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辛さの中身
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しおりを挟む昨年の誕生日にセイがくれたテーブルランプがダイニングテーブルの上にある。
たった今、ランプをはさんで向こう側に座ったセイが、
「結婚を目指すの、やめようか」
と言うのだ。
想像していた通りだった。
「辛くなったんでしょ?」
といえばうなずく。
「……やっぱり私が妻役に似てるから?」
セイはもう一度うなずいた。
夫役がセイに似ているから、私が辛いようにセイも妻役が私に似ているから辛いんだと、思う。
「やめよっか。結婚を目指さなくても私たち仲良くできるよ」
「結婚したら。子どもつくれって言われるのは目に見えてる。出生率をあげるのが目的だからな」
「別にセイは問題じゃないでしょ?経験あるし」
「はっ?孕ませた経験なんかねぇーよ」
「……そうじゃなくて。その前のこと。したことあるから、別にそんなに問題ないよね?」
初体験をしたことのない私とは、違う。
「救済措置ってのはだてじゃない。機会があっても経験しないでいるうちに、マシで童貞に、なった気分」
「救済措置が辛いならやめようよ。結婚生活に希望が持てなくなったんでしょ?」
「は?……何言ってんの?」
「え?」
「リセの言ってること意味がわかんねぇ」
「だって、妻役が私で不倫してる話だから……。妻役の行動が嫌なんだよね?結婚生活なんて、したくないって思ったんじゃないの?」
「お前の方の夫役の動きは分かんねぇけど、今妻ルートっぽくて。妊活強要されてる感じなんだよな。で……」
「うん、だからそれが嫌なんじゃないの?」
私が尋ねると、セイが睨みつけてくる。
「リセってさ、鈍感だよな。さすが経験ないわけだ。イトとは大違い」
ハッと息を飲んだ。夫役の不倫相手の名前だった。ゲームの世界の名前を放り込まれたことで、私は過去に彼が口に出してきた数々の攻略キャラクターの名前が頭に浮かんでくる。
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