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第一章第一部 始めから順調
15話
しおりを挟む奇跡との邂逅
或る日、大森林の森の中でそいつと出会った。そんな奇跡的な邂逅・・まったく無かったかの様に、そいつは俺のベットの上でくにゃ~?うんにゃーらしき何かな感じで、仰向けのまま胸だか腹当たりを前足でポリポリ・・寝ぼけとる。そしてオッサンぽい。スーパー銭湯とかにこんなの居るよね?無料施設に満喫してるオッサン。
見てない!見えません!奇跡・・早くも頓挫だよ、無理だろこれ。よし!お前は駄兎に昇進したな。元が野良だけに。いや、野生って何?大森林ってそんな場所?
「・・セブレス、ツノはどうするの?放置?」
「・・放置だな。外が嫌っぽいし」
メイサリス・・最早こいつに野生をまったく感じない。ただの飼い兎だ。出歩いても庭だけだからな・・屋内が好き過ぎだよ。俺が頑張った主張など何の意味の無くなったな。出会った時から薄々は察していたが、もしかしたら・・いや、万が一も・・はい、有りませんね。
こいつは何も考えず只々直進あるのみ。猪突ってウサ公の事じゃないだろうか?ちょっとは考えなさい。
「・・帰ったらお肉に成ってたとか、ないわよね?」
「・・言って置くよ」
メイサリスの心配が俺にも伝わった。ツノはサナーやフェインよりも確実に弱い。野良のまま2人に遭遇していたら、その日のおかずに成り果てていただろう。俺も美味しく頂いていたはずだ。
あれか!こいつマゾなのか?俺の尻叩きで目覚めたのか?それは無いな・・恨んでそうな目でこっちを良く見るし。あんな事やこんな事なんて俺達には無かったけど、元の属性がツンだったのかも?そこからデレたとか?
デレ未満の飼われ属性は従順な気もするけど、欲望にかられて餌を貪る事しないからな。そこは好き嫌いなら何となく解るんだけど、人的な感覚だとただの少食だ。おい!ダイエットとか言わないよな?まん丸モフモフにも成って無いし。
無いのかツノ戦記、勇猛と言われ続けて戦いに挑む戦乙女・・ダメだ。嫌々顔に食べなさい食べなさいと餌を与える光景しか見えない。凄い戦記になっちゃうよ。人参の効力にも反応しないから、あの話しは盛り過ぎの嘘っぽい。目の前にぶら下げ易い馬対策だろ。ヒィヒィヒーンの鳴き声がニンジーンに聞こえそうだ。
鳴く・・ツノはむにぃむにぃからニィィしか鳴かない。全てをニィィで完結してる。まさに完璧な兎だ。目の前の兎は同一人物ではない、だって兎だもの。
今日は母様からお呼び出しを受けているが、俺が顔を出す他には特に指示はされていない。
このツノの話しもまだ伝わっていないだろう、多分。う~ん、腹当たりの毛はかなり白色ではあるが、もふりたい気持ちしか湧かないな。頭に生えた角はそこそこの凶器なのだが・・ぎゅ~んと突っ込んで来た時も危なそうな部位は角しか解らなかったからな。
いや待てよ?あれか・・尻を叩いてペイッと放置したのに、3?・・4回も繰り返して突っ込んで来た訳だから、馬鹿な所も武器?4回目の最後じゃ、その場にへたり込んだもんな。
きゅぃーってマンガ兎じゃあるまいし、どんだけ全力なんだよ。まず逃げろよ!あと、時折り襲撃に来るとか、何なのその執念深さ。ちびっ子兎が凛々し過ぎるだろ、雌だけど。
「あらまあ、これは・・坊ちゃま。ベットが汚れますのでツノは私がもふ・・い、移動させて置きます。応接室のソファでも宜しいでしょうか?」
「・・ああ、ついでに躾けもよろしくね」
サナーはもふる・・モフりたいだけじゃん。ツノの汚れは付く事はない、俺の生活魔法で超小綺麗にしてる。お日様に照らして臭いを発散させないと、それを嗅いで楽しめない程に。芳香剤の用途を発掘したな。
「畏まりました。坊ちゃまにテイムされてるはずなのに、態度が宜しくないですから」
してねえし!ってか、出来なかったし!いやいや、こっちの世界のお決まりがあるでしょ?そこをゴリ押しで大声で(テイム!!)叫んだ訳さ、勿論真顔で。
当のツノはガン無視で餌をもぐもぐしてた。むしろ抱えても必死に餌に向かってたな。その時はメイサリスの背中が凄く揺れてた。そこで俺は真っ白だ。
