に俺は拘らないし、親が貴族なだけだからこの家の食事時のテーブルはみんな一緒だよ。
「・・グラスまで冷やして頂けるのは、旦那様が居る時にしか頼めませんが今後とも宜しくお願いします」
おおっ、フェインはエール派に鞍替えかな?寒い時期は飲みたいとは思えないけど。う~ん、一度枝豆の事を考えたせいか、それが妙に頭に残ってしまった。
其れ也に大豆油を作っているのだから、その大豆からきな粉なんかも作れるよね?わたしゃそんな製作経験があるのだよ。それに甜菜糖はあるから良い甘味とかスイーツも出来そうじゃない?夢が膨らむな。ついでにフェインにはジンジャーをためさせよう。身体も暖まるし。
「・・地下の食糧庫が氷りだらけにされまして・・氷室らしいです」
あははは・・試行錯誤の連発で、上手くいったか解らんから暫くは様子を見ないとな。上というか天井から冷気が降りればベストなんだけど、そんな作りには成らんのだよ。だから荷物の下をすのこ状の形に整えて、全体を上げ底にしその下からを冷やすしかない。
それに下からだから、廃水処理が必要な溶け水を気にせずに保存も可能なのだ。底が水浸しにならなきゃ良いじゃない?うんうん保存ねぇ・・保存なら乾燥で誤魔化すのもアリか。なんでも干した物を戻した時の方が旨味が凄い!なんて放送を昔に見た事が合ったからな。
生な物を率先して食べるのでなければ、干物を上手く活用すれば良いじゃないか。こっちじゃ生魚の流通が極端に悪いのだから。
魚自身が飛んで来れば良いのに・・ん?水属性とか吸魔の力で乾燥の実験が出来ないか?要検証だな。干しシイタケはミイラ化と違うのだろうか?
≪・・主様?完全に干からびさせなければそのミイラとかに成らないと思いますが≫
・・あったよ、加減が出来るって話しだったな。素敵な奴がここにおるじゃん。人に使わなければ問題なし!
材料の水分か魔力を抜くだけだから、そのどっちか良いかを調べれはいいわけだ。。水分を抜くだけならそこそこ魔力は残るけど、太陽に当ててた筈だから魔力も其れ也に減るはずだ・・どっちも同じ結果とかかしら?そんな今日の妄想が夜を深くした。
<エスセス>は今夜から夜の街へと探索に向かう。それは女性一人を・・まあ、魔力の節約もついでに行えるから、存在を希薄にしての行動らしい。
それってぶっちゃけ空気が漂ってる感じで、全く存在が解らなかった。あーー神の耳ってやつか、そりゃ何でも話しが筒抜けになるのは仕方ないな。ここからはお任せなので、無理せずに頑張って下さいと応援するしかない。頼んま。
・・・・・
夜泣き・・とは違うけど深夜にツノの相手をする破目になった。良く解らない何かで目覚めたツノが、それから寝つくのに時間が掛ったからだ。そのお相手をこちょこちょとかムニュムニュとか遣ってたら、それじゃあツノが眠れないでしょ?っと、メイサリスに怒られた。そうとも取れるか?それの検証は出来なかった、ちょっとした油断の間に寝られちゃったから。
朝食が終ってさらに茶を飲んで一息した後に<エスセス>から昨夜の報告を受ける事に成った。まあ、知らない間に帰っていたのだけど、気にした方が良いのかは解らない。気づけないから。グレて朝帰りする娘の気持ちも知らないからな。
≪明確な表現と成りますと野盗の反旗ですか≫
「・・野盗って、そんなのが潜んでいたの?」
≪その中の幹部らしき者の話しでは、遥か北の都からかなり以前にこの地へと流れて来たらしいです。その時分からここで住まう為に奮起し、現在の歓楽街を仕切る勢力となったのが現頭目でもあるらしいです。そして反旗の話しになりますが、現頭目が治世に染まりそれが幹部達の不満を募らせたみたいです。ここで互いにけん制しつつであれば反旗など起こらないのですが、そこは元野盗の者達です。その旗印に結束を新たにしたのが今らしいです≫
もう・・ダメじゃん、結束とか固めちゃったら。
