シタら終わるし、シタから取り戻す

リアルへの波及

3

　ロッカールームに行けば、後悔のため息を漏らしながら着替える。
　隣で着替えていたのは同じようにアダルト部門にいる同僚だ。

　私のため息を受けて、
「難しくかんがえないで、身をまかせたら楽だよー？」
　と言ってくれる。

　彼女の首元にはキスマークがあり私は思わず目をそらす。
「経験しちゃうと、目標達成できないからダメなんだよ……」
「ふーん、大変だね。アダルトでは中々体験できないエロがポイントなのに。それじゃ特権感ゼロじゃない？」
　たしかに、私自身は全年齢部門にいた時のほうが遙かに楽だった。

「経験ないから」
　と告白したら、目を丸くして、
「初めてが精査対象っていうのは……たしかに仕事に体張りすぎかもね」
　と言う。

　彼女が言うには、未経験者がアダルト部門に行くことはあまりないようだ。大きな理由は、戻って来たくなくなるかららしい。特に濃厚なからみのあるシーンが多いゲームは、攻略キャラクターに恋愛感情や情念を感じやすいみたいだ。

　自分がフィジカルを備えた人間であることを捨てたくなることもあるらしい。ゲーム内でも未経験の私は、その極致を知らないしこの先も知ることがないのが理想だ。

　きっとセイもこのゲームで、結婚生活に希望を失っているに違いないと思っていた。その日、家に行かせて、と言ってきたセイに答える。久しぶりだね、いいよーと、メッセージを返した。