でもまあ忘れてたな、それには大切な名付けが必要だと。これでテレッテッテッテーと鳴って、ピコーンからのご主人様そんな展開云々・・ゼロ!ナッシング!それ所が未だに碌に返事もないよ。居た堪れない。
忘却の時間だぞ、奇跡とか・・邂逅!そんなの美味しくないし。
だが気持が切り替えられない、俺の残念なネーミングセンスが乱舞してないじゃないか。また笑われたからな。
乗れない、サナーのもふりボケにも戸惑ったからな。追い打ちののテイムも・・朝から飛ばし過ぎだろ?トイレはちゃんと教えておけよ。
やっと新居へ移ったら、あっちこっちに糞が転がってるとか、笑える要素が全くないからな。ウサ公の癖にいい臭いとか、その体臭は何なの?食べちゃうぞ。雌だし!外に出掛けたがらないとか守りに入ってるな。
それに無いない尽くしだぜ、獣魔登録とかもない。だから・・今度リードらしき物か何か、用意して置かないとな。こいつ、ちっこいけど一応は魔物だからな。ウサギが小さい件。
因みにツノを拾った帰りに冒険者ギルドに寄った訳さ。
そこはあるかも?気分だったけど、魔獣や魔物登録とかがね。素材カンターを進められた、活きのいいままの買い取りはこちら・・みたいな。いや、食べる所もすくないし、希少だとか言われてもねえ上位種に狩り尽されてそうだよ。そのまんま小ウサギだからな、頭の角は痛いけど。
そもそも俺の立場がこんなもんだ、こっちの世界で際立てる能力とか貰って無いし。よくあるちょっと背伸びし始めた若造は、あっちこっちに売り出し中程度じゃない。ん?見た事あるかも?そんな認識がされつつある訳さ。
とってもゆる~い坂を上り出した若者、騎士に成れなかったはみ出しの領主の息子。そんな俺です。そこから何かの手仕事に向いてるか?その模索中って所だな。通いの冒険者ギルドじゃ少数の知り合いや受付を担当して貰ってる人を知ってるくらい。
商業ギルドもそこそこ通ってるから忘れずらいオッサンの顔を覚えた。
ほらほら、地味~にちょっとずつ進んでますよ。普通はこんなもんだ。もう躓いたけど。人生の路線を踏み外した感じだ・・いや、各駅が特急に昇格したかも?それでも特急料金は必須だけど。
◆
※レマイア領中央領公館
「セブレス、良くいらっしゃいました。母は嬉しいです」
「はい、お母様。お呼びとあれば、何を差し置いても飛んで来ます」
これは比喩だよ、俺は飛ぶ魔法を知らないからな。だが言ってしまう、歯が浮きそうなセリフでもドンマイだ。俺の中のお母様への感情が大好き過ぎて、どうにも抑えられないのはマザコンなのか?お母様が綺麗過ぎるのが罪かも知れない。
いやいや、今は発動したマザコンは引っ込めよう。その食卓の周りを見渡せば、いつもの面々が席に着いている。欠ける人が少ないのは家族の食事と言うより、この領公館の執務の兼任者だから社食っぽいけど。
使用人枠のサナーは居ない、居ないよね?油断は出来ないが留守番だと言っていた。あれ?俺の指示じゃないじゃん、折角家にいるのならツノの面倒は頼んだけど。
まあ優先してほしい所さ。奴が何を食べるというか食べれるのか?最初はウサギと言えば人参?う~ん?覚え間違いかな?あんまり好きそうじゃないし!人参と言えは馬?これもちょっと嘘くさい。
あの馬足で畑から人参を掘って食べるとか・・ねえよ。そこは単価の安い人参で餌付けしたのだろう。こっちじゃ他の根野菜と変わらんからな。
だが体にはいい、むしろ必要だ。煮込みスープにするから少しは食べてもらおう。
そんな訳だから現在進行で色々食べて貰っている。食べる回数が多いけど、食が細いのがちょっとな・・ほんとちっこいし。チビだよチビ!名前もチビにすれば良かった・・。
サナーのお陰で?今回は、昼食の手伝いをせずに済んだ。塵積で無言の感謝、いつか我が身を助けてほしいと。ここの場の殆どは家系の者が集っていても、必要に謝辞慰労は怠れない。ましては慇懃無礼な様は、生涯に悔いを残すのは容易く解るぜ。
それは確かに面倒でもあるが・・少し位は簡略して(皆様におかれましては・・)(本日は・・)うん、纏めちゃダメじゃん。各々に正対してが当然だもの。一応は貴族の息子だからな。