≪その頭の弱いらしい頭目は、回りからおだて上げられた形に成ります。そこで配下の幹部たちは各々に目論見を持ち、成就した暁には頭目を亡き者にして成り上がろうと考えています。頭はダメでも先導力は確かな頭目らしく、そこは幹部達も一目置いているみたいですね。それなので幹部達のグループが3つで競っている状況ですから、頭目も簡単には後に引けないと。この計画で最も良く無い狙いは、ここの領主とその家族に成ります≫
「なぜそうなった?」
≪流石にここでの治世を補う能力は無いから、誘拐するか投獄し上手く働かせる方向と考えたみたいです。そこは小者の猿知恵が働いたのではないかと≫
「・・猿知恵か・・誘拐しに来るんだ」
≪独自や独断の行動は考えていないと。こちらの戦力把握は野盗の経験則から難しいと考え、圧倒的な力での制圧を目論んでいます。それも全体の戦力差は理解をしているみたいで、力の分散を図っておいて領公館を一気に抑える方向だと≫
ふう~ん、となれば手薄になる夜間に襲撃を掛けて来るのだろう。ここは今暫くは様子を見る事に成った。奴等にそんな計画があっても、今ならただの妄想だと嘘ぶかれ白を切られてしまえば、そこから先には進めないからだ。
その何時かの為に長くに緊張を続けて行けば、こちらがさらに疲弊を起こし戦力を落とす事にもなる。それなら奴等が決起した所を叩けば良い。なにせ今のこちらの戦力は奴等の3倍である。こちらは油断せずに相手を油断させ確実に罠に嵌めるとしよう。
そんな統率も無い個の集まりは中々に収拾も付けにくいのだから、その時は全てを壊滅する事になるけどな。
◆
※レマイア領中央領公館
「・・なんだと」
ええ、領公館のお父様の元にお邪魔した俺です。そして歓楽街で今に起こっている状況の説明には、ギルドの依頼のさいに俺に憑りついた<エスセス>の事も話さなければ、色々と信憑性とかも欠けてしまうからと。
そんな本人をここで紹介をしながら、この人がどんな存在なのかも話す必要があった。もっとも知らせる必要が無い者達には不要な事なので、この場に同席が許されたのは執事のサグシェス一人と成ったが。
≪彼の者達の幹部等が漏らしていた内容は先程の内容に成ります。それとこれ等を未然に防ぐのは少々厳しく思います。必要な武器や準備が用意されればそれを問い詰める事が出来ますが、普段使いの武器などは言い逃れも容易いですから。その辺は慣れ親しんだ野盗の知恵で御座いましょう≫
奮起した者達をその場で止めるのはかなり厳しい、そこから移動が始まれば各個撃破でしか止まらなくなるからだ。それの相対にどう配置するかも負担で良い形は浮かばないが。
「壊滅させるしかないか」
「はい。どのタイミングで行動を始めるか解りませんが、この領に賓客が訪れる予定もありますから・・それまでに憂いが晴らせれば良いのですが」
「・・全く、予期せぬ事が重なるものだな」
ですよねー。先に頭目や幹部連中を捕まえる手も無くは無いが、その手段を講じても逃げ伸びた奴等が何を考えるかは解らない。なら一挙に全てを始末する、暴挙に似た何かは正義の偽物と思われなければいいのさ。少なくても被害者出さずに済むのなら、それに越したことはないだろう。そんな双方の準備が始まってしまえば、後は狩る側に成る事を勝ち取ればいい。数の暴力は簡単に防げたりはしないからな。
◇ツノの奮戦記
彼女は考えた、今なら右からの強襲でこの場を突破出来るのではと。そして直ぐに反応する、立て続けに3度の右責めをすると素早く左へとスイッチングで加速する。しかし思う、この攻防はもう何度目なのか?自分の限界はそんなに高くない。ここは全てを無視して真正面からの特攻に賭けようと。そしてその賭けに勝てたツノはセブレスの懐へまんまと侵入した。そのままに全身を脱力させ身を任せるままに。
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