32 / 40
偽俺様王子の婚前活動
最強商法
しおりを挟む「落せない推しメンはいない、最強美女セラピスト・水樹白那」×「その優しさにメンタル崩壊の沼落ち、最強ビジュアル大学生実業家・紫陽瑠璃也」
最強夫婦ユニットといって、SNSのアカウント用に、彰文に煽り文句をつけてもらう。
「最強ってつけるの好きだな、彰文」というのが率直な感想だ。ただ、白那はともかく、俺に関しては、「どこがだよ、ねぇよ、寒」と反感を買うくらいがいいと思っているので、ちょうどいい。
兄にはいくつか記事をあげてもらって、SNSや自社サイトのリンクを貼ってもらう。
記事内容に関してはどんなものでもいいし、フックがあればいいと言ったら、白那の推し活動歴やアカウントがずらりと並び、中に静馬の名前を入れ込む記事が完成した。
婚前最後の推し活で、落とされたイケメンlive配信者、と書かれ若干静馬が気の毒になる。白那の過去の推しメンには、今ではかなり有名になっているタレントや選手、アーティストもいた。
更に兄の知り合いのカメラマンに依頼して、ビジュアルコンテンツを作りWEBページを拡張していった。写真と動画を組み合わせてSNSで運用する。
どんな人たちがやっているどんなサービスなのかを、より分かりやすく見せるために、ビジュアルコンテンツを増やしたのだ。システム面は兄に丸投げした。
とどめには、白那が元々持っていた推し活アカウントからも、サロンへの流入を狙うことにする。「身バレはイヤだったけど、推し活は引退気味だから、ちょうどいいかも」といって受け入れてくれた。
俺は自社商品の販売、白那はサロンの集客をメインにアカウントを運用する予定だ。白那の了承が得られたので、今後は俺の事業や母の事業とサロン事業を提携させることも考えている。
各SNS上で、これまで俺の名前や写真を使って書かれてきた勝手な投稿へリプライを送って、広めていく。これまで散々勝手に、使われていた名前がここでようやく生きてくるようだった。とはいえ、自分の名前や写真の投稿にこれっぽっちも興味はないので、この作業は会社のスタッフに丸投げだ。
メディア露出は、個人的にはかなり微妙で、正直一番苦手とする売り方だけれど、これしか静馬と正面から闘う方法は思い浮かばなかった。
ただサロンのサイトやSNSの投稿に使っている白那の写真や動画は、俺からすれば女神レベルなので、白那目当てのお客さんが増えることが想定される。
ゆえに夫婦売りにして、面倒なお客さんは避け、同時に静馬ファンをとことん圧倒して火消しをしてしまうのが狙いだ。
キス写真はビジュアル面でのインパクトが強いので、白那へのネガティブキャンペーンは根強く続いているけれど、ファン心理を重視する白那は、そんなに落ち込んでいない。
逆に、「日埜くんの売り出し方に異議がある。瑠璃也とビズネスBLしたほうが」と言い続けているくらいだ。俺からすれば、絶対にイヤだけれど。
俺としてはあの写真を一刻も早く削除して欲しいと思っている。とはいえアングルといい、上手く瞬間をとらえている点と言い、静馬もまたプロに仕事をさせたに違いない。
何より白那の表情が綺麗すぎたので、静馬を上手く消して自分に差し替えた写真をスタッフに作ってもらった。白那はかなり引いていたけれど、個人保存用なので許してもらうつもりだ。
静馬は、俺に対抗するつもりで、まんまと白那に落とされたに違いない。
今回の動きで静馬がどう出てくるのか気になった。ただ、想像以上に奴のレスポンスは早かった上に、予想外の方向にかじ取りをし始めることになる。
サイトやSNS周りの刷新をして間もなく、静馬から連絡が来た。
久しぶりに連絡をしてきた静馬は、出し抜けに「水樹さんのサロンと提携したい」と言ってくるのだ。配信のアーカイブは削除したし、訂正配信も既にしたという。
訂正配信のアーカイブを見たら、兄の記事に準拠しているがごとく、「最強セラピストに落とされました。彼女じゃなかったです、女神でした」とバカなことを言っているので正気を疑う。
「白那に落されて、おかしくなったわけ?」
と聞いてみれば、
「急に訳の分からないアカウント作り始めた瑠璃也に言われたくない。おかしくなったのはどっち」