でも結構な人数が居るんだよ、両親2人に長男夫婦とその子で追加3人だろ。さらに次男に俺とメイサリスが参加になる。それを給仕する部屋勤めが3人に、指示役の執事のサグシェスが采配中なかんじだ。
んん?今日は居ないけどサナーはいつも食事を一緒に取って居たな。何様サナー様なのか?それはいいや。いつもに慣れてるから。
昼食後は一呼吸を茶でにごしてこの間を見る、その頃合いで気遣いを見せる為に自分から口を開いていく。
「本日はご用向きがあるとお聞きしました、お母様」
「そうです。然したる用向きではありませんが、貴方に会えるのでしたら少しは重宝と置きましょう。・・思い出しました」
・・忘れちゃってたよ、お母様。俺の事の大好きスキルが突き抜けたか?数日前にも会ったような・・。
「先日に茶会を催したのです。そこにデバガ卿も来客としていらしたのですが・・」
へぇへぇと聞いてしまいます。それは例の茶会だな、知ったかしたけど知りません。うなづきは得意だもの。アッチャーやホアッチャーくらいは出来るよ。冷めた視線もくらうけど。
そこは茶を飲む会、程度の知己だ。デバガ・・我が家は伯爵、そこへの彼等寄生男爵は来客止まりだな。むしろこの領に貴賓来賓は全くナッシングだが。因みに他所様に俺が伺えば、伯爵の息子なので子爵相当の扱いがされる。不要です。面倒たんこ盛りだもの。
それより茶会・・あるあるな茶々を入れて来た奴が居たんだとさ、茶会だけに。うまい・・お母様の話しでは、婦人達で茶飲み会を事あるごとに開いているのだと。暇を費やす娯楽として、上級を自負してる婦人達の集まりらしい。
茶くらいなら仕方なしと、貴族パーティなどを嫌うお母様はそこは我慢しているらしい。パーテイ大好きな方々は、殆どが王都に住んでいる。うちの方の田舎領に貴族を集めるのは難しいから。遣って欲しくないけど。
身内だけの茶会・・珍客だと思われても構わないと、夫・・そのデバガ卿が余計な者も伴った状態で来たのだと。そいつは記憶に新しいやつだ、錬金術師ギルドの関係者だったか。役職名は・・覚えなくていいや。
「・・ポーションがどうとか?失笑に伏しておきました。ですが、それでセブレスが営みたいのであれば、制約を新設しましょう」
いやいや、その面倒はとっくに切り替えましたし!それに、俺の為なら何でも作っちゃう系はめっちゃ危険だから。歩く厄介者に就任はしません。
「ありがとう御座います。ですが、ポーションで商売をするのは、愚考であると至ってます。それよりも日常に喜ばれる美容をテーマに」
おおおぅ、お母様。目が零れそうですよ。端の隙間が見えますぜ。それは例の<クレンジング・ジェル>液体だけどジェル・・おかし過ぎだから<エプッグル>と命名しました。
その名前が訝しらしく苦笑が集まる中、素知らぬ振りで説明を続けた。
それに言葉よりも実演の効果が絶大なので、被験者のサナー・・感じんな時には居ない。今日の使用人当番はイエールだった。彼女の特徴はサナーより3つ程歳し若く、背などは俺より頭1つ程に低い。髪型は・・ツインなのだがツインお団子テール?肩ほどに頭大が2つ、なぜかミッキーを思わせるな。あれは耳じゃん。
使用人の紹介とか・・誰得?我が家の使用人は、後にその場を設けよう。ツノの僕とか?まずは<エプッグル>だな。そこでイエールの両の素足、その甲の片方の部分をヌレヌリして比較する。
さあ得とご覧あれ!その後の流れは想定通り。お母様がその実演の足を見て数秒の熟考、閃く前に颯爽と告げた言葉は私の部屋にお出でなさい、だった。
*ツノシリーズ・・続く可能性はかなり低い・・初回限定としよう。
ツノの鼻・・の穴の話しだよ。なんとか空いてる?これで良く呼吸が出来てるな?ふごふごはするから鼻には違いない。少し広げたくなった。虐めじゃないぞ、むしろお助け一心だ。だからそおっと小指でもそっとしたら、触れた瞬間に怒られた。多分、撃オコとはこれだろう。咄嗟に餌で誤魔化そうとしてみたが、全く通じなかった。そこからひたすら、ご機嫌取りの為に延々となで回した。餌を食べてくれるまで延々と・・
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