と言われた。それに関しては、もっともだ。
とはいえ、日埜家経営のサロンとの提携は、白那のサロンの知名度をあげるためには、たしかに利用できる。ただ白那いわく、お客さんの不調度合いが強いらしく、施術に苦労するとは言っていた。
「白那にとってのメリットは?」
「顧客の共有と、知名度を上げること。それに、水樹さんには俺を雇って欲しいんだ」
衝撃的な発言が出てきたので、驚いた。その発想が俺にはなかったからだ。
「施術で関わるのは許してくれるらしいから」と殊勝なことを言う。更に「本気で好きだと、どんな形でもそばにいたくなる」と静馬が真面目な話をしだすので、
「詳しい話は、白那本人と話してみれば」
と俺はいうほかない。
静馬が対抗意識とか、これまでの恨みつらみとかを口にしなくなったのが、不思議だった。
きっと白那の影響なのだと思う。
白那は繋がりができた相手の心を掴むのが上手い。白那は美亜も蒼真も顧客にしてしまったようで、二人ともサロンに足を運び始めたらしい。美亜はともかく、デートDV予備軍の蒼真を飼いならしてしまったのは、かなりの手腕だと思う。
白那は「全部瑠璃也のおかげだよ、蒼真に向き合うのはこれまでの私じゃ無理だった」と言ってくれる。
けれど、俺からすれば初対面で俺の性格を見抜いて、すっかり心を開かせてしまった朱那さんの才能を、白那にも感じずにはいられない。
白那は水樹家の力云々より先に、朱那さんの力をしっかり引き継いでいた。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
汐埼ゆたか
恋愛
絶え間なく溢れ出る涙は彼の唇に吸い取られ
慟哭だけが薄暗い部屋に沈んでいく。
その夜、彼女の絶望と悲しみをすくい取ったのは
仕事上でしか接点のない上司だった。
思っていることを口にするのが苦手
地味で大人しい司書
木ノ下 千紗子 (きのした ちさこ) (24)
×
真面目で優しい千紗子の上司
知的で容姿端麗な課長
雨宮 一彰 (あまみや かずあき) (29)
胸を締め付ける切ない想いを
抱えているのはいったいどちらなのか———
「叫んでも暴れてもいい、全部受け止めるから」
「君が笑っていられるなら、自分の気持ちなんてどうでもいい」
「その可愛い笑顔が戻るなら、俺は何でも出来そうだよ」
真摯でひたむきな愛が、傷付いた心を癒していく。
**********
►Attention
※他サイトからの転載(2018/11に書き上げたものです)
※表紙は「かんたん表紙メーカー2」様で作りました。
※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
隠れオタクの女子社員は若社長に溺愛される
永久保セツナ
恋愛
【最終話まで毎日20時更新】
「少女趣味」ならぬ「少年趣味」(プラモデルやカードゲームなど男性的な趣味)を隠して暮らしていた女子社員・能登原こずえは、ある日勤めている会社のイケメン若社長・藤井スバルに趣味がバレてしまう。
しかしそこから二人は意気投合し、やがて恋愛関係に発展する――?
肝心のターゲット層である女性に理解できるか分からない異色の女性向け恋愛小説!
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
お見合いから始まる冷徹社長からの甘い執愛 〜政略結婚なのに毎日熱烈に追いかけられてます〜
Adria
恋愛
仕事ばかりをしている娘の将来を案じた両親に泣かれて、うっかり頷いてしまった瑞希はお見合いに行かなければならなくなった。
渋々お見合いの席に行くと、そこにいたのは瑞希の勤め先の社長だった!?
合理的で無駄が嫌いという噂がある冷徹社長を前にして、瑞希は「冗談じゃない!」と、その場から逃亡――
だが、ひょんなことから彼に瑞希が自社の社員であることがバレてしまうと、彼は結婚前提の同棲を迫ってくる。
「君の未来をくれないか?」と求愛してくる彼の強引さに翻弄されながらも、瑞希は次第に溺れていき……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる